一昨年、吹奏楽連盟の委嘱で久々の吹奏楽作品「パルセイション」を書き、昨年のコンクール課題曲として演奏されましたが、それに続いて吹奏楽復帰第二弾となったのが「ゴシック」という作品です。秋田の名門・大曲吹奏楽団の委嘱で書き、小塚類氏のドラマチックな指揮と秋田・大曲吹奏楽団の熱い演奏で昨年の全日本吹奏楽コンクール一般の部で金賞を受賞したのですが、この曲はいろいろ複雑な作曲プロセスを経ていて。
まず昨年('06年)5月、大曲吹奏楽団の定期演奏会で初演されました。8分くらいの長さでした。久々の吹奏楽長編ということで熱い思いが少々空回りしたせいか、いろいろ納得いかない点があったので、初演後さらに確固とした構成に音楽を練り直すことにしました。でもコンクールが迫っていて改訂版を清書している暇がなかったため、改訂版スコアは譜面に起こすことなく私の頭の中で作り上げ、これを頭の中でコンクール用に短縮し、短縮版のみ楽譜に起こすという、我ながら複雑なことをやりました。
その短縮版は全国大会で金賞を受賞したのでDVDやCDとして音源が残って作曲者としてはとてもラッキーだったのですが、困ったことに肝心の完全版は私の頭の中にしかなく、当然音源もありません。コンクールも終わって今更清書するのも面倒だなあと途方に暮れていたところ、ちょうどいいタイミングでブレーンからレンタル出版の話をいただき、それをきっかけに完全版の清書を行うことができました。頭の中の完全版を楽譜に書き起こす際に、更なる改訂を加え、エンディングも練り上げ、やっときちんとした形で楽譜にまとめることができました。や〜れやれ。それが今年の2月ごろの話です。
楽譜は完成したものの演奏がなかった「ゴシック」完全版が、このたびブレーン制作のCDに収録されることになり、今日、演奏を担当してくださる陸上自衛隊中央音楽隊(指揮は隊長の武田晃・一等陸佐)の練習に立ち会ってきました。自衛隊駐屯地の中に入るのは初めて。昔、大泉学園町に住んでいたとき、よくこの駐屯地の前の通りを車で通ったものですが、将来中に入る機会を得るとは夢にも思いませんでした。緊張と好奇心できょろきょろ回りを見回してしまいました。
緑の多いゆったりした敷地にときどき戦闘機や戦車が置いてあって度肝を抜かれたり、演奏なさる音楽隊の皆さんが迷彩服を着ていてびっくりしたり。自衛隊というと男の世界というイメージでしたが、音楽隊の建物はとてもきれいで、女性隊員も案外いらして、洗面所には美しい花が飾ってあったりして気持が和みました。皆さんとても親身に協力してくださって練習開始のころには随分リラックスできました。演奏はさすがに素晴らしく、練習が進むうちに音楽がどんどん私の理想に近づいてきて心躍りました。
2月に楽譜を書き終えたときは、嬉しいというより疲れ切ってぐったりだったのですが、納得のいく形で楽譜を仕上げておいて本当に良かった。これは私の吹奏楽の代表作になると思いますね(今のところ)。レコーディングはこの土・日曜日なのですが、私は某所へコンクール審査に行かなくてはならないので立ち会えません。本当に残念!でも今日の練習を聴いて、きっといい録音になるであろうことを確信しました。CDが出るのが楽しみです。
デジカメを持っていって、皆さんの練習風景を撮ろうと思ったのですが(許可はいただきました)、いざ写そうと思ったらカメラにメモリーカードが入っていなくてがっかり。写真は練習終了後、隊員でコントラバス奏者の宮崎克彦氏の撮影によるもの。指揮の武田氏(中央)と中央音楽隊の皆さんです。