<<技術的質問と回答>>
ホームページ内で使われる主要な光学部品の説明の他に、実際に測定する際の技術的質問にお答えします。
測定に関して
相対測定とは何?
光測定用部品を集めて全体は構成できる?
定盤上にステージで光学系を組んでいるが問題?
測定室やシールドは必要?
光回路に関して
光回路の組み方は?
なぜHeNeレーザなのか?
ファイバー導入で問題は発生しないのか?
光学部品に関して
光学部品選択の基準は?
AOMとは何?
NPBSはハーフミラーと異なる?
光学部品の面精度の要求値は?
ビームの偏光度合いになぜ注意を払う?
測定時に関して
光ビームのふらつきを抑えるには?
試料の温度制御も問題?
サブnmを測るには更に何が必要か?
測定者の影響は?
主要光学部品説明
1.AOM(Acousto Optic Modulator) 音響光学素子
特定の材質の側面に振動片を貼り付け、その振動片を外部ドライバにより、振動させると、その振動片による縦波が材質内を伝搬します。この粗密波の周期は、振動数と材質特性により決まります。この粗密波は光にとって、あたかも格子面が発生したように機能します。そこで、特定の角度でこの材質に光を入射させると、ある特定角度において、この”格子面”により反射した光は干渉(ブラッグ回折)の結果、強度が大きくなります。そして、この反射(回折)光の波長(振動数)が振動片の振動数(およびその整数倍)だけシフトするのです、この現象を音響光学効果といい、この効果を利用した素子がAOMです。
注意すべきは、振動片の周波数は通常40MHzから300MHzの範囲です。一方、光の周波数は、HeNeレーザの場合、約500THzです。7桁周波数がずれています。当然のことながら、この周波数差の極めて大きいものをどうやって利用するのか、が問題となります。答えは1個だけ使うと、設備が大変だ、です。そこで、複数使用する方法で利用しているのです。
使用時には、3つの因子があります。①振動数、②入射角、③反射(回折)角。反射する光は通常2から4本発生します。この複数の反射光のうち、1本をできるだけ強くして利用します。
入射光の角度調整は、この強度を増すために欠かせません。ドライバパワーも効率に依存します。
2.PBS,NPBS (Polarizing Beam Splitter, Non-Polarizing Beam Splitter) 偏光ビームスプリッター、無偏光(偏光無依存)ビームスプリッター
レーザ光の強度分割の際、そのレーザ光の偏光成分を考慮して、強度分割する素子です。PBSは、P波は透過し、S波は反射します。ただ、完全ではなく、25dB程度の消光比を有します。NPBSは偏光成分に無関係に強度分割します。BSなら、当然のように思われるかもしれませんが、単なるBSだと、PBSとNPBSの中間の性格を有します。
3.波長板 (Wave Plate)
偏光光を表現する際に、光の進行方向に垂直成分が2方向存在することから、2つの偏光方向で表現します。光が、このひとつの偏光成分しか有しない場合、直線偏光です。レーザからの出射光は、この直線偏光光の集合の場合が多いです。この場合、ランダムな直線偏光光と呼ばれています。この直線偏光以外に円(楕円)偏光があります。2つの偏光方向の光強度は独立に時間的変化をしていますが、直線偏光はこの二つの偏光成分の変動時間差がゼロまたはπに対応し、ゼロまたはπでない場合はすべて楕円偏光となります。(円偏光は時間差(位相差)がπ/2の整数倍の場合におきます。)
波長板はこの2つの偏光方向を制御(位相差を作る)して、希望の偏光光を作り出す素子です。1/4波長板と1/2波長板があります。簡単に、1/4波長板は、直線偏光と楕円偏光を入れ替えます。1/2波長板は、直線偏光光では偏光軸を任意に変え、楕円偏光光では長軸方向と偏光回転方向を変えます。
4.光ファイバー (Optical Fiber)
ファイバーも身近になり、インターネットでも導入されています。基本的にこれらの光ファイバーと同じです。
まず、光計測で使用する際の外形から、ファイバーそのものは、125ミクロン径の他、400ミクロン、600ミクロンなどがあります。ただ、125ミクロンを超えるファイバーは、エネルギー伝達用が主で、精密な光計測用では使われません。このファイバーをまず1段階で被覆します。約1mm径となります。いろいろな呼び方がありますが、ここでは、”芯線”と呼びます。この芯線に第2段階の被覆をして、約3mm径の、”コード”となります。芯線は曲げに弱く、取り扱い注意品ですが、コードになると、とたんに頑丈になります。ファイバーメーカーの技術力に驚かされます。足で踏んづけても、折れないし、曲率半径を5cm程度にしても折れません。(芯線ではお止めください)。
使用する際は、ファイバー端面を研磨しないと使えません。通常はフェルールに挿入して、研磨します。フラット研磨・斜め研磨・球面研磨・放物線研磨、などいろいろな研磨手段があります。この研磨方法が、光特性に影響を与えるので注意が必要です。
ファイバーをどのように固定して、どのような役割を果たさせるのか、光回路を検討する際の重要事項になります。シングルモードファイバーの場合、NAは0.11程度ですので、何もしないと、広がった光になり、回路を組む際のミスマッチが発生します。弊社のファイバーコリメータは、ファイバーからの出射光をコリメート光にする機能を有しますが、この機能がこのミスマッチを解消しています。
最後に、定偏波ファイバーについて。ファイバー各社、定偏波ファイバーを製品化しています。カタログによると、偏波度合いの保存はかなり良いことになっています。どうやって測ったのか、正確にわからないので、その値については、メーカの値を信じるとします。しかし実際に使用してみると、思わぬズレが発生します。マイクロベンディング効果によるズレとの指摘もありますが、曲率半径を一定にして、圧力を加えない場合でも、経時変化をします。その他、問題を起こします。原因不明で悩んだこともありました。まだまだ解決すべき点がありそうなので、使用は慎重にというのが現時点のスタンスです。
他に、光学部品として頻繁に使われる部材は、偏光板(グラントムソンなど)、コーナーキューブ、などがありますが、割愛します。
光計測に関する問題点があれば、何なりとご相談ください。詳細はメールでお願いします。 株式会社フォトンプローブ
TEL 048-538-3993 (本社)
電子メール photonprobe@asahinet.jp
注;2020年5月本社を移転しました。
旧本社の電話番号は廃止しました。