南の島の洗礼

 ぼちぼち搭乗時間に。怪しい日本語のアナウンスに従って搭乗ゲートへ。17:50発CO900便インドネシアバリ島のデンパサール空港行きに乗り込む。

 シートに浅く腰掛けたところでアナウンス。「ただ今当機、コンピュータ故障のため調整しております。10分ほどお待ち下さい。」……。おいおい、ちゃんと飛ぶのかよぉぉ…。 実は私、今回の旅行は生命保険を掛けてきていない。こんなことなら、成田で簡易保険を掛けてくればよかったかなぁ…と、本気で考え始める。やだなぁぁ。

 シートベルトをしっかり締めたところで、離陸の気配。よしよし。ちゃんと飛ぶらしい。


 コンチネンタルは最近、自社で保有する飛行機の殆どが老朽化したため今年に入ってから一斉に新機種を購入して、今では殆どの機種の買い換えが終わっている(あの有名なボーイング747なんて、1999年9月現在、2機しか残っていない。その2機も近々買い換える予定らしい。)。
 …道理で綺麗なわけだ。(ちなみに、グアムまではボーイング777。グアムからバリまではボーイング727に乗った。現行最新機種である。)イメージアップパンフレットを読んで、ちょっとほっとした。

 約3時間半のショートトリップ。気分はすっかり「ブロイラー」。
  狭いところに押し込められて、さらに美味しくないごはんを食べさせられる。…すごいね。

 だけど、バリに到着する時間が遅いので、現地で夕御飯を食べられる保証がない。仕方なく無理してまずいごはんをのどの奥へと押しやる。(もはやメニューも覚えてない始末)
 …今日は食べ物にとことんツいていない1日である。


 予定時間を少しオーバーして21:30ごろ、デンパサール空港に到着。

 とりあえず、3万円を現地通貨(ルピア。以下Rp.と表記)に両替する。
 約Rp.2,090,000(あぁぁ、もう正確な金額を忘れてしまった…)すごい単位である。
 しかも、手渡された紙幣は今だかつて見たことのないような束になっており、ものすごい金持ちになったような気がした。札束で人が張り倒せる(笑)。


 ゲートを出ると、現地添乗員のスワルバさん(以下、敬称略)がプレートを持って待っていた。ホテルまでの送迎と、今後7日間のオプショナル・ツアーの手配などをしてくれるそうだ。
 …しかしまぁ、スワルバほどひどい日本語をしゃべるガイドも他にいないだろう。日本語と英語をチャンポンにして話すのだが、私たちのしゃべることもろくに通じないし、向こうの言ってることも殆ど分からない。絶望的である。

 今のところは何とかなっている。とにかく荷物をトランクに放り込み、三菱の廃車寸前のバンに乗せられてホテルへ向かう。


 バリ島は、6つの大きい地区(市のようなもの)に別れている。詳しくは忘れてしまったが、観光客に関係してくる大きな地区は3つなのだそうだ。

 でも、観光客が使うのはさらに細かい区のようなもので、州都のある「デンパサール」、古典芸能で有名な「ウブド」、観光客と物売りでごった返している「クタ」、高級リゾート地として名を馳せている「ヌサ・ドゥア」、ヌサ・ドゥアが出来る以前に栄えた昔のリゾート地「サヌール」…みたいな形の方が便宜上覚えやすい。実際現地ガイドもそういう風に地名を使い分けている。


 空港から40〜50分くらい走って、サヌールという街に着く。私たちの泊まるホテルはサヌールのまん中辺りにある「ガゼボ・コテージ」というところである。


 バリっぽい吹きさらしのわらぶきの平屋建て。柱の上に屋根が乗っかっているだけ。吹きさらしだけど、寒くない。インテリアは、バリで作られたもので統一されているらしい。木彫りの人形や、ソファ、生けられた花などが、いやがおうにも南国ムードを盛り上げてくれる。

 ソファに座らされ、ウェルカム・ジュースを出されて、それを飲みながらホテルのざっとした説明を受ける。ウェルカム・ドリンクのオレンヂジュースは、ファンタオレンヂのような毒々しい色をしている。おそるおそる口にすると、昔懐かしい駄菓子屋の粉ジュースのような味。おぇぇ…。一口でリタイア。それを尻目に、スワルバはオプショナルツアーの話しを切り出す。明後日にウブド見学とケチャック・ダンスを見学するツアーを予約($50)して、本日の日程終了。


 連れてってちゃんをごろごろと引きずりながら(石畳のため、なかなか苦労した)指定された部屋、212号室に向かう。ホテルの敷地は広く、名前の通り部屋は全てコテージになっている。案内のボーイはさっさと歩いていってしまうし、辺りは結構暗いので、見失うと迷ってしまうだろう。必死で後を追う。

 いつまで歩くんだろう…と思い始めた辺りでようやく212号室に着く。決して綺麗とは言い難い、わらぶき屋根のコテージ。

 ボーイのお兄ちゃん、なにやら鍵をがちゃがちゃやっている。
 観音開きのドアを開けてこちらを振り返り、なにやらずっしりしたものを手渡される。

 「…??」見れば、手のひらほどの大きさの黒い南京錠。
 ドアを、南京錠で管理、ですか…?

 ボーイにウェルカム・フルーツのバスケットを手渡されて、ようやくプライベートな時間になる。


 コテージの中は、外見ほど居住性の不安を感じさせない。木材と茶色を基調とした落ち着いた造り
 壁には、バリの少女を描いたこれまた落ち着いた色調の大きな絵画が掛けられ、緑が配された中庭(テラスのようなもの)へ通じる大きな窓の傍には、サイドテーブルが配されている。
 ホテルの部屋としては、かなり広い。

 しかし、ベッドはシングルを一回り小さくしたようなミニサイズ。寝相の悪い人にはつらいだろうな。…しかも、床は石造りのタイル(これも、部屋の色にマッチしたうす茶色)だし。

 バスルームを覗く。無駄に広いユニットバス。
 …しかし配置に問題があって、気をつけてシャワーを浴びなければ水がかかってしまうようなところにトイレが設置されている。やれやれ。

 こちらにも大きな窓があって、中庭に出ることが出来る。
 中庭は塀で囲まれていて、外から見えないような造りで、緑を愛でながら入浴が出来るようになっている。…こういう半オープン・スタイルのお風呂は、バリでは一般的なのだそうだ。…うっとり…。


 早速お風呂に入る。…が、なんと、お湯が出ない。仕方ないので、水のシャワーで身体を洗う。

 ぅぅん。早くもアジアの洗礼を受けてしまった。
 これが日本だったら、フロントに電話して、文句の1つも言っている(きっと、1つじゃ済まないだろうけど…)ところだろう。
 でも、南の島の暖かさによるものなのだろうか、なんだかものすごく寛容になっている自分に気づく。まぁ、いいさ。


 部屋に戻って、ベッドへダイブ。


 はっ、と思い出してウェルカム・フルーツのバスケットを覗いてみる。
 蘭の花とスネーク・フルーツ(Salak)、バナナ(Pisang)、マンゴスチン(Manggis)がメッセージと共に置かれていた。
 今日は疲れているので、明日冷やして食べよう、ということにして、そのまま放置(結果として、放置しっぱなしにしておいたので、食べないうちに下げられてしまった…。残念)。

 だらだらしているうちに、ブラック・アウト…。

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