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難波《なにわ》

脇能 (太鼓あり)
季節  春
作者  世阿弥元清
典拠  古今集の序、古事記
作物  羯鼓台《かっこだい》
前シテ  老翁(面・小尉)
後シテ  王仁(面・大悪尉《おおあくじょう》)
ツレ  おとこ
後ツレ 此花咲也姫《このはなさくやひめ》
ワキ  臣下
ワキヅレ  従者二人

物語

時の帝に仕える臣下が熊野に参った帰りに難波の里に立ち寄りました。
見ると、とある梅の木陰を一人の老人と男が掃き清めています。
臣下は老人に、多くの木がある中でその木の下ばかりを掃き浄めめでているようにみえるのは名木であるからかと訪ねます。
老人は、見れば都の人のようであるのにこの木の事を知らないとはと心無きことと嘆きます。
老人は花の中でも梅はとくにめでたく尊い花であり、その梅の中でもこの梅が特別な木であることを語ります。
この地にはその昔、仁徳帝が難波の皇子と呼ばれていた頃、宇治の皇子と帝位を譲り合って三年の間空位が続いた折に、百済の国から来た王仁《おうにん》が占って難波の皇子が仁徳帝として位についたという故事がありました。
この時、王仁が詠んだ歌が
「難波津に咲くや此花冬ごもり 今を春べと咲くや此花」
と伝わっています。
その歌に詠まれた梅こそがこの梅であると言うのでした。
そして、春にさえずり梅の花にたわむれる鴬の曲である春鴬囀《しゅんおうてん:しゅんのうてん》を夜もすがら奏して慰めようといいます。
臣下は老人の博識と嗜みに感じ入り、御身は誰であるかと尋ねます。
ツレの男は春の梅の花の精であり、老人は百済國の王仁であると明かして花の下に附して待っていよと言いおいて去って行きます。
やがて王仁と此花咲也姫が出現し、春鴬囀、秋風楽《しゅうふうらく》、青海波《せいがいは》など様々な曲を奏し、舞い、聖人達の御代が再来して世が太平に治まることを讃えます。
※王仁《おうにん》 

「わに」とも呼びます。大陸から日本に文字を伝えたと言われています。謡曲では「おうにん」とよみます。

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