ヲ06年9月15日
室内楽レコーディング

 学生時代には「室内楽」というものに全然興味がなかった私。当時はオケにしか興味なく、オケを書く人だけが偉い!と思い込んでいたんですね。若かった・・。20代〜30代初めまでにプロ・オケに自作を7曲も演奏してもらいましたが、指揮者もオケマンたちも超過密スケジュールだから新人の現代曲なんてとにかく短時間に譜面どおり過不足なく無難にまとめるだけ。演奏されるたびに不満が溜まっていきました。今思えば曲も未熟だったんでしょうけど。あのときオケばかりに固執せずソロや室内楽にも興味を持っていたら、プロのすごさや音楽の素晴らしさ、アンサンブルの深さをいくらでも味わえたのに、全く勿体ないことをしたものです。

 それから長い年月が経ち、21世紀に入ってようやく室内楽が面白くなってきました。'00年日本現代音楽協会主催「現代の音楽展」でパーカッション・アンサンブルの特集をやるから曲を書かないか、とお誘いを受け「ふるえる月」を書いたのがきっかけです。この作品の好評に気をよくし、次は友人のピアニスト柴田美穂さんの委嘱で、クラリネット、バイオリン、ピアノのためのトリオ「ねじれていく風景」を書き、声楽家・佐竹由美さんからの委嘱で、声とハープ、チェロ、打楽器のための「ヴォカリーズ」を書き・・。昔は審査員だの批評家の眼ばかり気にして自滅していたのが、今は自分の信念どおりに作曲するから気持も充実し作風も安定し評判も良くなり(悪くても気にしない・・)。気がついたらCDにまとめるのに丁度いい分量になっていました。

 来春、ALMレコードからのリリースが決定し、そのための録音が9月15日、彩の国さいたま芸術劇場音楽ホールで行われました。普通、現代物のCDは初演ライブ・テープをそのまま使うのですが、私は初演、再演とどんどん改訂をおこなうので、せっかくのCD演奏と楽譜の音が違っていては何にもならないということで、改訂した2作品を新たに取り直しました。贅沢〜。CD収録曲目の詳細はリリース後のお楽しみということにさせてください。

 私の曲はどんな編成であれ、やたらフレーズが長い「緊張持続型」なので、ライブはともかく、何回もテイクを取るレコーディングではかなり消耗が激しいようです。なのにいやな顔ひとつせず毎回エキサイティングな演奏をしてくださった演奏家の皆さんと、音量バランスにこだわる作曲家に付き合って一日中細かい録音調整して下さったコジマ録音の皆さんに感謝の気持でいっぱいです。きっといいCDになると思いますので、ぜひお聴きになってみてください。

お詫び ホールが暗いうえ慌てて撮ったので、せっかく一流プレーヤーの演奏風景が見事にピンぼけになってしまいました。演奏者の皆さんにも読者の皆さんにもお詫びします。雰囲気だけでも感じ取っていただければ・・。

            

レコーディングは彩の国さいたま芸術劇場音楽ホールで。埼京線「与野本町」徒歩7〜8分。客席604。
とても音響のいい、きれいなホールでした。

「ねじれていく風景」の録音風景。クラリネット・武田忠善さん、バイオリン・瀬川光子さん、ピアノ・柴田美穂さんという錚々たる顔ぶれ。エキサイティングな演奏が録れました!楽譜も音楽之友社から出版予定です。

こちらは「ふるえる月」の録音風景。「パーカッション・ミュージアム」の若手気鋭の皆さん。左から小林巨明さん、西久保友広さん、横田大司さん、村居勲さん。幻想的で美しい演奏が録れました!楽譜はJFCから出ています。

2006.9.20