あしあとを記したホームページです
NGO(非政府組織)の招きで、マレーシアのサラワク州から来日した“森の住民”は「日本にも山があるじゃないか」と絶句した。森さえあれば何不自由なく幸せに暮らせるのに。日本人はなぜ、サラワクにまで来て木を取るのかと。
戦後、植林された杉や桧(ひのき)は、日本の木造住宅の需要を賄うに十分な供給力を持っているが、かつて天竜美林の名をほしいままにした天竜川流域でさえ、現在製材される材木の七割が外材で占められ、国産材は三割にすぎない。
林業専従労働者は、二十年前の三分の一に減少し、静岡県では近年山の仕事に就く三十歳未満の人は十人前後である。日本の山は消費者を失い働く人を失い始めている。そして世界の原木丸太の五十%を二%の人口の日本が輸入し続けている。
建築には地場産材を使うのが望ましい。木は伐(き)られてからも生き続けるから同じ風土に育った木の方がいいのだ。柱に使う場合にも生えていた方角と同じ向きに使った方がいいとさえ言われる。
私は杉材を現代風に活(い)かすデザインに工夫を凝らして、地場産材を使う努力をしたことがある。産地から直接木材を仕入れると価格を三十%下げられることも分かった。
しかし通常の流通経路のパイプが切られることを恐れた産地の意向により、この仕入れルートは実現しなかった。
消費者が集まって、通常の取引に遜色(そんしょく)ないもう一つの流通のパイプを作ることができれば、私たちは耐久性のある住宅を手に入れ、日本の山を守ることもできるのだ。
家を建てる人を集める方策と専門的知識を持つコーディネーターの存在、この思いをネットワークして支援する組織があれば実現は可能だ。
このままでは地球環境に深刻な影響を及ぼすという熱帯雨林を喪(うしな)い、日本の山も失ってしまう。
アメリカでは、市場でも、行政でもない、非営利目的の市民組織(NPO)が住宅供給を担う第三の勢力として育っている。日本の市民には何ができるのだろうか。
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