■FR−031■
ダイヤモンドフェリーのダイヤ改正で可能となった瀬戸内海ゆったり27時間余のワンナイト

写真 左:神戸出航前の船室船窓から阪九フェリーの船舶が眼前に見える 中:来島海峡大橋を後に今治へ向かう 右:松山港接岸時のデッキにて

2003年 春 思い立ち、ダイヤモンドフェリーでの瀬戸内海ワンナイト

                      

●航海 往路・瀬戸内海+周防灘
@★★★★★ 往路 神戸→今治→大分 ダイヤモンドフェリー<スターダイヤモンド>特別室SP2右舷側 夜行便

A★★★★★ 復路 大分→松山→今治→神戸 
ダイヤモンドフェリー<スターダイヤモンド>特別室SP2左舷側 昼行便
 総トン数:9,463.00 主機関:27,000 馬力 航海速力:23.0ノット 旅客定 員:942名 積載可能車両数:乗用車50台・トラック105台 就航年月日:1992.2.5

●旅程 船中一泊 一泊二日
第一日目 
@神戸港(六甲アイランドフェリー乗り場)17:50(ダイヤモンドフェリー<スターダイヤモンド>)→
第二日目 →00:30今治港01:00→06:00大分港 下船することなく折り返し
       A大分港07:30(ダイヤモンドフェリー<スターダイヤモンド>)→11:00松山港12:00→
       →13:40今治港14:10→21:00神戸港

 

ダイヤモンドフェリーのダイヤ改正で、のんびりゆったりたっぷり瀬戸内海ワンナイトクルーズ・・・

 ダイヤ改正で西大分07:30発→21:00神戸着の昼行便発見! この便は下り1便の折り返し便で上り1便として運行されている。
 で、思い立って数日前にダイアモンドフェリー予約センターへ電話。特等A予約を難なくゲット!

 夕方発の船旅は出発ものんびりできる。昼下がりまでに雑用を一段落させて荷物の最終チェック、と言ってもいつものことでデジカメ、充電器、オペラグラス程度のものである。
 ひとまずJR大阪駅へ向かい前回乗船時の教訓から夕食用駅弁、翌日の朝食用のパンなどを買い込み西へ向かう電車で住吉に向かう。快速電車の停車する駅なのだが新快速は停車しない。大阪駅で乗り込んだ電車は新快速電車であったので尼崎駅で下車、スモーキングタイム。一服して後、後続の快速電車に乗り換え住吉駅に到着。
 改札を出て左手のエスカレーターを降りると眼前にダイヤモンドフェリーの広告看板がある。前回ここではバス乗り場の表示がないので右往左往したのだが今回はもう勝手知ったる気楽さがあり余裕綽々。しかし、ここにバス乗り場への案内が為されていなことは何とも不思議に思いかつ少々不親切ではないかと思う。と言うのも駅前広場を一生懸命に探してもタクシー乗り場があるだけでバス停など何処にもない。もちろん何の表示もない。
 駅前を出て向かいのビルの向こう、歩けばほんの一分余りではあるが駅前とは程遠い国道二号線にバス停があるのである。出航前には二十分おきに出るありがたい便利なバスなのだが・・・。
 前回は何だか道路が混雑していて港までかなり時間を要したような記憶があったが、今回は途中混雑もなくすいすいと順調に走行しポートアイランドへの橋にさしかかる。左手前方彼方に船舶の接岸する港が遠望できる。前後に二隻のフェリーが停泊している。前方向こうが阪九フェリーの船舶で手前がダイヤモンドフェリーの船舶である。
 橋を渡りきると直進して左折、ポートライナーのアイランド北口駅前のバス停に停車する。このバスの不思議さなのだがバス賃は住吉駅から乗車すると220円なのだが、ここ北口から乗車すれば港までは無料である。帰路も同様に北口までは無料、北口以降には運賃を要する。     
 住吉駅から所要時間約二十分、神戸ポートアイランドのフェリー乗り場ターミナルビル前に到着。数人の乗客とともに下車した。発券窓口前には人影は疎ら、乗船客は少ないような様子であった。
 乗船名簿に必要事項を記入し窓口へ。スムーズに発券され特等A乗船証をゲット。ここでの不思議は前回に引き続き復路の乗船券の購入ができなかったことである。往復乗船の場合は他の船会社はどこでも一様に往路乗船券購入時に復路も同時に購入できるのが常であるがダイヤモンドフェリーの場合は復路分を発売してくれない。
 理由は定かでないが・・・。
「この船で行き、そのまま折り返しますので復路分も一緒に発券してくれませんか?」
「帰りの分は向こうで一端下船していただいてこの乗船券を提示して往復割引で購入して下さい。」
「復路分はここでは買えないのですか?」
「はい、ここでは販売していません。向こうでお買い求め下さい。」
 愛想のいい女性の係員なのだが答えは何とも素っ気ない。
「特Aは狭いですよね・・・。」
「はい、おひとり用ですから・・・。」
 これまた素っ気ない。
「じゃ、やっぱり特別室に変更して下さい。」
「ここでは販売していません。船内案内所でお尋ね下さい。」
 端境期で空いているに決まってるだろうにこれまた素っ気ない。
「そうですか・・・。じゃ、帰りの予約を特別室に変更して下さい。」
「はい、それは出来ますのでちょっとお待ち下さい。」
 出来ないと言うことには素っ気ないが出来ることには結構愛想がいい。暫し後
「帰りの予約は変更できました。」
 との返事にとにかく特等Aの乗船証を手に二階の出発ロビーへ向かう。五十人余りの乗船客が既に待っていたが程なく定刻三十分前乗船が開始された。

 愛想のいいクルーに出迎えられ船上の人となる。案内所には若い女性係員が数人待機していた。乗船証を差し出すとルームキーを渡してくれた。
「特別室空いてるでしょ。特等Aは狭いでしょうから替えてくれませんか?」
「はい。特等Aはおひとり用ですから狭いですよ。」
 そりゃそうだろ、発券窓口でも同じ答えであった。狭い理由は分かっていますって言うのに。(笑)
 とにかく特別室への変更は難なく出来て特別室SP2のルームキーをゲット!
「ところでこの船に乗りたくて乗りに来ただけですので明日西大分でそのままこの船で戻りたいのですがここで帰りの分も精算できませんか?」
「ここでは出来ません。一端下船なさって窓口でお買い求め下さい。」
 マニュアルではそうなのだろう。発券窓口での返答と同様に何とも素っ気ない。
「そうですか? でも、明日朝早いでしょ。西大分へ行くのが目的じゃないんですよ。この船にゆったり乗ることが目的なんですけどね・・・。ここで何とかなりませんか?」
 度重なる船旅での経験則的知恵でもある。窓口での対応と船内での対応は異なることが多い。船会社によってもその対応には差異があるから一概には言えないが結構融通が利く場合もある。駄目元でも一応こちらの要望は言ってみると言うのが得策である。
「そうですか・・・。」
 この船に乗ることだけが目的と言ったことが功を奏したようで不思議そうな困惑の表情を浮かべていた。
「じゃ、上司に尋ねて見て下さい。」
 なおも重ねて言ってみた。
「はい、では確認してみますので後ほどお立ち寄りください。」
 ちょっといい予感をもって部屋に向かった。

 船室に落ち着くと空腹感を覚える。昼前の目覚めから何も口にしていなかった。前回、この航路でのレストランの食事にはあまりいい印象を抱いていなかったので大阪駅で水了軒の駅弁をゲットしておいた。
 ひとまず駅弁をたいらげる・・・。
 船窓の前方左に阪九フェリーの<フェリーすおう>が停泊している。室内の様子は前回の ■FR−028■ に詳報を記しているので省略するが不思議であったメニューのプレートは相変わらずテーブルに置かれていた。

写真 左:船室壁面に掲示されたデッキプランのプレート 右:不思議なメニュー
 レストランの一部のメニューを記していると言うことであったがレストランの営業時間の記載もない。部屋にルームサービスしてくれるわけでもないのに何とも不思議に思うのは今回も同様であった。


写真 左・中:神戸港出航後間もなくの黄昏 右:黄昏の明石海峡大橋
 神戸港を定刻17:50に出港。港を出ると微速前進で大きく一旦左へ旋回しながら徐々に船足を速め大きく右に旋回しながら港を出る。大阪湾に出た本船は南西に向かい進む。遠く前方に明石海峡大橋が微かに霞む水平線上に浮かび上がる頃、春の日の夕陽は空を紅に染める。明石海峡大橋越しに夕陽の写真が撮れるかと一瞬期待したが、ども沈む夕陽の方がかなり早そうであった。
 明石海峡大橋に差し掛かる頃にはすっかり夕陽は沈んでいたが黄昏の空にはまだほんのりと夕焼けの面影が残っていた。その頃、船内放送が間もなくレストランの営業終了を告げていた。乗船と同時に駅弁を食してはいたがちょっとその気にはなるモノのまだもう一つ大阪寿司の駅弁を残していたので今宵はレストランでの食事は見送ることにした。
 が、先ほど案内所に依頼しておいた復路の件を確認する必要があった。部屋を出て案内所へ向かう。案内所では顔を見るなり発券を受ける際に提出する乗船名簿の用紙を例の係の女性が差し出しながら
「これにご記入下さい。精算は後日させていただきます。明朝はごゆっくりお休み下さい・・・。」
 と何とも愛想がいい。ちゃんと上司に話しを通し何とか船内での発券を承諾してくれたようである。差し出された乗船名簿に必要事項を記入して手渡しお礼を述べてその場を後にした。けれども後日・・・って明日だろうに、明日も今日より後であるから後日なのか・・・とたわいなく今にも笑い出しそうになってしまった。
 波穏やかに凪いだ海をひたすら西に向かう。時折、行き交う船舶を避けるのであろうか、それとも方位を変更しながらの航行であろうか、大きくゆったりと船体を傾けながら旋回する時の他はひたすら静かに航行するばかりであった。
 熱いお湯をバスタブに満たし、のんびり入浴。船旅満喫の至福の一時である。
 夜が更けて行く。のんびりまどろみベッドにごろりと横たわったりしながら時を過ごす内に本船は程なく今治港入港を告げる船内放送。何時しか眠りに落ちていた。

●ダイヤモンドフェリー、ダイヤ改正で可能となった瀬戸内海ゆったりワンナイト
 目覚めると既に本船は朝靄霞む周防灘を渡り前方に西大分港を遠望していた。

写真 西大分港へ入港
 大分入港
 昨夜、案内所で復路の乗船手続きを船内で行わせてくれることになった安堵の思いで、船窓から前方岸壁で繰り広げられている降車の様子やコンテナの積み込み、乗船の様子などを眺めながら持参の持参のパンとインスタントコーヒーで朝食をのんびり取る。
 前方正面に見えるターミナルビル二階の発券窓口には人影は疎ら、やがて乗船開始となったが乗り込む乗船客も数えるほどにしか居ない。どうやら徒歩での乗船客は十人にも満たないようであった。
 間もなく出港となる頃であった。ドアがノックされた。浴衣姿のままでドアを開けると制服姿のダイヤモンドフェリーの男性職員が訪れていた。
「おはようございます。お帰りの乗船手続きをさせていただきます。」
 と、わざわざ部屋を訪れてくれたのだ。手にはJRの車掌さんが持っているようなPC端末を手にしていた。出港間近のこの時間に訪れてくれたのはきっと昨夜
「ゆっくりおやすみください、手続きは後日・・・。」
 との言葉通りの気遣いであったのかと心遣いしてくれたモノと良い方に勝手に理解してちょっと嬉しい気持ちになる。代金を精算しプリントアウトの紙片を受け取り無事に復路の乗船手続きを船室に居ながらにして完了。これならダイヤモンドフェリーでのワンナイトクルーズも心地よく過ごせると大いに満足を覚えた。
「他に何かご用ございませんか。」
「熱いお湯と新しいタオルを頂けますか?」
「はい、承知しました。ポットをお預かりします。」
 乗船手続き完了も完了し、さらに気遣いの言葉にお湯とタオルをお願いした。程なくポット一杯のお湯とアメニティーのハンドタオル、きちんと清潔そうな乾いたバスタオルが届けられたのは言うまでもない。ドアを開けた時に何やら紙片が貼られていたようでちょっと気がかりになり改めてドアを開き確認してみるとそこには
「21時神戸入港まで入室中、清掃不要」
 と当方の要望通りの張り紙が為されていた。往路乗船券発券時に素っ気なく復路発券を不可と言うあの素っ気ない返事、案内所での当初の同様な船内では発券できませんと言う返事からは想像も付かないような現実にはきちんとした対応をしてくれるダイヤモンドフェリーのまか不思議な親切さの証である。

 間もなく本船は西大分港を定刻07:30本船は静かに離岸した上り1便は、待望の周防灘、瀬戸内海昼行の始まりを告げた。港内でゆっくり旋回し舳先を翻すと周防灘へ向かい出港した。
 出航後間もなく西大分港へ入港間近の僚船下り2便と反航する。

写真 左:舳先を翻し西大分港を出港 中:程なく前方に漁船の群、関アジの漁か? 右:出航後程なく反航する僚船下り2便か・・・
 前方には小さな漁船の群が遠望できる。関アジ、関サバで有名な豊かな漁場となっている周防灘である。関とは大分県の国東半島の東端近くにある漁村の名前であるが、ここ周防灘で漁獲され関に水揚げされると「関アジ」「関サバ」として高級ブランド魚となって美食家を魅了している。だが、同じく大分県の佐賀関から、あるいは向かいの愛媛県の三崎からの漁船も同様にここに集結して漁を行っている。全く同じ海域で漁獲された魚は関に水揚げされると高級ブランド魚となり、三崎に水揚げされると追随して「崎アジ」「崎サバ」と称され必死にブランド化が計られているようだが聞くところに寄ればこちらは関の相場の半額程度になるそうだ。さらに佐賀関辺りに水上げるに至っては格別の差別化はなされていないようである。不思議であるが、いずれ機会があれば各所で食べ比べてみたいモノだと思っている。
 漁船の群の合間をかいくぐるかのように緩やかに蛇行しながら本船は進む。微かに海上は霞み水平線の辺りでは海と空とがぼんやりと溶け込んでいる。空には雲が広がっていた。海面は昨夜来相変わらず静かに凪いだままである。

●ゆったりのんびり周防灘を越えて松山へ
 ちょと眠気に見舞われベッドに潜る。心地よい眠りにつくこと暫し、波高く揺れることの多い周防灘を静かに順調に航海した本船はうとうとの眠りから目覚めると三崎のある四国最西端の佐田岬を右舷後方に遠ざけながら右舷前方には四国沿岸の眺望を迎えていた。

 いつしか空は晴れ渡り青空が広がっていた。
 行く手左舷前方に興居島が視界に入る。最初の寄港地、松山観光港は間近である。

写真 左:松山港入港間近 中:入港間近、舳先を翻す 右:前方に松山港
 快晴の松山港へ定刻11:00入港接岸。

写真 誇らしげなファンネル
 松山港を定刻12:00出港。出港を告げる船内放送は同時にレストランの営業開始を告げていた。昨夜来、持参の駅弁とパンで食事を済ませていたので船内での三度目の食事となる昼食は前回乗船時の印象のままに冷凍食品の盛り合わせを覚悟の上でレストランへ向かった。
 西大分での乗船客は確か十名余りの様子であったし、松山での差ほどの乗船客が有ったとは思えない。きっと殆どお客も疎らで料理も期待は出来まいと諦め気分で向かったのであったが、あに図らんや確かにお客は超疎らでレストランを営業しているのがお気の毒にさえ思えるほどであった。
 手にしていたデジカメやルームキー、煙草などをひとまず特等船客用の部屋のテーブルに置きカフェテラスに向かう。しかし驚き!カウンターには色々と料理が並んでいる。期待を裏切られ嬉しくなる・・・。しかもシェフらしき中年の男性が前に立っていて色々巡らせる小生の視線を見計らいながらちゃんと説明もしてくれる。
 美味そうな刺し身類の数々にローストビーフ、小鉢モノなど一品の数々。ランチ仕様の定食や弁当類、温かいおでんや各種香の物まで前回の印象とは程遠い豊かな彩りのメニューである。
 進められるがままに活カンパチの刺身、ローストビーフなどをトレーに取る。危惧していた食は諦めのダイヤモンドフェリーレストランへの思いは一気に吹き飛んだ。
 のんびり移りゆく瀬戸の海を眺めながら昼食を終える頃、船内放送はレストラン営業の終了を告げていた。食後のコーヒーは欠かせない。急いでカフェテラスに戻ると既にキャッシャーでは係の女性がレジを締め売上の整理をしていた。
「コーヒーもう駄目?」
「いいえ、いいですよ。出来ますよ・・・。」
 とにこやかに応えてくれる。代金を手渡すと釣り銭をくれて少々お待ち下さいという。その場を後に席に戻った。程なく可愛いお嬢さんがたてたてのコーヒーをトレーに乗せサービスしに来てくれた。見るからに色は浅いが仄かに香ばしい香りが立ちこめる。何より気持ちよく仕舞い際にもかかわらず用意してくれたコーヒーにほんのりとした温もりを覚えながら美味しく飲み干した。
 時計の針は13:00前を指していた。

●松山から来島海峡を越えると瀬戸内海
 1999年初夏、思い立ってしまなみ海道を渡り今治へ。そして、新居浜に至り夜行の<おれんじ8>で巡ったことがあった。その時 
■FR−008■ は確か、雨模様でバスの車窓から来島海峡を眼科に見下ろしていた記憶がある。
 今日はすっかり晴れ渡り穏やかな海を行く春風の心地よい<スターダイヤモンド>船上からの眺めを楽しめる。航路は来島海峡大橋を潜り東へと続く。

 ダイヤモンドフェリーのHPには次のような「本四連絡橋通過時刻」が掲載されている。

上り 上り1便 上り2便 上り3便
来島大橋 13:20 21:55 23:54
瀬戸大橋 16:25 00:53 02:10
明石大橋 19:45 04:17 05:32


写真 左:来島海峡大橋を潜る航路を示すブイが浮かぶ 中:来島海峡大橋を左舷前方に遠望 右:右舷前方に近づく
 航路を示す海上に浮かぶ航路ブイを左舷に見ながら進む前方には来島海峡大橋の全貌が見渡せてきた。来島大橋は「しまなみ海道」の最も四国寄りの大島と今治市の間を結ぶ世界初の三連吊橋。第一大橋960m。第二大橋1,515m。第三大橋11,70m。総延長は4.1km。海の難所・来島海峡を跨ぐ橋である。
 デッキから見下ろす海面は見るからに潮の流れの速さを示すかのように波がうねっていた。


写真 来島海峡大橋を前方に見る
 一万トンに満たない本船ではあるが人気のないデッキは思いの外広々としている。左舷に右舷に、行ったり来たりを繰り返しながら迫り来る来島海峡大橋の光景をカメラに収める。
 
写真 来島海峡大橋を後に間もなく今治港へ入港
 やがて橋を潜り抜けると程なく心なしか海面には再び凪いだ静けさが漂っていた。大きくゆったりと左へ旋回する航跡を描きながら本船は来島海峡大橋を後方に見送る。

●今治港入港
 潜り抜けた来島海峡大橋が視界の中で小さく遠ざかって行くと前方には今治港が遠望できる。

写真 今治港入港
 
ゆるやかに右に旋回しながら港に近づくとやがて左舷に白、右舷に赤の港入口を示す燈台が視界に入る。ぐっと右に旋回し微速前進で本船は一直線に右舷を岸壁に近寄せやがて13:40接岸。
 停泊は僅かに三十分で14:10には出港する。


写真 黄砂に霞む瀬戸内海を行く
 黄砂の影響か・・・、行く手水平線上が黄色く霞んでいる。ふとなぜか映像でしか見たことのない中国三段峡巡りクルーズの幻想的な光景が脳裏を過ぎる。
 さすがは瀬戸内海、穏やかな海面に行き交う船は賑やかである。
 今治を後に一路東へ。島影が少なくなり広がる瀬戸内海を本船は順調に航行する。昨日来、行き交う船舶を避けるのか、それとも航路を変更するのであろうか、時折に舳先を大きく緩やかに転換する時にやや傾斜する程度の揺れがある他は静かな静かな航行である。
 のんびりとした時の流れの中に身を置くと時間感覚は麻痺するのであろうか、時計の針は15:00頃を指していた。既に二十一時間余りを経過して余すところは六時間、退屈することのない不思議さに勝手な納得と満足を感を抱いていた。船旅の為せる技なのであろう。
 のんびりのんびり過ごすうちに気づけばまだ船内探検を行ってなかった。カメラを手に改めて船内探索。

写真 左:一般船客用化粧室 中左・中右:展望大浴場 右:喫煙コーナー
 特別室SP2のドアを開くと両脇に特等室や一等室のある廊下が後方に向かって連なっている。並ぶ船室を抜けると階下へ降りるラウンジに出ると、その脇に個室を持たない、あるいは個室にない船客のための誰でも利用できる広々とした綺麗な化粧室である。同様にさらに船尾方向に向かい後部デッキ出入口近くまで行くと展望大浴場がある。右舷側は男性用、左舷側は女性用となっている。脱衣室もゆったりと広くロッカーやベンチなども備えられゆったり旅の疲れを癒すには最適である。
 途中には再度ビューの船窓のある喫煙コーナーがこざっぱりと設えられていた。

写真 左:船内売店 右:ダイヤモンドフェリーグッズコーナーの可愛いバルーンフェリー
 船内売店は案内所やレストランのあるフロアにあり販売品目もコンビニ的身の回り雑貨や飲み物やスナック類などの他に航路各地のおみやげものなどもありかなり充実している。
 ダイヤモンドフェリーグッズのコーナーにも乗船記念となる品々や可愛いバルーンフェリーなど色々取りそろえられていて見る目を楽しませてくれる。
 画像は無いが案内所の後、左舷側にはゲームコーナーもある。
 こうしたいわゆる公室の状況は他の定期航路に就航する大型フェリーと比較するにおしなべて比もなく不可も無くといった感じで特筆に価する鮮烈な印象を伴うようなきらびやかさはないのだが小生としては必要十分条件をそつなく満たした好ましい印象である。
 いつしか本船は瀬戸の海が広がる静かな海面を東進し行く手右手に四国の沿岸線が再び視界に入ってくる。観音寺沖辺りを航行している様子であった。程なく前方には瀬戸大橋が近づいてくる頃である。船内探索を一段落し船室に戻りフロントビューの船窓から行く手前方に視線を巡らせる。
 左舷に広島、左舷前方に牛島、本島などの島影が認められる。

写真 瀬戸大橋に向かう
 どんよりと雲がたれ込めていた。霞む前方の眺望の中、点在する島影越しにうっすらと瀬戸大橋が見えてくると間もなく全景が視界に入る。行き交う船舶も多くなり瀬戸の銀座の様相を呈してくる頃、瀬戸大橋はぐんぐんと間近に迫ってくる。
 船窓から橋を見上げる視界には上階最前部操舵室前のデッキ越しに幾何学的な二層構造の橋の状況がはっきりと見定めることが出来る。ほぼ定刻16:20頃、瀬戸大橋を通過。

写真 瀬戸大橋を後に播磨灘を行く
 瀬戸大橋を通過すると左舷前方には三角おにぎり型の大槌島が左舷前方に浮かぶ。この時期この時刻ではまだ夕暮れ時には少々早く太陽は西の空やや上空に浮かんでいる頃であったがたれ込めた雲に阻まれ陽射しはない。雲越しにおぼろげな太陽が輝いていた。

●大槌島(おおづちしま)岡山県玉野市 参考資料:日本離島センター発行・日本の島ガイド「シマダス」より
 瀬戸内海を行く定期航路に就航する大型フェリーの航路は大槌島の南側(四国側)にある。この大槌島は玉野市日比地区の3.8km、高松市大崎ノ鼻の北約3kmにある。面積0.16u、標高171mで瀬戸内海国立公園に含まれている。北半分が玉野市域にあり、槌戸瀬戸を挟んで小槌島(高松市)がある。
 伝説では日比の刀鍛冶が金床とふたつの槌を海に投げ込み、遠くへ飛んだ軽い槌を小槌島、重くて余り飛ばなかった槌を大槌島と呼ぶようになったという。また、讃岐に配流された崇徳上皇が槌戸瀬戸に大乗経を沈めたという言い伝えから両島を経ヶ島とも呼んでいた。
 元禄の頃、江戸へ行くまでの見聞をしたケンペルの「江戸参府紀行」には、その形から「海のピラミッド」との記述がある。
 東西の海域は「大曽の海」と呼ばれる鯛やサワラなどの優良漁場。古くから備前と讃岐の間で漁場争いが絶えなかったことから、幕府に裁定を願い出、享保十七年(1731)に現行の境界線が引かれた。以前は毎年五月に関係者が集まり境界の確認を行っていたという。

 余す航海は四時間半。程なく右舷に高松を眺めながら前方に微かに小豆島の島影を認められる頃、瀬戸の海に日暮れが迫っていた。
 船内放送がレストランの営業開始を告げる。

写真 左:レストランの上級船室船客専用室 中:カフェテラス式のレストラン 右:多彩で結構美味しい食事
 前回のダイヤモンドフェリーでの食事に関しては実際のところ余りいい印象は抱いては居なかった。今回、大阪駅で駅弁をゲットしての乗船もそんな思いがあったからに他ならなかったが今回はダイヤモンドフェリーのレストランのために名誉回復を計っておきたい。
 ご覧の通り、瀬戸大橋を眺めながらの船内四度目の食事は豪勢に彩り鮮やか。お味もなかなかのもので称賛に値する。その前の三度目の昼食はさらに絶賛とは行かないまでもさらなる称賛に価する美味さであったがそれは気が付けば食い尽くした後であったので写真はない。
 ちなみに・・・。
三度目の昼食時には活カンパチの刺身820円が絶品、ローストビーフ820円もあった。ちりめんだいこんもさっぱりと美味しかったがみそ汁はどうも九州風味のようで少々甘みが強かった。写真の四度目の夕食はミックスフライ1150円、これはデカい有頭海老フライにびっくり、麻婆なすが美味しく、もやしのナムルも異彩、無国籍バラエティー豊かな食事に満腹となった。

 本船は播磨灘を順調に航行。淡路島が行く手前方に認められる頃には瀬戸の海にもすっかり夜の帳が降りていた。

●明石海峡大橋を後に大阪湾へ
 明石海峡大橋を越えると間もなく夜の帳が降りた大阪湾に差し掛かる。余すは一時間余りの航海となった。ゆったりのんびりのワンナイトの船旅は間もなく終焉を迎える。

写真 神戸入港間近の前方に広がる六甲山脈の麓に続く阪神間の夜景
 間もなく神戸港へ入港を控え船足を落としゆっくりと微速前進する本船の前方には六甲山脈の麓に連なる阪神間の夜景が美しい。きらびやかで賑やかな都会の港の夜景は何処も一様に美しいモノであるが、ここ六甲ポートアイランド越しに望める阪神間の夜景はちょっと都会の趣とは異なりちょっと控えめな落ち着いた夜の輝きが印象的である。

 

●余談 ダイヤモンドフェリーの好感度
 正直言って小生の抱くダイヤモンドフェリーに対する印象は概ね素っ気なく味気ない・・・と言う印象なのであるが、それは決して悪い意味を有するモノではない。間違いなく何かにつけて素っ気ないのだが同時に何事にも乗船客である小生の要望には概して応えてくれる好印象を併せ持っている。
 今回は特にのんびりゆったりワンナイトを試みた小生のわがままを快く受け入れてくれたことに対してなにより感謝したい。早朝に一旦下船して窓口で復路の乗船券を入手する不便さを省いてくれたというか、船内での手続きを了承してくれたことへの感謝である。

●提案 ゆったりのんびりダイヤモンドワンナイトクルーズ

 

ダイヤモンドフェリー

 

2001 H13
■FR−015■  ■FR−016■  ■FR−017■  ■FR−018■  ■FR−019■  ■FR−020■  ■FR−021■  ■BANGAI-2001■
2002 H14
■FR−022■  
■FR−023■  ■BAGAI-2002A■  ■BANGAI-2002B■ 
■ORANGE ROOM■
■FR−024■  ■FR−025■  ■FR−026■  ■FR−027■  ■FR−028■  ■FR−029■
2003 H15
■FR−030■
  ■FR−031■  
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思い立っての船旅 今世紀・2001-200X