風のささやき

襟を立て目線落として道を行く温きことのみ頭をよぎる

その日は随分と寒い日でした
薄暗い空からは乾いた雪が落ちていました

僕は首をすくめ
マフラー代わりにコートの襟をたて
両手をポケットの中に突っ込んでいました

目線はどうしても下にばかり行き
行き交う人々と目線が合うこともありません

動物の本能なのでしょうか
こんな時は暖かいものにしか思いが行かず
夜の食べ物のこと風呂のことなど
そんなことばかりが
頭をよぎっていきました

足だけがまるで別の生き物のように
僕を乗せて家路へと急いでいました