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映画の思い出について

 

<映画寸評>
日本の作品
欧米の作品
アジアの作品
ATG作品
文芸作品(原作もの)

 

<ドラマ寸評>
日本の作品


<注目する女優>
イングリッド
     ・バーグマン
コン・リー

ジャンヌ・モロー

ジーン・セバーグ
ニコール・キッドマン
フェイ・ダナウェイ

浅丘ルリ子

芦川いづみ
栗原小巻

黒木瞳

関根恵子

高峰秀子

中谷美紀

成海璃子

樋口可南子

真木よう子
宮沢りえ

吉永小百合

若尾文子

 

<注目する男優>

石原裕次郎

<注目する監督>
イム・グォンテク

チェン・カイコー

大島渚

小栗康平

小津安二郎

黒澤明

木下惠介

熊井啓

イングマール
    ・ベルイマン

<最近観た映画>

無伴奏

キャロル


 

<最近観たドラマ>

コントレール〜罪と恋〜
(NHK ドラマ10)

ガラスの家
(NHK ドラマ10)

 

<トピックス>

八重の桜の史実と創作

「三國連太郎」で逝く

 「前略おふくろ様」は、倉本聰の代表作の一つではないかと思う。生憎、私は1975年の放送当時、その面白さが分からず毎週定期的には見なかった。ただチャンネルを合わせた時、誰であったか忘れたが、喫茶店で「アメリカンの薄いの」と注文する場面を見て面白そうなドラマだなあ、と思ったのを覚えている。いずれの日にか、このドラマが見たいと思っていたのだが、CSの日テレプラスでやるというのをJ:COMのジェイコムマガジン(2013年5月号)で見かけたので、早速、録画して見る事にした。

 しかし、録画操作を間違ってしまい、第1話、第2話を取り損なったので、取り敢えず第3話からの視聴となった。

 

<第3話、第4話>
 予想通り面白い。 出てくるキャスト、出てくるキャストの誰もがユニークなキャラクターであり、倉本聰の書いた会話も洒落が利いている。
  深川の料亭「分田上」が舞台である。

 主人公であり、板前修行中の、小心で照れ屋のサブ(萩原健一)、サブの「はとこ」で、いい加減な海ちゃん(桃井かおり)、板前頭で男気があるが、何かいわくありそうな秀次(梅宮辰夫)、鳶の半妻さん(室田日出男)、半妻さんの組の鳶で、酒乱の利夫さん(川谷拓三)、サブが好きな、愛嬌のある仲居のかすみ(坂口良子)、旦那さんと別居中で、色気のある若女将ミツコ(丘みつ子)、人情厚そうな女将のぎん(北林谷榮)などなど、今から考えるとそうそうたるメンバーが出演している。しかし、当時は未だ売り出し中の俳優・女優であり、このドラマで人気が出た人もいるらしい。
 ドラマは海ちゃんの就職のため、家出してきた実家に了解をもらうために一度帰省するよう勧めるところから始まる。しかし、いい加減な海ちゃんは利夫さんの口車に乗って帰省せずに東京に留まり、日にちの経つのを利夫さんの家で過ごす。そこから、ドタバタ喜劇が始まる。これは、多分、喜劇なのだろう。海ちゃんの就職は一体どうなるのだろう。また、若女将さんと秀次はどうなるのだろう、次回以降が楽しみである。

 話しは違うが、タイトルバックの滝田ゆうの絵やドラマの中で流れる歌が当時を偲ばせる。とても懐かしい感じがする。

<第5話>
 この話の脚本作家は市川森一である。ネットで調べて見ると原案は倉本聰であるが、脚本は市川森一が2本、高階有吉が2本、金子成人が5本書いている。 全部で26本なので残りの17本は倉本聰が書いている事になる。
 この話であるが、赤座美代子扮する仲居が、別れたやくざな亭主の子を身籠もっていた事が分かり、サブに堕胎の保証人になって欲しい、という。彼女はサブの親方の秀次の子と言えば引き受けてくれると思い、そう嘘をつく。サブは引き受けざるを得なくなり、判子を貸そうとする。その後、例によってドタバタがあり、最後に秀次が判子を貸して一軒落着する。
 梅宮扮する秀次が余りにかっこ良すぎるのは仕方ないか。 サブに恋するかすみ役の坂口良子がとても可愛い。この当時、20歳である。可愛いわけだ。今年(2013年)57歳で亡くなった。余りに早すぎる死である。未だ未だ活躍できる役者であった、と思う。桜井センリ扮するミツコの旦那が金欲しさに突然に戻ってくる。秀次が好きなミツコは、気持ちが落ち着かないが、旦那の策略にはまり、同衾したあげく、その日の売り上げを持ち去られてしまう。嬉しそうになったり、悔しそうになったり、色目を使ったりするミツコの表情がとても面白い。丘みつ子は演技達者だったんですね。
  丘みつ子、当時27歳、色っぽいです。

<第7話>
 かすみが風邪で休みを取った。かすみの父親の頭領はわざと煙草入れを忘れた振りをしてサブをかすみの元に行かせる。 かすみはサブを枕元に寄せ、胸を触らせる。サブがかすみの所に行った事を知った半妻さんはサブに事実を確かめる。赤い煙草入れを持って行った事を知って、それは頭領がサブを認めた事だと言う。そして、やけ酒を飲み、荒れ狂う。一方、”分田上”を含めた深川木場の一帯が高速道路の建設で立ち退かされるという話が本格化する。

<第8話>
 サブの二番目の兄が、ぼけてしまって蔵王のロッジでお荷物になっている、”おふくろさん”を東京に連れてきて、サブに押しつけて帰る。おふくろさんは、サブと一緒に食事をしたり、自分の兄をお詣りするため靖国神社に行ったりと、暫く東京にいたが、サブが出勤中、サブに黙って山形に帰ってしまう。
<第9話>
 かすみちゃんが宗方(宗像?)建設の息子と見合いする事になり、みんな右往左往。結局、息子には彼女がおり、またかすみちゃんにも好きな人が居る事を分かってもらい、一軒落着。しかし、秀次の生き方、半妻の生き方、サブの生き方、それぞれに昔風で男気を感じさせます。こう思う私も古いのでしょう。
<第10話>
 秀次とサブは、浅草で、秀次が昔ヤクザだった時に一緒に住んでいて、キャバレーの火事で死んだ女の父親と出くわす。この父親は秀次に恨みを懐いていて秀次につきまとい、これまで、秀次が働き口から追い出されるようにしてきた。しかし、今度は喘息で思うようにいかず、とうとう死んでしまう。その間のすったもんだが、この回のテーマ。秀次が殺したんだと思う、サブの気の回しようが面白い。

<第11話>

 ミツコの旦那の小説が文芸誌に載る事になって、大騒ぎ。その小説は分田上を舞台にしており、ミツコと秀次ができているストーリー。サブも登場する事などからサブがスパイという事になり村八分状態。最終的には旦那が詐欺にあっており、雑誌に載らない事になり一件落着。いつものドタバタ騒ぎである。
<第12話>
 サブのおふくろさんが、ぼけて年賀状に兄貴の妻である和子に宜しく、と書いてくる。サブは哀しくなるが、海はその年賀状を見て笑う。サブは耐えられずに怒り出す。
 半妻さんは、同級生で幼なじみの文房具屋の出戻り娘(民子)と結婚する事を決めたが、かすみちゃんの事が忘れられず、サブにもう一度かすみちゃんに気持を聞いてくれと頼む。サブは直接聞けないので秀次に頼むが、半妻さんにも秀次にも『自分は関係ないす』、と言った事がかすみちゃんに知れる。起こったかすみちゃんはサブに抗議するが、いつの間にか仲良くなり、キスをする事になる。
 半妻さんは結婚する事でおふくろさんと分かれて住むという。このドラマはおふくろさんが主役である。サブも半妻さんもおふくろさんに尽くしてあげられないのが辛いのである。
<第13話>
 サブのあかぎれの手入れの話しで始まります。一体、ドラマはいつの時代の設定なんでしょうか? 今回も利夫さんの転職・スナック開業、須崎の小料理屋・ひな菊へのサブの応援話でドタバタです。
<第14話>
 海ちゃんが ミツコの旦那と親しくなり、おせっかいで両者の間を取り持つ。旦那が家を出た理由が、おかみさんが旦那のお父さんを悪く言うためだと分かり、ミツコは家を出る決意をする。しかし、おかみさんがおでんの屋台で飲んでいて倒れてしまう。この後は、どうなるのだろうか?

<第15話、第16話>

 おかみさんが心筋梗塞で入院して、「分田上」のみんなは慌てふためいてバタバタ。海ちゃんは、サブの言葉で傷つきどこかに行ってしまい、2日間アパートに帰らず。結局、利夫さんと過ちを犯してしまう。
 そして、海ちゃんは1回戻ってくるが、荷物を片付けてアパートを引き払ってしまう。そんな時、息子に負けて家出した海ちゃんの父親がサブのところにやって来る。利夫がその場に居て、話しが複雑そうになりそうだったが、息子が上京してきて何とか収まり、一件落着。また、日常が始まる。いつでも、どこにでも少々の事件は日常の中にある。

<第18話>

 おふくろさんからお墓が心配なので、それとなく長男である一郎に話してくれとの手紙がサブに届く。おかみさんは、ミツ子に内緒で仲居のツル子に金を貸し、二人の間がぎくしゃくする。母と息子、母と娘、いつの頃からか近い人間に対して遠慮するような時代になってしまっている。サブの夢の中に中ピ連が出てくるので、時代は1970年代前半らしい。

<第19話>

 渡辺組の後継者がらみの話しで、サブとかすみちゃんがもめたりして、日常起こりうるたわいない話ではある。サブが「片島の名前は捨てない」という場面が良い。
 最近、このドラマのような気の利いたシナリオは余りないように感じる。会話の機微、義理人情に熱い人間関係、一人一人のキャラクターが面白く、良くできている。倉本聰を初めとしたシナリオライター達の力量が違うということだろう。

<第20話>

 サブと一緒に集団就職で東京に出てきた(遠藤)栄輔の彼女から、栄輔を助けるために20万円貸してほしいと言われて、その話を信じようとするサブ。実は、栄輔は赤坂の料亭を首になり、今は人に借りた金でギャンブルに明け暮れしている程、生活が崩れてしまっている。鰻の養殖の話しが嘘であると分かっていながら「分田上」で雇ってやろうとするおかみさん。1970年代前半は未だ人情が熱かったんですね。

 栄輔の彼女役として紀比呂子が出てました。1975年当時は25歳、若くて可愛かったです。ウィキペディアに依れば、結婚を機に引退して、今は小料理屋の女将さんらしいです。女優の三条美紀の娘ですが、三条美紀も未だ健在のようです。そういえば、栄輔役は高橋長英でした。いつ見ても(というか昔の顔のせいか)いい男です。当時は33歳、彼も健在です。

<第21話>

 半妻の新婚所帯を半妻の母親と同居するかどうするかで、利夫やサブが占い師に嘘を言ってくれるように頼む、余計なお節介をする話。
 深川、木場の一部は高速道路の立ち退きが本格化してくる。ハイセイコーが話題になっているので時は1973年になるだろう。木場は海側の埋め立てが進み、1968年には新木場に引っ越している。首都高9号深川線の全線開通は1980年となっている。

<第22話>

 ミツ子と同級生の木山製材の息子ゲン公が飲みに来たついでに、ちょっかいを出してきて、秀次とミツ子の噂をネタに嫌みを言って帰る。困った秀次は、ミツ子の夫の彼女である美那子に旦那を帰して欲しい、と話すが、秀次が居るなら旦那は帰しにくい、と言われてしまう。そんなこんなで、微妙な話が続くが、騒ぎいつものように何となく収まる。
 会話が粋で泣けるのは歳の所為でしょうか?
 それにしても前にも書いたが、丘みつ子は当時27歳のはずなのに色っぽい。そして演技がうまい。当時は未だ勉強する所が色々あったのだろう。今ではそんな場所もないので、役者さんにとっては難しいかも知れない。どうして、こんないい女優が少なくなったのだろうと、嘆いても仕方ないのかもしれない。

 この回の最後に仲居が「桜が咲き始めた」、と言うのを聞いて、従業員全員が大騒ぎし、仕事を放り出して様子を見に行ったりするのも、1970年代前半だからでしょうか?今から思うと、未だいい時代だったんですね!
<第23話>
 サブと同じアパートに住んでいるタクシーの運転手が、海ちゃんを車に乗せたという。キャバレー・タヒチで働いているという。一方、「分田上」に公団の人が来て、移転話が本格的となる。海ちゃんの親父が上京し、母親がガンでもうすぐ亡くなるから、サブから海に山形に一度帰ってくれと話してくれ、と言う。海ちゃんの親父は、長男のかつおは知らないと言うが、既にかつおは知っていて、海ちゃんに母親の病気の話をしていた。海ちゃんは、哀れな親父には会いたくない、おふくろには知らんぷりして会えない、と言う。海ちゃんの親父から妻との結婚の経緯を聞いて、サブはおふくろさんの事を考える。
<第24話>
 海ちゃんは、根津のアパートを引き払い、山形に帰る。
 「分田上」の立ち退きが決まる。サブはロッジのレストランを任される話しを真剣に考え始める。
 私はヤクザ映画は見たことがないが、こういう人情話はそれと似ているような気がする。やみつきになりそうである。ショーケンは意外と演技が上手い。
<第25話>
 半妻さんの結婚式の日、半妻さんが突然に止めると言い出して大騒ぎになる。サブが蔵王行きの話しを、まず最初に自分に話さなかったという事で、かすみちゃんはむくれてしまい、「サヨナラ」という手紙を残していく。(後でかすみは反省する)
<第26話・最終回>
 半妻さんは一週間も経つと、「結婚って良いね」、と言い出す始末。
 秀次は「分田上」を辞める、と言う。そして、休暇を取り、大阪に居る元の職場の親方に次の就職先を頼みに行く。しかし、その話はうまく行かず、残ることにする。時代は変わりつつある。
 海ちゃんが東京に出てきて、 ”レストランの話しは断った、東京で修行を続けろ”という、おふくろさんの手紙を持って来る。サブは、母親の青春時代を子供たちは知ろうともしない、と思う。話しはここで終わる。
 セットはちゃちだが映像は印象的だ。この話しは、義理人情が未だあつかった時代の話しであり、まるで長渕剛の唄を聞くようだ。第2シリーズが放映されるなら、是非、見てみたい。