暇人の雑記帳
読むー好きな作家などについての寸評
エッセイ・雑文
<注目する作家>
大江健三郎
カズオ・イシグロ
北杜夫
鷺沢萠
高橋和巳
多和田葉子
野間宏
村上春樹
<1968-1972>
1968に関する本
1972に関する本
<文学史・文壇史>
文学史、文壇史について
文学史
文壇史
<最近読んだ作品>
五木寛之
大下英治
沢木耕太郎
新海均
岡崎武志
石原千秋
漱石と日本の近代
梯久美子 著
島尾ミホ伝『死の棘』の謎
ノルベルト・フライ 著1968年 反乱のグローバリズム
<トピックス>
英語で読む村上春樹
「速読の技法」を知りたくて、この本を図書館で借りて読んだ。本屋で立ち読みした時に買って読むほどの内容ではないと思ったのだ。
(著者は、本は買って読む事を推奨している。そうすれば、一生懸命読むし、書き込みなどもできて頭に入りやすいし、記憶に残りやすいからだ。しかし、今、私は当家所有の本を整理する立場にあるので、できれば本は購入したくないのだ)
その時にもざっと目を通してあったのだが、その時の印象通りに期待した内容は得られなかった。それと言うのも佐藤優は特別な能力の持ち主であり、彼と同じレベルで速読しようにも持っている知識と知能が違うからだ。
この本は、速読ばかり薦めているわけではない。むしろ読書により多くの知識を身につけ、個人、所属する会社、国家の”生き残り”に役立てる事を望んでいる。
この本に書かれている内容は以下の通り。
第Ⅰ部 本はどう読むか
第1章 多読の方法
第2章 熟読の方法
第3章 速読の方法
第4章 読書ノートの作り方
第Ⅱ部 何を読めばいいか
第5章 教科書と学習参考書を使いこなす
第6章 小説や漫画の読み方
第Ⅲ部 本はいつ、どこで読むか
第7章 時間を圧縮する技法
佐藤優の本を読んで、いつも感じるのはこの人は頭の善い人だな、という事である。論理立てがしっかりしており、書かれている内容の筋道が通っている。
彼は外務省にいた時に、ソ連大使館に勤務してインテリジェンス(諜報)の仕事をしていた。しかも彼は神学者である。だから共産主義に敵対していると思われがちであるが、むしろ我々より良くその手の本を読んでおり精通している。そして論理が通っているという事で共感もしている。ただ、話しが複雑なのは、だからといって共産主義者にはなっていないという事である。彼は飽くまでも神学者である。(閑話休題)
では、肝腎の「速読の技法」の章には何が書かれているか?
超速読:5分以上はかけない。序文の最初の1ページと目次を読み、それ以外はひたすらペ
ージをめくる。このとき文字は読まず、ページ全体を見る。この方法は「自分に
とって有益な本かどうか?」、「時間をかけて読むに値する本かどうか?」を仕
分ける
普通の速読:30分で読む。基本は新聞の読み方の応用である。「ざっと見出しを見て当た
りをつけ、どれを読んでどれを読まないかを判断する。そのうえで、既存の
情報は適度に飛ばし、必要な未知の情報だけを拾い読みする」。
技法としては、完璧主義を捨て目的意識を明確にする、雑誌の場合は筆者が
誰かで判断する、定規を当てながら1ページ15秒で読む、重要箇所はシャー
ペンで印をつけポストイットを貼る、本の重要部分を1ページ15秒残りを超
速読する、大雑把に理解・把握しインデックスをつけて整理する、である。
この本に書かれている技法(方法論)は、仕事に役立てる(必要な情報を拾い上げる)ための読書の技法である。
私が必要なのは、自分が保有している本(主に小説、文藝評論)の再読のための速読技法である。だから、残念ながら、ここに書かれた技法は使えない。
著者は月平均300冊以上は目を通し、多い時には500冊を超えるという。熟読でも1冊に2〜3時間くらいで読み切るらしい。読書時間は1日平均6時間、どんなに忙しくても最低4時間という。我々の読書レベルとは大いに違う。
熟読の技法、速読の技法以外で感心したのは以下の様な内容である。
・リラックスのための小説や漫画などの娯楽の読書は、働くエネルギーを蓄える意味では
無駄ではない
・娯楽の読書は「動機付け」には良い。但し、そこに描かれている(書かれている)事を
鵜呑みにしてはいけない。歴史小説で歴史知識を身につけるのは危険である
・「社会の縮図」、「人間関係の縮図」として類比(アナロジー)的に読むのも良い
・忙しくてまとまった時間が取れない人は、細切れ時間でも良いから、合わせて1日1時間
は読書する。そのくらいの時間は確保しないと読書の効果は出ない
・数学や外国語は教科書や参考書で読むだけで理解することは不可能である。体で覚える
技術(テクネー)の要素があるからだ(テクネーについては立花隆著「東大生はバカに
なったか 知的亡国論+現代教養論」参照、要は実習が必要ということ)
・司馬遼太郎の「坂の上の雲」には、レーニンが明石元二郎陸軍中佐に忠告した話が出て
くるが、レーニンと明石が面識を持っていた可能性はかなり低い
最後に面白い読み方として、村上春樹の「1Q84」をどう読むか、について紹介したい。
・テキストを素直に読んだほうが、読書を楽しむことができるし、そこから有益な内容を
引き出すことができる。青豆と天吾の恋愛小説として素直に楽しく読めばいいと思う。
・パラレル・ワールドという読み方には違和感を覚える。なぜなら、作品の中で、カルト
集団の教祖(深田保)が、パラレル・ワールドでないと明確に否定しているから
・青豆、天吾、深田らには月が2つ見える。(中略)。多数派にはひとつしか見えない月
が、少数派には2つ見える。こういう現象は現実に存在する。たとえば、沖縄の米海兵
隊普天間飛行場の移設問題だ。(中略)。抑止力論がいわば「第1の月」だ。沖縄の人
々を含め、この「第1の月」はすべての人に見えている。これに対して、沖縄の人々に
は抑止力論に加え「第2の月」が見える。
日本の陸地面積の0.6%を占めるにすぎない沖縄に、在日米軍基地の74%が存在すると
いう不平等を是正しようとしない政治エリートに沖縄に対する意図的もしくは無意識の
差別があるのではないかという「第2の月」だ。
エリート官僚には、沖縄差別というこの「第2の月」がまったく見えない。
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