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- 1.インターオペラビリティ指令、評価モジュール
- 2.共通安全指令(2016/798/EC)について
- 3.列車遅延時の払い戻し手続きの向上
- 4.車両保守認証
- 5.規格化は鉄道から始まった
- 6.SMS(安全マネジメントシステムと、メーカーの参加)
- 7.各国規則のTSIへの統合(EMCについて)
- 8.TSIを解釈する組織NB-RAIL
- 9.NoBoとRAMS認証機関の関係
- 10.安全文化
- 11.鉄道関係の欧州指令 一覧表
- 12.TSIを適用しない路線
目次
認証機関について、誤解されがちな点を紹介します。
NoBoとRAMS認証機関の関係
(EU)2016/797(TSI)、ISO/IEC17065(認証機関)
認証の類型は3種類
あまり意識されることはなく、また当事者以外は意識しても仕方ないのですが鉄道関係の認証には3タイプがみられます。
そして、それぞれ法的な責任の度合が異なります。認証においてオーバールッキング(見落とし)や法令解釈に誤りがあった場合には、認証機関は責任を問われることになりますが、この重みも異なってきます。
- 各国法に基づく認証・・(例)欧州のTSI((EU)2016/797)など
- 鉄道事業者や発注者が任意に要求する認証・・(例)RAMS認証
- スポンサー(現地政府、ODA供与国、銀行)が要求する認証
TSIや、ベトナムの鉄道法では、新規建設する路線にはRAMSを法的に要求していますが、一般的にはRAMSは(2)の「任意に要求される認証」の場合が多いと思います。
NoBoとRAMS認証機関との相違
RAMSの認証機関と、欧州法であるTSI(2008/57/EC、現在は全面改正により(EU)2016/797)に基づき認証を行う「NoBo」(Notified Body)の相違について比較したいと思います。
実態としてNoBoを務めている組織のほとんどは、RAMSの認証機関が務めておりますので、両者は混同されがちです。
その両者の位置づけについてそれぞれ図1・図2に示します(クリックすると両者が並んだ図が表示されます)。
もちろん、NoBoはRAMSを含めたTSIに対する適合性審査を行い、RAMS認証機関はRAMSに対する適合性を審査を行う点が最も違う訳ですが、その他、認証機関として認められる手続きと、審査結果の通用性に違いがみられます。
- 1.認証機関を認定する機関の能力
- RAMSではISO/IEC17011に適合した機関のみが認定機関となっており、認定機関同士の能力の同等性が確認されています。
- NoBoではEU加盟国に一任されています。そのため認定機関の立場は一様ではなく、行政機関が自らの一部門をNoBoに指定していたドイツなど、国によって異なる性質の機関が担当する場合がみられます(※2019年時点では、Interim NoBoとして民間の機関も指定されつつあります)。
- 2.認証機関の認証の効力
- RAMSでは、認定機関同士の同等性から、一般的に認証機関の認証書にも一定の同等性が認められるのですが、法的には保証されていません。プロジェクトによっては、「この認証機関の認証書」、と認証機関が指定される場合も見られます。
- 一方、NoBoの認証書(適合書、宣言書)についてはEU域内で同等に扱われることが欧州法(TSI)により定められていますので、審査結果のCross Acceptance(相互通用性)が法的に保証され、重視されています。
「認定機関」とは、認証機関に認証を行う能力があるかどうかを判断する機関です。NoBoの場合には、認定機関とは呼びませんが、便宜上「認定機関」と表現します。
一言でいうと、NoBoの仕組みは、行政機関である欧州鉄道庁の監督下、審査結果をCross Acceptanceできるように審査の同等性を維持することがより重視された仕組みとなっています。調整する場(NB-RAIL)もあります。
RAMS認証機関はブランド力
このようなNoBoに対して、RAMSの認証機関は「認定」(認証機関と認める手続き)の仕組みこそ厳格ですが、審査結果の同等性についてNoBoのように調整する仕組みもないことから、認証実績が多く、著名な機関が選ばれやすい事業環境となっています。
認証機関や認証員によって、その認証員の得意分野や不得意分野において、他の認証員と判断が異なる(エンジニアリング ジャッジ、と呼んでいます)あまり好ましくはない現象がどうしても起こりえます。また、認証機関の傾向としても、プロセスの実施を重視するところと、製品のリスク解析方法や、設計技法まで細かく確認する認証機関もあります。ISO/IEC 17065は、明確な判定基準が規定されているわけではないため、このばらつきが生まれます。
対策としては、認証機関側では外部からの指摘を受けて業務を是正する手続きを持っています。また、認証を受けるメーカーや鉄道運行事業者側での対策として、鉄道プロジェクトマネージャー等から「認証機関は〇〇社に依頼せよ」、と認証機関を指定される場合もあります(他の認証機関の認証は認めない)が、NoBoについてはこのような選別するようなことは生じません(少なくとも表向きは)。
個人の責任
ある報告書で読んだことがある一文を紹介したいと思います。
英国の鉄道事業者さんのチェックリストに「レールのネジは緩んでいないか」とあったそうですが、これを「緩んだネジがないことをあなたは保証できるか」という文言に置き換えたところ、内容は同じなのにチェックを行う職員の心構えが大きく変わったそうです。認証も、責任の法的な所在はともかく、保証できるかを問われているという気持ちで行わなければならないなと思いました。