暇人の雑記帳
読むー好きな作家などについての寸評
エッセイ・雑文
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1972に関する本
<文学史・文壇史>
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ノルベルト・フライ 著1968年 反乱のグローバリズム
<トピックス>
英語で読む村上春樹
村上春樹 短篇連作 女のいない男たち
・独立器官(文藝春秋2014年3月号掲載)
谷村はスポーツジムで52歳の美容整形外科医・渡会(トカイ)という男と出会い、スカッシュを一緒にしたり、夜に食事を一緒にしたりする仲になった。渡会は内的な屈折や屈託があまりに乏しいせいで、そのぶん驚くほど技巧的な人生を歩まずにはいられない種類の人間の一人であった。彼は筋金入りの独身主義者であり、また職業柄、交際する女性に不自由したことがなかった。彼にとって同時に二人か三人の「ガールフレンド」を持つのは当たり前のことだった。今までトラブルが皆無というわけではなかったが、彼の「機転」で肩の骨を折られるような不幸な事態はもたらされなかった。
その渡会が16歳年下の子持ちの人妻に恋してしまう。そしてアウシュヴィッツに送られた内科医の話を読み、「自分とはいったいなにものなのだろう」と考え始める。
そんな話しをした後、渡会はジムに姿をみせなくなり、2ヵ月後、谷村は彼の秘書から彼が亡くなった、という連絡を受ける。
渡会は何も食べなくなり、心臓が血液を送り出すことが出来ないほど痩せ、心不全で亡くなったのだ。渡会は谷村に新しいスカッシュのラケットをあげるように、死ぬ前に秘書に頼んでいた。
渡会が生きる意志をなくしてしまった後に、秘書がくだんの人妻に来てくれるように頼んだが、来る事はなかった。彼女には夫や渡会以外に本命の彼氏がおり、夫と子供を残して既に家出をしてしまっていた。
谷村は、渡会が「すべての女性には、嘘をつくための特別な独立器官のようなものが生まれつき具わっている」、と言っていたのを思い出す。
渡会も独立した器官で恋をしていたので、本人も意思ではどうにもできなかった作用だった。
作品の題名「独立器官」は、ここからきている。
この作品は、誰の人生にも躓きの石がある、という教訓話に思えてならない。もしこれがハルキの作品ではなかったら、今現在日本でこの作品を好んで読む人間がどれだけいるだろうか?おそらくそれ程多くはない、と私は思う。
今回も渡会(トカイ)という変わった名前を使っている。トカイがどこから来ているのか?まさか、谷村に対しては都会(トカイ)である、という、つまらない語呂合わせではないだろう。ハンガリーにトカイ、という町があるらしいが、それからとったのかどうかは分からない。アウシュヴィッツに関係しているのであろうか?
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