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爆縮レンズ Implosion

99/9/1 作成

2017/12/29 改訂

 

Implosion

裸の金属球の臨界量は

核分裂物質の臨界量

kg

U-233 16
U-235 52
Pu-239 10
Np-237 73
Am-241 60

<ウラン型>

ウラニウム235ならガンメソッド(砲撃法)で臨界に達せられる。濃度90%以上の濃縮ウラニウムの塊を2分割しておき、一方の半分を他の塊にぶち込めばよい。小型なのでリトルボーイ(チビ)とな づけた。これが広島に使われた。ウラニウム原爆の臨界量は100%ウラン235の金属で52kg。広島型原爆ではウラニウム235が約60kg使用された。

5cmのベリリウムに包まれたウラニウム-235球の臨界量は濃縮度によって下図のように変わる。6%以下では臨界に達しない。20%以下では重くなって核兵器としては使えない。

critical mass of U-235

そして原発から回収される 偶数の原子番号を持つプルトニウム同位体を不純物として含む原子炉級プルトニウムの臨界量は不純物のため、10kgより増える。

ウラニウム235は天然ウラニウムに0.7%含まれる。重さが少しちがうだけで化学的性質に差はないから遠心分離法とか拡散法で分離するのが面倒 である。(米国とフランスはまだ古い拡散法プラントが残っている)しかし起爆は前述のように簡単である。パキスタンや北朝鮮はこの方式だろうとされてい る。

<プルトニウム型>

プルトニウム238はアル ファ線だけを出しながら崩壊して熱を出すため、一時ペースメーカーの熱電池として使われたこともある。プルトニウム240は高い確率で自発核分裂を起こす 性質を持っている。 このため、ウラニウム235で使われる砲撃方式をプルトニウムに適用するとプルトニウム239以外の同位体のためにプルトニウム全体が超臨界に達する前に 一部で自発核分裂が起きて爆弾が四散してしまい効率の良い爆発を起こすことが難しい。このためプルトニウムではインプロージョン方式が考案された。臨界量 に少し足りないプルトニウム球の周りに爆薬をおいて爆縮するのだ。しかし火薬に点火しても爆発の衝撃波は点火栓を中心とする同心円を描き、点火栓の数に相 当する不均一な衝撃波がプルトニウム球を破壊し、均一に圧縮してくれない。そこで点火栓の数に相当する爆発速度の遅い火薬をレンズ状にプルトニウム球表面 に配置して衝撃波が均一にプルトニウム球表面に達するようにした。フォン・ノイマンの数値解析 (手計算作業)で32個の点火栓と爆縮レンズを配置すれば良いと計算できた。ファットマン型原爆と呼ばれ、長崎に投下された。 点火栓の数は極秘とされたが、ロスアラモスの一研究者、ホッド・ホール(「フォン・ノイマンの生涯」ではクラウス・フックスとされる )が米国の独占とすると問題と考え、ロシアにこの情報を教えた。ホッド・ホールは現在も存命であるがパーキンソン病に侵されている。現在ではこの情報は公開となっている。

以上NHK-TVより

プルトニウム239は天然には存在せず、原子炉の廃燃料中に1%含まれるものを分離濃縮する。化学的に分離できるのでウ ラン235より容易に手にはいるが、不純物のため、起爆装置が大がかりになり、ミサイル搭載に高度な技術が必要になる。北朝鮮が保有するという爆弾はこの 方式なのか?

日本が海外に委託して再処理した不純物の多い原子炉級プルトニウムは31トン、燃料のバックエンド処理ができないため、現在廃燃料中に溜まっている未処理 原子炉級プルトニウムは144トンある。IAEAの目安の8kgで粗製原爆が可能とすれば、既処理分で1,800発、未処理分が18,000発分となる。 (米国は7万発作ったとされる)

日本の再処理は「ウラニウムとプルトニウムの共抽出(混合抽出)」であるから兵器はつくれないということになっている。しかし原子炉級プルトニウムの 50%/50%混合物の臨界量は兵器級プルトニウムの5.6倍にすぎないという。ならば共抽出物17kgで粗製原爆が可能となる。既処理分で2,768 発、未処理分が8,500発分となる。

共抽出といっても工程上はそのようなことはできないから一旦プルトニウム溶液を作ってこれにウランを溶かし込んで、酸化させるというプロセスをとる。にも かかわらず日本が原子力級プルトニウムの再処理プラントをつくることは日米協定で特別に許されている特別な存在である。ちなみに韓国は再処理プラントの建 設の了解は交渉中だがまだ得られていない。

高速増殖炉のブランケットから回収されるプルトニウムは高濃度のため兵器級とされる。従って共抽出させて核兵器を作れないようにすることになっている。

  Pu238 Pu239 Pu240 Pu241 Pu242
  wt % wt % wt % wt % wt %
核兵器級 0.07 93 7 0.7 0
高速増殖炉ブランケット燃料 1.07 70.4 23.4 5.1 0
軽水炉使用済燃料 2 61 24 10 3

(参考 松岡理著 新版 プルトニウム物語 プルサーマルをめぐって)

原発はもう抑止力ではない。いまやテロリストのオモチャ。 水爆は中性子源となる少量のポロニウムをベリリウムで包み廻りをプルトニウム239で包み直径10cm程度の球にする。重水素などの熱核材料をリチウムと 化合させて重水素化リチウム(固体)でプルトニウム239を包み、外殻にベリリウムという中性子倍増材で包む。この水爆が世界の平和を維持しているのかも しれない。水爆保有国は米国、ロシア、中国、フランス、英国の5ヶ国。この抑止力の維持に不純物の多いプルトニウムしか製造できない原発は不要。

通常93%程度のプルトニウムが4-8kg程度使われる。北朝鮮がつくったかもしれない強化爆弾は純度81%程度のプルトニウウム2kgの周りを重水素化リチウム、三重水素化リチウムでつつんだ原爆かもしれないと日本エネ研の黒木昭弘常務理事は指摘。

水爆を製造していたデンバーの近くのロッキーフラッツはいまでは老朽化で閉鎖され、プルトニウム火災で汚染された建物も 解体した場所に埋め平原となって動物は自由に入れるが。人の立ち入りは禁止されている。土地はプルトニウムで汚染され危険な状態である。ここでプルトニウ ム球は全て灰色の金属の粉をグローブボックスのなかで手で固めて作った。このため、作業員が3000人が放射線障害になり450人が亡くなった。鉛入ゴム を使うようになったのは作り始めて6年後である。Hanfordにも同様の施設があり、一部解体されているが近くの川は放射能汚染されている。(以上 NHK TV)


<マンハッタン計画>

トップは前半はヴァネバー・ブッシュ、後半グローブス将軍。マンハッタン計画は実質上二つのルートで原爆製造が行われていた。

(1)ロックフェラー&メロン財閥によるウラン型爆弾(ヒロシマ)の製造である。スタンダード石油はコンゴに重水工場を所有。ケロッグ社はオークリッジに 毒ガス会社を持っていた。ユニオンカーバイド社はコンゴのウラン鉱石をオークリッジに搬入。ウランの濃縮だけで爆弾がつくれるので早く完成した。ただウラ ン濃縮を拡散法でしたため高コスト。現在では遠心分離法でもっと安く作れる。ただ多量のウラン廃棄物が出来る。

(2)デュポン&モルガン財閥(ロスチャイルド)によるプルトニウム原爆の製造である。プルトニウム型は、低コストで製造可能な為、戦後の核兵器の拡販に 大きな可能性があった。ただプルトニウム製造には原子炉の運転が必用で、時間がかかり、遅れた。したがってこれが完成するまではウラン爆弾の実験も待たさ れた。


<原爆投下決定>

2017/12/29NHKのBS1スペシャル「原爆投下」の再放送を観た。今まで、広島・長崎の原爆投下はトルーマンが米兵の損害を減らすためにしたこ とだという公式見解しか知らなかったが、実は残された文書を見れば、トルーマンがサインした原爆投下命令書は存在しない。残された日記を見る限り、戦後の 米国の評判を気にして、原爆投下は軍事施設に限定すべきだと書いてある。ではだれが一般市民の上に投下する命令書を書いたのかというとオッペンハイマーを 指揮し22億ドルを投入してマンハッタン計画を指揮したグローブス将軍のようだ。彼は原爆の威力を計測するためには京都などいままで爆撃を受けていない無 傷の人口密集地区にすべきで京都が最も望ましいと6回も陸軍長官スチムソンに具申。しかしその都度却下された。ならばと投下命令書には軍事施設を目標にす る。第一順位の広島には軍需施設があるとした。じつはそれは繊維工場を故意に解釈したものである。そして広島後は準備が整い次第、長崎、・・という順番に 投下せよという命令書を作成した。大統領の承認サインはそこにない。長崎への投下の翌日、トルーマンは全閣僚を集め、大統領の許可無しにこれ以上の原爆投 下を禁じると発表した。以上の証拠物件から投下後のトルーマンラジオ放送の「米兵の損害を減らすため」という理由つけは後付の世論操作のためのセリフだと いうことが分かる。

Rev. December 29, 2017


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