冬にうたう
こころもよう
新しい暦は希望の香りする真っ先に書く君生まれた日
降る雪に没して静かに軋む家押し潰される心の嘆息
来年の手帳の暦真っ白な未来の息吹吸ってときめく
枯れ木見て羨ましくなるさっぱりと出直し萌黄に芽吹きたいから
かまくらや友との会話は静けさを増し胸に染むしみじみとする
冬の夕何か悔しい赤さなの家の明かりが恋しくなる僕
ひっそりと降り始めた雪痛んでる後悔鎮めろ人に知られず
湯気立てる薬缶の音を聞きながら今年の残り指で数える
小春日の空を気ままに舞う鳩を追う術無くて地上に汚れる
雪降りて青く凍てつく唇に触れて癒しぬ君の指先
街飾るクリスマスの灯の絢爛さ闇にこぼれる吐息を消して
傷ついた小鳥のごとく弱き日や痛き北風まなこ潤ます
降り止まぬ屋根の落ち葉の物音と一つになりて静けさに沈む
寒風に赤らむ林檎の頬の子の手包むこの手は老いに熱なく
手に負えぬ苦さその日に消えるかな何が大人で成人の日
寒空に身じろぎもせず立つ欅 気概の根っこ探りあてたい
くべられて空に帰った枯葉たち 未練 焼く火はどこかにないか
あること
久しぶり古い住所を整理するその後知らぬ友らの名簿
初雪の朝や肩寄せ眠る家族仲良きことの温もり感じて
レトルトの白粥乾燥七草で塩梅悪く季節味わう
冬の夜ストーブの前聞き入るは一つに重なる鼓動の温もり
澄む場所に耐えきれる人少なくて星月のみの冬空寒し
煤払い手伝う子の手冷たくて両手で包むストーブの前
見渡せば全てが智慧の先生で冬耐え芽吹く木々またしかり
年忘れ昔話に笑い泣き久しき友との時は埋まる
月明かり唯一便りに家々へサンタは空に大忙しか
週末や一日過ぎたおでん食べ家で寝過ごす冬の雨降り
雪降れば道行く人皆うつむいて心見つめる僧侶のごとし
喪に服す葉書受け取る神楽月今年も沢山人の逝くなり
滲んでるまぶたの裏の太陽が眩しさを増す一月尽
落葉掃く老婆の箒秋深め焚き火の暖が胸に染む
年忘れ誘ってくれる友のいる今年も変わらぬ笑顔に会えて
北風の落とす枯れ枝胸に挿し一年の生命誇ってみる
枯草も見えないところで根をのばす緑の春に遅れないよう
寒くても家路は遠くありにけりただ歩まんと足に告げてる
ポケットの手までも寒い家路かな急いた足さえ枯らせと木枯し
ふうけい
初雪が見慣れた朝を変えている駅の遠景着いた列車も
冬の水触れる陽ざしで煌めくも風吹きさらす冷たき青さよ
気がつけば師走半ばの挨拶に今年の過ぎる早さ告げ合う
その人が痛みを越えたその日から見守る目ありクリスマスの夜
モザイクの落ち葉の絵画カサカサの絵の具動かす僕の足は筆
朽ち果てた枯葉の毛布暖かし今しばらくは寝よ虫よ地よ
冬の海波頭を荒ぶ風凄く夜の鴎は何処に眠るか
雪のショール肩から落とす杉もいる春滴りて野山潤す
分け隔てなく降る雪やその下の暮らしの色は塗りつぶされた
襟を立て目線落として道を行く温きことのみ頭をよぎる
交差点旋風にまかれる銀杏の葉去るべき場所を逡巡している
ボトボトと雪薙ぎ落とす残りの葉そんな無慈悲に無用の様に
オリオンが腹ばいでおる冴えた空欅は並ぶ枯葉の鎮魂
雪の原一つ首出す墓石はまだ癒されぬ魂の標か
祈りなきクリスマスの夜の明るみは闇に消え行くものでしかない
雪は舞い街のざわめき鎮められ終わる今年の悔いも眠らす
雪残る山間の風澄みきって芽吹きの色の画布を仕立てる
残雪に夕映え点り炎の野風も潤んで温もるがごとくに
暖かな陽射しは金の回廊に去りがたいのか物憂げな落ち葉