ヲ01年12月8・9日
第一回はこね学生音楽祭

 会場 仙石原文化センター

 このHPでもご案内していたのでご存じの方も多いと思うが、第一回はこね学生音楽祭(合唱コンクール)が仙石原文化センターで開催された。いつも車で移動する癖で12月というのに薄着でロマンスカーに乗り込んでしまったが、2日とも晴天に恵まれたお陰で風邪も引かず、箱根の自然を満喫しつつ審査を終えることが出来てよかった。

 第1日目の予選会では事前にテープ審査で選ばれた12団体が出場、それぞれの趣向をこらした課題曲「箱根八里」を演奏した。課題曲といってもメロディライン以外はアレンジ自由のため、12通りの意外なほど変化に富んだ「箱根八里」を楽しむことができた。同じ曲を歌って目立つには、ディテールを凝るよりアイデアが斬新なほうがインパクトが強くなるが、今回もヨーデルなどを盛り込んだチロル風「箱根八里」と東混風シアター・ピース「箱根八里」が大いに目立っていた。しかしオーソドックスなアレンジを少人数で歌った団体も一人一人声がよくてアンサンブルもしっかりしており、予想外(?)のレベルの高さを見せてくれたのであった。演奏終了後、出演学生間の懇親会がにぎやかに行われている間に、審査員は12団体を6団体に絞り込む作業をおこなった。懇親会では大いに盛り上がっていた会場が、審査発表後一気にしゅんとしてしまったのには胸が痛んだが(みんな自信があったのだろう)、でもコンクールってそういうものなので・・。

 2日目は最終審査会ということで、前日選ばれた6団体が課題曲「箱根八里」と自由曲を演奏した。感心したのは課題曲「箱根八里」の演出を前日と変えてきた団体が幾つかあったこと。これはよほど余裕がないとできないことだ。ただ全体的な演奏レベルは1日目のほうが高く、2日目はどこも前日より発声、ピッチとも荒れ気味だった。たぶん1日目に本選出場が決まった段階で緊張感が切れてしまったのだろう。2日間に渡って緊張を持続するのがいかにむずかしいか、出場団体は痛感したのではないだろうか。
課題曲にインパクトがある場合、自由曲の選定もむずかしいところで、全体的に自由曲の印象が(技術面でも)薄かったように思う。

 このコンクールのユニークなところは、2日とも一般に無料で入場整理券を配ったため座席がよく埋まったことだ。普通の合唱コンクールだと席は埋まってもみんな合唱関係者か身内ばかりで、純粋な聴衆がほとんどいないことが多い。これでは団員は指揮者だけ見つめ、指揮者は背中に審査員だけ意識するという閉鎖された環境になりやすい。これだけレベルの高い日本の合唱がいつまでもマイナーなのは、この閉鎖性がもっとも大きい原因ではないだろうか。その点で整理券で一般の人々を入れるというのはとてもいいことかもしれない。とにかく反応がよく伝わってくる(派手なものに反応しやすい傾向はあるものの)。本選後審査発表までの間、ゲストのボニージャックスが見事なアンサンブルを聴かせたが、一般の聴衆を集めるためのこういうアイデアも大切かもしれない。もっとも最初そういうゲストの力を借りても、徐々に口コミでこのコンクール自体のおもしろさが町民に伝わっていかないと意味ないのだが。

 演奏レベルはキープ(出演団体はほとんど無伴奏曲を演奏したが、ピッチはもっと正確さがほしい)した上で、一般聴衆にアピールする力をつける。大変だがそれができれば、このコンクールは合唱の素晴らしさを一般に広めることのできる魅力的なコンクールに発展していくだろう。賞金も高いことだし・・。
 とにかく、募集が出てからコンクールまであまり時間がなかったのに、それぞれ趣向をこらした演奏を聴かせてくれた出場12団体には拍手を送りたい。

 そうそう、参加者用のバッジ(ガラス工芸品)や授与されたカップ(寄せ木細工)などの美的センスが光っていたことも付け加えておきたい。