暇人の雑記帳
観るー女優、監督などを切り口とする映画、ドラマなどについての寸評
<映画寸評>
日本の作品
欧米の作品
アジアの作品
ATG作品
文芸作品(原作もの)
<ドラマ寸評>
日本の作品
<注目する女優>
イングリッド
・バーグマン
コン・リー
ジャンヌ・モロー
ジーン・セバーグ
ニコール・キッドマン
フェイ・ダナウェイ
芦川いづみ
栗原小巻
黒木瞳
関根恵子
高峰秀子
中谷美紀
真木よう子
宮沢りえ
<注目する男優>
石原裕次郎
<注目する監督>
イム・グォンテク
小津安二郎
熊井啓
<最近観た映画>
<最近観たドラマ>
コントレール〜罪と恋〜
(NHK ドラマ10)
ガラスの家
(NHK ドラマ10)
<トピックス>
小栗康平(ウィキペディア、キネノート)は寡作である。1981年に「泥の河」でデビューして、これまで(2013年7月まで)に5本しかメガホンを取っていない。正直、食べていけるのかな、とも思う。
私が初めて小栗の作品を見たのは岩波ホールでの事だ。李恢成原作「伽耶子のために」、主演女優は南果歩。私は「伽耶子のために」を見に行ったので、小栗作品だからとか、南果歩が可愛いとかで見に行ったわけではない。当時は小栗もさほど有名でなく、南に至っては初出演作である。私は、この映画の前にNHK教育テレビでドキュメンタリータッチの「伽耶子のために」を見て感動していた。李恢成は私の好きな作家の一人である。その中でも若者の瑞々しい心を描いた「伽耶子のために」は、好きな作品の一つであるから、その感動は忘れられない。それとは全く別に、というか、原作に沿いながらもドラマティックに小栗はこの作を仕上げていた。同様に感動はあった。次に見たのはデビュー作「泥の河」である。テレビのロードショーであった、と思う。宮本輝の原作を活かしながら、独自の世界を作り上げていた。
小栗は叙情的な監督であると思う。そして、文芸的な小説を、原作に忠実でありながら、映像的に作り替えてしまう、希有な監督である。
死の棘(1990年作品)
大分以前にこのVTRをネットオークションで落札したのであるが、
これまで見るのを差し控えて来た。それは、狂った女を映像としてみることに耐えられないのではないか、という思いからであった。とては他人事とは思えない、という事もあった。
原作は島尾敏雄、脚本は監督の小栗。トシオを岸部一徳、ミホを松坂慶子、トシオの浮気相手である邦子を木内みどりが演じている。
ストーリーは、島尾の本に忠実である。ミホが身も心もトシオに捧げ尽くしたのに、トシオは同人雑誌の事務員と浮気をしてしまう。その事実を知ったミホはトシオを許すことができず狂ってしまい、トシオを監視し、責め続け、支配しようとする。そのトシオとミホの闘いと平和が訪れるまでの物語である。
原作を読んでいないと分かりにくいかも知れない。
映像は派手な場面はなく、空はいつもどんよりと曇っていて、ミホの頭の中を表しているようだ。
二人の諍いが続く生活の中で、子供達の存在はいっときの休息を誘うきっかけになる。「泥の河」といい、小栗は子供使い方が上手である。
松坂は化粧も余り施さず、狂気の女を上手に演じている。問い詰め続ける松坂の演技は、島尾の本で読むよりも凄い。この病気は正気なのか狂気なのか分からない所がある。その優しそうなミホから突然問い詰め始めるミホへの切換えも松坂は上手い。
岸部は淡々とした話し方で朴訥としたトシオを演じている。そして、それははっきりせず逃げようとする、男のずるさを上手く表現していることにもなる。
全体のストーリーも映像も暗い。そんな中で二人が愛し始めた時代に住んでいた島と海の映像は美しい。
そして、東京と島の映像の行き来、震洋艇を洞穴から引き出すトシオ、それに重なる蟬の声。これらは映画でなければできない芸当である。(ビデオにて鑑賞)
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