勝手に   神奈川二十五名山 : 大山   (1,252m )


丹沢表尾根、二ノ塔から見た大山素晴らしい眺めの大山頂上

大山と書いて素直に 「おおやま」 と読む。
同じ字で、 鳥取には 「だいせん」 があり、 それらを区別する意味であろうか、 前者を 「相州大山」 あるいは 「丹沢大山」 と呼び、 後者を 「伯耆大山」 と呼ぶことがある。

この大山は関東平野の西南部に位置し、丹沢山塊の表玄関としてやや鈍角ながら堂々たるピラミダルな姿を構えており、 丹沢を代表する山の一つとなっている。
丹沢山塊の他の山、 塔ノ岳、丹沢山、蛭ヶ岳、檜洞丸 などが麓からその全容を見ることが難しいのに比べ、 大山は相模の国においては ほぼどこからでもその全容を見ることができ、 それ故であろうか、 この大山は昔、相模湾を通る船の目印になっていたと聞く。

下図は カシミール 3D (© SUGIMOTO Tomohiko ) にて作成した、大山の可視マップの一部であるが、 紫色の部分が大山を見ることができるエリアであり、 これを見ると相模の国における大山の存在の大きさ、 そして航海の目印となっていた ということも頷けるものがある。

新幹線に乗って大阪へ向かう時など、車窓から見る大山の堂々とした姿にビックリさせられるが、このように目立つ山を 人々が放っておくはずもなく、 今から1200年ほど前、 良弁 (ろうべん) 大僧正によって開山されて以来、 雨乞いの山として人々に信仰されているのである。 別名 雨降山 (あふりさん) という名もある程である。

現在も信仰登山は盛んで、伊勢原市側からの登路を表参道と呼び、秦野市側の蓑毛から蓑毛越を経て表参道 十六丁目に合流するものを 裏参道と呼んでいる。
表参道の方は現在ケーブルもあり、 それなりの賑わいを見せているようであるが、 裏参道の方は丹那トンネル開通後、 東海道本線が松田駅 (現在御殿場線) を通らなくなってから寂れる一方で、 現在蓑毛へと続く道路の真ん中に残っている大鳥居が 往時の繁栄を物語っているのみである。

登山道としては、この表参道、裏参道の他に、蓑毛からヤビツ峠を経て登るコース、広沢寺温泉から登るコース、日向薬師から登るコース など多岐に亘っていて、 四季折々、それぞれ楽しむことができる。
純粋登山として登り甲斐があるのは、 広沢寺温泉からのコースと日向薬師からのコースと思われ、 私は前者を登りに、 後者を下山に使ったことがある。

広沢寺からのコースは、本厚木駅から広沢寺温泉までバスに乗り、そこから登山口のある不動沢尻キャンプ場まで車道を歩くことになるが、 この距離が結構長いことから 車でのアプローチにて不動沢尻キャンプまで行く方が良かろう。

キャンプ場からは、三峰山への道を右に分け、2つの沢の間にある尾根道を登って行くことになる。 道はやや急ではあるが、 それ程厳しいものでもない。
私の記憶では 樹林帯を抜けると鹿止めの柵があり、 それを乗り越えるために木の橋 ? が架けられていたはずであるが、 今はどうであろうか。

緩やかになった道を登って行くとやがて唐沢峠で、ここから道は左 (南) に曲がり、尾根伝いに進むことになる。
この辺になると 目指す大山を樹林越しに見ることができるが、 意外と遠く見えるその姿に少々ビビルかもしれない。

樹林を抜けると大山に向かう緩やかな登りが続いており、なかなか気持ちが良い。
両側がスズタケに囲まれるようになると、 道も急になり始め、 この頃になると若干疲れが出てくるかも知れないが、 大山はもう少しである。

暫く先で日向薬師から続く雷ノ峰尾根の道と合流すれば、もうほんの少しで大山の頂上の一角に飛び出すことになる。
頂上にはトイレの他、 自動販売機などもあってやや拍子抜けさせられるが、 由緒ある阿夫利神社にお参りして敬虔な気持ちとなって、 さらに頂上からの眺めを楽しめば、 文明が頂上まで及んできていることも気にならないであろう。

先ほど述べたように大山は麓から良く見えるだけあって、頂上からの展望も抜群である。 特に相模湾とそこまで続く相模の国の町並みの様子は 素晴らしく、 また天候が良い場合は、 伊豆半島 天城連山や房総半島なども見渡せるという。

下山は車の場合 往路を戻るしかないが、可能ならば茶店などが賑わう表参道を下るのも面白いかもしれない。 もっとも、私は俗化した道に恐れをなして、 1回も表参道を通ったことはないのであるが・・・。

なお、私の大山登山歴は、大倉から塔ノ岳に登った後、丹沢表尾根を下り、 菩提峠を経て 岳ノ台からヤビツ峠に至り、 そこから大山へ登り返して日向薬師に下ったというものと、 同じく大倉から塔ノ岳を経てヤビツ峠に下り、 そこから大山を往復したもの、 そして不動沢尻キャンプ場まで車で行って、 そこから大山を往復したものの 3回あるだけである。

しかし通勤途上、毎日大山の姿を見ているだけに、この山に対する愛着は深い。
特に、昔 通勤時に通っていた厚木市街では、 まっすぐな道の先に堂々たる大山の金字塔が見え、 その風格ある姿に見惚れること暫しであった。 また、季節ごとに変化を見せる大山の山肌や 雲を従えたその姿に大いに楽しませてもらったものである。

『勝手に 神奈川二十五名山』 に挙げるに相応しい名山と言えよう。


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