登山NO.0037 北  岳( 北岳:3,192m ) 1992.7.30登山


 北岳山荘前から見た北岳( 1992.7.29 )

【北岳登山記録】

【北岳登山データ】

フォト

再登山       3回目登山

4回目登山       5回目登山


NO.37 北岳登山記録

宮崎への単身赴任 1年目であれば、長期の夏休みには家族と一緒に過ごすというのが筋であろうが、 やはりこの時期にアルプスへ登らない手はない。
金曜日の晩に宮崎から帰宅した後、妻の冷たい視線を浴びながら、翌日の土曜日には山に登るために家を出て、 その晩には甲府のホテルに一人泊まっていた。日曜日の早朝 4時発、広河原行きのバスに乗るためである。
一昨年、昨年と北アルプスの縦走を行ったので、今年は南アルプスに登るつもりなのである。

まだ真っ暗な中、ホテルを出て甲府駅前のバス停に向かうと、 既に登山者が何人も待っていたので些か驚かされた。
こうした登山人気を目の当たりにすると、九州から帰ってきたんだ、登山のメッカへ向かうんだという気にさせられる。
バスはほぼ満席の状態で出発し、途中の休憩などを挟んで約 2時間の長い旅であった。
バスを降り、広河原のアルペンプラザ前に行ってみると、そこはもう登山者でごった返しており、 この混雑がそのまま山小屋まで移動することを想像するとゾッとしてしまったが、 今年は昨年の
北アルプス裏銀座に引き続きテント泊であるので、 少々心に余裕があった。しかし、荷は大変重い。

野呂川にかかる吊り橋を渡る前、見上げると北岳の姿が Y字型をした山と山の間から見え、 その遠くて高い姿に少々不安を覚えさせられた。
これは、既に体調の悪さを頭が感じ取ってしたのだと思うが、その通り、広河原山荘の前を通り、樹林帯を登っていくにつれて、 どうも体調が今ひとつであることを実感させられたのである。
出だしが不調でも、一汗かくと快調になってくることも多いのだが、宮崎で 6月に標高わずか 509mの双石山に 1回だけ登って以来の久々の登山であり、 しかもいきなり大きな 60リットルのザックを背負ったこともあって、この日はいつまでたっても体調が良くならなかった。

樺沢の河原と樹林帯を交互に歩きながら進み、2つの崩壊地を通過して林を抜けると、 北岳バットレスが大きく迫り、雪渓とその上を歩く登山者の列を見ることができるようになった。
やがて大樺沢二俣となり、斜面に白や黄色の花が結構咲いていたのだが、この頃にはかなりヘバリがきていて花を楽しむ余裕など全くなく、 この状態がいつまで続くのだろうかとばかり考えていた。
大雪渓を横に見ながら左岸の登山道を喘ぎ喘ぎ登ったが、一向にペースが上がらず、少し登っては休むという状態が続き、 運動不足がもろに出た感じである。

天候の方は晴れで、右を見上げれば北岳バットレスがその大きな岩肌を灰色に光らせており、 後ろを振り返れば、鳳凰山がよく見えて、なかなかの眺めであったのだが、 ここでも景色を楽しむ余裕など無く、こんな絶好の登山日よりなのにそれを満喫できないなんて、 宮崎でもっと身体を鍛えておくべきだったと大いに反省させられた次第である。
時々歩く大雪渓の上には大きな岩がゴロゴロしており、ここは落石があって危険だということを思い出させてくれたが、 周囲に気を付ける余裕もなく、喘ぎ喘ぎしながら八本歯のコルに通ずる上部二俣へと進み、 八本歯沢の急登へと取り付いた。そして、これが本日最も辛い登りであった。

木の根や岩に掴まりながら這うようにして登っていき、ようやく八本歯のコルに登り着いたが、 残念ながらそこから見えるはずの間ノ岳や農鳥岳はガスに巻かれて見えず、 冷たく心地よい風が吹いているだけであった。
しかし景色は見えずとも、この冷たい風は疲れた身体には大変嬉しかった。

コルから右に進み、岩場にかかる長い梯子を登って越え、いくつかのピークを越えて行くと、 大きな岩が積み重なった登り斜面となったが、その登りがまた苦しく、 ここから頂上に登り、それから下山してといった行程を考えると、途端に登り切る自信が失せてしまったのである。
少し登っては休みということを繰り返しながら暫く進むと、ガスの中、左手下に北岳山荘が見え、 そちらに直接続く道への分岐となったので、もう迷うことなく登頂を断念し、北岳山荘へと向かうことにした。
やっとの思いで山荘に着き、テントを張って暫く横になると、ようやく元気が出てきたが、イヤハヤ 縦走初日からこれでは先が思いやられることだと不安が湧いてきた。

しかし、ラジオでオリンピック放送を聞きながら眠りにつき、9時間ほど睡眠を取った翌日は、身体も軽く、 昨日のテイタラクが嘘のようにスッキリした気分であった。
テントの前から見える富士山が赤く染まっていくのを眺めながら食事をし、 テントを畳んだ後、空身で北岳を目指した。
足取りも軽く、小 1時間ほどで頂上に立つことができたが、快晴であったこともあって頂上からの展望は抜群で、 いつもその存在を意識している甲斐駒ヶ岳の姿や、 まだ未踏の仙丈岳、 そしてこれから進む間ノ岳塩見岳、 そして左側の農鳥岳など、南アルプス北部の名だたる山々をほとんど見ることができ、 さすがに日本第二の高峰、そして南アルプスの主峰であることを実感することができた。
特に、間ノ岳、塩見岳へと続く尾根道の長大さを眺めると、さあ頑張るぞ という気にさせられ、 昨日との気力の違いが自分でも分かる状況であった。
また、山頂には既に多くの人が憩っており、輝く朝日の下、皆、顔が明るく楽しそうであったのが印象的であった。

駆け下りるようにして北岳山荘まで戻り、山荘前のベンチに置いておいた荷物を背負って間ノ岳へと向かったが、 昨日と違ってザックの重さも苦にならず、明るい空の下、心が弾んでいるのが自分でも分かった。
以下、間ノ岳の項へと続く。


北 岳 登 山 デ ー タ

上記登山のデータ登山日:1992.7.30 天候:快晴(30)単独行前日泊
登山路:広河原−広河原山荘−大樺沢分岐−大樺沢二俣−八本歯のコル− 北岳山荘キャンプ場(テント泊)−北岳−北岳山荘
交通往路:瀬谷−(相鉄線)−海老名−(相模線)−橋本− (横浜線)−八王子−(中央本線)−甲府()−(バス)−広河原
交通復路間ノ岳、塩見岳へ縦走。塩見岳の項参照
その他:7月28日甲府泊。翌29日、北岳山荘キャンプ場泊。
次の30日北岳登山。
その他の北岳登山広河原−広河原山荘−大樺沢分岐−大樺沢二俣−八本歯のコル−北岳−北岳肩ノ小屋− 白根御池小屋−広河原山荘−広河原 (2007.8.17:晴れ)
    ここをクリック
広河原−広河原山荘−大樺沢二俣−八本歯のコル−北岳−北岳山荘−間ノ岳−農鳥小屋 (泊)−西農鳥岳− 農鳥岳−大門沢下降点−大門沢小屋− 発電所取水口−奈良田第一発電所−奈良田 (2009.08.21-22:21日 曇りのち雨、22日 雨のち曇り)
    ここをクリック
広河原−二俣−八本歯ノコル−北岳山荘分岐−吊尾根分岐−北岳−中白根山−間ノ岳− 農鳥小屋 (泊)− 西農鳥岳−農鳥岳−大門沢下降点−広河内岳−大門沢下降点−大門沢小屋−もりやまばし−奈良田第一発電所奈良田
 (2010.8.05 - 06: 5日 晴後曇り、6日 快晴)
    ここをクリック
広河原−二俣−八本歯ノコル−北岳山荘分岐−吊尾根分岐−北岳−北岳肩ノ小屋−小太郎山分岐−白根御池小屋−広河原
 (2015.9.30 快晴後やや曇り)
    ここをクリック


山のメインページに戻る   ホームページに戻る