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“コミュニティー・アーキテクト”として活躍するハリオック氏をバーギンガム市に訪問したのは「 コミュニティー・アーキテクチャー」と題する本に「居住環境の計画過程に、従来とは異なる“静かな革命(副題)”がイギリスで起こっている」と書かれていたからである。お役所主導の方法だけでなく、お役所と住民、民間の専門家の協力により、下から計画を積み上げる仕組みを政府が認め、法律や制度が整備されるに至る運動のプロセスが描かれてあった。日本では公営住宅の建て替えや区画整理に該当するケースである。
経済が疲弊し、政府の手が及ばなくなった大都市の住宅団地でバンダリズムが(破棄行為)が始まり、この事態にショックを受けた建築家たちが“新しいビジョンとインスピレーションにより”従来とは異なる計画手法を実践し始めたのだ。お役所が良かれと思う方法で団地を建て替えても、元のスラムに戻ってしまう事や、新しい団地に移った住民がハッピーでないという不満を議会も問題にし始めた。
建築家が根気良く住民の意見を聞いて立案した団地では、住民自身が環境を管理できるようになり、コミュニティーが再生される例を積み重ねていったのだった。
当初ボランティアとして計画に参加する建築家にはチャリティ?(民間非営利団体)から設計料が支払われる仕組みがイギリスには用意されている。住民が雇った建築家のプランがお役所案より優れている場合、住民案が採用されるようになり、さらには住民が選んだ建築家の案に、お役所が設計料を払うまでに制度が整備されていく。驚く事には、地域住民を組織化する専門家を公務員として派遣するまでにこの制度は成熟していく。
毎晩のように住民と協議を重ねるので離婚されそうだとハリオック氏は笑っておられたが、公には認知されない先駆的試みに対して民間から資金が流れ、ボランティアの情熱だけに頼らない“実験型社会”が、確実に次の時代を拓(ひら)いている事が眩(まぶ)しくてしようがなかった。
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