欧州の鉄道技術・日本の鉄道技術
【欧州指令】8-TSIを解釈する組織 NB-RAIL


TSIの解釈の共通化

NB-RAIL

インターオペラビリティー指令((EU)2016/797)の第44条では、欧州鉄道庁はインターオペラビリティー構成要素に対するEC適合宣言やEU使用適性宣言、サブシステムに対するEC 検証宣言を行うNoBoの諸機関の活動を協調するための会議体を構成することを規定しています。この会議体には、NoBoになる機関はすべてこの会議体に加入し、出席する義務が規定されています。

この、全NoBoが参加する組織が「NB-Rai」です。

  • TSIの共通の理解
  • ベストプラクティスに基づく助言・指導の機会
  • 議論を通じたNoBo 間の活動の協調化

NB-RAILの会員

NB-Railには、正会員[Full Members]と、準会員[Pertioal Members]があります。両者の違いは、年会費支払いの有無です。

正会員のメンバーリストはNB-Railのホームページに掲載されています。EN 50126(RAMS)の認証機関として名前が浮かぶところは、すべてが加入しています。

成果物

NB-Railの議決により作成される文書は、以下のものがあります。(1)と(2)は、NoBo機関から提出された疑問点についての議論の結果をまとめた文書で、(2)については欧州鉄道庁に正式に質問しその回答を得たものとなっています。これらの文書は(4)以外はこちらにて閲覧することができます。

  • (1)推奨事項:Recommendations for Use(RFU)
  • (2)疑問点と答え:Questions and Clarifications(Q&C)
  • (3)頻出質問:Frequently asked questions(FAQ)
  • (4)作業文書:Working documents(WKD)

RAMSに関する検討結果

RFUについていくつか紹介したいと思います。ちなみに、RFUは増減するのですが2021年6月時点では68件が公表されています。

RFU-CCS-502[Acceptance of safety assessment(セーフティアセスメントの承認)では、信号TSIの表 A3(List of mandatory standards(必須の規格))に書かれている RAMS(EN50126-1:2017、EN50128:2011)等について、『3.2.1節に「評価の重複を避ける」ことが書かれているが、本来のAsBoではなく、ISA(独立評価者)による評価は認められるのか』という問題提起がされています。NoBO機関は、ISA業務を受託することもありますから、ISAの業務だけで足りてしまうのか(AsBoの評価は不要)、あるいは本来のAsBoの評価も必要になるのかは大きな違いなのだと思います。また、同時に、TSIのみではなくCSM-RAの適用が必要かどうかも問われています。

これに対して、NB-Railの議論の結果(※欧州鉄道庁も出席)、ISAの評価だけでは認められずAsBoの手による評価が必要であることを、明確にしています。同時に、
 EN50126等はTSIに定められるリスク管理プロセスに完全に準拠するための手段であって、ISA(独立した安全性評価)は、AsBo(認定または承認済み)によって実施されることが必要、と説明した上で、信号TSIの表A3に挙げられたRAMS等の規格の適用は必須ではないが、NB-Railによって強く推奨すること、他の認められた規格等を使用することもできるが、表A3の規格と同等であることを実証しなければならないこと、を推奨しています。CSM-RAについては適用する必要がないことも述べられています。

 

まとめ

NoBoになる機関はTSI制定、TSIに引用される欧州規格や、信号についての技術基準(subset)の制定にも深くかかわっています。

本来はTSIやNB-railの扱う技術基準は欧州の中に限られる話ですが、TSI及び欧州規格は明文化されている故に世界中で広く使われており、大変に力があるため、「TSI(欧州規格)と比べてあなたの技術はどうなのか?」と聞かれることも多い現状となっています。

NoBo機関はAsBo機関もかねていることが多いため、こうした場へ参加できるNoBo(有力な認証機関)と、そうではない機関とでは情報格差が大きくなっています。一方、NoBo機関は、ドイツのEBCを除くと民間企業ばかりですので、行政機関による統制は効いておりません。つまり、結構バラバラです。NB-railで横並びはとられているものの、それは最小限で、欧州鉄道庁や各国の運輸省(National Safety Authority)が審査書類を見ていてあまりに横並びが崩れている場合に、指導が入る程度、と聞いております。

つまりはいかにいい審査を合理的に進めるかが認証機関のブランド力向上につながる状況の中で、欧州の認証機関はしのぎを削っている中、TSIを扱わない認証機関とは情報格差もブランド力の違いも大きく、実力の差となっています。