ヲ01年2月4・10・11日
東京ヴォーカル・アンサンブルコンテスト

会場 北とぴあ さくらホール

 久しぶりに、東京都合唱連盟の主催するヴォーカル・アンサンブルコンテストの審査員を務めた。かなり前にも一度務めたことがあるが、そのときは途中でものすごい風邪をひき、最後の日は朦朧として夢の中でマドリガルを聴いていた覚えがある。どんな審査をしたのやら全く自信がないが、もう時効ということで許してください。

 さて今回は全4日のうち、最終日のルネサンス・バロック部門をのぞく3日間、北とぴあに缶詰となって、合計87団体の演奏を聴いたわけだが、疲れたものの、なかなか面白い3日間であった。三日とも遅刻しそうになって、タクシーに飛び乗った(電車より早く着く)ので、思わぬ大散財・・とほほ。しかし散財の甲斐あって、堂々時間内に会場に到着し、汗もかかずに朝の談笑に加わることが出来たのであった。

 東京のヴォーカル・アンサンブルコンテストの特徴といえば、お弁当がおいしいことであろうか。今回も三日ともおいしくて、途中で出されるお菓子も厳選してあるので感心した。私の場合、おいしいものには目がないが、どういう銘柄でどこに売っているかなどの情報をすぐ忘却してしまうので、おいしいものを探し出す努力を惜しまず、その情報を蓄積していける人を尊敬してしまう。担当の女性合唱団のみなさん、どうもご苦労様でした。何と言っても、一日審査するときは食べるのだけが楽しみなので。

 さて、肝心の内容だが、いろいろなタイプの合唱が混在していて、変化に富んだなかなか面白いコンテストであった。上位を獲得した団体は、どこも良く訓練した声ですぐれた演奏を聴かせてくれたが、ちょっと気になったのは、ヴォーカル・アンサンブルというわりに、20人以上の合唱団が多く、選曲も普通のコンクールとほとんど変わらなかったことだ。東京都の規定では25人以内ならOKだそうで、別に問題はないのだが、せっかくコンクールとは別にアンサンブル・コンテストが存在するのだから、もっと少人数でのアンサンブルにチャレンジしてみたら面白いのにと思う。

 まあアンサンブルといったら15人以内、理想的には8〜12人くらいだろうか。そうすれば、それぞれの歌い手の自主性も高まるし、お互い聴き合うことにもっと神経を注ぐようになるだろう。ちょっと厳しいことをいうと、前回ここで審査したときより、ずっと無伴奏合唱が定着してきたはずなので、その上達ぶりを楽しみにしてきたのだが、意外とピッチが決まらない団体が多かった気がする。ピッチ・ベンダーゆらゆら、といった大幅なずれではないのだが、もう少しの調整でぴしっとハモって、倍音がたくさん響くのに、という一歩前のところで満足してしまっている。ちゃんとつぼにはまらないと倍音が響かないので、その分を無意識に声の力で押してしまう合唱団が少なからずあったように思う。それでは聴き手が疲れてしまう。響きを聴き合うためにもアンサンブルはいい勉強になるはずだ。

 それから、せっかくのアンサンブルをもっと楽しんでもいいのではないだろうか。もちろん宗教曲を歌うのも楽しいだろうが、硬軟使い分けるというか、もっといろいろなタイプの作品を歌ってみてもいいのではないだろうか。その点では、高校の部に出場し、6人で洒落たアレンジのポピュラーソングを聴かせた団体はとても印象に残った。ジャズ、ゴスペル、民謡、など何でもお気に入りの曲を、自分たちの編成に合わせてアレンジして(著作権に引っかからないように)7〜8人で歌ったら、さぞ楽しいのではないだろうか。もっとも、それをやるには、一人一人の歌唱力とセンスが問われるわけだが。