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青春18きっぷ第二弾! <おれんじ8>で新居浜へ、帰路に小豆島二航路を経由して

写真 左・中:高松港での<第32こくさい丸>きりんの船 右:大部港入港間近の<フェリーひなせ>

 

2002年 春 思い立ちまたもやぶらり・・・

                      

●航海 往路・瀬戸内海 途次・小豆島二航路
@★★★★★ 往路 大阪→東予→新居浜 四国開発フェリー=オレンジフェリー<おれんじ7>特別室右舷側410号室 夜行便
 総トン数:9,917.00 主機関:27,000馬力 航海速力:22.5ノット 旅客定員:750名 積載可能車両数:トラック139台 就航年月日:1994.3.28
A★★★★☆ 途次 高松→池田 小豆島国際フェリー<第32こくさい丸>きりんの船
 総トン数:697.00 主機関:1800x2=3,600馬力 航海速力:16.5ノット 旅客定員:500名 積載可能車両数:乗用車70台 就航年月日:2001.10
B★★★★ 途次  大部(小豆島)→日生 瀬戸内観光汽船<フェリーひなせ>
 総トン数:998.00 主機関:1,600x2馬力 航海速力:13.5ノット 旅客定員:500名 積載可能車両数:トラック28台 就航年月日:2000.12.20

●旅程 船中一泊 一泊二日 大阪→新居浜→高松→池田→大部→日生→大阪
第一日目
 →大阪南港
 @大阪南港22:50(オレンジフェリー<おれんじ7>)→
第二日目
  →06:10東予港06:40→07:50新居浜東港
  新居浜東港(タクシー)→多喜浜駅
08:16(JR)→伊予三島08:49→09:08観音寺09:24→10:00多度津+多度津10:03→10:11宇多津10:12→10:16坂出10:36→10:53児島・児島11:08→11:39高松
 A高松港13:10(小豆島国際フェリー<第32こくさい丸>)→14:10池田港
  池田14:35(バス)→15:21福田15:24→15:44大部
 B大部港16:50(瀬戸内観光汽船<フェリーひなせ>)→17:55日生港
  日生18:38(JR)→18:51播州赤穂18:52(JR新快速)→20:29大阪

 

再び、気分18、青春18きっぷで・・・

 前回は青春18きっぷを手にぶらり思い立って小豆島航路二航路の乗船を果たした。まだ青春18切符は残ってるので、桜満開の間に再度チャレンジもいいかもと・・・。日帰りではちょっとタイトなので、やっぱり、またもやまずは<おれんじ7>で新居浜へ。帰路をぶらぶらと瀬戸内海を巡りながらと決め込んで思い立った旅程をほぼ固めたのはその日の夕方もう五時を過ぎていた。
 オレンジフェリー大阪予約センターへ電話を入れると、この日の下り三便大阪発22:50の東予・新居浜行き<おれんじ7>の特別室は空きがあるという返事。しからば翌日の新居浜発大阪行きの三便はと尋ねてみるとこちらは満室とのこと。思い立った通りに<おれんじ7>で新居浜へ行き、その日の内に瀬戸内海を巡りながら戻ることとして<おれんじ7>の特別室を予約した。

●第一日目 相変わらずオレンジフェリー<おれんじ7>で・・・

 大阪南港へ到着したのは午後十時を少し過ぎていた。昨年来、いつもオレンジに乗船するときはやけに混み合っている日のことが多かったが、この日は週日のことだからとタカをくくっていた。だが、あにはからんや結構混雑していてふたつ開かれた発券窓口にはそれぞれに十人くらいの乗船客が列を作っていた。発見窓口に表示されている空室状況には既に満室表示が多い。乗船申込用紙に必要事項を記入し列に並ぶこと二十分弱。既に乗船開始の案内放送が流れてから暫くして無事に乗船券をゲット。待つことなくそのまま直ぐに乗船した。

写真 大阪南港フェリーターミナルビル一階オレンジフェリー発券窓口
 船内は既に乗船客に溢れていて案内所にも列が出来ていた。手にしていた乗船券には左舷側の320号室と記されていた。今宵こそは行き交う<おれんじエース>明石海峡大橋通過後に見定めようと持っていたので左舷側は好都合なのだが就寝するまでのまどろみは右舷側本州側阪神間の夜景を眺めるには右舷側の部屋がいい。空いていれば右舷側の部屋に替えてもらおうと思っていたのだが部屋の鍵を受け取るのはあとにして、まずは腹ごしらえと例によりレストランへ直行。レストランもほぼ満席の盛況で賑わっていた。このような日の常としてオレンジのレストランでのグルメの楽しみは少々減少する。つまりアラカルトのメニューが少なくなることが多いからである。残念ながらその思いは的中していて並べられていたアラカルトの皿の種類も少なく、メニューからも幾つかの品は消えていた。
 並べられた料理の皿の中からゆでた小エビの皿をひとつ取り、唐揚げ定食を注文する。

写真 <おれんじ7>の 左:船内レストランの唐揚げ定食800円 中左:ゆで上げ小エビ400円 中右・右:特別室の室内デッキ テーブルの上は美味しい石槌のナチュラルウォーターと愛媛蜜柑のポンジュース
 相変わらずオレンジのレストランの料理は親しみがあるほのぼのとした味わい。大きくてジューシーな唐揚げ定食は800円、ゆでた小エビは400円、納得満足の価格である。乗る度にメニューが色々変わるというか乗客数や、その時々の食材の状況にも寄るのか小生には定かではないが定番となっているエビフライ、魚、豚カツ、そしてこの唐揚げ定食。それに人気有るオムカレーやラーメンの他はかなり変動が激しい。つまり、その時々臨機応変であると言うべきであろう。当たり外れがあると言う方が分かりやすいのかも知れない。
 ぺろりと食った唐揚げ定食で腹を満たし、小エビは紙コップに盛り上げてレストランを後に案内所へ。もう人の行列はなくなっていた。
 乗船券を示しながら
「右舷側の部屋は空いていませんか?」
「ちょっとお待ち下さい。見てみます・・・。」
「よろしく。」
「空いてますよ。」
 と右舷側410号室の鍵を手渡してくれながらボールペンで320に打ち消し線をひき420と記してくれた。

 船内売店はおみやげものや飲食物などちょっとしたコンビニ並の品揃えで重宝することが多い。何時も必ず購入するのが愛媛蜜柑のポンジュース、それに美味しい石槌のナチュラルウォーター。船室に持ち帰り、室内デッキでまどろみながら瀬戸の海の夜景を眺めのどを潤すのに最適である。
 この夜は、オレンジフェリーさんから教えてもらった<おれんじエース>との反航を眺めようと思っていた。大阪出港はやや遅れたようであったがさほどの影響はない。ベタ凪の海、満天の星空の絶好の航海日和である。
 一風呂浴びてまどろむうちに程なく明石海峡大橋を前方に認める。午前0時ちょっと前、大きく湾曲して海峡を跨るワイヤーに取り付けられた光の色が変化する美しいイルミネーションは、まだ点灯されていた。遠目に眺めている内に明石側から純に光が夜空に消えてやがて橋脚のライトを残し静かに消灯されていった。
 日付が変わる頃、明石海峡大橋を通過した我が<おれんじ7>は順調に航海を続けていく。今宵の部屋は右舷410号室である。<おれんじエース>は左舷側で00:40頃反航するとのことである。ひととき真夜中のコーヒーブレイクの後にカメラを手に浴衣姿で部屋を出る。五階デッキの展望ラウンジへ上がると左右両舷方向と後方の三方向が一望できる。
 左舷側から前方を見渡すと輝く船影が斜め前方に認められた。<おれんじエース>に違いない。デッキへ出る。思いの外早く接近してくる。接近と言っても相当な距離を置いての反航、多分数kmの距離が有ろうかと思われる。カメラのシャッターを押す。モニター画面を見るが何も映っていない。映っているのかも知れないのだが殆ど識別できないのだ。撮影はあきらめ真正面に差し掛かった船影に視線を合わせ暫く見送る。先日来、異常に暖かい日が続いていたのだが今日は平年並みとのことで夜風が冷たい。後方に見送ると急いで部屋に引き返した。
 とにかく<おれんじエース>を見送った。毎度、この光景を眺めようと思いながら叶わなかったことが今宵ようやく叶った思いに何時しか心地よい夢の中であった。

●第二日目 新居浜から高松へ、高松から小豆島へ

 四月からの新しいダイヤで<おれんじ7>の東予入港はちょっと遅くなり06:10となった。そのため当然に入港を知らせる船内放送もその分、約二十分程度遅くなった。それでもまだ、この時期ようやく空が白みかけた05:40案内放送が開始される。この案内放送に目覚めた。
 のんびり朝のシャワーを浴びて朝シャン。コーヒーブレイクのひとときを過ごす頃には本船は東予港を出港して新居浜東港に向かい四国沿岸を東進する。右舷側の部屋には朝日を浴びる。穏やかな海面を滑るように新居浜東港へ入ると舳先をひるがえし微速後進で岸壁に定刻07:50接岸。
 ターミナルビルを出るとバスもタクシーも待ち受けていた。バスは新居浜市害を経由してJR新居浜駅へ向かう。小生はタクシーで多喜浜駅へ向かう。
 多喜浜駅は無人駅。08:16予讃線上り普通列車の時刻にまだ十分近くを残しての順調な到着だった。空は快晴に晴れ渡り風もない。この調子なら予讃線もダイヤ通りに運行されているかと期待が持てた。ホームへ直行すると直ぐに下り伊予西条行き普通列車が入線してきた。どうやらダイヤ通りに運行されている様子。下り列車の発車を見送り待つこと暫し、定刻に遅れることなく上り多度津行き普通列車は入線してきた。どうやら順調な滑り出しらしい。

写真 予讃線普通列車 左・中:行く手前方 右:伊予寒川駅に離合停車中の上り普通列車
 予讃線は風の影響を受けやすくダイヤは常々遅れがちである。ところが今日は新居浜東港入港は定刻、多喜浜からのJR予讃線もこの日は順調に定時運行。で、思いの外順調に多喜浜発08:16の普通列車に乗れた。このまま普通列車を乗り継いで高松に行きのんびり讃岐うどんの昼食をとはじめには思っていたのだが、せっかく乗り放題青春18切符を手にしている。それに空は快晴、これなら時間的にもゆとりがあるので瀬戸大橋往復も叶う。と、またもや思い立つ。
 のんびりのはずの鈍行列車だが、船から降りて乗り換えると不思議に異常なスピード感を感じるものである。
 途中駅で行き交う特急列車と離合待ちをする。駅名は忘れたが確か「寒川(さんかわ)」であったと思う。約十分程度停車するという。運転席からホームに降りた運転手がホームの橋で煙草を吸っていた。小生も煙草を吸いに降りる。
「今日は順調ですね・・・。」
「あはは、珍しく順調です。」
 屈託無く笑顔で応えてくれる気さくそうな運転手。上り特急列車が追い越していった。まだ下り特急列車を待つという。
「先日はビニールが架線に引っかかったとかで遅れましたよね。」
「ええ、あれは新居浜のこちらでね。風には弱いんですよ予讃線は・・・。」
 などと気軽に話しながら、予讃線の最小カーブは最も急なところで半径300mに対して土讃線は同じく250mで激しく曲がりくねっていること。気動車はうるさいが電車は静かで運転席で乗客の話し声が聞こえるとか。この普通電車は新型で最高速度は120km営業運転時は110kmを最高速度としている。特急列車は最高時速が130kmの営業運転で駅通過時には100kmに落とすことなど色々教えてくれた。

写真 瀬戸大橋を走行するJRマリンライナー車内から
 坂出から乗車した高松発岡山行きの快速マリンライナーは六分遅れであった、が、児島での折り返しに乗車予定の快速マリンライナーへの乗り替え時間は十八分あるから問題はない。坂出を出て間もなく右手に瀬戸大橋を遠望しながら列車は大きく回り込んで瀬戸大橋に差し掛かる。坂出・児島間の所要時間はおよそ十五分余り、瀬戸大橋通過は十分弱の間である。坂出側の線路脇には住宅街が広がりやがて工場の合間を縫って瀬戸内海上に出る。次いで与島を通過して間もなく牛島・本島を間近にみながら間もなく漁港のある本州側児島に差し掛かると橋は終わる。短いトンネルを抜けると間もなく児島駅に到着した。
 児島駅からは観光船の港が近く、瀬戸大橋遊覧船などが発着している。遊覧船に乗るつもりはなく直ぐに引き返すつもりなので向かいのホームへ一旦地上階のコンコースを降りて渡る。喫煙コーナーで一服するほどに間もなく高松行き快速マリンライナーは入線してきた。往路に車窓に額を押しつけじっくり観賞した西側の光景はもう見るまでもない。東側の座席に収まりのんびり海を眺める。今し方、児島港を出港してきたのであろうか観光遊覧船が瀬戸大橋へと向かっている。瞬く間に後方に見送りながら快速マリンライナーは瀬戸大橋に差し掛かる。
 坂出に停車して次は高松までノンストップ。十一時半過ぎには高松駅には降り立っていた。

 高松は讃岐、讃岐と言えばうどん。讃岐うどんを食わないと言う手はない。乗船予定の池田行きの小豆島国際フェリーは13:10出港だから一時間半の時間がある。讃岐うどんの老舗だという「川福」本店をめざした。中央通りを市街地方向へ、程なく左折して兵庫町商店街を東へ二筋、右折してライオン通りへ入ると間もなく。

写真 おみやげ用うどん5個入り1000円 川福本店 〒760-0042 香川県高松市大工町2の1 フリーダイヤル:0120-228-387 営業時間:11:00 〜 24:00 JR高松駅より徒歩約十分。
 ついつい旨いモノは写真を撮る前に食ってしまう。と言うわけで日替わり定食の写真は撮影しようと思ったときには既に小生の胃の中に鎮座していた次第である。従って写真は持ち帰ったおみやげ用うどんとなった。
 この日の日替わり定食はジューシーなカツ丼にうどん、旬の山菜和え物、香の物、デザートで850円。
 たらふく満腹、高松港(サンポート)まではゆっくり歩いても精々二十分程度、腹ごなしを兼ねて時間もたっぷりあるのでぶらぶら歩くほどに高松城(玉藻公園・入園料200円)に至る。今回のここでの何より物新発見はお堀の水が海水で有ることであった。<立て札に説明があった。
 高松さまに敬意を表して園内を通って港へ向かうことにした。


写真 左:高松港停泊中の高松・土庄航路四国フェリー 右:賑わう高松港の出船入船
 港到着は12:50、まだ岸壁には多の航路の四国フェリーが接岸していた。間もなく出港していく。間もなく入れ替わりに船尾にきりんを乗せた<第32こくさい丸>が入港してきた。快晴の高松港にひときわあでやかな趣の漂う派手派手しい船である。
 岸壁から船影をカメラに収めた後、船首車載ゲートから乗船した。

●高松港→池田港航路

写真 高松港の<第32こくさい丸>きりんの船:090-5273-8745
 <第32こくさい丸>は後部甲板の信号灯火用のマストがきりんになっていて、高松に発着する多数のフェリーの中でも異色の新造船。
 快晴の高松港に晴れやかな虹もどきの塗り分けカラーリングの船幅、後部デッキの上に派手派手敷くきりんが首を長く延ばして立っている。カラフルなテントなどもあって見るからに賑やかそうな船だ。話題性としてはおもしろいのかもしれないが何だか遊園地の船のような趣。
 子供達にも喜んでもらおうとの思いからだとは察しはつくが、それならせめて虹の塗り分けは七色にして欲しい。子供が虹は赤・黄・緑・紺の四色だと誤解されても困る。
 乗船は土庄航路の船と同じく船腹側の岸壁からタラップでと思いきや正面に回って車載ブリッジからの乗船であった。子供や気配りに気遣い、バリフリーにも心掛けて新造された船と事前情報を得ていたのだがちょっととまどいを覚える。
 確かに船体は真新しい。車載ブリッジから乗り込んでも新造船らしく汚れなどは目立たない。

写真 <第32こくさい丸> 左:船室内客席 中左:プールサイドを思わせるサイドデッキ 中右:遠のいていく高松港 右:航路中程で反航する僚船<第31こくさい丸>かめの船:090-3026-0691
 船内は階上の船室までの昇降には階段を利用するのだがバリアフリーに気遣われていて客室デッキまで座ったまま上がれる昇降機なども備えられている。客席後部の中央トイレにはベビーチェアがあり赤ちゃんのためにベビーベッドも設けられているらしい。またデッキには楽しく遊べる遊具スペースなど家族連れや幼児連れにも気配りがなされた優しい船である。ちなみにトイレの洋式はウォシュレットつきだった。
 室内は全面禁煙になっているが喫煙コーナーも設けられていてJRにも見習っていただきたい思いがする。
 客室は等級差はなく総て二等船室なのだが、ゆったりくつろげる最上階ラウンジ、リクライニングシートの前部客席、ゆったりとしたソファの中央客席、客席後部左右の席では足をのばしてくつろげる桟敷席などもあり思い思いに過ごせる。BSデジタル対応でクリアな映像のテレビも楽しめる。
 特筆すべきは総ての室内の椅子やシートは布地張りで高級感の溢れていることであろうか。
 船室内には売店スナックコーナーがありなかなか充実している。この時期、穏やかな潮風を感じながら旅を楽しめる後部デッキは爽やかそのものだ。コーヒーブレイクに最適と売店で珈琲を買い求めると紙コップではなくちゃんと陶器のカップにソーサーをトレイに乗せてくれ下船までに戻せばいいとこれまたなかなか嬉しい気配り。穏やかな潮風の中、綺麗に航跡を描き遠ざかる高松港を眺めながら本格的な珈琲をゆっくり楽しみながらコーヒーブレイクのひとときを持てた。
 航路中程では僚船<第31こくさい丸>(かめの船)と反航した。本船の先輩船で頂きに朱色の亀を乗せた「かめの船」である。
 何ともカラフルと言うか盛りだくさんの賑やかな印象の船だ。

●池田港から福田港経由で大部港へ
 港に降り立つと振り向けばきりんさんが見送ってくれていた。まだあちこち整備中の港のようで工事中の表示が目立つ。ターミナルビルも屋根の上に朱色の目立つ何か得体の知れない構造物がのっかっている。

写真 左:池田港の<第32こくさい丸> 中:池田港 左:池田港張る停留所
 ひとまずターミナルビルに入ってみたが待合室、売店、レストランがる真新しいが別段に見るべき物はないと言った感じの閑散とした趣。どうやら小生は裏口から入ったようであったが表出入口から出ると道路側に「左30mバス停」と表示がった。ターミナルビルに沿った道路を左手へ。確かに30mほどのところにはバス停があったがこちらは土庄に向かう方向のバス停。小生は草壁港、福田港を経由して大部へ向かいたいから反対方向のバスである。見渡すと道の向かい側前方にバス停賀見える。可愛い待合所のような建物(写真)が傍らに見えていた。
 道路を渡る。可愛らしく見えていた建物は確かに待合所であったが、遠目には可愛いが近寄るとそれは正に廃屋。入口から中を覗くと回りに巡らされた木製のベンチの一部は朽ち果てている。とにかく入ってみると床が揺れ崩れそうな感じ。危険極まりない。建物の側壁にはかもめのレリーフと共に IKEDA PORT と木のレリーフが貼り付けられていた。
 どうもこの沿線はディズニーランドでも模しているつもりなのだろうか、船はきりんさんにかめさん、虹を思わせる(虹の七色ではない)塗り分けの船体。ターミナルビルの屋根の上のUHO、ちょっと頭を傾げてしまうバス停の待合所。旅情を楽しむと言うより何だか滑稽な感じのする小豆島上陸地点である。
 と、まぁ、そんな複雑な思いを抱いているうちにバスはやってきた。

写真 福田港
 バスは南回りの福田港行き。オリーブの木を街路樹にした道路の多い島の南岸東岸を巡りながら草壁港、内海町を経由し約五十分程度で福田港に到着する。時刻表で見ると土庄→池田→草壁→福田と福田→大部→土庄は別路線となっている。が、福田での乗り継ぎ時間が四分。福田での事情が分からないので運転手さんに
「福田から大部へ行きたいのですがこのバスは行かないのですか?」
 と尋ねると
「行きますよ。一旦福田で精算して下さい。そしてこのまま乗っていてくれればいいですよ。」
 と気楽に答えてくれる。
 福田で一旦1000円となっていた運賃を精算するとバスはそのまま発車して福田港バス乗り場バス停まで移動した。路線は異なるのだが同じ車両を利用すると言うことらしい。福田港発時刻まで数分停車の後、バスは発車。福田港から大部までは同じくバスで約二十分、この間の運賃は600円。大部には乗船予定時刻の約一時間前に到着した。
 停車したバス停で降車しようとすると
「お客さん船に乗りますか?」
「ええ、のります。」
「そうですか、じゃもうちょっと乗っていて下さい。」
 前方の信号機のある交差点の向こう遠くに見覚えのある港へ向かう道の辻が見えていた。ここで降りると少々歩くことになる。それを気遣い運転手さんは声を掛けてくれたらしい。バスは発車して、その辻まで進むと停車した。
「そこを右に行けば直ぐです。お気をつけて・・・。」
 と、その辻の手前で降ろしてくれた。途中、内海の病院の前でもバスに駆け寄ってきた看護婦さんらしき女性が「調剤を待っている患者さんが一人居ますからちょっと待って下さい。」と声を掛けにこやかに運転手さんがうなずくと暫くバスが停車していた光景を思い出した。
 厳密には定期路線のバスがひとりの乗客の時間待ちをしたり、便宜を図ることは許されては居ないことだとは思うが何とも微笑ましい限りである。ルールは人が作るもの、そのルールを運用するのは人、その人の温もりが漂うほのぼのとした光景であった。もちろん乗客の誰一人として苦情を言う人などはいない。和やかな温もりに満ちたのどかな路線バスの乗降の日常的な光景なのであろうか。(^^)

●大部港→日生港 信頼できる安心の航路、素晴らしい船長さんの操るぴかぴかに磨き上げられた<フェリーひなせ>

写真 大部港の 左:ターミナルビル 中:最も港寄りビル二階の喫茶のサンドイッチセット 右:入港してくる<フェリーひなせ>

 大部港ターミナルビルは一階には乗用車の駐車場と一角に発券窓口と二階の待合室への階段が道路に面している。向かいには広い駐車場がある。海に突き出した岸壁も充分に機能的に整備されていて徒歩乗船客のためにはアーチのテント屋根を巡らせた通路までもが整備されている。沖合には航路標識ブイも設置されいる。一日数便のフェリー発着の為にだけに存在するこのような港の光景はここ大部港に限った状況ではなく多くの小さな港でも見られる光景である。全国津々浦々にまで今や道路に舗装がされているのと同様なのであろうか。
 しかし、このように津々浦々にまで整備されていく情景の中に、その地の個性の表情を伺い知ることは出来ない。どこもかも画一的な表情でローカル色を感じられない発展の様子に少し寂しさを覚えるのは小生だけなのであろうか。
 ターミナルビルは海辺から二軒目で、最も海寄りの建物は一階がみやげものやで二階が喫茶となった店舗ビルになっている。
 最も海寄りの店舗ビルの二階にある喫茶は海に面して北と東の二方向が幅広く透明ガラス戸のサッシになっていて瀬戸の海の眺めのパノラマが美しい。写真はそこでちょっと腹もたせに食したサンドイッチセット700円。作りたての卵焼きとハムのミックスサンドに小鉢の野菜サラダ、珈琲がセットで供されかなりボリュームたっぷりである。
 ゆっくり食している間にやがて港の向かいの小島の間の遠方に<フェリーひなせ>の船影が小さく認められ始めた。近づいてくる船影は右方向へ進む。島影に隠れ再び島の右手に現れる船影はやや大きく見えてくる。時計の針は16:30を指している、出港の定刻16:50には二十分前。程なく16:45頃には入港してくるはずであるから入港の様子は見ようと店を出た。
 階下に降りると左手に向けばもの数歩で岸壁に至る。岸壁に入り込むのもいいが着岸作業などのために一般客は立入禁止となっていているので岸壁から入港の様子を見ることは叶わないが手前右手に続く防波堤越しに見晴らしがいい。

写真 左・中:大部港に入港する<フェリーひなせ> 右:<フェリーひなせ>後部デッキから大部港
 島影を抜けて右手方向に向かっていた<フェリーひなせ>は沖合に浮かぶ赤い航路標識ブイを通過すると舳先をひるがえし左手方向へ方向転換する。今度は島の手前を通過してみな後の前を左手へ行きすぎ再び左に大きく旋回して右手方向へ前進する。海に着きだした岸壁の先を半ば行き過ぎると一旦停船して今度は微速後進で左後方へ向かいながら右手に接近する岸壁に接岸する。
 この入港のジグザグ航行は見事に鮮やかな舵裁きとでも言うべきものであろう。
 そして手際よく船尾から接岸するとゲートが降ろされ車載甲板の車が次々と下船してくる。徒歩乗船客も同時に同じゲートから降りてくる。ものの一・二分で下船が終了してしまうと速やかに乗船が始まる。この日の徒歩乗船での乗船券もぎりは船内売店のお嬢さんがにこやかに微笑みながら携わっていた。数台の車が乗船し、十数名の徒歩での乗船客も速やかに乗船する。
 定刻16:50。<フェリーひなせ>は出港した。目の前の島を迂回すると一路本州側へ向かい航行。


写真 大部港から日生港へむかう<フェリーひなせ>のブリッジにて
 
 ラッキー、ブリッジ見学叶う! この船は上部甲板の両サイドから、ブリッジのすぐ後ろに行け、中を覗ける。出港時からずっと操船を見ていたら、思いがけなく「中へどうぞ」という願ってもない幸運にめぐまれた。とにかく掃除好きな船長さんのようで、若い船員さん、航行中はブリッジ内をほこりひとつないようにぴかぴかに磨き上げている(笑)。きりんさんのフェリーと同じ造船所できりんの前に造られたそうで、基本構造はほぼ同じとか。旧船は他社ドック中の代船やら、道路のない工事現場に通う足や資材運搬に動員されているとか、興味深い話も盛りだくさん聞かせていただけた。
 船長さんとの会話では<フェリーひなせ>の方が先に建造され就航したらしいが、たまたま乗船してきた高松→池田航路の<第32こくさい丸>はほぼ同型船であり、やや<フェリーひなせ>の方が大型らしいが、そう言われてみると確かにデッキ構造やブリッジの形状など確かにそっくりである。
 乗組員は総勢六名とのことだが、船内のプレートには
「ゴミ処理は乗組員が行っていますので分別収集にご協力下さい。」
 との表示も見かけた。六名の乗組員のみなさんで安全運行は元より、上下船時の乗船券チェックや誘導、入港出港時の接岸や離岸作業、船内清掃や日常的なメンテナンス業務などをこなすとなれば確かに大変な仕事量ではないかと思う。


写真 <フェリーひなせ>の 左・中:ゆったりしたデッキ 右:操舵室の後部には船長室がある<ドアが開いていてふと覗いてしまった。(^^)
 綺麗な船だ。この船は新造船だから美しいのは当然にしても、とにかくどこもかもぴかぴか。磨き上げられていると言っても決して過言ではない。
 暫しの船長さんとの語らいの中に、その謎の証を見た。
「このふぇねは綺麗ですね。新造船だからと言う意味ではなく、何時も綺麗に掃除されているようでですね?」
「あはは、そうですよ、私らみんな掃除夫みたいなもんです。」
「そうですか?(笑)」
「ええ、掃除ばかりじゃありませんよ。錆落としやら塗装もやりますよ。ほらあれも今日やりました。」
 ブリッジから見下ろす舳先の左舷側のに点在する赤茶色の錆止め塗料を指さしながらにこやかに言い放つ。上のデッキの写真をご覧いただければお分かりいただけるでしょうが雨が降っているわけでも水をまいているわけでもありません。本当にぴかぴかでベンチが映り込んでいるのです。土足で歩き回るのが気遣われるくらいです。
「船は大きいですから大変ですよ。六人しかいませんからね何時も掃除ばかりですわ。」
 傍らでは若い乗組員が雑巾を片手に機器の拭き掃除に余念がない。さっきまでは確かブリッジのウィンドウを拭いていた彼だった。この航路に十七年、船員生活四十年近いという船長さんは気楽に豪快に言い放つのだが何とも含蓄に満ちた船乗り気質を彷彿とさせてくれる。海を愛し船を大切に、海と船と共に積み上げてきた錬磨された自信に満ちた言葉である。
「そうでも気に入ってます。この仕事のええところはネクタイの要らんことですわ・・・。あはは・・・。」
 と作業ジャンバーの下に覗く赤いチェックのスポーツシャツの襟元を指さしていた。
「でも流石ですね、あの大部入港は凄いですね。ジグザグに入ってきたかと思えば舳先をひるがえして後進でぴたりと接岸・・・。」
「ああ、そこははね目の前に小島が並んでいたでしょう。岩礁が多いんですよ。だからジグザグでね。でも車はスパーの駐車場でも後進では入れられません。前進でしか入れられないんです。」
「そうなんですか? こんなに大きな船があんなにスムーズなのに・・・。」
「あはは、船はバックでもすーーーっと着けられますよ。でも車はあきませんわ。それに掃除は船だけじゃありませんよ。家に帰ってからもあちこち掃除してくれと言われます。」
「そうですか? おうちでは船長さん交代ですか?」
「あはは、まぁそう言うことですね。」
 正に尊敬に値する。言葉の端々にほのぼのとした暖かみのある人間性を漂わせながらも不思議にまぎれもなく凛とした海の男の魅力に満ちあふれていた。既に航路は半ばを過ぎていた。礼を言いブリッジを辞して階下の客室にすっかり安心してまどろむ。
 やがて瀬戸の海を越えて日生湾に差し掛かる。船足は緩やかになり程なく日生港入港を知らせる船内アナウンス。再び階上に上がりデッキからブリッジを覗き込む。船長さんはしっかり舵を握り見事な操船の技、左へ旋回した本船は港内に入り、一直線まっしぐらに日生港の岸壁に向かう。日生港では岸壁に船腹から接岸するのではなく、船首を直角に岸壁に接岸する。さりげなく話してくれていた船長さんだが並の技では簡単に接岸は叶うまい。
 あの穏やかでにこやかであった船長さんが厳しい視線を前方に巡らせながら精悍に舵を握りしめ手際よく鮮やかな繰船を繰り返す。見事に岸壁に向かって直角にぴたりと着岸停船した。幸い無風に近い状態であったのでひときわスムーズな接岸であったのかも知れない。
 操舵室から出てきた船長さんと一緒に階下へ降り船長さんに見送られながら車載甲板から下船した。その間の話では、やはり風の強い日などは船体が振られて接岸には可なりの神経を使うらしいことも伺った。ご苦労のほどが伺える。

●日生港入港、急いで夕食、そして旅の終わりに
 定刻19:50<フェリーひなせ>は見事に日生港岸壁に直角に船首を接岸して入港した。
 前回味をしめた港の側の「おいしん坊」へ一目参。旬のおまかせの刺身の盛り合わせに細巻きを食う。旨い旨い。
 JR日生駅のホームからは先日にも勝るとも劣らない黄昏時の夕映えに映える桜並木を観賞できた。三分遅れで入線してきた普通列車は三両編成。乗客は半ば程度、席は難なく確保できひとまずは播州赤穂へ。播州赤穂で新快速への乗り替え時間は僅かに一分であったが遅れを取り戻せない普通列車は三分遅れのままに到着した。新快速列車は普通列車の到着を待ち受け乗り換えると間もなく発車した。

 JRの運転士さん、シマバスの運転手さん、<フェリーひなせ>の船長さん、「おいしん坊」の調理人さん。今回はほのぼのとした会話にも恵まれ心温まる人々にも巡り会えた素敵な旅であった。

 

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2001 H13
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