ブサキ寺院

 ブサキ寺院着。
 ここは、バリの中心アグン山中腹に位置しており、バリのヒンドゥー教の総本山である。境内にたどり着くには、かなり急な坂道を500mくらい(皮膚感覚的に。実際はもっと短かったかも…)登らなくてはならない。

 登った先には大きな広場があって、あちこちに露天が店を並べていた。
 飲料水を売る店。お菓子を売る店。…そんなものは、日本でもおなじみのスタイルで売られている。

 ちょっと違うなぁと思うのは、サテの売り方。
 焼き鳥のような香ばしい匂いが漂ってくるので、そちらを見やると、男たちが地べたに座って(!)七輪を横長にしたようなもので串刺しの鶏肉(日本のそれより、一口の大きさは小さい)を焼いている。
 さして売れる当てもなさそうなのに、男たちは店を並べあい(ひしめき合うように林立している)黙々とサテを焼いている。

 そんなのとは別に、木陰では何やら人が集まって歓声を上げている。
 博打(もちろん非合法。警察に見つかったらパクられるらしい)を打っている。

 いやがるスワルバを説得して、のぞきに行く。見たことないようなゲームをしている。エキサイトしている。どれだけ見てもルールもなにも分からないので、あきらめてその場を離れた。
 日本でいうなら、ちんちろりんみたいなもんなんだろうな。民間バクチ。娯楽が少なさそうだから。


 更に階段を何段か上ったところで、ようやく境内。
 今日はちょうどお祭りが行われているところだったらしく、参拝者と観光客で境内はごった返していた。

 こんなに民族衣装を普段着としてきている民族はないんじゃないかな、と思うくらい街中には民族衣装の人がいっぱいいたのだけれど、参拝に来るときの格好はすごいすごい。みんな(文字通り)一張羅を着て来てる。
 普段町中で見かける人々と違うところは、参拝に来ている人々は、みんな額に(ビンディのように)米粒をつけている、ということ。

 また、女の人の頭の上には供え物の入った、籐(色とりどりに染色してある)で編まれたかご(中にたくさんの「チャナン」が入っている)が乗っている。
 そして、男の人は頭にウダンというはちまきのような帽子もどき(小僧寿司のお兄さんが被ってるような感じの形に似ている)を被っている。

 こうして見てみると普段の服装は(日本人に例えるなら)浴衣みたいなもので、こうしてお参りに来るときには着物を着ている、というのと同じくらいの違いがある。
 やはり、民族衣装をまとったその土地の人というのは、美しい。誇りを感じた。


 ふと見上げると、奥の階段からきらびやかな衣装をまとって楽器を拍ちならしながらやって来る一団が…。参拝を済ませて引き上げてくる人々らしい。

 境内には、祈りを捧げるための広場が点在しており、その場所ごとに大小さまざまなオダランが建立している。

 境内を散策する、ということは、山の麓の方から頂上に向けてどんどん歩いていくような感じになる。スワルバ曰く「(山の)下の方が私たちのような庶民がお参りするところ。上の方に行くに従って、偉い人がお参りするところ。一番上はお坊しゃま(舌の都合上「様」と、言えないらしい)のところ。私も下の方に時々お参り来る。」。

 そういえば、珍しく民族衣装(バティックを腰に巻いている。上は旅行会社のユニフォームの青いシャツだけど)なんて着ている。
 「どうして?」って聞くと「仕事とはいえ、アグン山に来るから」なんだそう。

 私たちはあまり奥まで行かなかったが、それでも、上の方に行くに従って人の数が減り、神聖な感じになっていくのが分かる。
 書物によると、奥の方には外国人はあまり入れてくれないらしい。ここでも、寸でのところで信仰は守られている。


 参拝(と、言うより見学だね)してみて分かったのは、バリの人々は「遺跡は外国人にとって観光名所かもしれない。…でも、それはそれとして、自分たちにとって寺院は畏敬の対象で、しかも毎日使用する生活の場である。」と、いう割り切りがしっかり出来ているということ。

 祈りを捧げるために訪れる人は、後を絶たない。非常に生活に密着している感じがした。

 まさしく、人々は祭りの準備の合間に、生活を営んでいる。
 …この生活スタイルは、私たちのように宗教が生活から遠くなってしまったものの常識的見解からすれば、理解しがたいものがある。
 しかし、これだけ宗教が身近にあると、自然にこういう生活パターンになってしまうのだろうな、と自分なりに肌で理解するに至った。

 それから、この国では神様は「遠くにある絶対なもの」ではなく、「身近にある頼れる存在」であり、信仰とは、本来こういうものなのではないだろうか、と原体験したような気がした。


 またドナドナのごとく車に揺られて、16:00頃ホテル着。

 今日こそは!!って感じで、買い物に出かける。
 このくらいの時間になると、昼間の殺人光線は影を潜めつつあるので、観光客の姿が多く見られるようになる。

 先日は分からなかったのだが、外国人がたむろしている一角があったのでそちらに行ってみると、かなり大きなスーパーがあることが分かった。
 何度も前を通っていたにもかかわらず、その外見(古い大きなマンションのように見える。電飾はおろか、大きな看板さえない)と奥まったところにあったのとで、気づかなかったのだ。

 中には何でも売っていた。文房具、ベビー用品、飲料水、魚介類、野菜、肉、各種調味料、お菓子、お土産品、薬、化粧品、日用雑貨、お酒。この国に来てから今まで、駒沢公園の売店くらいの規模のお店しか見たことがなかったので、正直言ってびっくりした。

 面白かったのは、調味料とお酒。

 調味料は、キッコーマンの醤油から、現地のよく分からないものまで、かなり豊富。辛そうなものが多い。何か買って帰りたいと思うのだけれど、味の想像がつかないものが多くて、悩んでいるうちにタイムアップ。

 お酒は、宗教上の理由からか置いている店がなかったので、この店でお酒のコーナーが設けられていることに驚いた。外国からの輸入物から、インドネシアビール、Arakまで、様々。特に、Arakは5種類くらい売っていて、どれかお土産に買って帰ることにした。(帰国の日が近づいてから買うことにしたので、今日は買わないで引き上げた)

 ぶらぶらしているうちにいい時間になったので、夕飯を食べることにした。

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