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大阪湾&瀬戸内海 USJ→南港航路・大阪→東予→新居浜・観音寺←→伊吹島・新居浜→東予→大阪航路


写真 新居浜東港にて180度旋回し舳先をひるがえし入港着岸間近の<おれんじ8>

2002年 正月 続、またまたオレンジフェリーで新居浜へ、伊吹島航路制覇目指し・・・

                      

●航海 往路・大阪湾 往路・瀬戸内海 途次・伊吹航路 復路・瀬戸内海
@★★★★☆ 
USJ→南港 ドリームシャトル<ベイタウン>ベイユニバース(港通船株式会社)
A★★★★★ 往路 大阪→東予→新居浜 四国開発フェリー=オレンジフェリー<おれんじ7>特別室右舷側310号室 夜行便
 総トン数:9,917.00 主機関:27,000馬力 航海速力:22.5ノット 旅客定員:750名 積載可能車両数:トラック139台 就航年月日:1994.3.28
B★★★★☆ 途次 観音寺←→伊吹島 観音寺市営<ニューいぶき>
 総トン数:137トン  主機関:650馬力x2  航海速力:17.0ノット  旅客定員:300名
C★★★★★ 復路 新居浜→東予→大阪 四国開発フェリー=オレンジフェリー<おれんじ8>特別室左舷側121号室 夜行便
 総トン数:9,975.00 主機関:27,000 馬力  航海速力:22.5ノット  旅客定 員:750名 積載可能車両数:トラック139台  就航年月日:1999.7.27

●旅程 船中二泊 二泊三日
第一日目 京都→大阪USJ港21:30→21:55南港(大阪南港フェリーターミナル)・大阪22:50→
第二日目 →06:10東予06:40→07:50新居浜東港→JR多喜浜駅09:02→10:08JR観音寺駅→八幡神社→観音寺港11:20→11:45矢吹島港・矢吹島港13:30→13:45→観音寺港→琴弾公園→銭形展望台→JR観音寺駅16:45→17:52伊予西条・伊予西条19:22→19:36JR多喜浜駅→新居浜東港20:40→東予→
第三日目 →05:50大阪南港 船内休憩08:00迄

 

新居浜一日上陸で観音寺再訪、伊吹島はのどかだった・・・

 続、またまた思い立ち新居浜へオレンジフェリーでと言うことになって、その日の昼過ぎ予約センターへ電話を入れ空室状況を確認した。と、幸いに、その日の往路大阪発三便<おれんじ7>も、翌日の復路新居浜発三便<おれんじ8>も共に空いているとのこと。早速予約し思い立ち実行を決定。前回に下見をしていた伊吹航路制覇をと相成ったわけである。
 前回の体験で味を占め京都から阪急電車で梅田へ。そしてJR大阪駅からユニバーサルシティー駅に行きアメリカンムード溢れるレストラン街で夕食。大阪南港へはドリームシャトルで向かうこととした。前回、大阪駅からは運良くユニバーサルシティーまで直通電車で行けたのだが今回は西九条で乗り替えとなった。
 レストラン街では好奇心からベトナム料理を食したが、これが何とも実に・・・以下省略。で、アフターコーヒーのひとときを某有名コーヒーショップで過ごした。が、こちらは室内席は全席禁煙でやむなくテラス席で飲む。だが、どうも、こちらもコーヒーは美味しいはずのお店なのに、今宵はどうしたことか何とも苦みの先走ったえぐい味&どす黒い妙なお味。あえて、お店の名前は伏せるが、ちと今回は食い気に不安感が漂う。<この不安は次第に払拭され、いずれ究極の感激となるのだが・・・。(^^)

 

●第一日目 まだ続々オレンジフェリーで

●USJ→南港 ドリームシャトル<ベイタウン>ベイユニバース(港通船株式会社)
 所要時間25分 乗船料片道600円

写真 USJ港でのドリームシャトル<ベイタウン>
 食い気に不安感を感じながらユニバーサルシティーを後に、向かいのUSJ港へと徒歩数分。人気がない。航路を有する数社の発券小屋(実際プレハブ小屋といった佇まい)の窓口は何処も開いていない。この便が最終便であろうからドリームシャトル以外は閉まっていても当然なのかも知れない。が、何と、ドリームシャトルの発券小屋の窓口にもシャッターが降りていて何やら張り紙がされている。
 近づいてみると
「C番乗り場で係員から購入して下さい。」
 と記されている。余談だが、この発券小屋は各社とも小屋の壁に開けられた窓または発券口から乗船券を購入する。だが、購入する客側は屋外で、屋根はないから雨などが降っていれば傘は必須となる。
 振り向き浮き桟橋(乗り場)に目をやれば、既に船はC番乗り場に接岸している。定刻21:30の二十分前のことである。通常なら十分前にならなければ入ってこないはずなのに・・・。とにかく乗り場へ向かう。係の人らしい作業服姿のおじさんがふたり居るだけで他に人影はない。
 親しげに近づいてくると
「乗らはりまっか、南港?」
「はい、そうです・・・。乗船券はここで?」
「ええ、そうそう・・・。」
 すっかり明らかに変人を見るような親しげな顔つき。(笑) 乗り場へ一緒に向かいながら乗船料600円也を支払う。乗船券は目にしなかった。お金はおじさんのポケットにしまわれたようだ。
 乗り場へ出る入口には鎖が渡されて閉じられている。
「すんまへん、直ぐ開けますわ・・・。」
 と言ってくれるが、一跨ぎすれば済むことなので丁重に辞退し、鎖を跨いで船に渡されたタラップへ。先々週にお世話になったばかりの航路だが、今宵の船は前回の船とは異なる。操舵室が中央部に中二階で突き出していた。乗員は同じで、岸壁に出迎えてくれたキャプテン(と言っても実は実に気さくな人の良さそうなおじさん)は小生を覚えていてくれたようでにこやかに迎えてくれた。船室は前部客室、後部客室に分かれていてそれぞれ定員は20名、34名、それに立ち席が室内に12名、後部デッキに14名となっていて合計80名+乗員2名。小さな船に見えるのに結構乗せられるものである。ところが、今宵は他にだれも乗船客が見あたらない。貸し切りチャーター? いいのだろうか、乗客は他に誰もいない。
 定刻にはまだ十分ばかりある。キャプテンがわざわざ
「一応、定刻までもうちょっと待ってな。すんまえへんあぁ・・・。」
 そりゃそうだ、この航路はまぎれもなく定期航路なのだ。いくらお客が来ないであろうと、完璧な予測が成り立つとしても早発は許されないであろう。それにしても、何ともお気の毒な気がしてならない。地上係員二名、船員計二名、さらに向かう南港でも地上係員は二名、計六名もの人たち総てが本日最後の客、唯一小生のために・・・。内心恐縮しきりだが超豪華、ドリームシャトル<ベイタウン>貸し切り気分満喫。
 定刻出港、間もなく天保山埠頭の前を通過する。埠頭には何やらイルミネーションを連ねて輝かせた船舶が接岸している。暗いのでよく分からないのだが・・・、帆船のようだ。船腹にはキャビンの丸窓の灯りが連なっている。こちらの船室は明るいので外の様子は見難い。
 唯一の乗船客の要望として
「夜景がよく見えるように照明を消して欲しい。」
 と申し出ると、気のいいキャプテンが消灯してくれたのだがよく分からない。大きさからして<海王丸>ではないかと思ったが確認は出来なかった。が、帰宅後 航海訓練所のHPの「練習船スケジュール」 で確認したところやはり<海王丸>のようであった。
 波は静か。揺れることもなく天保山埠頭を左に旋回し迂回航路を巡り裏手から南港へ。入港は定刻21:55、これが何とも都合のいい時刻。オレンジフェリー<おれんじ7>は南港入港定刻は22:00だから、ぴったり、その入港の姿が前方に見える。
 ドリームシャトルの浮き桟橋から駐車場を横切り連絡橋ブリッジへ。今宵は扉を閉じる係員は居なかった。一階のオレンジフェリー発券窓口で乗船券を購入し二階の待合室へ戻り、煙草を一服すると間もなく乗船開始。

●往路 大阪→東予→新居浜 四国開発フェリー=オレンジフェリー<おれんじ7>特別室右舷側310号室 夜行便
 乗船客であろう人影は待合室にはまばらで50名あまり。車での乗船客やドライバーを含めても、精々100名あまりであろうかと思われる。乗船券は混雑もなくスムーズに購入できたが、ふと見ると記された船室は特別室310号室。この部屋は案内所と同じフロアなのでいわゆるバリアフリーな利点はあるのだが、特別室の所在場所が舳先に近いので一階上の410号室より、湾曲した船体前方の形状の精でやや狭い。まま、どちらでもいいのだが空いていれば410号室に替えてもらえばいいとそのまま乗船。
 案内所で
「410に変更できませんか?」
 と尋ねると見慣れた顔の係員が笑顔で
「すみません使っている人が居ます・・・。」
 と云いながら310号室のルームキーを手渡してくれた。申し訳なさそうに微笑みながらも変更はしっかりと断られた。(笑)
 ひとまず船室に旅装を解き、と言っても例により小さなショルダーバッグを置く、上着を脱ぐ、ただそれだけなのだが・・・。で、ちょっと一息コーヒーブレイク。これは持参のインスタントコーヒーを船室の湯飲みに入れて廊下に設置されている給湯器(熱湯・お茶・冷水が選べる)で熱湯を注ぎ自作する。その後はレストランで夜食とするもよし、部屋でくつろぐもいいのだが一応夕食はベトナム気分? で済ませていたので恒例「じゃこ天」ゲット目的で出かける。
 ところが、ところが今宵は感激、感激、何と大皿に盛られた活きのいい「アジの刺身」があるではないか。なじみのキャッシャー嬢がしきりにそれを勧めてくれる。一人前ずつ土鍋に具を入れて注文をすれば出汁を入れ温めてくれる「湯豆腐」もあるという。勧められるまでもない既に狙いは定まっていた。で、「じゃこ天」&新鮮な「活けアジの刺身」をゲット! 大皿に盛られた刺身を取り分けながら「湯豆腐」を勧めてくれたお嬢さんにも敬意を表しそれもゲット。で、これは船室でまどろみながらゆっくりのんびりに限るとパック詰めにしてもらおうかと思いつつも。
 ものは試しと尋ねてみると
「部屋へ持ち帰ってもいいですか?」
「ええ、いいですよ。」
 と、笑顔で快く快諾してくれた。器ごと持ち帰って食べるのとパック詰めとでは、これまた大いに趣は異なる。定かではないが持ち出しは原則として駄目であろうかと思われる。だが端境期には臨機応変に要望に応えてくれるのではないかと思う。根に持っているわけではないが、いつぞやの、あの今は無き直江津→岩内航路で、東日本海フェリーの何ともつっけんどうで杓子定規な無愛想な対応ぶりがふと対照的に思い出された。オレンジフェリーなればこその臨機応変さが、何とも心地よい要因のひとつであろうとしきりに嬉しくなった。おかげで美味しい「活けアジ刺身」&「じゃこ天」「湯豆腐」の夜食は大満足。
 いつしか、ふと気づくとすっかり真夜中、既に明石海峡大橋を後方に見送っていた。

 

●第二日目 新居浜上陸一日

 東予入港接岸のアナウンスで目覚める。三十分前に放送されていたはずの東予入港間近を知らせるアナウンスは夢の中であった。おもむろにベッドから起きあがった頃には東予を出港していた。バスタブに満たした熱い湯にゆっくり浸かり、朝シャン、ひげ剃り、さっぱり気分爽快。船窓にゆっくりと四国沿岸の景色が流れていく。波は静か、かもめが時折飛び交う。なのに、どうしたことか新居浜入港は暫し遅れると案内アナウンスが流れている。少々の遅れなどどうでもいい。むしろ朝の入港遅れは、その後の予定をタイトに組んでいない朝に弱い小生にとっては望むところでもある。ゆったり再びのコーヒーブレイクの間に新居浜東港入港着岸。08:05下船。
 ターミナルビル前には新居浜駅行きの路線バスが待っていた。が、今日はまた多喜浜からの移動と思っていたので歩くにはちょっと辛くタクシーに乗ることにした。だが、タクシーが無い・・・。
 すると、その気配を感じてくれたのか側にいた掃除のおばさんが
「発券窓口のカウンターに黄色の専用電話がありますよ。」
 と親切に声を掛けてくれる。そんな電話があるとは知らなかった。ターミナルビルに戻ると電話の存在は直ぐに分かった。発券窓口のあるカウンター左手にあった。
 ダイヤルなどはない。一瞬とまどいながらも受話器を取ると
「もしもし・・・。」
 まるで、インターフォンのように何もしなくても受話器を耳に宛てれば通じていた。再び表へ出て深呼吸、程なくタクシーは来てくれた。

●新居浜東港→多喜浜→観音寺
 多喜浜駅着08:20、まだ次の普通列車まで充分に時間はある。駅前喫茶店で朝食を、コーヒー、卵コンソメカップスープ、ミニ野菜サラダ、バタートーストパン、ゆで卵のセットで何と350円。
 無人駅のはずの駅舎に駅員が何と三人、手提げ金庫を床に置いて乗車券を販売していた。

●観音寺にて

写真 左:八幡神社鳥居 右:本殿へ急傾斜で延々と続く参道の石段
 観音寺到着後、伊吹航路乗船までには一時間あまりあった。ひとまず駅から徒歩で歩き出す。何処をどう巡ったのかは定かではない。商店街の中を抜けひとまず八幡神社へ向かう。やがて財田側に架かる三架橋を渡ると前方に八幡神社が見えてくる。
 ひとまず参拝と鳥居を潜り本殿に至る連なる石段を登る。この神社は銭形展望台のある山の頂上付近にある。そこへ至る参道の階段は写真では緩やかそうに見えるが実際にはかなり急な斜面に延々と石段が続いている。前方に本殿の屋根が見える辺りでぐったりギブアップ。時間も迫ってきていたので本殿を目前に折り返し下山。再び三架橋を戻りイロハタクシー営業所からタクシーで観音寺港へ向かった。タクシーでは約五分、料金は800円であった。ちなみに八幡神社から観音寺港までの道のりは1km弱程度だから歩いても三十分は要しないであろう。


写真 観音寺港にて 左:<ニューいぶき>に掛けられたタラップ 中:岸壁から左手に見える漁船の船溜まり 右:荷役中の後部甲板に積載のクレーン
 観音寺港には定刻11:20の二十分前11:00に到着。丁度、間合いのいい時刻だ。港付近&停泊中の<ニューいぶき>を色々と観察できる。前回は漁船溜まりには大漁旗を掲げた小さな漁船が群居していたが今日はその姿がない。みな出漁しているのであろうか。
 岸壁の<ニューいぶき>は生活路線の船にしては何とも綺麗な船である。デッキはどうやら甲板の層(三階)、その階下(二階)、さらにその階下(一階)の三階層になっているようだ。この岸壁は道路に面していてタラップのすぐ前にタクシーは横付け。船に向かって右手の道路沿いに乗船券売場の小屋があるが待合室などはない。既にかなり乗船客は乗り込んでいた。何時でも乗船できるようだ。
 この船は何故かフェリーではなく旅客船で船尾に荷物積み降ろし用のクレーンが装備されている。見ると制限荷重500kgと表示されたプレートが付いていた。岸壁に置かれたパレットの上に色々な荷物が積み上げられている。それを船尾のデッキにつり上げて積み込んでいた。

写真 タラップを上ると船上甲板、生活の香り漂う。
 タラップを上り乗船すると最上階層のデッキ。右手側が船尾方向となっていて左手は船室になっている。その前方が操舵室となっていた。デッキは右舷側手摺の手前に単車の車止めが並んでいて前輪を入れ込んだバイクが置かれていた。右手(後方)にはベンチがあり、その後ろのデッキは一階下でそこにクレーンがある。ベンチの上には釣り竿、ゴルフバッグ、ケースに入った楽器などが置かれていて占領されている。床にも釣り道具ケースのようなモノが幾つか並んでいた。真ん中には十個あまりの鉢植えの花が無造作に置かれている。総て乗船客の荷物のようであった。その真ん中でクーラーボックスに入った数種類の飲料を盛り上げて店開きしているヤクルトおばちゃんがいる。結構、数人の乗船客はそれを買っていた。交わす言葉はどうもかなりなまりのある方言のようで理解しがたい。なんとも生活の香り満載の船だ。
 次々と乗船客が乗り込んでくる。薬袋を手にした老人、どこかのスーパーのショッピング袋を幾つもかかえた婦人。長靴姿のおじさん。若い女性もいる。スーツ姿の営業マン風の男性もいる。釣りを楽しみに来たレジャー客らしきグループもいる。ローカルなテレビ局なのだろうか撮影機材を前にしたロケスタッフもいた。そして、どうやら唯一の純粋観光客らしき小生も居る。乗船客は総勢100名程度かと思われた。その割には船室はゆったり空席が目立つ。意外に大きな船である。

●往路 観音寺→伊吹島 観音寺市営<ニューいぶき>
 所要時間25分 乗船料片道410円

写真 観音寺港接岸中の<ニューいぶき> 左:船首部分 中:船舶表示 右:停泊中の船上から見た前方の漁船溜まり
 ひとまずデッキから船室に入り、両側に桟敷席を従えた階段を階下の船室(二階)に降りる。階段は中央に配されているようで回りには椅子席が連なる。その前方には桟敷席があった。最前列の椅子席に落ち着き後ろを振り向くと、後にも椅子席の向こうに桟敷席が見える。前方半分は椅子席、桟敷席共に喫煙室と表示されている。(^^) 後方半分は禁煙席であった。
 定刻11:20出港、外海からは水路でかなり入り込んだ港のようで、岸壁を離れ港を出ると右に旋回し水路を進んだ。次に左に旋回すると前方に港の入口を示す標識灯があり、両側から延びている防波堤の間が港への出入口になっていた。そこを出て再びやや右に旋回すると外海。<ニューいぶき>はここで一気に唸りを揚げて加速する。かなりスピード感があるような感じ。

写真 <ニューいぶき>最上階(三階)の桟敷席

写真 <ニューいぶき>の中層階(二階)の客席 左:桟敷席 中:椅子席 右:一階への階段降り口

写真 <ニューいぶき>の下層階(一階)の桟敷席
 ひとまず落ち着いた椅子席から、さらに階下へ降りる階段が目に止まる。その階段を下りるとさらに階下に、こじんまりとした桟敷席が中央通路を挟み両側に設けられていた。様々な趣のあるバラエティー豊かな船室を有したおもしろい船である。等級があるわけでもないし指定席でもないから、どこを自分の席と定めても構わない。100名余りの乗船客は適当に分散していて、あちこちにやたら空席が目立つ。定員は300名とのことだが、内部の印象はかなりゆったりしているように思えた。
 一巡りの後、再び椅子席に落ち着き煙草を燻らせまどろみながら、まずは伊吹航路乗船の一時を船窓に流れ行く瀬戸の海を眺めながら過ごす。大型フェリーに乗り慣れている身には、小型船の船窓から眺める海面は近い。その精か、現実には大型フェリーの航行速度より遅いはずなのに数倍のスピード感を感じるのは不思議なモノである。後方に観音寺港をぐんぐんと遠ざけながら一路伊吹島に向かう。
 途中で小魚漁の巻き網漁船であろうか併走して疾走する。程なく追い抜いていく頃には前方に伊吹島が近づいて来る。やがてどんどん島影は大きくなり程なく港に差し掛かる。こちらの港は外海に突き出した防波堤に囲まれた港で、入口を過ぎると減速して徐に旋回しスムーズに岸壁に接岸した。

●伊吹島上陸
 朝方曇り空であった天候は徐々に回復の兆しを呈してきていた。二十五分の航海の後<ニューいぶき>は定刻11:55伊吹島港入港。港には漁船が多い。岸壁に降り立つとバイクの山。無造作に何十台、いや百台を越えていたのかも知れない・・・が雑然と傍らに駐車している。軽四輪車はそこそあるが普通乗用車や自転車はない。その謎は直ぐに解けた。降り立った岸壁から前方を眺めると左な坂で海辺を上り行く狭い車道。正面には家々の中を這い上るように車は通れそうもない急な斜面に道がある。この急な坂道が町中? へ通じているようで、下船した多くの人々がそこを上っていく。バイクも上っていく。老人を後ろに乗せて上るバイクもある。人家が集まっている方向のようだ。これでは自転車では到底無理、乗用車も役立たない無用の長物となるのは一瞬にして理解できた。この航路の船がフェリーでない理由もそれなりに納得できる光景であった。
 案内地図を見ると、やはりその坂道の行く手に人家、学校、農協、神社、公民館などがある様子。とにかく、その坂道を行くことにした。しかし勾配は急で道幅も狭い。やすみやすみのんびりと上っていく。そんなに距離があるわけではないが息が切れる。

写真 左:伊吹港停泊中の船上から港内 中:降り立った岸壁にバイク山盛り 右:正面急な坂道の脇に立つ民家の石垣
 やがて、ちょっと平坦な感じの場所に出た。よろずやさんのような小さなお店があった。さっきデッキに並んでいた鉢植えの花が店先に並んでいた。このお店の仕入商品であったわけだ。小学校があった。立派な鉄筋の校舎で広い運動場もある。門は解放されたまま授業中の様子であった。向かいは八幡神社。この辺りは何処へ行ってもみんな八幡神社のような気がする。神社の名前は八幡神社でなければならないのだろうか?
 八幡神社の入口の傍らに何かの祈念碑のような石碑があり案内板に、この島に電気が通じたのが昭和四十二年であることが記されていた。その先に伊吹農協の建物があり一階はコンビニかスーパーのような感じの店舗になっていた。そして公民館。道は再び坂道となって上り坂になっている。少し上ると○○薬品と記されたプレートを壁面に貼り付けた小さなお店があった。薬品と書いてあるが店先には讃岐うどんの乾麺やインスタントラーメン、袋菓子などが並んでいる。ご主人らしいおじさんが店先に出ていた。何となく会釈を交わす。親しみを感じる。
 ちょっと話しかけると気さくに応じてくれる。
「こんにちわ。」
「何しにおいでになった?」
「伊吹航路の船に乗りたくて・・・。それにイリコを買いたくて。」
「そうかい、でもイリコは無いな・・・。」
 話し始めるとますます気さくに親密感を覚え始める。色々尋ねたりもする。その中で知り得たことはイリコは6月から8月あたりが旬だと言うこと。食堂やレストランなどは一軒もなく旅館が一軒と民宿が一軒あるだけ。しかも予約をしておかなければ急に行っても食事は無理かもとか。海水浴場もないし観光客は殆ど来ないが春はお花が咲いて綺麗だとか。もう少し上へ上がれば周りの海が見渡せて眺めがいいとか、何かと色々教えてくれる。
 間もなく奥さんが買い物帰りらしくショッピング袋をぶら下げて戻って来ると、ご主人がイリコのことを聞いてくれる。うちには無いが農協へ行けばいいと教えてくれる。農協以外にはめぼしいモノは何処にもないのだそうだ。
 それにしてもありがたい。貴重な生情報はこうして入手できた。つまり、この島では突然の来訪ではまともな昼食にもありつけないこと、名産のイリコには旬があること、お茶を飲むにも喫茶店もないこと、などが明らかとなった。お礼を言い、再びのんびりともう少し坂道を上ることにした。だんだん道は狭くなる。人家の間を巡りながらやがて、その道は峠のような所で車道とおぼしき舗装道路に出た。今し方仕入れた生情報では唯一この道が車で港まで通じているらしかった。

写真 坂道を巡りながら眺めた伊吹島からの展望
 坂道を巡りながら所々で立ち止まり眺望をカメラに納める。舗装道路を少し行き再び左手に入る細い道を少し上ると頂上貯水槽に行き着いた。ここが、この島の最高地点なのか。そこからは下りに差し掛かる。再び人家の間を巡る。何処をどう行けばいいのか分からない。まるで迷路だ。しかしまぁ下っているのだから下へおりて行くのだろう。不思議なモノで、このようなのんびりとした土地を訪れると気持ちはすっかりおおらかになれるものである。ぐるぐると人家の間を巡っていた道は気付くと来た道の途中に出た。

写真 左:伊吹島名産カタクチイワシのイリコ、写真上部は小魚、小エビ、海草などを干して混ぜたふりかけ?<絶妙の塩加減で美味しい。 右:伊吹港側に立ち並ぶイリコ加工工場
 今回目指す伊吹島特産カタクチイワシの「イリコ」ゲットは農協へ行かなければならない。来た道を戻り農協にたどり着く。店内はちょっとした小型スーパーの趣で野菜や総菜、食材、日用品などが並んでいる。乾物のコーナーに「イリコ」発見、大きな袋500g入りか。内容量の表示はないのだが袋には価格は800円と表示があった。それに価格表示のない小袋詰めにした貝の干物、小魚のふりかけのようなもの、イカゲソ干物などが並んでいた。伊吹島産で伊吹農協製であることを見極め、それらをカゴに入れる。竹輪、蒲鉾も発見、こちらは観音寺市内のメーカー製品、これもカゴへ。昼飯にありつけそうにもないのでコーヒー牛乳パックと菓子パンをひとつ。締めて2000円あまり、どう考えてみても安いように思う。小袋詰めの珍味は減算方式で割り出すに一袋150円程度か。とにかくこれで「イリコ」ゲットの目的は達成&昼食もなんとか確保。
 坂道を下り再び港へ。帰路の道すがら港の近くに旅館を確認。生情報で得ていた唯一の旅館、春日旅館と表示されていた。ここは何でも後記するうどんや「きたの」の女将さんの話によれば、漁師さんが経営しているそうで事前に予約をして置けば旬の食材でとれたて海の幸を満喫させてくれるそうである。
 こちらには観音寺港にはなかった待合所がある。観音寺市の出張のような機能を兼ねているのか何とか事務所と記されたプレートなどもあるが定かでなく、しかも綺麗ではない。雑然と色々なモノが置かれた物置小屋の中の感じ。ちゃんと女性係員が窓口の向こうに二人居るが、背を向け向こうのテレビに向かって居るだけで手持ちぶさたの様子。乗船券は往復で購入していたので買う必要もないからストーブを囲むベンチに腰掛け昼食。竹輪、蒲鉾そしてパンにコーヒー牛乳。アフターコーヒーは自動販売機の缶コーヒー。
 昼食を終える頃には既に乗船は開始されていた。

●復路 伊吹島→観音寺港 観音寺市営<ニューいぶき>

写真 <ニューいぶき>船上デッキから、ぐんぐん遠ざかる伊吹島
 定刻13:30<ニューいぶき>は伊吹港を出港した。直ぐに港を出ると全速力で疾走を始める。早い、往路でもかなり速い船だとは感じていたが・・・。伊吹港は防波堤を出ると直ぐに外海に出た。一気にエンジンの唸りを高めると、あっと言う間に鮮明な航跡を描きながら伊吹港を後にした。
 デッキでその様子を見ていたのだが凄いスピード感のある船だ。船員に速度を尋ねてみると巡航速度は17ノットとのことであったが、高速船ではないかと感じるほどのスピード感でさえあった。航跡を一直線に描きながらどんどん遠ざかり一路観音寺港へ向かう。伊吹島はどんどんとその姿を小さくしていった。
 階下の船室に戻り煙草を一服。程なく船窓から前方に観音寺港が認められる。

写真 <ニューいぶき>船上デッキから観音寺港を遠望、ぐんぐん近づいてくる。
 再びデッキに出て前方へ回る頃には早くも観音寺港の入口がはっきりと見えてくる。港湾入口から左折、右折、直進、左折して観音寺港岸壁に着岸することは往路の逆であることから推察できた。港の光景はぐんぐん近づいてくる。

写真 観音寺港入口にさしかかる。前方を先導するかのように漁船が行く。
 間もなく観音寺港入口に差し掛かると一隻の漁船が先を先導するかのように舳先の向こうを行く。その後に従うかのように本船が行く。やがて左手前方に岸壁前の漁業組合の建物が視界に入る。

写真 観音寺港間近
 舳先に甲板員が立ち前方を注視している。観音寺港の岸壁が迫る。定刻13:55観音寺港入港接岸。タラップを降りた岸壁には地上係員が居て乗船券を回収している。手にした往復乗船券を手渡し伊吹航路制覇は無事完了した。何処へ行くとも定めていなかった。とにかく岸壁の目の前は道路である。左折すると海岸に至る行き止まり道なのでとりあえず右折する。

●観音寺→伊予西条→多喜浜
 観音寺港からは急ぐわけでもないので、ぶらりぶらりとひとまず琴弾公園へ向かうことにした。港から十分あまり歩くと財田川に架かる琴弾橋に差し掛かる。「銭形」の町らしく橋の手摺にも「銭形」のレリーフが填め込まれている。丁度、満潮時であったようで川幅いっぱいに水面が広がっていた。川底まで見通せる透明度がある。上流方向に三架橋は見え、左手の山頂近くに八幡神社の本殿が眺められる。下流川は河口となって瀬戸の海に繋がり、その先に伊吹島も遠望できる。この橋を渡れば琴弾公園に至る。
 橋を渡り右折、琴弾公園に至る。この地、観音寺の祭の太鼓台などが見られると言う道の駅をひとまず目指す。橋のたもとの道標に従い橋を渡り右折して暫く歩き途中から公園に入ってぐるり一巡し道の駅に着いた。その時に気づいたのだが、橋を渡りスロープを降り道を渡れば直ぐ近くであった。あの標識は車での道順を記していたらしい。
 とりあえず道の駅に入る。こじんまりとした綺麗な施設で、ちょっとひとやすみにも快適そうな雰囲気。観音寺市の施設なのであろうか、入場無料、お祭りのビデオ鑑賞。隣の世界のコイン館へ行く。こちらは入館料350円。そしてそのまた隣は郷土資料館、こちらはまた無料とあったが玄関口からちょっと覗いて場を辞した。

写真 左:琴弾橋 右:道の駅観音寺で太鼓台観賞、世界のコイン館、郷土資料館

 道の駅の向かいに手打ち讃岐うどんの看板を掲げたお店があった。<きたの 狙いを定めて入ったわけではない。讃岐に来てうどんを食べない手はないと何となく入った。
 中年の女性がひとりで店番をしていて他には誰もいない。
「いいですか?」
「はい、どうぞ、どうぞ・・・。」
 まぁいいや。間違いなく何の期待感も抱いては居なかった。何の変哲もないうどんや。壁に短冊に表示されたメニューを一覧して何気なく「天ぷらうどん(小エビ天)」と表示されていたのを注文した。おばさんは注文を聞くと厨房に消えた。暫くすると油の臭いが仄かに漂い、天ぷらを揚げる油のはねる音が聞こえる。へぇ・・・、わざわざ天ぷらを揚げている、と思った。そして待つこと暫し、天ぷらうどんが運ばれてきた。

写真 左:超感激!地元名産のじゃこえびたっぷり入りかき揚げの天ぷらうどん 右:讃岐うどんの「きたの」正面
 まずは見てびっくり。どんぶり一面に広がる揚げたての天ぷら。しかも小エビがどっさり入っている。麺は明らかに手打ち風、やや細目の感じ。出汁は好き通った澄まし汁風。香ばしい香りが漂う。ちょっと美味いかな、と期待する。割り箸を割り天ぷらをひとつまみ口へ・・・。
 あっ・・・。何ともお店には大変失礼だが、驚き桃の木、超びっくり仰天!!!
 めっちゃぁ美味い。石川啄木でもあるまいに改めて天ぷらをじっと見る。小エビが綺麗だ、美しい。頭ごとの有頭エビなのだが、口の中では、あの殻の嫌な硬さも気にならず何とも美味い。箸をすすめる。そのたびに感激しきり。麺もかなり腰が強く何ともうま味のある味わい。汁もすするとこれまた絶妙、超感激。とにかく、特に小エビ天ぷらの美味さは格別。あまりに美味いので、一気に半分くらい食って持ち帰りたくなり。
 持ち帰らせてくれるかな? と懸念しながら尋ねると
「美味しいですねぇ。この天ぷら・・・。」
「そうですか・・・。」
「ええ、ほんと美味しい。で、持ち帰りできますか?」
「はい、いいですよ。ひとつでいいですか?」
「そうですか、じゃ三つお願いします・・・。」
 と、快く了解してくれたので思わず頼んでしまった。(^^) また暫し油のはねる音が微かに聞こえ香ばしい臭いが漂う。程なく揚げ終えて三つの天ぷらはパックに入れて持ち帰れるようにしてくれた。それにしてもあまりにも美味いと思いながら、そんなに腹が減っていたわけではなかったので麺は少々残したが天ぷらはすっかり食った。
「美味しかった。美味いですねぇ、このエビ天、地元のエビですか?」
 と尋ねるとおばさんは一生懸命話し始めてくれた。観音寺港に水揚げされる「じゃこエビ」と言う名前のエビだそうで活きたままのエビを買い真水で水洗いする。そして、活きたまま直ぐに冷凍し、注文の度にかき揚げにするという。活きたじゃこエビはもちろん漁があり水揚げされた時にしか入手できない。毎週二度程仕入れられるそうだが、その活きたままの鮮度を保つための秘策であるらしい。旬は十一月頃と四月頃が大きさも頃合いで一番美味しいらしい。冬の今時期でもかなり相当に間違いなく旨いのだがやや小ぶりだという。また夏時期は全体に大きくなると同時に頭部の殻が堅くなるので、頭部を取って尾部だけを使うとのことであった。四季折々に育まれた智恵で年中小エビ天うどんは供されている。
 また絶妙な出汁は、これまた伊吹島名産のイリコを始め七種類のものを調製し、イリコのうま味を引き出しながらも、その苦みのある嫌みを消す企業秘密らしいとか。もちろん麺はこれまた素材を厳選した自家製手打ちだという。しかし、そんなことは何処にも書いていないし表示もされていた居ない。あたかも当然であるかのように何のてらいもなく話してくれる。これまた何とも驚きであった。
 あまりに小生が旨い旨いと言ったからなのだろうか、厨房に戻ると自分で冷凍したという「じゃこエビ」の入ったパックを差し出し、これを持って帰れと言ってくれる。活きたまま冷凍しているから腹が黒くなっていないと言う。死んでしまうと黒くなるので違いは一目瞭然、直ぐに分かるという。唐揚げにしても美味しいから、是非、持って帰れと盛んに勧めてくれる。が、これは非常にありがたいことで厚かましく頂戴したいところであり、その気持ちは山盛りであったが、いかんせん夜行で帰る身にあっては途中が気がかりなので丁重に辞退させていただいた。
 話が弾む中で伺うには、おばさんはこのお店の女将さんであった。お店はもう閉めるのだと言う。それで【銭形】を見て行けと言ってくれる。しかも、もう店を締めるからお店の車で駅まで送ってくれると言う。【銭形】を見るのにわざわざ展望台を経由して観音寺駅までである。あまりにもありがたい。お言葉に甘えるには厚かましいのではと盛んに思いながらも、ついつい嬉しくなって、結局、お言葉に甘えることにした。それでとにかくお代を払う。何と、この天ぷらうどん、お代は470円、わざわざ揚げてもらった天ぷらはひとつ150円だと言う・・・。もうすっかり超超感激しきり。

写真 左:左に観音寺港、右手に銭形、前方海上に伊吹島を見る。 右:伊吹島を背にした銭形
 ついに厚かましくも、おまけに銭形展望台経由で駅まで車で送ってもらった。おかげで今年、二度目の【銭形】を拝むことができカメラに収めることもできた。
 なお、車中での女将さんのお話に寄れば、元々は自宅でお好み焼きやさんをされていたようで、今のお店「きたの」は八年前に、それまでの経営者から譲り受けたとのこと。通りで店内のメニューにお好み焼きの品目も多く、お好み焼きの鉄板があるテーブルが使用されていたわけだ。うどんやなのにお好み焼きのメニューが多いと思っていた謎が解けた。再訪の機会には、じゃこエビのお好み焼きがあったかどうか記憶に定かではないが、是非、食してみたいと思う。きっと限りなく究極の美味しさではないかと期待を抱いてしまう。
 ありがとうございました女将さん!

 観音寺駅到着は16:30頃、まだ復路の<おれんじ8>乗船までには時間的にはかなり余裕あり、で、時刻表を見ると伊予西条辺りへ行ってちょっと散歩、そして多喜浜へ戻れば丁度いい頃合い。とりあえず16:45発の普通列車があるのでそれにて伊予西条へ17:52着。

 伊予西条駅は以前に、今治から新居浜へ来るときに普通列車を乗り換えた記憶があり、ホームに確か湧水が湧き出ていた。その他に何の記憶もない降り立ったことのない駅である。日も暮れた伊予西条駅に初めて降り立つ。かなり大きな駅である。石鎚山からの水が美味しいそうで、キヨスクには小さなペットボトルのミネラルウオーターも売られている。駅前の広場には湧水の泉も設えられていて、そこには「水の都」と記されていた。
 いずれまたゆっくり訪れる機会もあるだろうと、ひとまず駅の案内看板を見て駅の近所を一回り散歩。ちょっとした居酒屋や何故だか焼鳥屋が目立つ。ビジネスホテルも結構建ち並んでいる。駅前界隈の状況は普通の地方都市と言った印象。繁華街と言うか、官庁や公共施設などが集まった中心部は駅からはちょっと離れている様子なので今回はパス。
 多喜浜に戻る普通列車までにはまだ小一時間もあるので、ちょっとコーヒーブレイクをと思いつつ駅前広場で辺りを見渡すが喫茶店はなさそう。正面に向かって左手にビジネスホテルが二軒並んでいた。どちらも一階が明るいのでコーヒーショップならありそうだと内部に人影の見える駅寄りのホテルに入る。正面のフロントに向かい左手に喫茶室のような所があったので、そこに腰を下ろすが誰も来ない。見渡すとコーヒーやジュースなどのサーバーがあったが・・・。暫くするとフロントの女性から声がかかる。何でも、そこは宿泊客専用で一般客は駄目だという。つまり追い出されたわけだ。
 で、隣のホテルへ。西条ステーションホテルというホテルらしい。こちらは入口にちゃんと看板が出ていたのでコーヒーにありつけそうだと入った。ところが、ここでもまた感激、期せずしてひき立て豆で、たててくれた香り高い芳醇なエスプレッソルンゴ。期せずして美味しいコーヒーにありつけた。水の都、伊予西条と言うだけあって石鎚山の美味しい湧水を使用していたのであろうか、定かではない。
 ゆっくり味わい適度に時間をつぶして再び伊予西条駅から19:22発の普通列車で多喜浜駅に向かう。19:36多喜浜駅着、今朝は不思議に三人も駅員が居たが、この時には無人駅らしく駅員の人影はなかった。駅からは多喜浜タクシーの営業所まで歩いても駅前道路を国道に出て交差点を渡り右折直ぐなのでほんの数分。新居浜東港まではタクシーメーターは800円程度。

●復路 新居浜→東予→大阪 四国開発フェリー=オレンジフェリー<おれんじ8>特別室右舷側121号室 夜行便

写真 新居浜東港に入港する<おれんじ8> 左:岸壁の前で旋回中舳先を向ける 中:さらに旋回 右:間もなく接岸
 港に着くと、程なく入港してくる<おれんじ8>が遠望できる頃だった。これはチャンスと一旦入ったターミナルビルから外へ出て脇の駐車場へ出る。駐車場はがら空きで何とも好都合。岸壁の前で舳先を180度旋回し左舷から接岸する様子をカメラに収めることが出来た。
 この夜は新居浜にしては珍しく数十人の乗船客が待合室に居た。ここから<おれんじ8>に乗船するのは暫くぶり、いや初めてだったかもなので乗船客は、この時期これでも多いのか少ないのかは定かではない。何時も昼便の<おれんじ7>の時には殆ど人影を見かけないから多い気がしていただけなのかかも。外国人労働者らしき一団が大きな荷物を乗船口に山積みにしていて、乗船開始はまず彼らから始められ、その荷物が幾度かの往復で運び込まれた後に小生たち一般乗船客が案内され定刻十分前に乗船となった。
 手持ちの乗船券には特別室101号室と記されていた。右舷四階の部屋である。ま、どちらでもいいのだが、このところ右舷続きだったので左舷お部屋は空いてないかと案内所で尋ねると快く快諾してくれ変更手続きのコンピューターを操作してくれる。が、どうやらコンピューターの反応が鈍いようでなかなか手間取る。(笑) しかし希望は叶えられ左舷側の121号室に変更できた。
 船室に落ち着くと間もなく出港。<おれんじ8>の特別室の浴室はゆったりとした大きな窓のある展望浴室。バスタブもゆったりと大きい。やっぷりと湯を満たし、ゆっくりながれゆく四国沿岸の夜景を眺めながらのひとときは天上の趣である。湯上がりのコーヒーブレイクをしている頃には早くも東予港にさしかかる。程なく入港接岸なのだが左舷側からは接岸の様子は見えない。本船は右舷後方から接岸する。
 ちょっと腹も減ってきた。くつろいでいた浴衣姿を着替えてレストランへ。着替えなくても浴衣姿のままでもこの航路では許されるが何となく着替える。停泊中だがレストランは営業していた。がら空き。恒例の魚フライ定食を食う予定。昨夜期せずしてありついた活け「アジの刺身」にもまたありつけるかもとの期待もあった。で、やっぱりあった!!! 活け味の刺身、しかもこちらはちゃんと一人前ずつ船型の器に盛られている。細かく刻んだタタキがひとつまみほどに、それと大きな切れ目が四切れあまり盛られている。昨夜は確か400円であったが、こちらは500円、それでもビックリ感激価格には違いない。しかも豪華!

写真 左:噂の?画像初掲載!<おれんじ8>レストランの魚フライ定食800円 右:旬の絶品アジの刺身500円&かまあげ大根下ろし300円

 極めつけ昨夜に続いて豪華船盛り活きのいい「アジの刺身」と共に「かまあげじゃこ」の大根下ろし添え、これもまた旨い。それに定番「魚フライ定食」と、ついつい食欲旺盛。魚フライ定食については、この乗船記で幾度も記載はしていたが、ついつい何時も食ってしまうのが先で写真を撮ろうと思った頃には皿だけになっていた。今回ははじめから心して、ひとまず全景をカメラに収めてから食した。味噌汁が相変わらずかなり甘めであることを除けば絶品であることに変わりはない。
 ちなみに今回は今まで食した中では魚(アジ)フライはもっとも小さかった。これでも充分な量だが、今までは、この写真のフライふたつでひとつくらいのものがふたつだった・・・。小生にとってはこれで充分に丁度いい量である。
 レストランでゆっくり腹を満たすと、後は船室でアフターコーヒーを味わいながら、ゆっくり船窓を流れ行く瀬戸の夜景をまどろみながら楽しむ。久しぶりに見る左舷からの夜景は、東予を出ると本州沿岸を眺めながらの航海となる。すっかり夜の帳が降りた街灯りがところどころに点在していた。

 

●第三日目 <おれんじ8>での船内休憩タイムは格別

 気が付けば既に大阪南港フェリーターミナル第三埠頭に入港接岸していた。定刻は05:50だが、時計を見ると六時を過ぎていた。この新居浜発三便<おれんじ8>にはありがたい心配りがある。ここ大阪南港入港後の船内休憩である。入港着岸後8:00まで船内に滞船していることができる。レストランも営業しているので船内で朝食を取ることもできる。案内所前では美味しい石槌の水でたてたレギュラーコーヒーとゆで卵、朝刊も販売している。
 下船準備完了07:50、部屋を出て下船。そのときにちょっとレストランの入口を見ると、朝食は以前はバイキングであったはずだが定食になっている。そう言えば昨日の新居浜でもそのように表示されていたような記憶が。とにかく和食か洋食の定食になったようである。また、昨夜の案内所での話では船内休憩時間内にはインターネットも楽しめる。500円でコーヒー付き。貸し出してくれるノートPCで無線LANで繋げるようで電波の関係上、レストランの入口右手手前のテーブルで使用するのが良いとのことであった。こちらは試してみようと思っていただのが、部屋でまどろむうちに滞船時間が迫ってしまい諦めざるを得なかった。
 下船後、久しぶりにターミナルビルのレストランで朝食モーニングセット。ここは定食で洋食と和食がある。このデフレ時期には珍しく最近ちょっと値上がりしたようだ。以前は消費税込みで550円だったが今回は600円となっていた。洋食は熱いコーヒーに卵二個&ハム一枚(半円形二枚)のハムエッグに和風ドレッシングの野菜サラダが添えられたシンプルな定番。
 だが窓際の席で岸壁のフェリーを眺めながらの朝食は旅の終わりを告げる。ちょっと寂しい気もしないではないが、また次なる思い立っての船旅に思いを馳せる楽しい一時でもある。

 

●余談 巡り会い、出会い・・・そして、感動!
 心温まる人々との巡り会いや、嬉しいモノとの出会いは突如として訪れ、その恩恵に恵まれるモノである。今回のぶらり思い立っての船旅での人やモノとの出会いは正にそれを実感した。
 貸し切り状態でも快く笑顔で送ってくれたドリームシャトル<ベイタウン>のキャプテン。伊吹島でのレアな島情報を教えてくれたご夫妻。イリコに干物、竹輪に蒲鉾。観音寺でのじゃこエビ天うどん、心温まる女将さんの気遣い心遣い、ありがたいご厚情。伊予西条で、期せずして憩いの一時美味しく楽しませていただいたエスプレッソルンゴ。そして<おれんじ7>レストランで見つけた活けアジの刺身、熱々の湯豆腐。<おれんじ8>案内所でののろいのろのろPC&気持ちの良い爽やかな対応。
 また再び三度と、心惹かれる小さな旅への思い立ちはきっと尽きることはないのであろう。そこに巡り会い、出会い、そして感動のある限り・・・。

 

■後日追記 2002年 正月 帰宅した日の夜
 昼前に帰宅した。あの戦果(イリコ、干物、じゃこエビ天ぷらなど)を携えて。じゃこエビ天ぷらは紙に包まれパックに入れられていた。紙にはすっかり油がしみこみあのサクッとした見映えと感触はなかった。ちょっとふにゃっとした感じなのである・・・。が、その端をちぎり取り口へ運んでみると、何とこれまたおつな味、あの揚げたてとは異なるのだがやっぱり美味い。早速、ひとつ取りだし醤油をちらちらとふりかけて食う。残り二枚。昼食時にも同様にして一枚、そして夕食にもやはり一枚。冷えた天ぷらに醤油をかけて熱ごはんで食べるとこれがまた格別の美味さなのである。
 しまった・・・、こんなことなら十枚くらいは持ち帰るべきだった。だが時、既に遅し、で、また近々に「じゃこエビ天」ゲットのオレンジフェリー瀬戸内海の船旅に出ようと誓ったのである。

 

■ORANGE ROOM■

@ドリームシャトル  ACオレンジフェリー  B観音寺市 伊吹航路

 

2001 H13
■FR−015■  ■FR−016■  ■FR−017■  ■FR−018■  ■FR−019■  ■FR−020■  ■FR−021■  ■BANGAI-2001■
2002 H14
■FR−022■  
■FR−023■  next02.gif (38489 バイト)■BAGAI-2002A■  ■BANGAI-2002B■
■ORANGE ROOM■
■FR−024■  ■FR−025■  ■FR−026■  ■FR−027■  ■FR−028■

思い立っての船旅 今世紀・2001-200X