山口ゆうこが取り組んできた社会活動(Social Inclusion/Communication Design)の記録。
3000人の参加者を集めた「サービス ラーニング全米大会」に3月下中、1週間の出張でシアトルに出かけてきました。
昨年の秋N-Pocketを訪問したアメリカNGOの代表団の中に、この分野で活躍するSusan Straightさんがおられたことが直接のきっかけですが、国際ボランティア年だった昨年、当センターでは次の世代に市民活動を伝えるプログラム“こどもプレス”を10団体の協力を得て実施しました。この事業を次のステップに進める方策を練っていたところにSusanに出会ったのです。
子どもたちが、地域のニースに応えた市民活動を直接体験することによって得た、感受性や問題意識を、学校の教科課程とつなげることによって、子どもの気づいた問題を科学的・論理的に発展させていくことができるように支援し、問題解決能力や他者と協力することの大事さを理解する市民を育てようとする試みです。過去10数年にわたる草の根の市民団体や、教育関係者の努力により、大規模な活動に発展していますが、州によっては、この制度は、公教育で義務化されているようです。
この教育活動は、実はイギリスが発祥の地でCitizenship Education(=市民教育)としてスタートしたものが、アメリカに渡ってService Learningと言われるようになりました。事の起こりは、英米諸国でも、市民が利己的になり個人主義を謳歌して、地域の問題に関心を示さなくなったことに危惧を抱いた教育者たちが、この運動を起こしています。日本でも十数年遅れて子どもたちに「生きる力」をつけることを目標に「総合的学習」が始まりましたが、市民活動団体との連携という発想に至るまでには、私たち市民活動側の力量と情熱、この問題を市民団体が協働して担おうという意思の共有がまず必要なのだと思います。
私たち市民が、問題解決能力を持ち、自らの将来は市民の意志で決めたいと希う自立した市民による地域社会を目指すのなら、その思いを“子どもたちに具体的に伝えるしくみ”を用意しなければなりません。サービスラーニングは、優れた方法の一つであるだろうと思います。今回は紙面の余裕がありませんので、具体的な事例をご紹介できませんが、次回から少しづつ実例をお伝えしてまいります。
「生きる力」とは何でしょうか。イギリスのCitizenship Educationでは、1道徳的教育 2法律関係の教育 3政治的教育 4人権教育 5民主主義のための教育 を通して「判断のための知識の獲得と合理的意思決定の訓練」が目標であることを明らかにしています。日本では、目標を具体的にする為の合意形成の道のりの困難さを予見して、抽象的な表現にとどまってしまうのでしょうか。学力が先か、生きる力が先かという議論に巻き込まれるのではなく、市民活動に携わる私達は、活動を通して“子どもたちに何を伝えたいのか”真摯な議論を始めたいと考えています。今年に入ってから学校の先生たちの訪問が増えてきました。先生たちを巻き込みながら、話し合ってまいりましょう。皆さんの参加を待っています。
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