仙丈ヶ岳 ( 仙丈ヶ岳:3,033m ) 2006.10.09 登山


  小仙丈尾根より藪沢カールと仙丈ヶ岳頂上 ( 2006.10.09 )

【仙丈ヶ岳再登山記録】

【仙丈ヶ岳再登山データ】

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初回登山


仙丈ヶ岳再登山記録

10月9日の3連休最終日、仙丈ヶ岳 に日帰り登山に行ってきた。

芦安まで車で行き、芦安からは芦安−広河原、広河原−北沢峠とバスを乗り継いで、北沢峠からは前回と同じ藪沢新道を詰めるルートを辿ったものである。
実は、前日の 8日早朝にも芦安まで車を飛ばして仙丈ヶ岳日帰り登山にトライしたのだったが、 芦安のバス発着場は大勢の登山者でごったがえしており、予定の 5時10分、5時40分発の広河原行きのバスにはとても乗れず、 またその後のバス手配の目処も全く立たない状態だったことから やむなく引き返したのだった。 そのとき、時刻はまだ午前 6時前。このまま他の山に行くことも考えたものの、今年の仙丈ヶ岳登山のチャンスはこれが恐らく最後と思うと、 どうしても他の山でお茶を濁してしまうことはできず、翌日が晴れることを期待して家に戻ったのであった。

ここで反省すべきは、従来のように広河原まで車で行くことができなくなったことを踏まえた周辺情報が完全に不足していたこと、 登山人気を侮っていたこと、あまりにもギリギリの時間に芦安に到着したこと、3連休の中日は混むという可能性を全く考えていなかったこと などである。
こうした反省を踏まえ、翌 9日、捲土重来を期して夜中の 1時40分に横浜の自宅を出発し、芦安に着いたのは 3時20分。 お陰で駐車場もバス発着場の向かい側という一等地を確保できたのであった。 また、さすがに連休最終日は前日のように混むこともなく、予定通りにバスは運行され、日帰り登山を楽しむことができたのだった。
よくよく考えれば、私のように広河原、夜叉神峠、北沢峠を起点に慌ただしい日帰り登山を試みる人は少ないはずで、 この山域では山中 1泊が基本であろうから、連休最終日は混むはずもないのであった。

状況説明が長くなったが、広河原から北沢峠へ向かうマイクロバスの車窓からは、 仙丈ヶ岳の姿が良く見え、小仙丈カールの上空、青い空に月がかかっているその情景は、 否が応でも登高意欲をかき立ててくれたのであった。
北沢峠に着いたのは 7時10分過ぎ。前回はここで既に雨具を必要としたのだが、今回は快晴が期待できそうである。
林道を戸台方面に少し進むと、途中、左に下る登山道が現れ、標識に従ってそちらへと進む。ジグザグの道をドンドン下っていくと、 再び先ほどの林道に合流することとなり、少し左に進めば大平山荘である。
登山道はこの大平山荘の前を通って樹林帯に入ることになる。この大平山荘前でちょっとした驚きがあった。 大平山荘前は開けていて山間から遠く北アルプスを遠望できるようになっているのだが、何とその北アルプスの山々が真っ白だったのである。 恐らく 笠ヶ岳 と思われるピラミダルな山、 その右のどっしりとした 穂高連峰、 そしてそのさらに右にある 槍ヶ岳 といったお馴染みの山々が、 その頂ばかりでなく山全体を真っ白にしていたのである。そう言えば、この3連休初日、 白馬岳 で遭難事故 (暴風雪による疲労凍死)があったとか・・・。
このように既に冬景色の槍・穂高連峰を見て、現場は大変な状況だったのだろうと想像するとともに、 17年前の今頃、甲斐駒ヶ岳 に登った時も北アルプス 立山 で 大きな遭難があったことを思い出したのであった。
同じ 3,000m級の山でも、北と南では状況がかなり違うものである。

樹林の中、平坦な道が続く。小さな沢を渡ると、その少し先からジグザグの登りが始まった。 急な坂の登りが続くが、良い天気なのであまり苦にならない。前回は強い雨が降る中、 傘をさし、先行きに不安を感じながらこの道を登ったことを思えば、今のコンディションに何で不平が言えよう。
ただ、このジグザグの急登もそれほど長くは続かず、道は徐々に緩やかになり、やがて樹林を抜けて沢の右岸沿いを進むことになった。
上を見れば谷間を流れる沢の上方に、朝日を浴びて光り輝く頂がチラリと見える。
沢音を聞きながら、緩やかな道を登っていくと、やがて道は沢を渡ることになり、今度は左岸沿いに進むこととなった。 振り返れば V字をした谷の間から鋸岳の姿が見え始め、やがて高度が上がり道の向きが変わるに連れ、谷間に見える山の姿は鋸岳から甲斐駒ヶ岳へと変わっていく。
その甲斐駒ヶ岳もこちらが高度を上げるに連れてドンドン大きくなり、やがては駒津峰を前に、 右横に摩利支天を従えた姿が谷間を圧倒するようになった。

道はやがて小仙丈尾根方面からの道を合わせると、沢を離れることとなり、 一登りで馬ノ背ヒュッテ前に飛び出したのであった。小屋の前は日当たりが良く、ベンチもあって休憩にはもってこいであったが、 早く頂上を目指したいと逸る心は長い休憩を許してくれない。チョコレートを少し食べ、水を飲んですぐに出発。
小屋横の道をジグザグに登っていくとすぐに稜線に飛び出し、丹渓新道からの道と合流することとなった。 馬ノ背と書かれた立派な標識が目に飛び込んでくる。
道を左に取り、ハイ松の中を暫く進むとすぐに素晴らしい展望が目の前に現れた。右手には白く雪を抱いた北アルプスの山々、 先ほどの槍・穂高連峰に加え、乗鞍岳御嶽 も見える。またその左には 木曽駒ヶ岳 を中心とした中央アルプス、 後ろを振り返れば甲斐駒ヶ岳の姿、そして何よりも素晴らしいのは左手に見える仙丈ヶ岳の姿である。 なだらかに続く稜線の先に藪沢のカール、そしてそのカールを詰めたところに仙丈ヶ岳の頂上がある。 しかもその背景は雲一つない青空。これぞ 9年間待ち続けた景観である。前回の登山では、この地点において雨は止んではいたものの、 周囲をガスに囲まれて視界が全く利かない状態で、それこそ五里霧中という状況あり、とにかく頂上だけは踏んだという感じだっただけに今回の好天は本当に嬉しい。

やがて道は尾根を離れ、藪沢カールの中を進む。沢沿いの道を進む中、所々岩に付いた水が凍っており、 もう山では冬が近いことを感じさせてくれるが、一方で今日は風もなく穏やかで気持ちが良い。
これほど立派になっているとは思わなかった仙丈小屋の前で最後の一服。目の前に広がる中央アルプス、北アルプス、そして馬ノ背、 甲斐駒ヶ岳の姿を暫し堪能する。

仙丈ヶ岳頂上への道は、小屋を過ぎたところで右に進み、 小石の道をジグザグに登ってカールの壁に取り付くこととなる。
空気が薄いのか、結構道はきつく感じるが、瞬く間に高度は上がり、先ほど休んだ仙丈小屋が下に小さく見える。
やがて地蔵尾根からの道と合流し、稜線に出ると、頂上はすぐそこであった。
そして10時1分、頂上着。

頂上には三角点は無論のこと、色々な石碑の他、仙丈ヶ岳を示す標識が 3つほどあって結構賑やかである。 ただ頂上自体はカールの縁の 1つのピークに過ぎず、狭く、この時間ではもう結構満員状態であった。仕方なく、 少し頂上を離れて大仙丈ヶ岳方面の岩場で大休憩をとる。
ここからは今まで見えなかった仙丈ヶ岳より南側の山々が良く見える。 まずは 北岳 とその左後ろの 富士山 のペアが目に飛び込んでくる。 日本で第 1位と 2位の高峰が肩を並べている訳で、そう滅多に見られる構図ではないだけになかなか楽しい。 北岳の方は第 2位の高峰とは言え、北アルプスの山々とは違って頂上には雪は見られないが、 富士山の方はその頂上の一部が少々白い。
そして、富士山の左手には 鳳凰三山鳳凰三山のもっと左手には甲斐駒ヶ岳、その左後ろには 八ヶ岳 といったところである。 北岳の右手には 間ノ岳 が大きく、 一旦間ノ岳で落ち込んだ峰はその後ろのドーム型をした 塩見岳 で盛り返している。 塩見岳の後ろには 悪沢岳、 そしてその右手には 赤石岳聖岳が見えると言った具合に、 南アルプスの主要な山を一望できるのは本当に楽しい。

10時18分、頂上を出発。
まずは小仙丈尾根伝いに進み、小仙丈ヶ岳を目指す。左手下の藪沢カールを見ながら小さなピークを越え、緩やかに下っていく。 岩場のピークを藪沢カール側に巻き、やがて仙丈小屋からの道を合わせると、再び視界が開け、アルペンムードたっぷりの下りが待っていた。
ハイ松と岩の道の下りの先には甲斐駒ヶ岳の姿が大きく、とても気分がよい。途中、 低いハイ松の中に 1羽の鳥が降り立った。どうもホシガラスらしいが、それを見て、前回は岩場で雷鳥が顔を見せてくれたことを思い出した。

やや下りも緩やかになると、再び登り返しが待っている。登り返したところが小仙丈ヶ岳であるが、 この山を巻く道もつけられていて、この山に登らない人もいるようである。もったいないことである。
何しろここから見上げる小仙丈カールの姿は見事の一言。また展望も仙丈ヶ岳頂上に全く引けをとらない。 ここでは、のんびりと仙丈ヶ岳頂上以上の大休止をとった。
さあ、後は一気に北沢峠目指して下るのみである。

ハイ松帯の急坂を一気に下る。振り返ればハイ松に覆われた緑の山が青空に映える。
やがて、森林限界を過ぎれば後は樹林帯の中の下りである。以降はほとんど視界が利かないが、左から藪沢小屋の道が合流する大滝ノ頭付近 (五合目)では、 樹林越しに北岳、鳳凰三山の姿を見ることができたのであった。
樹林帯の中をひたすら下り続ける。帰りのバスは 12時55分であり、時間的に余裕であったが、バスを待つ人が多くてかなり待たされるのではないかと、 つい急ぎ足になる。

順調に下ってくると、二合目付近で道は二つに分かれることになった。前回は右に道を取り、 北沢峠より少々広河原寄りに下り立ったのだったが、今回は直接北沢峠に出る尾根通しの道を選んだ。
背中のザックにつけた熊よけ鈴(南部熊鈴) をジャンジャン鳴らしながら、ひたすら下り続け、 仙丈ヶ岳頂上を踏んでから丁度 2時間後の12時2分、多くの人で賑わう北沢峠に着いたのであった。
すんでの所で広河原行きの臨時バスには乗り損なったものの、12時55分のバスには 2番目に乗ることができ、 広河原における乗り継ぎも順調に進んで、14時半過ぎには無事芦安に戻ることができたのだった。

しかしまあ、それにしても 3,000m峰にこんなに簡単に登れてしまって良いものであろうか。 北沢峠の標高は 2,030m、一応標高差 1,000mを登ったことになるにしても、あまりにもイージー過ぎて申し訳ない気がする。 でも、山自体は素晴らしかった。捲土重来を期した甲斐があったというものである。


仙丈ヶ岳再登山データ

上記登山のデータ登山日:2006.10.09 天候:快晴単独行日帰り
登山路:北沢峠−大平山荘−馬ノ背ヒュッテ−仙丈小屋−仙丈ヶ岳−小仙丈ヶ岳−大滝の頭(五合目)−二合目−北沢峠
交通往路:瀬谷−八王子IC−(中央高速道)−甲斐昭和IC−芦安 (車にて) −(バス)−広河原−(バス)−北沢峠
交通復路:北沢峠−(バス)−広河原−(バス)−芦安−大月IC−(中央自動車道河口湖線)−都留IC−道志−半原−瀬谷 (車にて)


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