登山NO.0081 聖    岳( 聖 岳:3,013m ) 1999.8.20登山


 聖岳頂上の立派な標柱( 1999.8.20 )

【聖 岳登山記録】

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再登山

再々登山


NO.81 聖 岳登山記録

9時少し前に便ヶ島の駐車場に車を止めた。
ここに着くまでの経路、また天気に対する思いは
山の雑記帳に記してあるので、 そちらを参照頂きたいと思うが、昨年に続いての易老度側からの南アルプス登山は、またしても天候に不安を抱かせる状況であった。

出発は 9時7分。今回の聖岳もテント泊をするつもりだったので、 ザックはいつもの 40リットルのものではなく、LOWE の CONTOUR III という 70リットルのものを 1年ぶりに引っ張り出してきたのだが、 さすがに 1泊分だけの荷物とは言え、テント、シュラフ、食料などを入れると重い。

40リットルのザックは肩で担ぐという形であるのに比べ、こちらはまず腰で全重量を受け止めて、 肩はそのサポートという形である。
従って、踏み出す足にかかる重量が全く違うように感じられ、昨年と同様、少し歩いただけで滝のような汗が流れ始めたのであった。

聖岳への道は便ヶ島の駐車場入り口のところから出ており、重い荷物にも拘わらず、 いきなりの急登となったので大変辛かったが、その登りも長くは続かず、すぐに昔 林道だったような場所に出て (実は森林軌道跡らしい)、 右を見るとトンネルまであったので驚いてしまった。

トンネルをくぐると、そこから西沢度まではほぼ平らな道が続き、久々に重い荷物を背負った私には大変助かったのであった。
ただ、トンネルを抜けると、それまで登山道脇にいくつも立てられていた標識が全くなくなってしまい、さらに道が先程述べたように林道のような道なので、 些か不安にさせられた。

暫く歩くと、谷川に掛かっていた橋が倒壊しそうなので迂回するようにとの指示があり、道は一旦 谷へと下り、 谷川を 1つ越えてから再び登り返して元の道に戻るようになっていた。

やがて道は山の間を抜けてグッと開けた場所に出ることになり、下方には遠山川の流れが見えるようになった。 河原にある赤い石が印象的である。
そう言えば、山中にも赤い石が多く見られ、本当はこの山が赤石岳というのが正しいのではないかと思った程である。 山の名前が入れ替わることはよくあることであるから、あながちいい加減な話ではないかも・・・。

道は平坦ではあるが山道らしくなり、遠山川の支流である西沢に沿っていくようになって、 9時42分、西沢度にと着いた。
ここは堰堤の下で沢を渡らねばならないのであるが、大きな荷物を担いだままでは渡ることは難しく、そのため荷物運搬専用の籠が向こう岸へとつなげられている。

荷物を籠に積んでから、空身で流れの速い川を渡ったが、流れの中に頭を出している石の上を飛び渡っていかねばならず、 自信のない人は靴を脱いで川を渡った方が無難かもしれない。
向こう岸へ渡ってから、ロープを引っ張ってザックを積んでおいた籠をたぐり寄せ、再び出発である。

登山記録の中には、この籠に荷物の他、人 1人が載っても大丈夫と書かれているものもあるが、 鉄のワイヤーは両岸にある木にくくられているだけで、あまりしっかりしていなかったことから、やはりこの籠は荷物専用とすべきであろう。

この西沢度を渡るといきなりキツイ登りが始まった。
これは厳しいと思いつつ 1歩、1歩にずっしりとした荷物の重みを感じながら登っていくと、暫く先で またもや人工物 (石垣) が現れ、 その先には小屋が建っていたのであった。

何の小屋かは分からぬが、宿泊所として十分な作りで、一瞬これが便ヶ島登山小屋だったのではないか と思ってしまった程である。
しかし、このような鬱蒼とした樹林の中にある小屋は、人気が感じられないだけに薄気味が悪く、小屋の周りを回ってそそくさと通り過ぎたのであった。

小屋の裏手から山へと延びている道はこれまた急で、この後、その急な登りが延々と続いたのであった。
普通、登りといっても登り道ばかりが続くというのは希で、平坦な部分があったり、下りがあったりして それなりにメリハリがついているのであるが、 この聖岳への登りは上部までほとんど登り詰めであり、大変しんどい。

私も重い荷物を背負って休みなしに頑張ってきたのであるが、ついに 10時30分、 登りばかりが続く道にウンザリして、大きくガレている場所の上部で休憩をとることにした。
休みながら地図を眺めてみると、西沢度から聖岳と聖平の分岐点まで、尾根の一番飛び出た部分の上をずっと登っていくことになっているではないか。
つまり、等高線の一番出ている部分を繋いだ所に登山道が作られている訳で、従って分岐点に着くまでは登下降もほとんどない、 途中にピークもない、登り一直線ということになるのである。

これは厳しいぞ と思いつつ、再び出発することにして空を見上げると、 便ヶ島では見えていた青空は雲に完全に隠れてしまい、また樹林越に見える遠くの山々にも雲がかかり、昨年と同じパターンを踏襲しているような気分であった。

案の定、10時45分には雨がパラつき始め、それでも樹林帯の中なので濡れずに登ることができたのであったが、 11時30分頃には、傘やレインウェア無しにはいられないほどの強い雨となったのであった。

昨年とは違い、今年は好天気であると思って楽しみにやって来たのに何ということだろうか。 やりきれない気持ちになりながらも、ここまで来たからには戻るわけに行かず、1人愚痴をこぼしながらの登山となった。

一応レインウェアを着て登り始めたものの、暑くて堪らず、また雨も小降りになって 12時過ぎた頃には日の光も照りだし始めたことから、 レインウェアを脱いで傘だけで登ることにした。

12時8分、1,860mと書かれた標識を過ぎたが、便ヶ島を出発してから 3時間も経っているのに まだこんな高さかと ガックリさせられた。

道は相変わらず登り一辺倒で、時々数メートルでも平らな道が続くと本当に嬉しく思ったものである。 景色のほとんど見えない樹林の中の登りは大変つらいものがあるし、それに加えて私を苦しめたのが倒木の下をくぐるという作業である。
背をかがめ、背中のザックが触れないように注意しながら 低い姿勢を保ったまま進むのは大変つらく、 くぐり終えて立ち上がるたびに 目眩や筋肉の張りを覚え、また息切れまでしてしまうのであった。
昔から倒木の下をくぐるのは好きではなかったが、この登山道ではそれを行う回数が 2桁近くもあり、大変な苦労であった。

そして、もう一つ私をイライラさせたのが、現在位置が全く分からないということで、 途中に標識はあっても、今の位置を特定するものは何もなく、どの位登ってきて、あとどの位かかるのかが全く分からず状態で、 精神的に大変苦痛であった。

しかし、よく考えれば、最初にここを登った人は、道なき道をどの位の目処 (私は登り 5時間という目処を知っている) かも分からずに登ったのであるから、 贅沢は言えない。

さて、どの位登ったのであろう、『西沢度−聖平』 と書かれた標識の下にマジックで、 3/4 と書かれた文字を発見した時は、妙に嬉しく感じられたのであった。
これを信じるとすれば、あと 1時間位で聖平ということになる。

雨は時として強くなり、また時として日が差したりと全く良く分からない天候である。
登り詰めだったため、この頃になるとさすがにバテが出始め、少し登っては立ち止まって上を見るという バテた時のいつもの癖が出始めた。

しかし、登り一辺倒だった道にも徐々に平らな所が多く出始めるようになり、やがて、 今までの尾根道の登りが延々と続き先が見えなかった状態に変わり、目の前に山の形が見えてきたのであった。
この山を登り切れば、少しは今の状態を打開できるかと思い、その高さが結構あるのに些か恐れを抱きながら足を進めると、 道は直接登るのではなくその山の右側を巻くようになり、そのまま山の反対側へと進んでいったのであった。

周囲はトリカブトが紫色の花をつけて咲き乱れるお花畑となり、オヤオヤと思っていると、 山の反対側に出たのか、急に視界が開け、足下が落ち込んだ崩壊地となっている場所に出たのであった。

そして道の先には標識があり、急いでいって見ると、そこは聖岳と聖平、そして西沢度との分岐点であった。 到着は 13時55分、思ったよりは早く着いたのであるが、これで登りの苦痛から解放されると思うと本当に嬉しかった。

時間も時間だけにそのまま聖平へと向かうことにして、お花畑の中を下り、下が見渡せる斜面の上に出ると、 下には木道が見え、その左には赤い屋根が見えた。どうやら今日の旅は終わりである。

小屋でテントの登録を済ませ、雨が小降りのうちに急いでテントを張った (14時10分着)
雨は降ったり止んだりの状態となり、明日の天候が心配であったが、夜は前年の光岳でのテント泊のような大雨もなく、 次の朝起きた時は一応雨は止んでいた。

しかし、空は黒い雲で覆われており、期待していた晴天にはほど遠い状況であった。
5時30分に聖平小屋を出発。昨日の分岐点へと向かう途中の登りで、またまた雨となってしまった。 こうなっては半分やけくそ状態である。

5時55分、分岐点に大きな荷物を置き、サブザックにて聖岳へと向かう。
傘をさしての登りで気分も滅入っていたのだが、途中で雨が止んでくれたので、少し気分が明るくなった。ありがたいことである。

そして、この道は昨日の道とは違い、同じ登りでもメリハリがあり、 また途中お花畑などもあって楽しめたのは大変助かった。やはり山道はこうありたい。

樹林が徐々に低くなり始めて尾根へと出るようになると、その向こう側はガレ場となっており、 そのガレ場の人が行けない所には白い花を付けた植物の群落が見えていた。眼鏡を掛けていないのでよく分からなかったが、 あれはコマクサだったのかもしれない。

ガレ場からはもう森林限界で、目の前にガスの中でボーッと霞んだ小山が見えるようになり、 その右側を巻きながら登り切ると小山の頂上には小聖岳の標識があった (6時25分)

この小聖岳からは完全に岩場とハイマツの中のアルペンムードたっぷりの歩きとなったが、 視界はガスで良く利かず、本来前方に見えるはずの聖岳本峰は全く見ることができなかった。

いくつかの岩場のピークを登り降りすると、やがて谷川の音が聞こえだし、 少し先では左に降りた所に水場もあった。帰りにこの水場で水を補給したが、水は冷たかったものの やや埃っぽい感じがした。

この水場からはいよいよ最後の登りである。
ガレ場の中の道をジグザグに登っていくのであるが、これが結構長い。しかし、ガスで視界が利かなかったことがこの場合は良かったのか、 黙々と登ることができ、また時として吹く風に身体が冷やされて 気持ちよく登ることができた。

ジグザグの登りもやがて終わり、平らになったかと思うと、その左先に聖岳の頂上標識が見え、 意外とスンナリと頂上に着くことができた。
これはちょっと驚きである (7時14分)

頂上には立派な標柱が建てられており、また周囲の山を同定できるようにと方向指示盤も備え付けられていたが、 ガスの中で視界は全く得られずじまいであった。

頂上にいた間、時として日が射すようになり、また聖岳上空には青空も覗きはしたので、 ガスが晴れることを期待したのだが、結局頂上にいた 20分間に周囲の景色を見ることは全くできなかった。
それでも南アルプス最後の百名山に登ったのであり、久々に苦労して 3,000m峰に登ったことから、やはり感激もひとしおであった。

当初奥聖岳への往復も計画していたものの、ガスで視界が全く利かなかったこと、 また折角 最高峰に登っておきながら それより低い山を目指すというのもおかしく感じられ、そのまま下山することにした。

途中、分岐点近くに至った時には、ガスが晴れて聖岳、小聖岳の姿を見ることができたのであったが、 昨日の雨でカメラが壊れたらしく、写真にその姿を納めることができなかった。これは返す返すも残念である。

後は重い荷物を担いでの一気の下りであるが、山の雑記帳で書いたように、 下りの途中 10時過ぎから約 1時間、大雨に遭遇してしまった。
登山道は濁流と化し、身体はビショビショ、靴の中もビショビショになってしまったのである。

途中、例の小屋があったので雨宿りでもしようかと思ったが、何となく薄気味悪く、 結局雨の中を一気に下ってしまったのであった。
雨で帰りの林道が不通になるのではないか との恐れがあって急ぐ気持ちが強く、それが意外な力を発揮させたのか、西沢度を渡る時は重い荷を背負ったままで石の上を飛び越えることができた。

そうそう、西沢度手前の林の中で、蛇のように太いミミズのような生き物を見たが、 あれは蛭だったのであろうか。

茶色い濁流と化して、そこに架かっていた橋を流れの下に押し隠してしまった小沢の変貌に驚きつつ、 また、道にヒョッコリ現れたガマガエルにも驚かされながら早足に進み、11時7分、 ようやく便ヶ島の駐車場にたどり着いたのであった。
しかし、この頃には雨も上がり、太陽も顔を出し始めていたのだから皮肉なものである。

2年続けて厳しい南アルプス登山となってしまったが、 南アルプス最後の百名山である聖岳登山をこれで終えることができた訳で、やはり苦労しただけに喜びも大きいものがあった。


聖 岳登山データ

上記登山のデータ登山日:1999.8.20 天候:曇り時々雨単独行山中テント泊
登山路:便ヶ島−トンネル−西沢度−1,860m地点−薊畑(聖岳分岐点)−聖平小屋(テント泊)− 薊畑−小聖岳−聖岳−小聖岳−薊畑−1,860m地点−西沢度−トンネル−便ヶ島
交通往路:瀬谷−八王子IC−(中央高速道)−飯田IC−喬木村−小川路峠−上村− −易老度−便ヶ島(車にて)
交通復路:便ヶ島−易老度−上村−矢筈トンネル−喬木村−飯田IC−(中央高速道)−大月IC−相模湖−半原−厚木−瀬谷(車にて)
その他の聖岳登山便ヶ島−西沢渡−薊畑−聖平小屋(泊)−薊畑−小聖岳−聖岳−奥聖岳−聖岳− 小聖岳−薊畑−聖平小屋−南岳−上河内岳−茶臼小屋(泊)(2008.8.12-13:1日目 晴れのち曇り、2日目 曇りのち快晴)
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聖沢登山口−聖沢吊橋−岩頭滝見台−聖平小屋(泊)−薊畑−小聖岳−聖岳−兎岳−小兎岳−中盛丸山−百間洞下降点− 大沢岳−百間洞下降点−百間洞山の家(泊)(2013.8.14-15:1日目 晴れのち曇り、2日目 晴れ)
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