ウルワトゥ寺院
 店を出てしばらく走って、目的の「ウルワトゥ寺院」に到着。

 ここは、海に突き出た切り立った崖の上にある。落差は約70m。
 写真右上、木々に混ざってギザギザした建物が見える。…それが、(日本で言うなら)ご本尊に当たるもの。

 バリ・ヒンドゥー教では、海は汚れており、山や高い場所は神聖とされているため、海から70mもあるところに寺院を建てたらしい。
 …何だか、ややこしいなぁ。
そんなことなら、海際に寺院なんて建てなきゃ良いのに、なんて思ってしまう。


 ともあれ、インドネシア全土におけるイスラム教徒の割合は87%であるのに対して、バリでは殆どの人がヒンドゥー教を信仰している。

 これはどういうことかというと、どうやら大昔はヒンドゥー教がインドネシア国民のメジャーな宗教だったらしい。しかし、イスラム商人との貿易が盛んになるにつれ、次第にイスラム教への改宗者が増え、それに伴ってヒンドゥー教徒への迫害が行われるようになった。
 迫害に耐えられなくなった人々がバリへ大量に移住して来て、現在のようにバリではヒンドゥー教が第1宗教になった、ということだ。

 もっとも、ヒンドゥー教とはいえ、バリ・ヒンドゥー教は土着の宗教と深く結びついている。
 考え方としては日本の神道(八百万の神)に近く、何にでも神様(魂)が宿っているとする精霊信仰の側面が強い。
 それから、教義よりも儀式(純粋な意味での「神を讃える」為のもの。人々が騒いで楽しむためのものではない)を重視する点なども、インドのヒンドゥー教と比べてかなりの変貌を遂げている。



 …と、そんなわけで、霊験あらたかな気持ちで「ウルワトゥ寺院」に足を踏み入れ…ようとしたら、門前で止められる。

 神聖な場所なので、ハーフパンツなど、肌を露出した格好の人はバティック(左写真のガッツ石松のようなおっさんが腰に巻いている布)を巻かなければならない(Rp.2000で貸し出し)。
 肌を露出していない人でも、腰に黄色い帯(黄色が一番神聖な色なのだそうだ)を巻かされる。

 いよいよ、中へ。


 敷地がすごく広い、ということなので、私はてっきり小京都のような街並み(街全部が遺跡と遺跡に関する雰囲気で成り立っている)が広がっているものだと思っていた。
 しかし現実は、街内や郊外に「ぽつん」と遺跡がある感じ。どれも孤立し、独立している。

 階段を昇り切ったところで、門に出くわす。その先は広場。門には鍵が掛けられており、広場に出ることは出来ない。広場の先には、オダラン(右写真。藁葺き屋根の塔。五重塔のように11段重なっている。どういうわけだかどこの寺のオダランも11段)が見える。

 オダランは、バリ島の聖なる山「アグン山」を象徴したものである。
 アグン山はバリ島のほぼ中央に位置し、バリ・ヒンドゥー教の総本山「ブサキ寺院」があることでも有名である。
 どの寺院のオダランも全てこのアグン山に向けて建てられているところから、アグン山がどれだけバリの人々にとって大事にされているものか、分かっていただけると思われる。

 参拝者はこの広場に跪き、オダラン(=アグン山)に向かって祈りを捧げる。
 寺院に観光客が自由に入れるわりには、祈りを捧げるための広場には参拝者しか入ることができない。…厳密だ。そういう寸でのところで、宗教は守られているのだろう。
 でも、この日は、参拝者も僧侶の姿も見えず、単なる古びた遺跡でしかなかった。


 壁沿いにオダランに向かって(つまり、寺院の奥に向かって)さらに進む。スワルバに「帽子や手荷物など、身につけている物に気をつけて。猿に奪われるよ。」と、言われる。
 …そんな事言われても、日本の猿に対するのと同じくらいの注意をしていればいいと思っていた。

 …それが甘かった!
 私たちは大丈夫だったけれど、後からきた観光客は、すごい目にあっていた。

 ちょっと海岸に打ち寄せる波を見ていた隙にサングラスを奪われたり、手に持っていたリュックサックを奪われそうになって引っ張り合いしたり(本当に綱引きのようにすごい力で引っ張ってくる)、バッグについていたマスコットを引きちぎられたり…。
 そのあまりの手際の良さに、口を開けたまま見入ってしまったくらいだ。
 なかなかアグレッシブな猿たちである。

 …で、その奪い取った戦利品をどうするかといえば、彼らはしっかりしている!
 ツアー・コンダクターがバナナなど、食べ物を差し出すとそれらと引き替えに戦利品を差し出すのだ。そして当然のように、ツア・コンはきちんと餌代を観光客から徴収する。
 …何から何まで非常に上手くできている。多分、組織的な犯行(?)ではないと思うのだけれど、…すごいね。生活の知恵というか、何というか…。

 とにかく、オダランの内部はおろか、祈りを捧げる広場にすら入ることができないのには参った。遺跡見学とはいえ、そこから学ぶものは余りなかったように思う。


 そこを脱出して、ケチャック・ダンスを見に行く。

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