共同通信原稿

2006.1.9

(1)団体発足のきっかけは?

1997年4月に浜松市で「情報公開条例」が策定された折に「情報公開条例を市民の手に」と題したフォーラムを開催しましたが、「この指とまれ方式」で「市民活動の共同事務所を持って人材と情報を共有しましょう」という私の呼びかけに応じた団体や個人によって組織が誕生しました。

(2)柱になっている活動は?

Social Inclusionをテーマに、障害者や在住外国人の暮らしに関わる地域課題を、当事者を中心に事業化し、財源の確保や専門家や行政との協働など、地域資源をネットワークして人々を巻き込みながら効果的にゴールを目指すプロセスを作り出しています。市民の理解と参加を促す為に、多様なコミュニティーアートによる表現活動を取り入れています。

(3)魅力的な地域を作るために一番必要なことは何ですか?

(あるいは、地域に欠けているものは何ですか?)
「この町に住む幸せのイメージ」を具体的に持てることが大事です。市民は多様ですが、共通の課題を持っている人達が「まだ実現していない幸せ」に向かうビジョンを共有して、その道のりを一つ一つクリアーする為のプロセスをデザインできる人と組織の存在が必要です。個人で実現できる幸せはちっぽけなのですから、市民の共有財産をどう作るのか、心ある市民一人ひとりの想像力と汗をかく決意が、行政の施策をも変え得るのだと思います。

(4)東京に集中したヒト・カネ・モノを呼び戻せますか?

その地域ならではの“アクション”が興され発信されていれば、ヒトは集ります。現に、浜松は日本最多の日系ラティーノの居住する都市ですが、各地から浜松に居を移して教育や新しい産業に従事しています。浜松は音楽の街を標榜していますが、「日本と南米文化」の接点から、新しいアート活動が生まれれば状況を変えられるでしょう。私達のコミュニティーアート活動にその萌芽が見えています。しかしその前提として、“彼らの労働力は歓迎するが、ヒトとしては受け入れていない”日本の多文化政策に変更を迫る提案を、現場から発信し続ける必要があります。

(5)行政との連携で困難と感じることは何ですか?

NPOといい協働関係を築けた部局では変化がありますが、NPOの力量に対する不審感と、安上がりのボランティアという意識は根深いようです。同じ仕事を企業や社会福祉法人に委託する場合とNPOの場合では、人件費に数倍の差があり、これではNPOは持続可能な組織体に成長できません。
担当職員が契約期間でも次々に交替し、いつも素人を相手にすることになることは問題です。私達は委託関係が切れても、自主財源を獲得して自主事業として事業を継続しますが、重要な情報や経験が行政側にストックされないことが、日本の将来にとって大変大きなマイナスだと憂慮しています。

(6)他の地域との連携をしていますか?

それぞれの事業で多様な連携を行っています。
● 障害者の就労支援事業では、県内7箇所に活動拠点を設立して連携。
● 川の治水事業では、アメリカの小学校と綜合学習で連携。
● 多文化共生事業では、「多文化わかもの全国交流会」「外国人教育支援全国交流会」など全国会議を合計5回開催して提言活動を。日系高校生による「壁画制作」「ビデオアート」では、サンフランシスコの専門家の支援を受け手作成し、全国で試写会を実施。
● 障害者・高齢者支援事業では、イギリスのアーティストを2ヶ月間招聘して高齢者や障害者の5施設で600点のアート作品を作成するなど、交流・連携を行っています。

(7)来年の目標は?

「自立支援法」の追い風を受けて、5年間に亘る「障害者の生活自立・職業訓練・ジョブコーチの養成」などの一連の事業を、N-Pocketから分離独立させて財政的に自立できるよう社会的企業に踏み出す予定です。
その他の事業については、地域の課題を次世代に伝えられるように、今までの経験と情報を編集して、小学校の総合的学習の時間と連携し、NPOの担い手を養成したいと考えています。

(8)これだけはぜひ、という一言をPRでもかまいません

NPOは、行政のパートナーとして、新しい公共サービスを生み出す可能性を十分に持っていることを確信できるようになりました。その前提には、NPOがプロ意識をもった職員を安定的に雇用できる財政能力を持てるしくみを法的に支援して戴くこと、行政との「委託契約」が、双方の異なる能力と対等性を尊重する「協働契約」という概念に成長していくことが重要だと考えています。

基本データ

会の名称: 特定非営利活動法人 浜松NPOネットワークセンター
設立:1997年11月 (法人格取得は2000年9月)
所在地(連絡先):〒430−0926 浜松市砂山町362−21
電話:053−459−1558
ファックス: 053−459−1558
理事長:  山口祐子(ゆうこ)
会員数: 団体会員30 個人会員80人
ホームページ: http//www.n-pocket
メールアドレス: info@n-pocket.jp

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