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土蜘《つちぐも》

二番目
季節  夏
作者  不明
典拠  平家物語 剱の巻
作物  台塚
前シテ  僧
後シテ  土蜘の精(面・顰《しかみ》)
ツレ  源頼光《みなもとのらいこう》
ツレ  侍女 小蝶
ツレ  従者
ワキ  一人武者
立衆  従者二〜三人
物語

物語

源頼光は重い病で臥せっていました。侍女の小蝶が典薬の頭《てんやくのかみ》から薬をもらって頼光に届け、看病し慰めますが病はますます重いようです。
夜も更けて
「月清き夜半《よわ》とも見えず雲霧《くもきり》のかかれば曇る心かな」
と謡いながら妖しい僧が頼光の病室に出現します。見知らぬ僧形の者の夜更けの来訪に驚き怪しむ頼光に、僧は
「わが背子が来べき宵なりささがにの」
と古歌を謡いかけ、自らが蜘蛛の妖怪であることを仄めかして嘲弄します。「ささがに」とは蜘蛛のことです。
土蜘の精が妖術で頼光を弱らせて、とどめを射そうとやってきたのでした。
妖怪はたちまち正体を現して、妖術の糸を頼光に吐きかけます。
頼光はすかさず枕元にあった膝丸の名刀を抜き放ち土蜘に切り掛かります。
逃げようとする背にさらに斬り付けられて土蜘は姿を消しました。
頼光の声を聞き付けて警護の一人武者が馳せ参じます。
訳を尋ねる一人武者に頼光は事の次第を話し、土蜘を退散させられたのも膝丸の名刀の力であるから今日からは「蜘切《くもきり》」と名付けようと言います。
見るとその場におびただしい血が流れています。
血の跡を辿れば妖怪の巣を見つけて退治することができるはずです。
一人武者は従者をつれて退治に向かいます。

一行は大和の国葛城山で土蜘の棲む塚を探し当てました。
塚を突き崩そうとすると、土蜘は中から火焔を放ち水を吹き上げるなど妖術で対抗しますが武者達は怯みません。
ついに妖怪は鬼神の姿を現し、「我は葛城山で年を経た土蜘の精魂なり」と名乗り、帝に仇をなそうと頼光に近付いて亡きものとしようとしたが返り打ちにあうとはと悔しがります。
一人武者達は切り掛かりますが、土蜘は激しく抵抗し千筋の糸を吐きかけて武者達を搦めとろうとします。
土蜘が剱《つるぎ》の光に怯んだすきに、武者達はその首を打ち落とし勇んで都へと帰ってゆきました。


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