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- 1.フリーきっぷがお得な距離(途中下車その1)
- 2.車両の型式の判別
- 3.車輪
- 4.ヨーロッパの車内アナウンス
- 5.小ネタ
- 6.運送約款(途中下車その2)
- 7.鉄道文化財
- 8.分岐器の番数表現
- 9.有名駅
- 10.鉄道網
目次
小ネタ集
面白いと思ったネタのメモ
雑誌や書籍で見つけた興味深いものや、私がネット上に公開して差し障らない写真を持っていないため紹介できないものを、雑多に入れていきます。メモ書きのようなものですので、どの記事も「分からない」という結論で終わっていますがご容赦ください。
紫色の信号
赤と青を混ぜてできる色、紫。紫色の灯色の信号機があるとはいまだに信じられず、自分でも見かけたことはないのですが、ここ(wikipedia)に写真がでています。
フランスの信号の本によると、主に側線で用いられており、非開通の分岐器のような、絶対にこれ以上進んではならない(絶対停止)という意味を示す信号機で、本線の赤2灯の信号機同じ意味です。
遠くからどのように見えるのかを確かめてみたいです。
日本のTSIホモロゲーション車両
日本は欧州連合に加盟しておらず協定もないため、TSIに適合した旅客車両を登録することはありません(メーカーが、TSIに適合した製品は作っています)。仮にあった場合には、欧州法令に基づいて車両登録システム(NVR)に登録するための12桁の European Vehicle Numberを付与しなければなりません。
TSIでは、貨車(wagon)についても旅客車と同じく登録・番号付与を義務付けています(OTIFの貨車番号を流用しているようです。)。そのため、12桁の車両番号の3・4桁目の国コードと、付記する2字の国コードを(EU) 2018/1614 にて規定しています。貨物輸送や車両保守のための番号ですので、線路がつながっているロシア、CIS諸国、トルコや中近東諸国、インドや中国、ベトナムは分かるとして、日本も42番(国コードはJ)として規定していただいています。
よく見ると下の抜粋のように、欧州のリヒテンシュタインさんは、オーストリア(TSI適用国)と線路がつながっているにも関わらず、国番号が付与されていませんが、線路もつながっていない日本には付与されています。日本と似た地理的位置にあるフィリピンや、インドと線路がつながるネパールやタイ、マレーシアは国番号が付与されていません。1〜99までしか無い貴重な2桁の国コードが日本に付与されている選定理由が不明ですが、(EU)2018/1614附属書Tの柱書によると、何か車両が登録されている可能性があるようです(次の鉄道事業者コードの項も参照ください)。
リヒテンシュタイン、ネパールはUICに加盟している鉄道会社がないからだろうと推測できるのですが、 マレーシア・フィリピン両国はUICに加盟していますが番号付与はありません。

仮にJR貨物さんのタキ(タンク貨車)を日本で登録するならば、33 TEN 42 J-JRF 5000-123-6 のような感じになると思います。
33[種類] TEN[適合法令] 42[国番号] J[国名]-JRF[会社名] xxxx-xxx[車両番号] 6[チェックコード]・・という感じです。
・・と記載してきましたが、下の事業者コードから改めて考えてみるとこれもUICの定めるCountry codesを流用しているようです。UIC920-14と同じ番号ですので。マレーシアやフィリピンには国番号が付与されていないのも同じでした。これが答えのようです。
鉄道事業者コード
鉄道事業者、インフラマネージャー(設備管理会社)にはコードが振られています。Organisation Codeという、4桁の数字で、前項に記載の(EU)2018/1614による車両登録簿(EVR)や、欧州鉄道庁への申請に使われるものです。
登録結果はここに出ていますが、膨大です。数えてみたところ旅客を扱う鉄道会社だけで384社ありました(2021年末時点)。貨物鉄道会社は1000以上あります。大陸は広いです。
ところが欧州域以外が本拠の鉄道事業者も下表のように多数含まれています。大陸に限らず、日本の会社もあります(イギリスのフランチャイズを開始する前から登録されていました)。
code 0042のJR東日本さんです。一方、ほかのUIC(世界鉄道連合)に加盟しているような大きな日本の鉄道会社さんは含まれていませんし、車両レンタル業を行っている三井レールキャピタルさんも見当たりません。欧州域外で旅客を扱う鉄道事業者としては以下の鉄道事業者が登録されておられます。
この番号は、UICが振っているCompany Code(RICS) と同じです。RICSの一部を流用しているようです。
Code | 略称 | 会社名称 | 本拠国 |
0020 | OAO RZD | Joint Stock Company 'Russian Railways' | ロシア |
0021 | BC | Belarusian Railways | ベラルーシ |
0022 | UZ | Ukrainski Zaliznytsi | ウクライナ |
0023 | CFM | Calea Ferată din Moldova | モルドバ |
0027 | KTZ | Kazakhstan Temir Zholy | カザフスタン |
0028 | GR | Sakartvelos Rkinigza | ジョージア |
0029 | UTI | Uzbekistan Temir Yullari | ウズベキスタン |
0030 | ZC | Railways of D.P.R.K. | 北朝鮮 |
0031 | UBTZ | Mongolian-Russian Joint-Stock Company Ulaanbaatar railway | モンゴル |
0032 | DSVN | đường sắt Việt Nam | ベトナム |
0033 | CR | Chinese Railways | 中国 |
0042 | JR-E | East Japan Railway Company(JR東日本) | 日本 |
0057 | AZ-ADDY | Azərbaycan Dövlət Dəmir Yolu | アゼルバイジャン |
0058 | CJSC SCR | South Caucasus Railway CJSC | アルメニア |
0059 | KTJ | Kyrgyz Railways | キルギス |
0061 | KORAIL | Korea Railroad Corporation | 韓国 |
0066 | TDZ | Tajikistan Railways | タジキスタン |
0067 | TRK | Turkmenistan Railways | トルクメニスタン |
0075 | TCDD Taşımacılık A.Ş. | Türkiye Cumhuriyeti Devlet Demiryolları Taşımacılık Anonim Şirketi | トルコ |
0090 | ENR | Egyptian National Railways | エジプト |
0091 | SNCFT | Société Nationale des Chemins de Fer Tunisiens | チュニジア |
0092 | SNTF | Société Nationale des Transports Ferroviaires | アルジェリア |
0093 | ONCF | Office National des Chemins de Fer du Maroc | モロッコ |
0095 | ISR | Israel Railways | イスラエル |
0096 | RAI | Rahahan-e Djjomhouri-e Eslami Iran | イラン |
0097 | CFS | Administration Générale des Chemins de fer Syriens | シリア |
0098 | CEL | Lebanon Railways | レバノン |
0099 | IRR | Iraqi Republic Railways Establishment | イラク |
1120 | JSC 'FPC' | Joint Stock Company 'FEDERAL PASSENGER COMPANY' | ロシア |
3022 | SNCC | Société Nationale des Chemins de Fer du Congo | コンゴ |
3031 | J.P.F.T. | Joopar Passenger & Freight Trains Iran, Islamic Republic of co. | イラン |
3033 | QR | Queensland Rail | オーストラリア |
3287 | Amtrak | National Railroad Passenger Corporation | アメリカ |
3386 | YRW | JSC Yamal Railway Company | ロシア |
基本通信用語の規定
運行TSI(TSI OPE)((EU) 2019/773)では、運行ルールに関する共通技術基準を定めています。
その中の附属書C.1(Oral communication)に、安全上の交信をする際の標準的な用語を定めています。主に運転士と指令との間を想定しているものですが、極めて簡潔にまとまっています。一部を紹介します。
- 指令から運転士:Train [運行番号],this is [エリア名又は信号指令所名]
- 復唱が正しいことを確認するとき:Correct.
- 復唱が誤っているとき:Error (+ I say again)
- 他の事情で、通信の中断を伝えるとき:Wait.
- 非常事態:Mayday, mayday, mayday. この意味以外での使用は禁止
TSIでは、これを使って状況報告する事例についても規定が続いていますが割愛します。
これらの基本用語は、英語のまま使用することが規定されています。そのためなのか上記のように簡明な言い方になっています。
英語が優先されていることは、共通運転免許制度が取り入れられている(別ページにて紹介します)欧州ですから当然の措置ながら、仏語学習者としては寂しいです。
ですが、非常事態に「Mayday」をコールするのは航空保安用語と同じですので、語源は仏語由来の (Vous) m'aidez(メデ、Help me) だと思います。生きていました、フランス語。
位置関係の表現の仕方の規定
上述の項目の基本通信用語と同じ附属書Cには、運転士からみた位置関係の言い方についての用語も規定されています。

出発信号機の建植位置
このページの図5-1(下図)で紹介している、出発信号機の建植位置が分岐器より先にあることについてのご紹介です。

駅の両側に分岐器がある駅の場合、その分岐器が安全な側に切り替わっているかどうか(つまり進路が取れているかどうか)は、「出発信号機」で表されています。上の図中では右のほうにある「閉そく信号」を、特に出発信号機と呼んでおりますが、まだ分岐器が切り替わっていなければ(未開通)列車が駅を出発できないよう「赤」を示しているはずです。
自動信号機には大原則があるのですが、その一つに「赤を示す信号機の手前で停車し、赤以外に現示が変わるのを待っていれば安全に走行できるように全線の設備が構築されている」、ということがあります。出発信号機が、安全上重要な分岐器より先にあるということはこの原則に照らしてあり得ない状態です。分岐器が未開通なのに、列車が出発信号機の直下まで進んでしまったら、脱線する可能性があるためです。
しかし、分岐器の手前(駅のホーム寄り)は信号機を建植できる用地が限られているので、下の写真のように、出発信号機がより用地上のゆとりがある位置に建植されることが行われています。これはすべての分岐器がある駅の話ではなく、全列車が停車するような停車定位の駅の場合のルールとなっており、分岐器部分の安全は運転士の注意力に任されています。
用地の面では合理的ながら、なかなかリスキー(危険)な気がします。もちろん、TSIによる新しい信号システムETCSでは自動信号機の原則どおり、分岐器の手前で列車が停車できるように改善されています。
車両のヘッドライトの点滅
ベルギーの国内法により、列車が、周囲に警告(危険)を知らせるための機能として、列車のヘッドライトを一秒間に40回点滅させる機能の搭載が義務付けられています(NNTRとしてEU加盟国に告知されています)。
見かけたことはありませんが、自動車でいう激しいパッシングみたいな感じなのでしょうか。
ダイヤ改正
旧国鉄系の幹線に限った話ですが、ヨーロッパのダイヤ改正は、12月の第2土曜日又は6月第2土曜日の夜中に行われています。
以前、運転計画に関する国際標準化の資料収集のついでに、この話を欧州の運行部門の方に聞きこみした際には、「国際列車が多いので伝統的に行われてきている」という話だったのですが、現在では単一欧州鉄道網指令(2012/34/EU)のANNEX 7に規定されていました。
こんなことまで明文化されています。
出発指示合図器の点滅
オランダ国鉄系路線のインフラ管理会社であるProRailさんの取り組みです。
この「出発指示合図器」(vertreksein)は、日本にもあります。駅から列車が出発できる状態になっていることを、駅の係員から、列車後部に乗務している車掌さんに知らせるための合図器で、ホーム上に灯火が備えてあるのを見ると思いますが、それです。より詳しくいうと、出発信号機が進行現示になっており、かつ、出発時間になっていることを、点灯することで車掌さんに合図する標識(ちなみに信号と標識はオランダでも区別されています)です。
色はオランダでも日本でも、電球色の灯火ですが、オランダでは、2022年末までに点滅するタイプに変更するため、2022年6月から新しいタイプに順次交換しているそうです。
その理由はプラットホームの他の明かりとの誤認の防止のため、とのことです。
詳しくはこちら(ProRail さんサイト)で案内されています。どんな点滅なのか、見てみたいです(「V」と書かれている合図器です)。
暫定運転免許証
欧州では鉄道運転免許はここでご紹介しているように2階建ての制度になっています。
1段階目のLicence(運転免許証)は一般的に欧州各国の行政機関が発行するカードタイプで欧州共通制度ですが、2段階目のharmonised complementary certificate(調和補完証明書)は、鉄道事業者さん等が発行する、運転条件(入換なのか営業運転なのか)等が書かれた証明書なのですが、この両方が必要になっています。
その1段階目の運転免許証の発行事務は、ドイツの場合連邦鉄道局(EBA:Eisenbahn-Bundesamt)の鉄道運転免許事務所(Triebfahrzeugführerscheinstelle)が行っています。欧州は免許は10年で更新ですので、結構な事務量があると思います。
これらの試験に合格後にEBAに申請することで運転免許証(1段階目のもの)が発行されるわけですが、申請から発行まで数週間がかかります。そのため、試験合格後にすぐ運転免許が必要な場合には、手数料は余計にかかりますが、下図のようなA4の「暫定運転免許証」を発行してもらうことができます。
この暫定運転免許証は、試験合格済の方へのICカードの発行(数週間)までのつなぎとして、また、実技試験が最後にあるとして実技試験はまだ行っていないが、合格後すぐに発行したい場合にEBA・鉄道運転免許事務所(の委託先業者)から実技試験の試験官宛に送付して預けておき、受験者の合格後に有効にする手続き後すぐ合格者に交付することに使われています。

くわしくはこちらの運転免許証手続きガイド(Triebfahrzeugführerscheins)を参照ください(ドイツEBAインターネットサイト)。
脱線検知装置
列車の走行中に脱線を検知するためには、いかに早く脱線をし始めた極早期に検出し、ブレーキを動作させるかが重要です。レールから逸脱してから検出し、ブレーキをかけても甚大な被害が生じかねないためです。
しかし、列車の走行加速度や上下左右の振動がかかっている中で、脱線の検出は難しく、脱線していないのに検知してしまう誤検知も怖いです。現状ではJRさんの一部通勤車両に脱線検知装置は搭載されているのですが、日本ならではの技術です。ブレーキの大手メーカーさんや、それを利用した車両メーカーさんが製品化しています。もちろん実際に脱線する列車は、日本では踏切事故や地震起因を除けば僅少です。
脱線検知日本独自技術とも思われていましたが、2023年8月の欧州地域の技術基準の一つである車両TSI(LOC&PAS TSI)の改正により、以下のものの技術基準が示されました。
- DPF:脱線防止機能
- DDF:脱線検知機能
- DDAF:脱線検知・動作機能
脱線検知・動作機能がある装置の車両への認可は、リスク分析によることが書かれている点も、RAMSの適用されている信号装置を別とすれば、初めてではないかと思います。
この改正では同時に5Gを活用した信号システムFRMCS(ベースライン0)が信号TSIについにお目見えしています。こちらも注目です。