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- 1.フリーきっぷがお得な距離(途中下車その1)
- 2.車両の型式の判別
- 3.車輪
- 4.ヨーロッパの車内アナウンス
- 5.小ネタ
- 6.運送約款(途中下車その2)
- 7.鉄道文化財
- 8.分岐器の番数表現
- 9.有名駅
- 10.鉄道網
目次
運送約款
途中下車をしてよいのか?
鉄道事業者さんの運送約款において、ふらりと途中下車することがルール上許されるのかどうか(※現場の扱いで許されるかどうかではなく)明文ルールについてご紹介します。
日本の場合、新幹線や特急列車も、普通列車も、共通で使える「乗車券」があります。そのため乗車券に、追加して特急券を買うと特急に乗れるようになりますね。一方、欧州のきっぷは、ここに記載しているように日本のような「乗車券」と「特急券」という概念は無く、「列車指定されたきっぷ(クローズなきっぷ)」と「列車指定されていないきっぷ(オープンなきっぷ)」に大別されます。列車指定されたきっぷは、基本的には券面に書かれたとおりに乗るしかないくらいの強い制約があると考えてください。
ヨーロッパでは特急でも在来線でも共通する「乗車券」という考え方が無いため、クローズなきっぷでしか乗車できない列車には、オープンなきっぷは一切無効(「乗車券」部分がないから)になるため、乗れません。また券種の変更にも強い制約があります。この点はポイントして押さえてください。
途中下車とは
一枚の乗車券に許された正規の乗車方法の中で、途中駅の改札口の外に出て、乗ってきた列車とは別の列車に乗ることを「途中下車」と称しています。
(このページでは、利用時間帯指定がなく、利用列車指定(いわゆる[advance tickets:前売り券])も無い、普通の乗車券の利用を想定しています。)
ご注意点
・非常に変化が早いため、最新でない可能性があります。
・同じ区間に鉄道運行会社が複数ある場合や、オフピーク設定(利用時間、利用曜日制限)がある場合等、利用条件の指定がある場合にそれに従わないと、欧州では不正乗車扱いとなる可能性があります。きっぷ券面の条件を守ることが第一です。
・・というわけで、ここで紹介する情報も参考程度にとどめ、鵜呑みにしないでください。
下記に紹介するような運送約款上の規定の文言はともかく、どう乗ってきたかの経緯はきちんと説明できるように気を付けています。
日本の場合
比較のため、まず日本から。日本ではほとんどの路線で「乗車券」が必要です。列車によっては、これに加え「特急券」「指定券」などの「料金」が必要なものがある、という概念で構築されています。国交省が運賃(「乗車券」の部分)の認可をしています(企画きっぷや団体ツアーは別にして)。
JR線の乗車券については100.0kmを超える普通乗車券(回数券ではなく)の場合に、後戻りしない限り途中駅では途中下車ができますが、以下の場合には途中下車ができません。特に「大都市近郊区間」については大変広がっており、例えば東京近郊区間は、「安房鴨川(千葉)→松本(長野県)[368km]」でも同じ大都市近郊区間ですので、途中下車ができない当日限り有効のきっぷとなります。最近旅行に行っていない方は、激変ぶりに注意が必要です。
※都区市内発着・通り抜け時の距離計算方法、枝線、新幹線利用の場合のルールも関係するため、詳しくはJRさんの約款を参照ください。以下はかなり簡略化しています。
- 大都市近郊区間のみを利用の場合の普通乗車券
- 特定の都区市内発着の乗車券は、同じ都区市内では途中下車できない。
例)東京駅発のきっぷで、隣の有楽町駅では下車できない。 - 100.0kmまでの乗車券
- 回数券、特急券、寝台券、指定席券、利用条件の指定されているトクトクきっぷ
これらのきっぷは途中下車できず、その駅で無効となります。
指定された列車の乗り遅れ
きっぷに指定された列車に乗り遅れた場合や、その列車から途中下車すると、基本的に無効になります。
ですが、乗車券については、その当日限りで後続列車の自由席に乗車できるようにしている会社があります(JRさん等)。
オーストリア国鉄 ÖBB
根拠資料
Guide for travelling with ÖBB in Austriaを参照しています。すぐリンクが切れてしまいそうですが、2024年10月15日版を参照しています。
下車ができないことに関する規定
列車指定があるきっぷの場合(ほとんどの場合特急のようなものです)、その列車・その使用条件下に限って有効です。下車すると無効になります(The ticket is not valid on any other train or bus[A.3.1.4]、)。ただし、「接続列車が遅延した場合等に限って例外的にこの使用条件を外すことがある」、とも規定されています[A.3.1.4.2]。
これは救済策として、後続列車が利用できるようにしているのだと思います。
列車指定がない場合(普通列車の場合)は後述します。
下車ができる条件に関する規定
普通乗車券(Das Einzelticket、Standard ticket)は2日間有効で、旅程の途中では次項の制約を除き、何度でも旅行の中断(interrupt your journey in between)ができる、と規定されています。これにより、途中下車が可能です[B.1.1.3.1]。
※地下鉄のような都市鉄道ではなく、幹線鉄道の普通乗車券です。お間違えなく。ただし次に記載しますが、ウィーンやザルツブルク都市圏内のみの普通乗車券の場合は1日(翌日の午前3時)に短縮されています[B.1.1.3.1]。
下車の制約
大都市圏の駅(Stadtverkehrsbahnhöfe)を発駅又は着駅とするきっぷの場合、その発駅・着駅と同じ大都市圏の駅では途中下車できません。速やかに目的駅に行くように指定されています。[B.1.1.3.1、B.4.3.1.1]。ウィーン、リンツ、ザルツブルグ等の都市圏が指定されています。例えるなら、東京発→大阪着のきっぷで、東京駅から乗った場合、発着駅と同じ大都市圏である有楽町駅や新大阪駅では駅改札外に出られない(出た場合はきっぷは前途無効)、という意味ですので、日本も同じですね。
その他
同じ発着駅で、きっぷ指定のルートと異なるルートのほうが安価な場合には乗車できます(差額は返金されません)。変更後のほうが高価になる場合には差額支払いが必要です。[B.1.1.5.2、B.1.1.5.3]。
以前(少なくとも2008年)は下車印(Fahrtun Terbrechungsvermerk)をきっぷに押してもらう必要がありましたが、今は、この規定はなくなっています。
英国
根拠資料
National rail「Conditions of Travel」 2024.4.2を参照しています。
下車ができないことに関する規定
指定された列車があるきっぷ(advance ticket)は、その列車・その使用条件下に限って有効です。そのため、下車すると無効になります[16.1]。ただし、列車の遅延により列車指定された列車に乗り遅れた場合には、その鉄道会社の次の便に乗車できます[9.4]。
旅行サイトさんのサイトでは、「別の鉄道会社の列車に乗れた」、という話もみかけますから現場での救済策としてはいろいろあるようですけれど、ルール上は、同じ路線を複数の会社が運行している場合でも、きっぷと同じ鉄道会社さんになります。
下車ができる条件に関する規定
「旅行の中断」(break of journey)という語が途中下車に当たります。大半の乗車券は旅行の中断ができ、1回の乗車で全行程を同じ日に行う必要がない、という説明がなされています[16.1]。
ただし、前述のとおり、列車指定がある前売りきっぷ(advance ticket)、オフピークきっぷなど制約があるきっぷは旅行の中断ができない、とも規定されています[16.1]。また往復きっぷは往路と復路の2枚のきっぷとみなすことも規定されています。イギリスでは往復きっぷには割引が効いているため往復きっぷを使う機会が多くなると思いますが、きっぷの効力としては片道のきっぷと差がないことが分かります。
きっぷが使用したい列車に対して有効である範囲内に限って、中間駅で(復路の場合は復路方向で)旅行を中断したり、再開することができることも規定されています。[16.2、16.3]
下車の制約
一部のスルーサービス(直行運転)が設定されている列車の区間では、下車ができない場合があります。[9.5、16.3]
その他
同じ区間であっても、乗車できる鉄道運行会社が指定されているきっぷや、乗車区間が指定されているきっぷの場合には券面に表示されています。この場合、指定された会社・乗車区間しか利用できません。[12.1、13.1]
乗車駅できっぷを購入できない場合(窓口が無い、機械の故障等)には、不正乗車扱いとならないためには、(1)駅で許可証(Permit to Travel)をもらう、(2)列車で乗務員から購入する (3)乗換駅で購入する を速やかに行うことが規定されています。[6.1Information]
フランス SNCF
根拠資料
Les tarifs voyageurs CONDITIONS GÉNÉRALES DE VENTE SNCF VOYAGEURS VO0131-04102024-01V (2024.10.04版)を参照しています。2022年から英語版も公表されています。
下車ができないことに関する規定
似た用語が出てくるため先に説明します。「e-billet」(eビエ(eきっぷ))と、「billet électronique」(電子的きっぷ)があり、e-billetは、ネットで予約して自分のプリンターで紙に印刷したりスマートホンに送信して使用するタイプのチケットです。このe-billetは、後述するように利用条件が限定されます。一方、billet électroniqueは、駅で受け取るタイプで、旅行会社のツアーで発行されるチケットの場合が多いです。
フランスでも列車は、予約しないと乗車できない列車(特急やTGV)と、予約不要で乗車できる列車、の2種類に分けられます。
予約が必要な列車に関しては、その列車を予約していないきっぷ(e-billetを含む)では利用できません。また予約が必要な列車を指定したきっぷ(e-billetを含む)は、その指定された列車・その使用条件下のみに限って有効です[Volume 1の5.9.1]。
予約不要の列車で使用できるきっぷ(e-billetは除く)が、指定された日付に列車で使用されていない場合には、7日間引き続き使用可能です。ただし、同じ運賃、同じ旅程であることなどの所定の条件を遵守し、利用できる設備が変更になる可能性を甘受することが条件、とされています。[Volume 1の5.9.1]。
※私が思うに、この規定の逆の解釈として、地域交通線(TER)のような予約が不要の列車を乗る場合には、何時発に乗っても料金は変わりませんので、予定より遅く乗ろうが早くのろうがとがめられないのだと思います。
予約不要の列車で使用できるe-billetでも、e-billetの券面に指定された列車、日付、クラス、経路のみで有効で、e-billet以外のきっぷでは許されれている7日間利用できる規定の適用はありません[Volume 1の5.9.1]。
下車ができる条件に関する規定
上記のようにe-billetは、券面記載の列車のみ有効ですので、自分の都合での途中下車をするときっぷが無効になってしまいます。対策としてはあらかじめ下車する駅はe-billetの予約時に、降車して同じ日に再乗車するように必要な時間を見込んで予約しておくこと(ターミナル駅なら、うまく予約すれば料金は変わらない)です。
運送約款の規定の話に戻りますと、e-billet以外では、「旅行中の自発的な中断」(d'arrêt volontaire en cours de trajet)をした場合には、上述のきっぷの有効期限や使用条件を満たす範囲内で、自発的な中断をした駅において、再びコンポステ(打刻)をすることが必要とされています[Volume 1の7.1]。
※コンポステとは、「欧州では改札機がないので自分で打刻機できっぷに打刻する(時間と駅名が打刻されます)」・・ということが必ず旅行ガイドに書いてありますが、あれです。あれを途中下車駅でも、再度行う必要があります。これはここで紹介している中ではフランス・SNCF独特のルールですので、コンポステは行ってください。同じ規定[7.1]において、コンポステが行えなかった場合には、自主的に申告することも規定されています。
類似するものとしては、駅の窓口できっぷを購入する際に途中下車することをを申告してきっぷを購入すると、1枚のきっぷの料金なのにきっぷを物理的に2枚に分けて発券される(※2経路に分かれる場合には普通は運賃が高くなるはずですが、途中下車しない場合と同額で、2枚発券してもらえるという意味です)場合がありますが、これは不正乗車と誤認されないようにしてくれているのだと思います。
なお、きっぷが何枚かに分かれている場合、その日最初に乗る駅で行程の一連のきっぷに打刻することも可能です。乗換駅は時間がない場合があったり、前述のようにValidate(打刻)ができない駅もありますので最初に乗る駅で済ませたほうが無難です。
日本のJR線では、不正乗車(同じ経路を戻る不正)をしていない証明に、きっぷの券面に駅名に入った下車印を押される場合がありますが、実際には3回に1回くらいしか押されない状況になっています。
下車の制約
前述してしまいましたが、下車駅でコンポステによる打刻が必要です[Volume 1の7.1]。また、繰り返しになりますがe-billet基本的に列車が変更できませんので、予約時に下車駅を予定しておく必要があります。
その他
上述していますが、予約不要の列車で使用できるオープンのきっぷは、7日間有効です[Volume 1の5.9.1]。
ドイツ・Deutsche Bahn(DB)
根拠資料
ドイツ鉄道(DB)さんの場合、インターネットサイト上で予約時に途中下車駅(stopover、Zwischenhalte)を2駅まで指定できますので、途中下車ができることは明確です。
※画面最下部の[Further options]ボタンを押し、「Stopover」又は「Zwischenhalte」と出ているところを押すと、下車駅を入力することができます。
そのため今度はstopoverを設定しない場合とする場合の価格差が気になり、別ページのように調べたりしています。
運送約款そのものはBeförderungsbedingungen Deutsche Bahn AG 2021.12.12(2022.9.6更新)版が公開されています。リンク切れの場合はこちら(DBさんサイト)を試してください。
追記
2022年2月にDBさんの入力システムが仕様変更されており、途中下車駅の入力は「Weiteren Optionen」から行うようになっています。やはり2駅入力できるようですがよく調べて、以下の記事を更新します。
下車ができないことに関する規定
上述のように、下車できます。
明文化されていませんが、予約が不要な列車(地域鉄道等)についてきっぷ券面に列車時間が書かれていたとしても、その後続の列車と価格差がない場合(※普通は定額ですので、価格差はない)には乗れます。
このあたりの実情は、旅行サイトで確認願います。
下車ができる条件に関する規定
規定上は明確にはなっていませんが、100km以内の列車のきっぷ(有効期限1日)でも、途中下車できるきっぷが発券できます(一方、100kmを超えるきっぷの有効期限は2日、と定められています)[2.5.1]。
上述のように途中下車駅の指定は2駅ですが、もともとDBさんの駅には改札がありませんので、列車乗換駅についてはわざわざ途中下車駅に指定せずとも、乗り換える列車の便をうまく選んで発券しておければ同じ効果のあるきっぷになりますので、下車に必要な時間を見込んでうまく列車を選ぶことも大切です。