小倉百人一首 勅撰集型配列

百人一首を四季・恋・雑などに分類し、勅撰集型に配列し直してみました。題として掲げてあるのは、実際に歌が作られた時の題ではなく、詠まれている主要な風物や主意を仮に定めてみたものに過ぎません。歌の本文は百人一首カルタ本文と同じものです。

離別羈旅

   若菜            光孝天皇
015 君かためはるの野に出てわかなつむ わか衣手に雪はふりつゝ

   梅             紀貫之
035 人はいさ心もしらす古郷は 花そむかしの香ににほひける

   桜             権中納言匡房
073 高砂のおのへのさくら咲にけり とやまの霞みたゝすもあらなん

                 小野小町
009 花の色はうつりにけりないたつらに わか身よにふるなかめせしまに

                 紀友則
033 久方の光のとけき春の日に しつ心なくはなの散らん

   八重桜           伊勢大輔
061 いにしへの奈良のみやこの八重桜 けふこゝのへに匂ひぬるかな

   更衣            持統天皇
002 春過て夏来にけらし白妙の 衣ほすてふあまの香来山

   時鳥            後徳大寺左大臣
081 ほとゝきす鳴つる方を眺むれは 唯有明の月そのこれる

   夏月            清原深養父
036 夏のよはまたよひなから明ぬるを 雲のいつこに月やとるらん

   六月祓           従二位家隆
098 風そよくならの小川の夕暮は 御秡そなつのしるし成ける

   秋来            恵慶法師
047 八重葎しけれる宿のさひしきに 人社見えね秋は来にけり

   秋夕            良暹法師
070 さひしさに宿をたち出てなかむれは いつくもおなし秋の夕暮

   秋風            大納言経信
071 夕されは門田のいなは音つれて 芦のまろやにあき風そふく

   霧             寂蓮法師
087 村雨の露もまたひぬ槇のはに 霧たちのほるあきのゆふ暮

   月             左京大夫顕輔
079 秋風に棚引雲のたえまより もれいつる月のかけのさやけさ

                 大江千里
023 月みれは千々にものこそかなしけれ 我身ひとつの秋にはあらねと

   露             天智天皇
001 秋の田のかりほの盧のとまをあらみ 我ころも手は露にぬれつゝ

                 文屋朝康
037 しら露に風のふきしく秋のゝは つらぬきとめぬたまそ散ける

   鹿             猿丸大夫
005 おく山に紅葉ふみわけ鳴しかの 聲きくときそ秋はかなしき

   紅葉            在原業平朝臣
017 千早振神代もきかす立田川 からくれなゐに水くゝるとは

                 能因法師
069 あらしふく三室の山のもみちはゝ たつ田の川のにしき成けり

                 春道列樹
032 山川に風の懸たるしからみは なかれもあへぬ紅葉なりけり

   山風            文屋康秀
022 吹からに秋の草木のしほるれは むへ山風をあらしといふらん

   擣衣            参議雅経
094 みよし野ゝ山の秋風さよ更て 故郷さむくころもうつ也

   菊             凡河内躬恒
029 心あてに折はやおらむ初しもの をきまとはせるしら菊の花

   霜夜            後京極摂政前太政大臣
091 きりゝゝす鳴やしもよのさむしろに ころもかたしきひとりかもねん

   山家冬           源宗于朝臣
028 山里は冬そさひしさ増りける 人めも草もかれぬとおもへは

   網代            権中納言定頼
064 朝朗うちの川霧たえゝゝに 顕はれ渡る瀬ゝのあしろ木

   千鳥            源兼昌
078 あはち嶋かよふ千鳥の鳴こゑに 幾夜ねさめぬすまのせきもり

   霜             中納言家持
006 鵲の渡せるはしにをく霜の しろきをみれはよそ更にける

   雪             山辺赤人
004 田子のうらにうち出てみれはしろ妙の 不二の高根にゆきは降つゝ

                 坂上是則
031 朝ほらけ在明の月とみるまてに よし野ゝさとにふれるしら雪

離別

                 中納言行平
016 立わかれいなはの山の嶺に生る まつとしきかはいまかへりこん

羈旅

                 安倍仲麿
007 天の原ふりさけみれは春日なる 三笠のやまに出し月かも

                 参議篁
011 和田の原八十嶋かけてこき出ぬと 人にはつけよあまの釣舟

                 菅家
024 この度はぬさも取あへす手向山 もみちのにしき神のまにゝゝ

                 鎌倉右大臣
093 世中は常にもかもな渚こく 海人のをふねの綱手かなしも

   未逢恋           中納言兼輔
027 みかの原わきてなかるゝ和泉川 いつみきとてか恋しかるらん

   聞恋            祐子内親王家紀伊
072 音にきくたかしのはまの化波は かけしやそてのぬれもこそすれ

   片思            陽成院
013 つくはねのみねよりおつるみなの川 恋そつもりてふちとなりぬる

                 源重之
048 風を痛み岩うつ波のをのれのみ 碎て物をおもふころかな

   思             曽禰好忠
046 ゆらのとを渡る舟人かちを絶 行ゑもしらぬこひのみち哉

                 大中臣能宣朝臣
049 みかき守ゑしのたく火の夜はもえて ひるは消つゝものをこそおもへ

   忍恋            河原左大臣
014 みちのくの忍ふ文字すり誰ゆへに 乱れ初にしわれならなくに

                 藤原敏行朝臣
018 住の江のきしによる波よるさへや 夢のかよひち人めよくらん

                 参議等
039 浅ちふのをのゝしの原忍ふれと あまりてなとか人のこひしき

                 平兼盛
040 忍ふれと色に出にけり我こひは ものやおもふとひとのとふまて

                 壬生忠見
041 恋すてふ我名はまたき立にけり 人しれすこそおもひそめしか

                 藤原実方朝臣
051 かくとたにえやはいふきのさしも草 さしもしらしな燃るおもひを

                 式子内親王
089 玉のをよ絶なはたえねなからへは しのふる事のよはりもそする

                 二条院讃岐
092 わか袖はしほひに見えぬおきの石の 人こそしらねかはくまもなし

   不逢恋           伊勢
019 なには潟みちかきあしのふしのまも あはてこのよを過してよとや

                 源俊頼朝臣
074 うかりける人を初瀬の山おろし はけしかれとはいのらぬものを

   逢不逢恋          元良親王
020 侘ぬれは今はたおなし難波なる 身をつくしてもあはんとそ思ふ

                 三条右大臣
025 なにしおははあふ坂山のさねかつら 人にしられて来るよしも哉

                権中納言敦忠
043 あひみての後の心にくらふれは むかしはものをおもはさりけり

                 中納言朝忠
044 逢事のたえてしなくは中ゝゝに 人をも身をもうらみさらまし

                 謙徳公
045 哀ともいふへき人はおもほえて 身の徒になりぬへき哉

                 和泉式部
056 あらさらん此よの外のおもひ出に いま一度のあふ事も哉

   待恋            柿本人丸
003 あし引の山鳥のおのしたり尾の なかゝゝし夜を独かもねん

                 素性法師
021 今こんといひしはかりに長月の 有明の月をまちいてつるかな

                 権中納言定家
097 来ぬ人をまつほのうらの夕なきに やくや藻しほの身もこかれつゝ

   後朝恋           壬生忠岑
030 有明のつれなく見えし別れより 暁計うきものはなし

                 藤原義孝
050 君かためおしからさりしいのちさへ 永くもかなとおもひけるかな

                 藤原道信朝臣
052 明ぬれはくるゝものとは知なから 猶うらめしき朝朗かな

                 待賢門院堀河
080 長からん心もしらすくろ髪の みたれて今朝はものをこそ思へ

   恨恋            清原元輔
042 契きなかたみにそてをしほりつゝ すゑのまつ山波こさしとは

                 右大将道綱母
053 なけきつゝ独ぬるよの明るまは いかに久しきものとかはしる

                 赤染衛門
059 やすらはてねなましものをさよ更て 片ふくまての月を見しかな

                 相模
065 うらみ侘ほさぬ袖たにある物を 恋に朽なむ名こそおしけれ

                 道因法師
082 思ひわひさてもいのちは有ものを うきに堪ぬはなみた成けり

                 俊恵法師
085 よもすから物思ふころは明やらて 閨の隙さへつれなかりけり

                 殷富門院大輔
090 見せはやなをしまのあまの袖たにも ぬれにそぬれし色はかはらす

   月前恋           西行法師
086 歎けとて月やはものを思はする かこち顔なるわかなみたかな

   旅恋            皇嘉門院別当
088 難波江のあしのかりねの一夜ゆへ 身をつくしてやこひ渡るへき

   被忘恋           右近
038 わすらるゝ身をは思はす誓ひてし 人のいのちのおしくも有かな

                 儀同三司母
054 わすれしの行すゑまては難けれは けふをかきりのいのちとも哉

   不忘恋           大弐三位
058 有馬山猪名のさゝ原風ふけは いてそよ人をわすれやはする

   別恋            左京大夫道雅
063 今はたゝおもひたえなんとはかりを 人つてならていふよしも哉

                 崇徳院
077 瀬をはやみ岩にせかるゝたき川の われてもすゑにあはむとそおもふ

   春雑歌           周防内侍
067 春の夜の夢はかりなる手枕に 甲斐なくたゝん名こそおしけれ

   秋雑歌           紫式部
057 めくりあひてみしやそれとも分ぬまに 雲かくれにしよはの月哉

                 貞信公
026 をくら山嶺のもみち葉心あらは 今一度のみゆきまたなん

   名所            蝉丸
010 是や此行もかへるも別ては しるもしらぬも相坂のせき

                 大納言公任
055 瀧の音はたえて久しく成ぬれと 名こそなかれて尚聞えけれ

                 小式部内侍
060 大江山生野ゝみちの遠けれは またふみも見すあまのはしたて

   節会            僧正遍昭
012 天つ風雲のかよひち吹とちよ をとめのすかたしはしとゝめん

   眺望            法性寺入道前関白太政大臣
076 和田の原こき出てみれは久方の 雲井にまかふおきつしら波

   山家            喜撰法師
008 我盧はみやこのたつみしかそ住 よを宇治山と人はいふなり

   寄関述懐          清少納言
062 よをこめて鳥のそらねははかるとも 世にあふさかの関はゆるさし

   老年述懐          藤原興風
034 誰をかも知人にせん高砂の 松も昔の友ならなくに

                 入道前太政大臣
096 花さそふあらしの庭の雪ならて ふり行ものはわか身成けり

   述懐            大僧正行尊
066 もろ共に哀とおもへ山さくら はなより外にしる人もなし

                 三条院
068 心にもあらてうきよになからへは こひしかるへき夜半の月哉

                 藤原基俊
075 契りをきしさせもかつゆをいのちにて 哀ことしの秋もいぬめり

                 皇太后宮大夫俊成
083 世中よ道こそなけれおもひ入 山のおくにも鹿そ鳴なる

                 藤原清輔朝臣
084 なからへはまたこの比や忍はれん うしと見しよそいまはこひしき

                 前大僧正慈円
095 おほけなくうきよの民におほふ哉 我たつ杣にすみそめの袖

                 後鳥羽院
099 人もおしひともうらめしあちきなく よをおもふゆへに物思ふ身は

                 順徳院
100 百敷やふるき軒端の忍ふにも なを餘りあるむかし成けり



公開日:2010年03月02日
最終更新日:2010年03月02日

百人一首目次