本年最初の登山である。
行き先については散々迷ったのだが、オプションが付けられることを考え、奥多摩の鷹ノ巣山に登ることにする。
オプションというのは無論 雲取山のことで、 積雪量、体力、天候などの条件が許せば、鷹ノ巣山からさらに 雲取山まで足を延ばそうというものである。結果から言えば、雲取山まで行くことができ、 素晴らしい天候の中、雪の山を堪能したのだったが、この登山を果たしたのは 1月6日の日曜日、実は前日の 5日 土曜日にも一度トライしているのである。
5日の日は、家を出ようとすると空は雲に覆われていて星が全く見えない状態で、何となく憂鬱な気分になりつつ奥多摩に向かったのであった。
さらに、正月にだらけてしまった身体の方もシャキッとしない状態で、全体的に気乗りがしない状態であり、 ただ義務感だけで目的地に向かっているような感じであった。
しかも、天気予報をカーラジオで確かめると、午後は一時雪の所もあると言う。これは間違いなく山は雪になるに違いないと思い、 昨年末の 古礼山、水晶山登山 を思い出しつつ、新年早々大変な登山になるかもしれないと ますます気分は鬱になっていくのであった。それでも車を飛ばし、奥多摩湖駅手前まで来ると、何とフロントグラスに水滴がつき始めたではないか。 雨である。
夜は明け、徐々にではあるが周囲が明るくなり始め、空も東の方は明るく、これから向かう西の方も暗雲が立ちこめているというほどでもない。
しかし、雨は現実に降っている訳で、このことが気乗りしなかった心に最終的な決断を下すことになって、 早々と車を Uターンさせたのであった。
奥多摩駅付近を離れると雨もなくなり、空も晴れて明るくなったので、登山を取りやめたことを少し後悔したのだったが、 やはり新年早々の登山は快晴のもとで行いたい訳で、捲土重来を期しての退却であった。そして、翌日 6日の日曜日、今度は正真正銘の快晴となり、星空のもと、 再び奥多摩湖畔の水根に向けて車を走らせる。
水根のバス停向かいにある駐車場に車を止め、身支度をして出発したのが 7時3分。
青梅街道を横切って、標識に従い水根沢林道に入る。舗装道をずっと進むのかと思ったら、すぐに林道を離れて右手斜面にある民家への道を登ることになる。
斜面を少し登ると左に民家への道を分けて右手へと進む。道は竹藪に入ったかと思うとすぐにジグザグの山道へと変わり、緩やかに高度を上げていく。先ほど分かれた民家を下に見るようになってさらに登っていくと、やがて右手の斜面上で音がする。
驚いて見上げると黒い動物が斜面に居るではないか。どうやら子供のカモシカのようで、こんな民家に近いところで見られることに少々驚かされたのであった。
でも、新年から幸先が良い。
道の方は斜面を緩やかに横切る形で、左手の沢に沿いながら谷を詰めていく感じである。
やがて道には雪が多く見られるようになり、進むに連れて量が増え、終いには完全に雪道へと変わったのであった。
雪の上には足跡が残されているが、これは昨日以前のもので、高度を上げるにつれて薄れ始めており、やはり昨日は雪が降ったらしい。枝沢を何回か渡り、かなり山奥に来たかと思うとワサビ田らしきものが現れたので、 少々ガッカリする。
やがて沢から離れ、緩やかだった道も傾斜がきつくなると、六ツ石山 (だったと思う) への道との分岐点となり (9時17分)、 左に道を取るとすぐに 榧ノ木尾根からの道に合流したのであった (9時20分)。
そして榧ノ木尾根を登り始めると展望も開け始め、左手に明るい尾根が見え出し、先程の分岐から 20分で石尾根縦走路へとぶつかったのだった。
もう目指す鷹ノ巣山も近いはずである。 (9時40分)。ここからの道はほぼ水平で快適そのもの。既に本日 先達が歩いているようで、雪道はしっかり踏まれている。
先を見やれば道はずうっと水平につけられているようで、これは楽勝と思ったのだが、暫く進むと右上の尾根にもう 1本道があることに気が付く。
もしかしたらと登ってみると、こちらがどうやら本物の石尾根で、先程の水平な道は巻き道らしい。
こちらの本物の石尾根の方は、足跡はつけられてはいるものの、昨日降ったであろう雪に覆われており、私が本日最初の登山者らしい。
雪は 15センチくらいであろうか、踏み固められた雪道の上にさらに雪が積もっているので道ははっきり分かるし、それほど歩きにくい所はない。左手には、青空の中、富士山が周囲の山から抜きんでており、 その右に 三ツ峠山、雁ヶ腹摺山が見え、 明るく気持ちが良い。
さらに 富士山のずっと右手、西方を見やれば、農鳥岳、 間ノ岳、北岳、 鳳凰山、仙丈ヶ岳、 甲斐駒ヶ岳などお馴染みの南アルプスの山々がその頂を白くして輝いているのが良く見える。
誠に素晴らしい眺めである。道の先には恐らく鷹ノ巣山と思われる高みがあり、そこまで雪が絨毯のように続いている。
最後の登りは雪の急斜面に見えて少々怯むが、いざ登り始めるとそれほどでもなく、10時12分、 誰もいない鷹ノ巣山山頂に登り着いたのであった。
山頂には雪の上に踏み跡が多く残っていたものの、真新しいものは無く、本日一番乗りの栄誉に浴したようである。
山頂は北側が樹林に覆われているものの、南、西方面は大きく開けており、展望は抜群である。
まず目につくのが 富士山で、その右横に雁ヶ腹摺山のピラミッド型があり、 さらにその右には 牛奥ノ雁ヶ腹摺山から小金沢山、そして 大菩薩嶺へと続く山並みが丘のように見えている。
そしてさらに右に目をやると、石尾根縦走路上にある日陰名栗ノ峰がその頂付近を白く光らせていて、そこを中心に左手に南アルプスの峰々、 右手には 飛竜山のどっしりとした姿が見えるのであった。
残念ながら飛竜山の右手にある 雲取山は木々に邪魔されて見えなかったが、 鷹ノ巣避難小屋への下り斜面ではその姿を良く見ることができたのであった。また、富士山の左手には 杓子山、御正体山が続き、さらに 大室山、檜洞丸、 蛭ヶ岳、丹沢山、 大山と 丹沢山塊が連なっている。
大山の左手、仏果山 (と思う) のあたりから、その後ろ側が光り輝いて見えたのだが、 あれは相模湾であったのだろうか。
とにかく素晴らしい展望に大いに魅了されたのであった。さて、時刻を考えるとこのまま下山してしまうのは勿体ない。
さりとて、ここでオプションプランを実行するには相当のアルバイトを覚悟せねばならず大いに迷うところである。
しかも、ここから 雲取山までの時間ならびに下山して車の所まで戻る時間を考えると、 かなり遅い時間になるのは間違いない。
どうしようかとかなり迷ったが、やはり新年早々から楽していてはダメだという結論に達し、少し心配ではあったが 雲取山へと向かうことにしたのであった (10時25分発)。スキーでもできそうな斜面を慎重に下って下り着いた所が鷹ノ巣避難小屋、これは立派な建物である。
ここから本来、日陰名栗ノ峰に登るのが本当だが、雪の上に足跡もなく、また時間もないことから、巻き道を一気に進むことにする。
巻き道では 合計で 10人ほどの人たちと擦れ違うことになり、こんな山の中心部で会うことに驚かされたのだったが、 もしかしたら皆、前日に雲取山荘にでも泊まったのかもしれない。
巻き道はほぼ水平、斜面の中腹を進むために樹林の中が多く、展望はそれほど利かないが、時々見える 富士山の姿に元気づけられる。やがて蜂谷へ下る道を左に見て、千本ツツジと呼ばれる場所に到着。しかし、一面雪の原である。
そこから道は再び尾根の上の登りとなり、少々苦しい。
道の傍らに面白い形をした岩とそのそばに石碑があり、何やらいわくを感じたのだが、写真にも撮らずにパスしてしまった。
後でガイドブックを見たら、斧手石とその説明板碑ということであった。
やがて斜面上に鳥居を見て、少し登ると七ツ石山頂上であった (11時49分)。以前、雲取山に登った時は、なかなか 雲取山の姿が拝めず、雲取山から下山後、 ここまできてようやくその姿を確認したものだったが、本日も 雲取山は青空にその姿をクッキリと浮かばせている。
しかし、前回はこの七ツ石山に登った後、唐松林道を下るだけであったので気が楽であったのに比べ、 今回は遠くに見えるあの山まで登るというワークを思い気が重い。
そこまでの距離、それから途中の小雲取山への登りを思い返すと気が滅入る。やはりなまじ道を知っているというのは、余計なことを考えてしまう訳で、 未知の道をがむしゃらに進んだ方が気が楽である。七ツ石山で少し腹ごしらえをしてブナ坂の鞍部へと下る (12時丁度発)。
ブナ坂の鞍部からはいつも歩くと楽しい明るい尾根道が待っていた。雪も多いが、何人もの人が歩いているので問題はなく、 また、小さなアップダウンはあるものの、明るい日差しのもと、富士山を左に見ながら歩けばさほど苦にならない。
雲取奥多摩小屋を右に見てから暫く先で道は右に曲がる。尾根通しの道もあるが、これからの行程を考えると巻き道を行くのが正解であろう。さて、いよいよ急斜面である。前回ここを下った時に結構急で苦労した覚えがある訳で、 その時は再びここを登るとは夢にも思ってもいなかったのに、今日再び登るとは・・・自分の気まぐれ登山にあきれてしまう。
なお、斜面は急であるが、雪は凍っていないのでアイゼンは不要である。
息を切らしながら登り着くと富田新道との分岐で (12時58分)、 ここから再び気持ちの良い尾根歩きが始まる。
尾根は広く、明るい太陽の下、雪の中を歩くのは快感である。
身体はやや疲れてきているものの、下山の時間を考えるとゆっくりとはしていられない。前方を見れば、雪の上に足跡がずっと続いていて、その先には最後の登りと雲取山避難小屋が見える。
最後の斜面をジグザグに登り、雲取山避難小屋の前に登り着いたのが 13時15分。
頂上はその右手すぐの所であり、雪の上を急ぐ。
頂上三角点を踏んだのが 13時17分。ついに頂上である。我ながら良くやったものである。頂上の景色はやはり抜群で、つい最近登ったばかりの 和名倉山の姿が目につく。
その左手には 破風山、甲武信岳、 木賊山といったお馴染みの山が連なり、さらに間に 唐松尾山を挟んで 国師ヶ岳が大きく見える。
さすがにこの時間では南アルプスの山々は霞んでしまい、手前の飛竜山が良く目立つ。それにしても奥秩父主脈を形成する山々をこうして一望すると、縦走路の順番通りに山が並んで見える訳ではないことに気がつく。
つまり、縦走路は左に行ったり、右に曲がったりと、かなりのジグザグ地形を成している訳で、この縦走路を歩き切ることの大変さを思い知ったのであった。
なお、この時間、避難小屋の中に 2人ほどいるだけで頂上には誰もおらず、頂上独り占め状態であった。
新年そうそう至福の時を味わい、最高の気分である。一旦、雲取山避難小屋の方へと引き返し、岩場に腰掛けて、石尾根を眺めながら食事をする。
いつ見てもこの尾根道のすがすがしさには魅了される。
さて、下山をどうするかであるが、今は 13時40分過ぎ。車を止めてある水根まで往路を辿れば、恐らく日の短い冬のこと、 途中で暗くなってしまうのは必定である。
考えた末に鴨沢へと下ってそこからバスで水根まで戻ることにする。
そうと決まれば一気に下るのみである。 (13時50分発)。七ツ石山直下、ブナ坂の鞍部までは往路と同じであり、雪の斜面を一気に下る。
登りに苦労した小雲取山の斜面も難なく駆け下り、ブナ坂の鞍部に着いたのは 14時27分であった。
ここからは初めて 雲取山に登った時に使った鴨沢からのルートを下るだけである。斜面沿いの道は日当たりが良いのか、雪の道はすぐに枯れ葉の道へと変わり、 緩やかな下りにペースが上がる。
この道はほとんど展望が利かないので、他に気を取られることなく足はドンドン進む。
振り返れば時々尾根が見えるが、どこら辺なのか皆目見当がつかない。
堂所を過ぎ、やがて人家 (廃屋を含む) を見るようになると、 15時47分、林道に飛び出したのであった。後は林道をずっと下って鴨沢まで出たのだったが、本当は途中からさらに山道を歩くのが本当らしい (確か前回も鴨沢から登った時もそうだった)。
しかし、残念ながら私にはその道を見つけることができなかったのである。
鴨沢に着いたのが 16時7分。バス停で時間を見ると、日曜日には 16時台のバスは無く、 17時10分まで待たねばならない。
ガイドブックではとなりの留浦 (とずら) まで歩けばバスの本数も多いとあったので、 留浦まで歩いたものの (16時14分着)、やはりこの時間帯にバスは無く、 結局 17時11分のバスまで 1時間ほど待たねばならなかったのであった。
辺りが暗くなる中、バスが来たのが 17時17分、水根に戻ったのは 17時33分であった。かなりのロングコースを歩き切ったという喜びと、新年初の登山で好天に恵まれたこと、 そしてこの冬場に 雲取山という 2,000m級の山に登れたことで大変満足した山行であった。
今年の展望は明るい。
鷹ノ巣山、雲取山登山データ
上記登山のデータ 登山日:2002.01.06 天候:快晴 単独行 日帰り 登山路:水根−石尾根−鷹ノ巣山−千本ツツジ−七ツ石山−ブナ坂鞍部−雲取奥多摩小屋−小雲取山−雲取山−小雲取山−雲取奥多摩小屋−ブナ坂鞍部−ブナ坂−堂所−林道−鴨沢−留浦 交通往路:瀬谷−(国道16号線)−八王子−青梅−奥多摩−水根 (車にて) 交通復路:留浦−(バス)−水根−奥多摩−青梅−八王子−(国道16号線)−瀬谷 (車にて) その他の
鷹ノ巣山登山水根−石尾根−鷹ノ巣山−千本ツツジ−七ツ石山−ブナ坂鞍部−雲取奥多摩小屋−小雲取山−雲取山−小雲取山−雲取奥多摩小屋 −ブナ坂鞍部−ブナ坂−堂所−林道−鴨沢
 (2005年05月4日 : 快晴)    こ こをクリック水根駐車場−ワサビ田−鷹ノ巣山・六ツ石山分岐−倉戸山分岐−石尾根縦走路−鷹ノ巣山−峰谷分岐−七ツ石山−鴨沢・日原分岐−五十人平−小雲取山−雲取山−小雲取山−五十人平−鴨沢・日原分岐−堂所−小袖−鴨沢−留浦
 (2011年03月05日 : 快晴)    こ こをクリック東日原バス停−鷹ノ巣山方面登山口−稲村岩分岐−ヒルメシクイノタワ−鷹ノ巣山−水根山−城山−カラ沢ノ頭−将門馬場−六ツ石山分岐−六ツ石山−六ツ石山分岐−三ノ木戸林道分岐− 三ノ木戸山分岐−稲荷神社−石尾根登山口−羽黒三田神社−多賀神社・大山祇神社−元巣の森のスギ−奥多摩駅前 Times駐車場
 (2018年04月13日 : 晴れ)    こ こをクリック