雁坂嶺、西破風山( 西破風山:2,318m ) 2001.10.27 登山

(※:縦走路中の最高峰は 甲武信岳 2,475m)

  木賊山 賽の河原から眺めた西破風山 ( 2001.10.27 )
【雁坂嶺、西破風山登山記録】

【雁坂嶺、西破風山登山データ】

フォト

再登山        再々登山


雁坂嶺、西破風山登山記録

越後の山が続いたので、今回は目先を変えて奥秩父の山を登ることにした。
目的地は、西破風山。特に意識していた山ではないのだが、西沢渓谷から戸渡尾根を経て甲武信岳へ登った際、 稜線にたどり着いた所で 左 甲武信岳、右 破不山 (何故か 破風山ではない) という標識があり、 そのため何となくこの破風山のことが頭に引っかかっていたのである。
風を破るという名前も良く、いかにも山が壁のように立ちはだかり、風をまともに受けながらも跳ね返しているというイメージが浮かび、 登るのが楽しみであるが、実際はその山の形が 「破風 (はふ) = 切妻屋根に付いている合掌形の装飾版、 また破風板の付いている屋根の部分も破風という」 に似ているからつけられたに違いない。

さて、この西破風山は雲取山から 金峰山へと繋がる奥秩父主脈縦走路上に位置するのであるが、 最短でこの山に登るには、西沢渓谷から雁坂峠まで登って主脈線上に至り、そこから西に向かうルートと、 同じく西沢渓谷から例の戸渡尾根を登って主脈線上に至りそこから東へ向かうルートの 2つがある。
つまり西沢渓谷から見たら、逆三角形の形をしたコースの底辺上にあって、しかも位置がその底辺の真ん中辺りにあるという、 結構行きづらい場所なのである。
私は、この 2つのルートのうち 2回も往復した戸渡尾根は避けることにして、まずは雁坂峠を目指し、 そこから雁坂嶺、東破風山と西へ縦走して西破風山に至り、西破風山登頂後は往路を戻るという計画を立てたのであった。
このルートでも結構時間がかかる訳で、地図上では西沢渓谷入口から往復 10時間50分ということになっている (by ゼンリン 「奥秩父」)
但し、雁坂トンネルができる前であれば 登山の出発点となるのは西沢渓谷入口ということになるのだが、今は西沢渓谷入口からループ状の橋を車で登り、 広瀬トンネルを抜けた所、つまり雁坂トンネル料金所手前の駐車場を利用するのがお奨めである。

雁坂峠への登山道 (実は林道) には、 この雁坂トンネルに向かって右側の駐車場奥から合流できるようになっており、7時少し前に駐車場に車を止め、 7時丁度に駐車場を出発したのであった。
この林道はしっかりコンクリート舗装されていて歩くのにはなかなか快適だが、車などの立ち入り禁止されている。
雁坂トンネルの上を通り、黄色く色づいた周囲の木々を眺めながら緩やかな傾斜を登っていく。
本格的に山に取り付くまでおよそ 30分ほどの歩きで、丁度良いウォーミングアップになる。沢にかかる橋を渡った所で林道は終点となり、 そこから本格的な登山道が始まった (7時27分)
とは言え、道は急傾斜という訳ではなく、緩やかな道がずっと続く。考えたら、ここはその昔、甲州の川浦と秩父の川又を結ぶ重要な峠道だった訳で、 従って急峻な道があろうはずもない。

谷を詰めるようにして沢づたいの道がずっと続く。途中、ナメラ沢入口の看板があり、 左の沢筋へと急斜面を下る細い道がつけられているのが見える。このナメラ沢を遡行するのも登山ルートの 1つになっており、結構人気があるようである。
この雁坂峠へのルートは山間の道でこの時間では日が当たらず、枯葉色一色となってモノトーンに近い樹林帯の中、単調な道を黙々と行くこととなる。 途中、沢を何回か渡るところがあり、中には水量が結構あってやや渡るのに苦労した箇所もあったが、全体的に道は良く踏まれており、 しかも目印となるテープ類もしっかり付けられているので迷うことはない。
沢沿いの河原歩きが続き、単調な道に飽き始めた頃、道は沢を離れて左に大きくカーブし、ようやく変化を見せ始める。
ササの中を進んで高度を上げていくと、ようやく斜面に当たる日の光の中に入れるようになり、それに伴って周囲の景観もガラッと変わってきたのである。
振り返れば、登ってきた谷筋、尾根筋が見渡せるようになり、その山と山との間に広がっている青空には 富士山がその姿を浮かばせている。
また、右手には、黒金山のピラミッド型の姿と、 そのさらに右手に大きな国師岳が見える。お馴染みの山だけに少々嬉しい。

天候は快晴。晴れ渡った空に山の茶色が良く映えている。
沢を完全に離れてからは、本格的な登りとなって少々息が上がる。見上げれば、上方にはカヤトの原やササ原が見え、 稜線の上の青い空がまぶしい。
こういう風景は奥秩父の特徴であろうか、小金沢山大菩薩嶺などでも見られ、そのササ原の中を行くのは大変気持ちがよい。
息を切らしながらジグザグの道を急登していくと、ヒョイと飛びだしたのが雁坂峠であった。
ここは本当に明るい (9時10分)。峠には、峠の歴史や植生を解説した看板が立ち、 またベンチも 3つほど置かれている。周囲はカヤトやササ原となっていて、遮るものが全くないことから展望は抜群で、 明るい日差しの中、南側に富士山や黒金山、国師岳などの山々が広がっており、 いつまでもベンチに座って眺めていたい気分であった。

峠で 15分ほど休んでから西へと向かう (9時27分発)
最初はササ原の中の登りが続き、すぐに樹林帯に入る。ここは奥秩父の主脈線であり、道も良く踏まれている。 樹林も奥秩父を感じさせるものがあって、初めて通るという気がしない。
少しキツイ坂を登りきると雁坂嶺で、頂上からは木々の間に富士山の姿を見ることができるようになる (9時57分着 − 10時7分発)
この雁坂嶺の頂上には山梨百名山を示す標柱があったが、頂上の展望もあまり利かず、 また雁坂峠からの登りもあまり大したことがなかったことから、この選択には首を傾げざるを得ない気がし、 見晴らしの素晴らしい雁坂峠とペアにした選択であろうと勝手に想像したのであった。
しかし、雁坂嶺を過ぎ、一旦下ってまた登り始めた時に振り返って見た雁坂嶺の姿は、 本当に堂々としていて風格があり、チョットびっくりさせられた次第で、先ほどの勝手な想像は撤回である。

奥秩父らしい樹林の中、急登を続けていくと、やがて東破風山頂上に到着 (10時44分 − 10時50分発)
この頂上はまあまあの展望で、西側にはこれから進む西破風山や木賊山 (とくさやま)、 鶏冠山 (とさかやま) などが見えて、縦走コースの醍醐味を感じさせてくれる。
そして、本日の目的地である西破風山はこの東破風山からは思いの外近く、2つほどのピークを登り越したらすぐに西破風山の頂上であった (11時10分)
西破風山頂上は樹林に囲まれていて展望がほとんどなく、むしろこの頂上の前後にある岩場からの展望の方が素晴らしい。
この西破風山頂上にも山梨百名山の標柱が立てられており、この選択には先ほどの雁坂嶺の時と同様の疑問を抱いたのであったが、 この西破風山の一番良い姿は後に述べるように木賊山から眺めないと分からないようになっている。

さて、あまりに呆気ない西破風山登頂だった上に、そこがまた展望の利かない平凡な頂上であったことから少々ガックリきてしまった次第で、 これだけでは些か物足りなさを覚える。
このまま往路を戻るのも虚しい限りで、時間を見ればまだ 11時過ぎ。それならと、縦走路を先へと進むことにしたのであった。
尤も、西破風山からさらに先に進んで戸渡尾根を下山するという考えはこの時に初めて浮かんだ訳ではなく、 登る前から 「あわよくば」 という期待もあった訳で、先に述べた西破風山に着いた時の状況がこの気持ちに拍車をかけた格好になった次第である。
西破風山を後にすると (11時20分発)、一遍に展望が開けるようになる。
目の前に木賊山の大きな山容がデンと構えていて、そこに至るためには一端大きく下る必要があり、 その木賊山との鞍部には笹平の名前の通り黄緑色をしたササ原が見え、周囲の濃い緑の中で一際目立っている。
左手下方には広瀬湖が見え、富士山もまだその姿を見せてくれている。 この大きく笹平に下ってまた木賊山へと突き上げていく縦走路は、 奥秩父縦走路のハイライトと言っても過言ではないようなダイナミックな風景で、木賊山に至るまでの難儀さはあるものの、 西破風山から戻らないで良かったと心底思ったのであった。

駆け下りるようにして下り着いた笹平には避難小屋があり、小屋の周囲に樹林はなく、 暖かい日差しを受けて大変明るい (11時43分)
この小屋の前で 1人の登山者と出会ったのだが、聞けば、昨日はこの小屋に泊まり、この日、笹平直下にある鶏冠山林道東線に直接下山しようとしたものの道を間違え、 また小屋まで戻ってきたとのことであった。
私の地図にはこの道は載っていないが、1998年版のアルペンガイド 「奥多摩・奥秩父・大菩薩 (山と渓谷社)」 には 「荒廃」 と注意書きされた鶏冠山林道東線へのルートが記されている。
その人は、そのコースを頻りに勧めてくれたが、もうこの頃には甲武信岳にも寄っていこうと決めており、 そのまま縦走路を進んだのであった。

さて、ここからがキツい木賊山への登りのはずで、地図では頂上まで 1時間20分となっている。
かなり難儀することを覚悟をして登り始めたのであったが、溝状に掘られた道の登りは確かにキツかったものの、 思ったよりも短い時間で 途中の賽の河原に着くことができたのであった。
この賽の河原は、白砂の上に風化した花崗岩 ? が重なっている見晴らしの良い場所で、 チョット、鳳凰三山の薬師岳を彷彿させられる風景である。
この賽の河原からの展望も抜群で、振り返れば西破風山が大きく、その形は角度の緩やかなピラミッド型をしており、 確かに切妻屋根のような形である。この西破風山の姿を見て、西破風山が山梨百名山に選ばれたことに納得したのであった。

賽の河原で少し休んだ後、また溝状の道を進む。まだまだキツい登りを覚悟していたら、 ふいに道が 2つに分かれた (12時37分)。右は甲武信小屋への巻き道、左が木賊山への頂上への道である。
これは嬉しい。甲武信岳に至るまで、木賊山頂上を通って行かねばならないと覚悟していただけに、 すごく得をした感じで、元気が湧いてきたのであった。
この巻き道は、ほぼ平坦に近くて歩きやすく、薄暗い樹林帯の中を 8分ほど進むと、懐かしい甲武信小屋の前に飛び出したのであった (12時45分)

甲武信岳へは小屋から 20分程度のはず、 5分ほど休んですぐに頂上へと向かう。
頂上までの道は、以前はかなり南側を通っていた感じがあったのに、今はかなり北側の樹林帯の中へと移されていた。 人気コースが故に従来の道が荒れてしまったからであろうか。
甲武信岳頂上に着いたのは 13時4分。 頂上は 4年前、2度目の登頂を果たした頃とほとんど変わっておらず、ガッチリ固められたケルン ? の上に、 「日本百名山甲武信岳」 の標識が目立っている。
変わった点と言えば、山梨百名山の標柱があったことで、思えば本日だけで 3つの山梨百名山に登頂したことになる。 これは、茅ヶ岳、曲岳、黒富士と歩いた時以来の快挙 ? である。

頂上からの展望はこれまでの 2回の登頂に比べて視界に恵まれ、 時刻は 13時を回っているにも拘わらず、富士山や国師岳、 小川山八ヶ岳天狗山、男山などお馴染みの山の姿を見ることができたのであった。
15分ほど山頂で休憩した後小屋へと戻る。まだ行程は長いので、そうゆっくりもしていられない (13時19分発)

甲武信岳を後にして再び甲武信小屋へと戻り、 今度は木賊山頂上へと向かう。途中のザレ場は、甲武信岳の姿を映す定番スポットとなっており、 お約束通りカメラを向ける。
さあ、木賊山を過ぎたら、後はひたすら戸渡尾根を下るのみである (木賊山 13時39分、分岐 42分)。 前回は勢いよく下り過ぎて、いつのまにか登山道を通り越し、苔むす樹林帯に踏み込んでしまうというポカをやったが、 今回は全くそのように迷うような場所はなかった。道が整備されたのであろうか、それとも明るい日差しが利いたのであろうか。
ひたすら下り続けて西沢渓谷の林道に着いたのが 15時29分。しかしまだ終わらない。車の所に戻るには、 西沢渓谷からループ橋を通り、広瀬トンネルを抜けていく必要がある。
西沢渓谷の紅葉を楽しむ人々をドンドン追い抜き、うまい具合にループ橋に直接登れる階段を見つけてループ橋へと登ったところ、 何とこの道路は人が通行できないようになっていたのであった。
仕方なく、西沢渓谷入口まで下りて、さらに雁坂峠入口のバス停まで行き、村営のつり場横から林道沿いに進んで途中から山に取り付いて、 ようやく今朝ほどの林道たどり着いたのであった。
林道を進んだのは 10分程であっただろうか、疲れた身体にはこの時間が長く感じられ、 一山越えたところでようやく今朝ほどの駐車場に戻ってくることができたのであった (16時19分)

ついつい、調子に乗って大縦走をしてしまった次第であるが、 これぞ奥秩父という醍醐味を味わった 1日であったし、 また自分の体力にも自信がついたということで、大変くたびれたけれど満足のいく山行であった。


雁坂嶺、西破風山登山データ

上記登山のデータ 登山日:2001.10.27 天候:快晴 単独行 日帰り
登山路:雁坂トンネル南口駐車場−ナメラ沢入口−雁坂峠−雁坂嶺−東破風山−西破風山−笹平− 賽の河原−甲武信小屋・木賊山分岐−甲武信小屋−甲武信岳−甲武信小屋−木賊山−戸渡尾根分岐−ヌク沢−西沢渓谷−村営つり場−雁坂トンネル南口駐車場
交通往路:瀬谷−八王子IC−(中央高速道路)−勝沼IC−西沢渓谷入口−雁坂トンネル南口駐車場 (車にて)
交通復路雁坂トンネル南口駐車場−西沢渓谷入口−塩山−(国道20号線)−相模湖−半原−厚木−瀬谷 (車にて)
その他の
雁坂嶺・
破風山
登山
雁坂トンネル南口駐車場−沓切沢橋−雁坂峠−雁坂嶺−東破風山−西破風山−破風山避難小屋−賽の河原− 甲武信小屋分岐−戸渡尾根分岐−木賊山−戸渡尾根分岐−徳ちゃん新道分岐−西沢山荘−雁坂嶺登山口−雁坂トンネル南口駐車場
 (2010年12月11日 : 晴れ後曇り後晴れ)    こ こをクリック
道の駅みとみ−沓切沢橋−雁坂峠−雁坂嶺−東破風山−西破風山−破風山避難小屋−(鶏冠山林道 東線)−ねとりインフォメーション−道の駅みとみ
 (2017年09月13日 : 曇り時々晴れ)    こ こをクリック

山のメインページに戻る      その他の山のページに戻る      ホームページに戻る