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念願叶い<おれんじエース>に初乗船・・・

写真 左:ドリームシャトル船上からの天保山埠頭の夜景 中:大阪南港に入港中の<おれんじエース> 右:オレンジフェリーの時刻表

2003年 冬 思い立ちまたもや・・・

                      

●航海
@★★★★★ 往路 大阪→東予→新居浜 オレンジフェリー<おれんじエース>特別室2号室(左舷側) 夜行便

A★★★★★ 復路 新居浜→東予→
大阪 オレンジフェリー<おれんじ8>特別室101号室(右舷側) 夜行便
<おれんじエース>
 総トン数:7,318.00  主機関:18,000 馬力  航海速力:21.5ノット  旅客定 員:604名 積載可能車 両数:乗用車32台+トラック92台  就航年月日:1989.04
<おれんじ8>
 総トン数:9,975.00  主機関:27,000 馬力  航海速力:22.5ノット  旅客定 員:750名 積載可能車 両数:トラック139台  就航年月日:1999.7.27

●旅程 船中二泊 二泊三日(記載時刻は定刻)
第一日目 大阪22:50→
第二日目 
→05:50東予06:40→07:50新居浜
 新居浜東港→JR多喜浜09:02→10:40多度津11:03→11:15琴平
 
琴平発16:45→16:57多度津17:18→17:52観音寺18:33→19:26多喜浜→新居浜東港
 新居浜20:40→21:50東予22:40→
第三日目 →05:50大阪08:00迄船内休憩

 

遂に念願叶い<おれんじエース>に初乗船・・・

 

●第一日目 念願の<おれんじエース>で・・・

 何気なくオレンジフェリーのHPを覗くと<おれんじ7>のドッグ入り案内が出ていた。これはしめしめと配船表を見ればちょうどここ数日は代船として<おれんじエース>が就航している。設備も良く親しみのある豪華フェリーとして知られているオレンジフェリーのおれんじ三姉妹の中にあっては船歴ももっとも古いお姉さん船である。
 大阪からの夜行下りあるいは新居浜からの昼行き上りの<おれんじ7>に乗船すれば東予で間近に出会う<おれんじエース>なのだが未だ小生には乗船機会に恵まれることはなかった。と言うのは<おれんじエース>は普段は下りは神戸発03:20で、上りは新居浜発17:10で02:40神戸着と真夜中便であるため車無し徒歩乗船での乗るだけの小生にとってはちょっと縁遠い存在であった。
 時々<おれんじ7>代船として、あるいは繁忙期に臨時便として運行されているのだがタイミング的にも今までは乗船が叶わなかった所以であった。が、今回は運良く思い立ったタイミングが良かった。
 思い立ったのが前日のこと日曜日ではあったが昼前であった。大阪の予約センターへ電話を入れる。
「明日の下り三便、明後日の上り三便の特別室空いてますか?」
「ちょっとお待ち下さい・・・、明日は・・・。」
「・・・。」
「明日は何とか空いてますね、明後日は大丈夫です。」
「明日は<おれんじエース>ですよね。」
「はい、そうですよ。<おれんじ7>がドックですので・・・。」
 係の男性は電話の向こうで何やら申し訳なさそうに問いかけに応えてくれていた。小生としては<おれんじエース>に乗船したいから確認したまでのことであるのだが。(笑)
 ま、とにかく問題なく予約ゲット。予約番号をメモしてひとりほくそ笑む。えへへ・・・。(^^)

●UCW大阪で腹ごしらえ、USJ港経由<ドリームシャトル>で大阪南港フェリーターミナルへ・・・
 南港へ直行するか、USJ経由か、ちょっと迷いながらも食い気にもそそられてUSJ経由で行くことにした。JRのUSJ駅には隣接してUSJに向かう間にユニバーサルシティーウォーク大阪と言うショッピング街やレストラン街のある大規模な施設があるのだがここでは色々お気軽な食い気は満たされるお店が軒を並べている。過去にも幾度か思い立っての船旅の前に夕食の機会を持ったことはある。未だにUSJとは無縁だが食い気は常に縁も深い。
 今回はちょっと聞き及んでいた鶴橋のお好み焼き屋の出店で大阪の味を食してからと思い立ち寄ることにした。USJ駅の改札を出て左へ進む。前方右手のエスカレーターで階上へ。そこは改札のあるフロアが既に三階なので二階ではなく四階、さらにエスカレーターを乗り継ぐとレストラン街の五階に至る。
 両脇に連なるお店を覗き込みながら奥へ向かうとちょっと広場となる辺り右手にそのお好み焼き屋があった。が、お店の前には長い行列、やはり人気店なのだ。時計の針は20:40を指していた。USJ港から南港までのドリームシャトル最終便は21:30なのでそんなにゆっくりしているわけにはいかない。で並ぶのを止めた。
 けれども食い気を諦めたわけではない。店の名前は定かでなかったが安治川や天保山の眺望を楽しめる眺めのいいレストランがあるとも聞いていたので来た路を戻る。もっとも駅よりにそれらしき最南端安治川側にレストランがあった。「西洋大食堂」と言うなの店で通路側の壁面には何やらイタリアンらしきメニューが大きな黒板に手書きでぎっしり記されている。まぁ、何でもいい・・・。
 と店内へ入る。ぐるり視線を一巡させると確かに大きな窓の向こうにJRのUSJ駅の屋根越しに安治川が見えている。愛想の良さそうな若い男性がにこやかに迎えてくれた。
「眺めがいいそうですね・・・。」
「あ、はい。綺麗ですよ。いいお席が今空きました。直ぐに片づけてごあんないしますからここでちょっとお待ち下さい。」
 と入り口の席にあんないされた。待つことほんの数分、直ぐにあんないしてくれた席は確かに眺めがいい。前方に安治川を右手にイルミネーションに輝く天保山の大観覧車が見えるコーナーの席であった。
時間の迫っていることを告げ急いで出来る料理を確認しホタテ貝の前菜とロース肉のステーキ、サイドセットを注文する。
 何ともさわやかな接客で意外と言えば失礼だが、期せずして心地よい食い気にありつけそうな予感がした。その予感は的中した。手際よくサラダ、パンが供され程なくホタテ貝の前菜・・・。ベーコンに包まれたホタテ貝が三つに野菜が少々添えられている。これが何とも美味い。そして続いてメインのステーキ・・・。これまたバルサミコソースで程よくミディアムレアに焼き上げた噛み応えのある牛ロースステーキ、小生の好みの肉だ。
 ひとなつっこい好感の持てる青年は勝手な客の要望に手際よく応えてくれいらつくことなくスムーズに食い気を満喫、アフターコーヒーもゆっくりと飲むことが出来た。リップサービスもなかなかのモノで彼はビールが好きらしく店で供するハートランドビールの生をグラスに注ぐときには泡立ちなどにも美味しく飲めるようにと気配り心配りをすることなどを楽しそうに話してくれた。


写真 左:ドリームシャトル船上からの天保山の大観覧車 中・左&右:ドリームシャトルとして就航している<キャプテンライン>の船艇、大阪南港入港時 右:ドリームシャトルのリーフレット
 ちょっと立ち寄った食い気で期せずして心地よい時を過ごした後、USJ港へ向かう。
 USJ港には当初は発券窓口のある小屋がありそこで乗船券を購入し浮き桟橋から乗船する手順となっていたのだが期待を込めて開設された街中からUSJを繋ぐ航路や天保山との航路、乗船する南港とを結ぶ航路などのいずれもがどうも思惑外れであったようで航路が廃止されたり統合されたりしている。発券窓口での販売も昼間はしているのかも知れないがこの時刻にはどの窓口も閉ざされていた。
 十分前であったが見下ろす浮き桟橋にはドリームシャトル乗り場C番乗り場に船影はない。B番乗り場に天保山との連絡船<キャプテンライン>の船が接岸していた。
 発券窓口は総て閉ざされていて人影もない。ドリームシャトルの窓口がどれなのかも分からない。色々と張り紙もされているのだが何も見あたらない。仕方ないのでとにかく桟橋の乗り場へ向かう。各方面への乗り場は浮き桟橋に@からCの乗り場がある。中央にはプレハブの待合室が設けられている。
 キャプテンラインの女性地上係員が待合室の照明を切り店じまいをしていた。C乗り場には未だに船影はない。待合室から出てきた女性に尋ねてみる。
「ドリームシャトルは・・・?」
「こちらですよ。」
 と停泊中の<キャプテンライン>を指さす。乗船券は船内で購入しなさいと言うことであった。
 で、ようやく納得というか理解が出来た。独立して運行されていたドリームシャトルはキャプテンラインに統合されたようでUSJと天保山を結んでいた航路の船がそのままドリームシャトルとしても運航され南港との間に就航していると言うことである。

●念願叶い<おれんじエース>に初乗船・・・
 乗り込み船内の係員に乗船券を求める。今までは確か600円であったはずだが、今回は700円であった。値上げしたようだ。船内には既に十名余りの乗船客が乗り込んでいた。
 定刻21:30<キャプテンライン>はUSJ港を後にした。今宵は緑色のイルミネーションが美しい天保山の大観覧車を眺めながらひとまず天保山へ向かう。海遊館前の天保山桟橋に入港21:40、船内案内放送では天保山出港時刻を21:45と告げていた。21:45天保山を出港し南港へ向かう。所要時間約25分、21:10南港に入港。
 南港ではドリームシャトルの桟橋は北端に桟橋がある。


写真 南港北端から接岸中の<おれんじエース>
 ドリームシャトルの桟橋から大駐車場を横切りバースへの連絡ブリッジ入り口のスロープにさしかかると接岸中の<おれんじエース>が見えた。
 連絡ブリッジからターミナルビルに至るとそこは二階の待合室。二百名くらいだろうか、思いの外待合室は賑わっていた。早くもバースへ通じる通路に並んで乗船開始を待つ人たちも居た。
 階下へ降りて発券窓口で乗船券を購入する。
 この便は大阪南港着22:00の新居浜発1便が折り返しで22:50出港の下り3便として運行されているのだが既に時刻は22:30頃であるがまだ降りてくる車両があり乗船あんない放送がない。少々出港が遅れそうな気配である。
 程なく乗船が開始された。今宵は乗船客が多く乗船券のもぎりは連絡ブリッジの岸壁への出口で行っている。少ないときはこの出口から左手に船腹を見ながら岸壁をすす見渡されたタラップの登り口あるいは船内に入ったところで行っている。いつもの<おれんじ7>とは異なりこの<おれんじエース>の乗船口は手前船首方向に近い。岸壁から渡されたタラップもやや小型である。ひとまわり小型の故であろう。タラップを昇るとそこでは見覚えのあるクルーが出迎えてくれていた。そこは車両甲板で階上へはエスカレーターが通じている。


写真 左:船内案内所 右:優雅な曲線を描く3Fから4Fへの階段
 エスカレーターを上がるとロビーにゆったりとした至る。おれんじ三姉妹の中ではもっとも船令の古い船であるが思いの外美しい。案内所へ向かおうとすると出迎えのクルーのひとりが
「毎度・・・。」
 と声を掛けてくれる。ちょっとてれくさく気恥ずかしい感じであるは、ちょっと嬉しいような気分でもあった。<おれんじ7>の代船運行であるためなのだろうか、クルーは顔見知りの人たちが多い。案内所で部屋のキーを受け取りながら尋ねてみるとやはり<おれんじ7>のクルーが乗り込んでいるとのことであった。レストランの厨房の人たちも同じと聞きおよびひとまずレストランへ向かうことにした。
 が、思いの外、想像していたよりは辺りがかなり美しく雰囲気もいい。で、案内所前のラウンジの椅子にちょっと腰を下ろし案内所や階上への湾曲した階段をカメラに収めた。
 毎度と出迎えてくれたクルーが声を掛けてくれた。
「この辺りは綺麗ですけどね、今日は7がドック入りしていて代船なんですよ。」
「そうですね・・・。」
「あのぅ。鍵はちょっとコツが要ります。押し込んで持ち上げて開けて下さい。ドア周りにパッキングを入れていますので・・・。」
 と、何ともこの<おれんじエース>で申し訳ないといった恐縮してくれているような感じであった。小生としてはやっと叶った<おれんじエース>初乗船。この機を捉え思い立ってはせ参じたわけであるし、<おれんじエース>はオレンジ三姉妹の中ではもっとも船齢が古いことも承知の上でのことであった。


写真 左:レストラン客席 中:唐揚げ定食 右:多目的ホールを兼ねたカラオケコーナーもあるフォワードラウンジ
 レストランは案内所のあるロビーから船首方向右舷側にある。右舷側船窓脇にボックス席、内側厨房との間に通路を挟み席が設けられ結構ゆったりしている。厨房の前は姉妹船同様にアラカルトメニューがビュッフェスタイルで並べていて好みの料理をトレーに取りキャッシャーで精算する仕組みになっている。壁面に掲示されたメニューの品々はキャッシャーで注文すると番号札をくれる。注文の度に調理してくれるのである。出来上がると呼び出してくれるので受け取ればいい。
 USJで予期せずして美味いイタリアンにありついていたのだが食欲は健在。唐揚げ定食を注文する。窓際の席に陣取り待つこと暫し
「一番の唐揚げ定食の方・・・。」
 と呼び声が聞こえる。香ばしい香り漂う唐揚げ定食をゲット、大きな唐揚げが五個にポテトサラダ、キャベツ、レタス、キュウリの野菜サラダが添えられレモンの切り身がひとつ、それに皿に盛られた大盛りのみそ汁がこの定食の内容。これがいつものことながらまことに美味い!
 写真のご飯を盛りつけた皿がオレンジフェリーのロゴマーク入りの皿で<おれんじ8>の場合はどの食器もその種のモノを使用しているのでかなり豪華な感じがするのだが、この<おれんじエース>の場合はご飯を盛りつけた皿だけがロゴ入りでメインの皿は違っていた。
 それにしても近頃は食欲が旺盛になったモノだ。
 体調を崩しかなり倦怠感に見舞われ医者へ行けば行く度に異なる病名を告げられ一体どうなっているのかと思いながら病院へ行くよりは・・・と、思い立ち始まり度重なった思い立っての船旅であったが、どうやらおかげでかなり功を奏して来たようである。食い気旺盛!(^^)
 それにしてもステーキに唐揚げと立て続けでお腹は超満腹ぽんぽこぽん。
 我が<おれんじエース>はいつしか出港していた。どうやら出港は17分遅れの23:07で離岸したようであった。


写真 <おれんじエース>特別室2号室室内
 特別室2号室は4F左舷側の最前方の部屋である。レストランから再び案内所前のロビーに戻り優雅な曲線を描く階段を上る。左舷側の通路を進み部屋に至る。
 先刻案内所で出会った顔見知りのクルーが部屋の鍵の開け方のコツを教えてくれていたのだがすっかり忘れていた。鍵を鍵穴に差し込み開けようとするがどうも確かにコツが居るようで一筋縄では開けられない。が、ガチャガチャしているうちに開いた。
 とにかく無事室内へ入ることが出来た。ライトが仄かにしか点灯されていなかったこともあってか確かに狭くてちょっと古めかしい感じはする。けれども雰囲気はそれほど悪くはない。ひとまず室内を一巡。トイレと一緒になったバスルームもビジネスホテルのユニットバスのようなシンプルさだが悪くはない。何よりきらびやかさがなく落ち着いた内装はむしろ雰囲気がいい。ひとまず安堵&満足。
 前回の<おれんじ8>では待望のベッドパッドも敷き込まれていたからこちらにも大いに期待してベッドのシーツを捲ってみたが、こちらは残念ながら期待はずれ。オレンジフェリーお得意?のマットレスにシーツの直敷きであった。
 ライティングデスクの上に置かれたアメニティーの内容、お湯の入ったポット、トレーに乗せられた煎茶のティーバッグにフェリーせんべい、茶托に湯飲み。TV、TV台に収められたビデオデッキ、浴衣にバスタオル、ドライヤーなどは<おれんじ7><おれんじ8>とも変わりはない。もちろん救命胴衣もちゃんと収められていた。予備の毛布もロッカー内に置かれていた。要するに他の二姉妹に比してちょっと、いやかなり狭い他は何の遜色もないのである。


写真 フロントビューのゆったりとした上級船室客用4Fフォワードサロン、夜行便なので室内の照明は仄かにし前方のカーテンが開かれていた。
 特別室内を一巡しちょっと隣のフォワードサロンを覗いてみた。船幅いっぱいに最前部を占拠して設けられたラウンジは結構ゆったりと広い。写真は左舷側内側のコーナーであるが落ち着いてゆったりとした趣がある。ライトはかなり仄かに落とされていて前方の船窓のカーテンは総て開かれている。夜景を楽しむに先客への心遣いなのであろうか。夜行便のフェリーの場合は航行の支障になるとの理由で折角のフォワードラウンジもカーテンが閉ざされていることが多いのだがちょっと意外でもあった。
 ここは上級船室客専用のためか人影は無かった。ひとり陣取りのんびり明石海峡大橋辺りまでのひとときをここで過ごしたいとの思いもしたのだが、この日は少々寝不足気味であった。

 まずは一風呂浴びてと船室に戻りバスタブに湯を満たしながらコーヒーブレイク。程なくバスタブには湯が満たされた。ゆったり湯に浸かり体を温めシャンプーしてすっきりいい気分。ちょっと眠気が吹き飛んだ感じでバスタオルで濡れた髪を拭きながら浴衣に着替え一時ゆっくり船窓に移ろう大阪湾の夜景に視線を巡らせながら冷めたコーヒーに煙草。船旅の始まりを満喫できる一時である。
 程なく船窓からは淡路島の高速インターのオレンジ色に輝く明かりが見えた。前方には明石海峡大橋を見る、既に午前零時を過ぎていた。少々遅れたままの様子である。
 ひたすら船に乗船することが主たる目的である小生にとってはこうした一時は何より至福を感じるときである。もちろん移動が主目的ではないから少々の遅れなどは全く気にはならない。定時運行を信条とする定期航路にあっては不謹慎かも知れないがむしろちょっとでも長時間乗船していられるわけであるから歓迎すべき状況である。
 程よい疲れを感じながら浴衣姿でペッドパッドの敷き込まれていないベッドに潜り込む。マットレスはどうやら船底型をしているようで左右両端がせり上がり自然と身体は中央に沈む。寝相の悪い小生への心遣いなのであろうか? 転げ落ちる心配はなさそうだがかなり年季の入ったマットレスのようであった。

●第二日目 新居浜東港に上陸、琴平へ・・・

 東予港入港は20分程度遅れていたようだ。多分入港時にはかなりエンジン音が高まっていたであろうし案内放送なども流されていたはずであるが全く気付くことはなかった。停船していることは明らかであったが船室が左舷側であったから港の岸壁の様子は船窓からは伺い知ることは出来ない。
 船旅での寝起きはシャワーですっきりと言うのも心地よい一時である。のんびりシャワーを浴びて浴衣を羽織り船窓の外を見ると既に我が<おれんじエース>は東予港を離岸していた。遅れはそのままに丁度07:00頃新居浜へ向けて出港したようであった。


写真 <おれんじエース> 左・左中:新居浜東港入港直前のデッキにて 右中・右:新居浜東港の<おれんじエース>
 左舷側のこの部屋では朝陽が雲間からまぶしく注ぎ込んでくる。曇りの天気予報であったがちょっと陽射しがしてきていたようであった。船内放送では先刻案内所での美味しい石鎚のの水で沸かしたモカコーヒーの販売を告げていた。モーニングブレイクはこのコーヒーに限る。美味いのだ。
 トレーを持ってコーヒーを買い出しに部屋を出る。廊下の両側の部屋はところどころの部屋のドアが開け放たれている。東予で下船した人たちが使用していた部屋である。
 コーヒーをゲット、紙コップに満々とついでくれ200円。ゆで卵も一個50円で販売している。部屋に戻りゆっくりコーヒーブレイクのひとときを過ごすうちに船窓前方には再び四国の山並みが近づいてくる。こちらは左舷側の部屋であるから結構外海を航海している趣であるが沿岸を東予から新居浜までは右舷側に陸地を近くに見ながらの沿岸を航行している。
 いつも乗船する時には右舷側がいいのか左舷側がいいのかと迷いつつその時々の気分でいずれかを希望して部屋を取ってもらうことも多いのだが今回はどちらでもいいと発券窓口にお任せで左舷側の部屋になっていた。未だにどちら側がいいのかの結論には達していない。どちら側も良いのである。
 程なく左前方に新居大島の島影が認められるとボォーーーッと汽笛一声、新居浜東港入港を告げていた。
 待望の<おれんじエース>への乗船が叶った昨夜は乗船時刻も遅く冬の夜風は冷たいので船外デッキへの探索をしなかった。間もなく下船、部屋をちょっと早めに出て下船する前にデッキを一巡りする。幾度も東予港で<おれんじ7>から間近に見たことのある<おれんじエース>の姿はややこぶりでデッキも何となくかなり狭い印象を受けていたが思いの外広い。清掃も行き届いていて綺麗である。
 とにかく一度も乗船したことのなかった船舶であるから一度は乗船しなければ・・・とオレンジフェリーファンのうちには概して評判の宜しくないこの<おれんじエース>にもと乗船したわけであったが小生としては思いの外満足の行く船旅を愉しめた。
 レストランの雰囲気、それにこのデッキの趣などはどことなくノスタルジックに船らしさを感じさせてくれた。当然新造船の方が常に諸設備も良く綺麗であるが、それなりに年季の入ったモノはこれまた円熟した魅力を漂わせもしているものである。
 お世話になる機会の多いオレンジフェリーに対する親しみを込めた身びいきなのかも知れないが上げたり下げたり小言も述べさせてはいただくことも多いがいつもやはり何より気軽に船旅が愉しめる嬉しい航路である。

●新居浜東港上陸
 新居浜東港入港は定刻07:50の20分遅れで08:10、既にJR予讃線上りの予定していた乗車予定の普通列車多喜浜発08:16には間に合わない時刻である。覚悟を決めてのんびりと下船する。この場合の覚悟とは入港が遅れて乗車を予定にしていたJR普通列車に間に合わないことを覚悟すると言うより二十分余計に乗れたが下船しなければならいという意の覚悟である。(笑)
 あくまで常に主たる目的は乗船であって、その結果生じる空き時間、つまり復路乗船までの待ち時間を過ごすエキスカーションはいわばおまけなのであるから。

 ターミナルビルを出ると前には新居浜駅への連絡バスが待ち受けていた。タクシーも数台あった。まずは接岸している<おれんじエース>の姿をカメラに納めようとひとまず大駐車場を横切り岸壁に近づく。いつになく取れラーやタンクローリーなどが多く並んでいた。
 再びターミナルビルの玄関に戻るとタクシーが一台だけ残っていた。それで多喜浜駅へ向かう。
 多喜浜駅には十分も要することなく着く。
 いつ来てものどか・・・かつては有人駅であった面影が結構立派な駅舎として残っている。その駅舎は片隅の待合室を残し中央部にはでんとラーメン屋さんが鎮座している。昼前頃から開店するのであろう、いつもこの時刻には開いてはいない。
 今回に限ったことではないが、この思い立っての船旅は船に乗船することそれ自体が目的であってどこかへ行こうという確たる目的がないのが常である。今回も例外ではないが復路のオレンジフェリー新居浜発三便の出港は20:40であるのでたっぷり四国滞在十二時間を我がモノに出来るのである。従ってどこかへ行こうという思いを抱くのは当然の人情であろう。
 幸い四国には霊場八十八ヶ所を初めとした仏閣を始め名所旧跡も多い。時の流れが心なしかゆったりとしていて人々の心も温かく居心地の良い土地柄でもある。海の幸、山の幸にも恵まれている。
 で、今回は何となく讃岐うどん・・・をと思っていたのでインターネットのHPでそれなりの情報を得ていた。金比羅参りもよかろうとも思っていたので琴平界隈のうどん情報を手にしていたわけである。
 と言うことでひとまず琴平へ向かおうと多喜浜駅にやってきたわけだ。
 乗り損ねた08:16の上り列車の次は09:02発の普通列車である。まだ三十分以上待ち時間がある。暫し待合室のベンチに腰を下ろす。傍らには先客が居た。大きな旅行鞄を手にした可愛いお嬢さんで何やら携帯電話で話している。漏れ聞こえるに実家のお母さんにでも話しているようで小生同様<おれんじエース>に乗船していたらしく入港が遅延し08:16に乗り遅れたので次の09:02に乗車することを告げていた。単身で大阪あたりにでも就職していて休日なので実家へでも帰って来たのであろう。


写真 JR多喜浜駅 のどかな情景と何とも滑稽でほほえましい諸々表示
 下り列車08:43の伊予西条往きは定刻に到着発車していたのでこの様子では上りも定刻であろうと予測できた。予讃線は単線のために結構ダイヤが乱れることが多い。瀬戸大橋が出来てからは特に風の影響を受けることも多く今までにも幾度か乱れたダイヤに遭遇したことがあった。
 下り列車を待合室から見送って暫し後、待合室を出て陸橋を渡り島式ホームに至る。まだ定刻十分前であるがホームにはベンチと灰皿のある待合室もあるのでひとまずベンチに腰を下ろし煙草を一服。
 辺りを見渡し今まで気付かなかったことを幾つか発見。ひとつはワンマン列車の乗車降車の仕方を記した表示、何とも滑稽なアリの行列のようなイラストがおもしろいやらお客をアリに例えていると思えばちょっと腹立たしいやら。(笑) 次なる発見は通過列車の時刻表なるモノの存在。しかも待合室の入り口には通過列車は危険ですから・・・と大書きもされていた。ふとJRの列車は「危険」なのか・・・との思いが過ぎったのは小生だけであろうか?
 上り普通列車は定刻09:02多喜浜駅を発車。のんびり鈍行列車の旅がはじまる。新居浜駅へ行き特急列車で行けば琴平着は09:45頃で鈍行列車で行くよりは一時間半早くたどり着けるのだが急ぐ旅でもないし何よりあの振り子列車の揺れは心地よいとは言えない。駅ごとに停車して時々たっぷり停車して追い抜かれて行く大らかな鈍行列車で充分である。この列車は二両編成でワンマン列車ではなかった。
 席に巡ってきた車掌に琴平行きを告げ乗車券をゲット片道1410円也。途中伊予三島で二十分ほどのんびり停車していたであろうか、ちんたらだらだらやがて10:40多度津着、途中で車窓の外は雨模様となってきた。多度津発11:03の普通列車に乗り換え11:15ようやく一応の目的地琴平に到着。

●琴平巡り
 さすがに琴平は金比羅さんの駅である。到着した3三番線は島式ホームで陸橋を渡り駅舎のある2番線ホームにおり改札口に至る。しかし・・・1番線ではないのがちょっと不思議であった。一番線は駅舎に面した2番線のホームが多度津寄りに延びていて突き出した部分に頭端式ホームとして設けられていた。
 改札を出るとゆったりとしたと言うかがらんとしたというか、天井の高い大きな木造駅舎である。鳩が飛び交っている。土産物などを売るコーナーが中央に鎮座し、キオスクもある。ベンチが並びその向かいにコインロッカーがあった。ぶらりぶらりと散策には手ぶらに限る、で、ひとまず荷物はコインロッカーへ預ける。


写真 琴平 讃岐うどんの「水車うどん」 左:だいこんうどん450円 右:釜揚げ特上天ぷらうどん1100円
●水車うどん 香川県仲多度津郡仲南町買田547 TEL 0877-73-2531 営業時間09:00-18:00 水曜定休
 ひとまず情報を得ていた讃岐うどんの「水車」へ歩いて行くことにしていたのだが、雨はどうやら本降りになりつつある様子だったので駅前からタクシーに乗車。約十分タクシー代は1000円余り。
 「水車」は国道に面し水車小屋をもした作りのつもりであろうか木造の大きな小屋のような佇まいであった。
 入り口を入ると右手に厨房、正面に何やら食器などを並べた巨大な配膳台のようなカウンターがあり、その手前から左にはいると左手に桟敷席、右手に椅子席が並んでいた。
 ネット情報で得ていた「だいこんうどん」と「天ぷらうどん」を注文する。釜揚げ天ぷらうどんには並900円と特上1100円の二種類のメニューが掲げられていた。
「並と特上とはどう違いますか?」
「特上はエビ天がひとつ多いです。」
「それだけの違いですか?」
「はい、そうです・・・。」
 要するにエビ天の数が多いか少ないかだけの違いなのだ。質の違いはないと言うわけである。小生は極めて天ぷら好きであるからひとつ多い特上を所望した。
 待つこと暫し、運ばれてきたうどんは写真でお分かり頂けるどうかだが通常のうどんのイメージからすればかなり汚れているというかちょっと鼠色がかった色をしていた。近頃は輸入小麦粉が多い中で地元香川産の小麦粉を使用したこの店特有の自慢の麺の色らしい。どちらも案外にうどんの量が多くないので一安心。
 まずは「だいこんうどん」を食する。いわゆる釜揚げのぶっかけうどんにだいこんおろしと刻みネギが添えられたうどんである。だいこんおろしと刻みネギをうどんの上にのせ醤油をぶっかけ食するわけである。麺にはかなり腰があり適度な塩加減というかさすがに名だたる讃岐うどんのひとつ、確かに美味い。
 天ぷらうどんは温かい釜揚げうどんでたっぷり付け汁が添えられていた。うどんは同様であるが出汁にたっぷり浸し食するが味は案外淡泊で薄い。天つゆとして天ぷらを浸すと真っ黒に色付いて濃い味になってしまうことが多いのだがこの付け汁はたっぷり浸しても程よい味加減である。天ぷらは江戸前風にカリッと揚げられていて大変美味い。何よりこのエビの大きさには驚きであった。車エビなのだが写真で大ぶりの丼鉢とその大きさを比較すればお分かり頂けると思うがおよそ15cm近くもある。しかも衣の中にはちゃんと端までしっかりエビの身が入っている。かなり大きな車エビを使用して居るであろうことは想像に難くない。
 それにしても朝食抜きでやってきたのだ一気に大万腹・・・。(^^)
 何でもここ「水車」のうどんのなかでは焼き肉風味の肉をたっぷりのせた「肉うどん」が好評で注目されているとのことであったが残念ながらそれを食するまでには遠くおよばなかった。またの機会に委ねることにしたいと思う。
 外はいよいよ雨も本降りの様子。雨が上がれば金比羅参道辺りまでぶらぶらと歩いて行こうと思っていたがどうもその気にはなれない。で、タクシーを呼ぶことにしてお店の人に尋ねてみた。ご主人らしき男性が厨房の中から快く応えてくれ代金を払い同時に
「タクシーを呼んでいただけますか、電話代も一緒にとっておいて下さい。」
 とお願いすると電話代は要らないときっちりおつりをいただいてタクシーを呼んでもらった。

 雨降りしきる中、さすがに地元のタクシーである。金刀比羅宮参道入り口の海の科学館へ向かうことにして「水車」を後にすると来た路を戻るわけではなく反対方向に進み直ぐに右折して山裾の路を多分抜け道を通っていったのであろうと思われる。
 金刀比羅宮のある象頭山521mの麓の路を暫く走ると川(金倉川)沿いの路に出た。橋柱はなく屋根のある珍しい橋を右手に見て程なく左折して脇道へ入り坂を上り狂いと右折して回り込むとそこは海の科学館の前であった。雨がますます激しくなっていた。

●海の科学館(財団法人琴平海洋会館) 香川県仲多度津郡琴平町953 TEL 0877-73-3748 開館時間09:00-17:00 年中無休
 とにかく入館、求めた入場券の券面には No.102000 \400 のきりのいい数字が記され「時空を越えて夢と冒険の旅に出かけよう。」と印刷されていた。入り口に置かれていたパンフレットを手にまずはエレベーターで階上五階へ上がる。口上には映像とサウンドで夢の世界へ迷い込む(海の夢)の5Fフロアと記されている。じかんはたっぷりあるし腹も満腹なのでひとまずベンチに腰掛け暫しいい加減に見たような聞いたような感じのひとときを過ごす。大した感動を受けることもなく映像とサウンドで暫し暇つぶし。
 パンフレットを見入ると屋上にはプールがありラジコン船が操船出来るとある。階段を上ると確かにゲームコーナーのような操船席?が幾つか並んでいた。おもしろそうなので早速にチャレンジ、ところがどうも故障中とか整備中と表示された操縦席が多い。動きそうな何も表示のない四国フェリーと記された操縦席でまずは試すこととした。三分300円の表示がありコインの投入口に入れると操船出来る仕掛けになっていた。中央に島を配した7-8mのプールの中で四国フェリーが動き出す。先進、更新、停止、操舵の操作を繰り返すと四国フェリーは右往左往して動く。それなりにおもしろい僅か三分間かと思っていたが、これも結構充分に楽しめる時間である。次に何の表示もなかったタンカーの操船席に移動、同様にコインを300円投入して、さぁ、操船・・・。しかるにこちらは如何様に操作しようとも微動だにしない。装置が壊れているのが模型の船の電池切れなのか原因不明だがとにかく全く動かない。係員も居ない、どうしようもない・・・。300円を食い込まれたまま諦めた。(笑)


写真 左:海の科学館(入館料大人ひとり400円)屋上の動くブリッジに通じる階段踊り場からの眺め 右:動くブリッジ内にあった瀬戸大橋付近の海図
 仕方なくラジコン船遊びを諦めたのだが屋上からさらに階上へ上がる階段がその奥に設けられていて「移動ブリッジ」と言う表示がされていた。その階段を上がると屋上二階に至る。鉄骨の露出階段で階上からは地上の眺めが見下ろせる。正面に日本最古の芝居小屋と伝えられる旧金比羅大芝居の金丸座が眼下に見える。
 そこから渡り廊下を行くと移動ブリッジに至る。多分、数百トンの配船となった船舶の操舵室を移設したのであろうか、それとも模して設けたのか定かではないが中にはいると小振りではあるが正に立派なブリッジそのもので様々な器機が本物そっくりに並んでいた。舵、エンジンスロットル、方位系、レーダーなどなど総ては見学者が自在に自由に操作できる。
 メインスイッチを入れ舵を回すとブリッジが方向転換をして前方に琴平の町を見下ろしながら左右におよそ90度近く旋回する。充分にちょっとした操船気分を味わえかなり楽しい。しかも、こちらはラジコン船とは異なり無料である。しかも操作が分からなければ係の人を呼び出し教えてもらうことの出来るインターフォンまで完備されていた。食い逃げされたコインは文句のいいようもなかったがこちらは無料でもサポートまで行き届いている。(笑)


写真 海の科学館のパンフレット
 ひとしきり移動ブリッジでの操船を遊びながら琴平の町を眺めた後、再び館内に戻り順次階下へ。海に関わるさまざまな展示がそれぞれに結構興味深く鑑賞できる。中でもAVコーナーは特筆に値するかもしれない。ちょっと誤解を招きそうなコーナーの名称であるがモニターを前にして操作テーブルがあり、海にまつわるさまざまなビデオライブラリーを選択して独占し楽しむことが出来る。それぞれ15ー20分程度に編集されたビデオのようであった。橋脚スパン250mのPC橋建設の状況をドキュメントしたライブラリーを選択して鑑賞したがなかなか興味深く意義深いモノがあった。
 船舶や港湾、航路などに関する展示コーナーや海中、海底の様子などを展示したコーナーなどそれぞれに結構見応えがあった。2Fは企画展示場と言うことになっていておりおりに色々と企画されているようであったがこの日は何もなく立ち入り禁止であった。いずれにしても結構ちょっとした満腹の腹ごなしには程よい鑑賞であった。

 館外へ出ると雨はまだ降りしきっていた。傘を翳しひとまず金比羅参道に出る。左手に石の階段が両脇に土産物屋を従え延々と続いていた。見るだけで遠慮して右手に視線を巡らせる。なだらかな傾斜の下り坂が続いていた。で、こちらを選択したことは言うまでもない。

 
写真 金陵の里の楠広場の御神木
 金比羅宮は「さぬきのこんぴらさん」と呼ばれ「こんぴら船船・・・」と歌われた海の守護神として親しまれた神様の鎮座なさる神宮である。総計1368段の石段があり本宮までですら785段の石段を登らなければならないらしいのでご遠慮申し上げたわけである。
 満腹の後の程よい腹ごなしを終えるとしきりに美味いコーヒーが飲みたかった。
で、美味しいコーヒーにありつこうと金比羅参道を下ることにした。
 途中美味しいコーヒーにありつく。そこは国際観光旅館ホテルニュー「わたや」の喫茶室であった。
 金倉川に渡る一ノ橋を渡り新町商店街へ。前方に鳥居を見ながら途中から右折し並び灯籠のある旧丸亀街道に至る路を通りを行き参道の四つ辻に出ると右手にJR琴平駅、左向かいに高灯籠のある公園に至る。隣接するコトデン琴平駅まで散策をかねてウォーキング。駅前のタクシーを覗き込むと運転手さんがどうやらちょっと昼下がりのうたた寝か・・・。ドアをノックすると快く開けてくれた。
 名だたる讃岐うどんの名店? 「宮武」へ。


写真 讃岐うどんの「宮武うどん」 左:トッピングのじゃこえび天一個90円 右:うどん小二種、ひとつ230円
●宮武うどん 香川県仲多度津郡琴平町上櫛梨1050 TEL 0877-75-0576 営業時間 08:30-17:00 水曜定休
 ことでん琴平駅前からのタクシーは何処をどう走っていったのか定かでない。駅前を出るとちょっと市街地を走り直ぐに住宅街の間を抜けるとのどかな田園風景の広がる中を快走した。十分あるいは十五分程度か。田園風景が開け田んぼに囲まれた中、道路沿いに人家が点在する。その一軒の人家の前に止まった。
 路傍の水路に渡された小橋の向こう立派な農家の庭の片隅にでも作られたのであろう小屋のような建物に「宮武うどん」とペンキで手書きされた看板が掲げられていた。どう見ても店舗の構えではない。農家の離れといった佇まいである。
 行き着く手前100m辺りの道路添いには大駐車場がでんと設けられていたことを思えば何とその不釣り合い具合に驚かされる。けれども出入りする人は賑わっている。
 とにかく店内へ。釜の湯気が満ち賑やかに所狭しと並ぶ椅子席、奥の桟敷席にうどんを食する人々が満ちていた。お店の人が声高に叫ぶ。
「ここに並んでご注文と名前を書いて下さい!」
 湯気立つ厨房の手前のカウンターに行列が出来ている。小生もそこに並ぶ。順番が来るとカウンターにおかれた紙片に注文の品と自分の名前を書くのである。「あつあつ」「ひやひや」「ひやあつ」要するに麺と出汁の組み合わせを記すのである。それに大小の希望の大きさを記せばいいらしい。お水はセルフサービス、トッピングの天ぷら各種はカウンターで小皿を受け取りこれまたセルフサービスで一角に並べられた天ぷらの中から好みのモノを選んで皿に取る。
 空いていた椅子席に陣取り待つこと暫し。その間に卓上におかれていた生姜をこれまた自分で擦りおろす。程なくうどんが供される。美味い・・・に尽きる。さすが行列が出来るお店である。天ぷらもうまい、小生はじゃ小エビ天を立て続けに二枚食してしまった。
 食い終わると勘定を清算するのは飲食店の常ではあるがそれがまたおもしろい。カウンターへ出向き食したモノを自己申告するのである。伝票など無いのである。それにしてもうどん一杯230円、天ぷら一枚90円・・・。このうどんを食いに来るのにJR+ドリームシャトル+オレンジフェリー+JR+タクシー=片道○○○円となる豪勢な食い物である。(笑)
 満腹満足納得してじゃこえびの天ぷら五枚をゲット、「宮武うどん」からPHSでタクシーを呼ぶ。


写真 金比羅参道
 再び金比羅参道に戻り先ほど見上げるばかりであった石段をちょっと上り始める。
 百段目辺りに鳥居がそびえていてその向こうに急な傾斜のかなりの長さの石段路が続く。そこでそれより先へのお詣りは断念した。
 今、辿ってきた参道の路を再び両脇に立ち並ぶ土産物屋などを覗き込みながらぶらりと下る。一ノ橋を前方に見ながら今度は手前で左折して神明町の旅館・土産物街を行く。大きな三叉路を右折すると程なく金倉川に架かる大宮橋を渡りことでん琴平駅に至る。


写真 左:金倉川に架かる大宮橋の欄干越しにことでん琴平駅 右:大宮橋から鳥居越しことでん琴平駅向こうにはJR琴平駅が見える 右:高灯籠
 結局琴平へ来て金比羅さんにはお詣りしなかったがうどんはちゃんと食し目的はそれなりに叶った。金比羅参道を振り返りこれからも続くであろう我が思い立っての船旅の安全を海の守護神金比羅さんに宜しくお願いして神様とは別れを告げた。
 大宮橋に至ると左前方に可愛いオレンジとクリーム色に塗り分けられたことでんの電車が入線している琴平駅が見えた。駅舎越しには日本一高いと言われる高灯籠が楠の大木を従えそびえていた。何でも夜には火が灯り夜景を楽しませてくれるそうだ。
 ことでん琴平駅を通り過ぎ高灯籠の前を過ぎると、北欧風の洒落た駅舎がご自慢らしいJR琴平駅はもう間近である。琴平発19:09の普通列車に乗れば丁度いい接続で多喜浜に戻れると思っていたのだが雨に降られ金刀比羅宮へのお詣りを断念したせいかのんびり巡ったにもかかわらずまだ一時間余りの時を残していた。
 駅舎は確かになかなか洒落た建物である。木造であろうかと思われるが正面入り口に大きな両開きのガラス格子の引き戸が填っている。高さ巾共に勇5m近くありそうな感じである。ぴたりと閉ざされているがちゃんとしかるべき高さの所に引き手はあって使い込まれた様子を伺わせている。前に立っても自動ドアではなかった。
 こんなにデカいドアを手で引くのかと怪訝に思いながらを弾き手を握りしめ力を込める。以外に大した力を込めることもなくスムーズに開く。この扉、その大きさとこのスムーズな開閉には全く驚いた。
 古めかしいノスタルジアの漂う駅舎の中、乗車券売り場は改札近くの窓口の他、ずらりと並んでいたであろう窓口はみな閉ざされていて代わりに最新鋭の自動券売機が並んでいる。その場所を確認しておきひとまずのんびりベンチで煙草を一服。窓の上の桟には鳩が彫刻のように佇み群れ並び「鳩に餌を与えないでください。」との注意書きが張られていた。生きている野生の、あるいは野生化した鳩なのであろう。
 コインロッカーに預けていた荷物をピックアップし乗車券をゲット。まだ時計の針は16:30を指していた。時刻表を見ると予定していた17:09の普通列車の前に16:45琴平発高松行きの普通列車があった。発車ホームはあの頭端敷きの@番線とある。で、これに多度津まで乗車することにした。

 琴平発16:45で16:57多度津着、多度津発17:18で17:52観音寺着、観音寺発18:33で19:26多喜浜着。今日のJRはいずれも定時運行であった。

 多喜浜駅からタクシーの営業所まで徒歩五分。駅で電話をすれば迎えに来てくれるのだがぶらぶらちょっと歩くに程よい距離であるのでついつい電話をするまでもなく歩き出してしまう。数年前始めて訪れたときのこの営業所は有人であったが今は誰も常駐している人はなく無人の営業所で二階建ての建物の一階部分が駐車場になっていて傍らの事務所入り口に専用連絡電話が置かれている。
 受話器を取るだけて通じるので便利である。
 営業所には先客がひとり待っていた。かなり昔のお嬢さんの様子で
「さっきからずっと待ってるんですがなかなか来ません・・・。」
 と気軽に声を掛けてくれる。聞くところによると病院へ行った帰りで黒島(新居浜東港の対岸の島で新居大島に渡る日本一安い乗船料?=片道40円のフェリーが発着するところである。)行きの最終バスがもう無いのでタクシーを待っているとのことであった。けれどもどうやらあの便利な電話の存在をご存じなくじっとお待ちのようであった。
 電話のことをお話しして受話器を取り二台を差し向けてくれるよう頼む。程なく一台目のタクシーがやってきて老婦人を先に案内する。続いて間もなく二台目のタクシーが来て乗り込んだ。

●復路はおなじみ<おれんじ8>(^^)
 タクシーでの新居浜港到着は丁度20:00だったがまだ<おれんじ8>の姿はなかった。これはあの入港時の岸壁前での旋回の光景を満喫できるチャンスでもあると一旦入ったターミナルビルから外へ出て脇の大駐車場から岸壁へ向かう。案の定<おれんじ8>は既に港に入ってきていて岸壁の向こうにその勇姿を現していた。
 旋回の様子をカメラに納めターミナルビルへ戻るとどうしたことかかなり賑わいを見せていた。新居浜からの乗船客は少なくひっそりとしていることがこのところ多かったのだが今宵は発券窓口にも人が並んでいるし待合室も結構賑わっていた。百名近くの乗船客が居たのであろうか。




写真 新居浜東港へ入港する<おれんじ8>
 それにしても発券窓口の側に掲げられた不思議な看板を目にした。
「<おれんんじ8>のレストランは20:00から営業しています。多数ご利用下さい・・・。」
 と、そこには記されているのだ。ちなみに<おれんじ8>は入港定刻は20:10である。乗船開始は通常出港三十分前の20:20である。一体誰に向かっての案内なのであろうか。入港前の20:00にどこかで飛び乗らせてくれるつもりなのだろうか。(笑)
 と思いつつ、ついついあの看板をカメラに納めようと持っていたのが後の祭りとなってしまった。
*オレンジフェリーさんへ・・・
 次回新居浜からの乗船時には多数のひとりとして是非20:00からレストランを利用させて頂きたいと思いますので入港直前の<おれんじ7>に飛び乗らせて下さいね!(笑)

 20:20乗船開始、案内所で部屋の鍵を受け取る。特別室右舷側101号室、大した荷物があるわけではないがひとまず部屋に向かい荷物を置き旅装を解いて早々とレストランへ舞い戻る。
 ここ数回オレンジのレストランでの食事は期待はずれが続いていたが並べられたアラカルト料理に今回はにんまりと微笑んだ。あれこれ賑やかにおなじみの小鉢料理なども含め色々と並んでいる。目新しいメニューも発見! 名称不詳の魚の鍋、カツオのたたき、マグロのカルパッチョ?
 カツオの叩き、マグロのカルパッチョはそのまま直ぐに食える。鍋は小ぶりの土鍋に材料が盛られていてそれをトレーに乗せてキャッシャーへ運ぶと厨房で調理してくれるのである。


写真 カツオのたたき・マグロのカルパッチョ・海鮮鍋のよていでしたが・・・すみません。食べてしまいました・・・。(^^)
 鍋の番号札を受け取り精算して席に戻ると定刻20:40我が<おれんじ8>は新居浜東港を出港し一路東予港へ向かった。
 他言は無用、オレンジフェリーのおれんじたる冷凍食品などを一切使用しない船内調理のレストランでの食事は定期航路の船舶内レストランの中では絶賛に値するであろう。格別に高級豪華という意味ではない。ひとつひとつオーダーごとに調理してくれる温もり。それに極めてリーズナブルな価格が協奏曲を奏でて満足させてくれるのである。写真と思いつつ、ついつい先に箸が出てしまい・・・気が付けば総ては腹の中に入ってしまっていました。と言うわけで写真がありません・・・。美味い美味い美味かった!(^^)
 またまた超満腹。アフターコーヒーは部屋に戻りゆったり船窓を移ろう瀬戸の海の夜景を眺めながら飲む。<おれんんじ8>の特別室の浴室には大きな窓が設けられていて展望浴室となっている。コーヒーを飲み終え徐にバスタブに湯を満たしゆったり浸かる頃には定刻21:50東予港に入港していた。
 22:40出港、点在する島影が徐々に遠のき広がる瀬戸の海を一路東へ。やがて程なく前方に瀬戸大橋を遠望することになるのだが、いつしか夢の中であった。

●第三日目 <おれんじ8>船内休憩・・・


写真 左:感激!特別室内に置かれた豪華華麗な蘭、造花ではありません。 右:南港到着後<おれんじ8>特別室101号室船窓からの眺め
 気付けば・・・既に<おれんじ8>は大阪南港に入港していた。時計の針は06:00を指していた。列車やバスなどの旅とは異なり船旅はなんと言ってもゆったりしていることが嬉しい。占有できるプライベートスペースも比ではない。小生お気に入りのこの我が<おれんじ8>の特別室の場合、特にこの4Fの101号室102号室はゆったりとした広さを誇っている。セミダブルサイズのベッドがふたつ、ごろりと寝ころべるソファにテーブルを挟み肘付きのゆったりとした椅子が二脚、ライティングデスクには大きな鏡、TVにビデオデッキ、もちろん椅子もある。デスク上には茶器セットが置かれ茶菓子のフェリーせんべいが添えられている。歯ブラシ、ヘアブラシ、ハンドタオルをセットしたアメニティーも供されている。その片隅に今回は見事な蘭の生花の鉢植えがおかれていた。
 ロッカーには浴衣ももちろん用意されているし、念願叶ってベッドにはマットレスの上にはちゃんとパッドも敷き込まれている。
 展望浴室には桧のかぐわしい香りが漂っていた。<これ過去形! 就航以来間違いなく桧の腰掛けと手桶がおかれていていい香りがしていたのだ。が、残念ながら今回は影も形もなかった・・・。いつも微笑ましく感心させられるのだがオレンジフェリーのオレンジフェリーらしきところなのだろうか? 毎回色々異なるのである。(笑)
 ちなみにこの立派な部屋には冷蔵庫はない。

 ゆっくり目覚めゆったり広い部屋でひと運動の後、シャワーを一浴び、すっきりしたところで美味しい石鎚の水で沸かしたコーヒー・・・。
「本日のコーヒー豆はモカでございます・・・。」
 といつも決まってモカなのに本日はと前置きしてくれる。モカ以外の豆を使用していることもあるのかも知れないが小生はモカ以外の豆の日に遭遇したことはない。しかし、これは美味いのである。を、案内所へ求めに行き部屋でのんびりとコーヒーブレイク。

 程なく07:45頃、船内放送が船内休憩終了時刻到来を告げる。小生はこれを追い出しコールと勝手に理解している。浴衣を着替え荷物を手に部屋を出る。部屋の鍵を案内所に返し、乗船券をエスカレーター横の箱に投げ入れ階下へ降りる。岸壁に渡されたタラップを降りると今回の船旅はお終い。
 向かいに名門太平洋フェリーの便が接岸間近に微速前進していた。

 ここ数回連続してオレンジフェリーで帰着の朝は何故かターミナルビルのレストランの休業日であったが、この日は幸い営業日であった。迷うことなくレストランへ直行しブレックファースト。
 ボーーッと汽笛一声、次の便の入港に備えての沖出しなのかサンフラワーが離岸していった。

 思い立っての船旅は尽きることなく続く・・・そんな予感に満ちている。(^^)

 

■ORANGE ROOM■

キャプテンライン/ドリームシャトル  オレンジフェリー

 

2001 H13
■FR−015■  ■FR−016■  ■FR−017■  ■FR−018■  ■FR−019■  ■FR−020■  ■FR−021■  ■BANGAI-2001■
2002 H14
■FR−022■  
■FR−023■  ■BAGAI-2002A■  ■BANGAI-2002B■ 
■ORANGE ROOM■
■FR−024■  ■FR−025■  ■FR−026■  ■FR−027■  ■FR−028■  ■FR−029■
2003 H15
■FR−030■
  ■BANGA-2003A■  次なる思い立っての船旅は予定は未定・・・■FR−031■  

next02.gif (38489 バイト)思い立っての船旅 今世紀・2001-200X