光回路の組み方は?
光回路を組む際に気をつけなければならない点は以下の点である。
(1)光路がステージ、光学素子等で邪魔されないようにすること。−稼動部、流体物等がある場合、その動きを考慮して設計されねばならない
(2)光路のベースからの高さが一定になるようにすること。
(3)その高さをできるだけ小さくすること。
(4)光学素子間の距離をできるだけ短くすること。
(5)光学素子はできるだけ小さくすること。−大は小をかねる思想は百害あって一益なし。
(6)光学素子を支えるステージ等は機械的に強固なもので作製すること。−決して、片持ち梁の先端に光学部品を取り付ける構成にしてはならない。両面テープを用いての設置は論外である。
(7)熱を発する部品の冷却を考慮すること。−冷却にはフィン、水流利用、ファン、ペルチェなどがあるが、振動が伝わない冷却方法が最適。駆動装置つきの冷却であっても、ベースを厚くすることで、振動を防ぐこと。決して、空気を直接素子に当てる愚かな対策は採らないこと。
(8)レーザの反射光が測定者に目に入らないようにすること。−外部に出射する光軸を除き、すべて、遮蔽するべく機械部品やブロック等を設置すること。
(9)反射強度を押さえるため光回路の機械部品は使用波長を吸収する材料でコーティングすること。ー黒系の処理(アルミニウムなら黒アルマイト処理)をすること
(10)光学系全体を覆うことができるカバーを設置すること。−カバーは安全対策上、不透明が好ましい。
(11)光学系内に配線される電子信号ケーブルは、しっかりと固定すること。
(12)市販の定盤(たとえばバイソレータ)に直接配置することは好ましくない。−精度に依存するものの、独立にベースを構成すること。
光学部品やステージなどの精度は測定に大きな影響を与えるが、それ以上に問題になるのは、回路設計する人の回路への注意である。細部にまで、注意を払って設計すべきである。ただ、予算との関係の上で注意点で序列をつける必要が発生する。その際は序列を間違わないように。
<その他> ”NPBSとハーフミラーは異なる?”の項にも注意事項を記載しました。ご参照ください。
光回路について
<<なぜ1nsの光路長?>>
光学系を組む際に問題になるのは、”分岐させた2つの光がどの程度異なる光路長を持って干渉されているか”です。理想的にはゼロが好ましいのですが、実際の回路では、様々な制約があり、難しいところです。
レーザの周波数はきわめて安定しています。しかし、レーザの種類によりその安定度は異なります。これはレーザ発信機の仕組み、媒体、共振器長が異なるからです。発光周波数は励起準位から基底準位への電子の遷移エネルギー差で決まります。しかし、各順位は様々な効果により複雑に分裂(簡単に励起準位a,b,cと基底準位A,B,Cとします)しています。この分裂があっても、常に発光に関与する励起準位、基底準位が決まっていれば発光周波数は一定です。しかしながら、自然界のルールで、電子はより安定な状態への遷移を行い、常により安定な状態を探して準位を変動します。何が安定な状態を変えるような要因を生み出したのでしょうか?ここではガスレーザ(特にHeNeレーザ)についてのみ説明します。
通常ガラス管内に封印されたHeとHの混合気体が作り出す電子準位に磁場や電場が働きますと、その準位の特性に従って、分裂またはシフトを起こします。、その大きさは磁場や電場の大きさに依存します。自然発光から始まり誘起されて
数字的にはコヒーレント長の概念で理解できます。(<レーザのコヒーレント長(時間)>参照)。光学系を組む際に問題になるのは、”分岐させた2つの光がどの程度異なる光路長を持って干渉されているか”です。理想的にはゼロが好ましいのですが、
<<光路選択の良い例、悪い例>
2つの光を干渉させるとき、上記に述べた理由で、その光路長差は1ns未満が望まれます。そこで、実際に組まれた良い例と悪い例を図で示します。
<レーザのコヒーレント長(時間)>
レーザの特性よりコヒーレント長(時間)を見積もります。
レーザ振動数が安定度Δfを含めてf+Δfであらわされると、その波長に対するエネルギーは
h(f+Δf) :h=プランク定数(6.626×10^−34)[Js]
エネルギーの不確定度合いΔEは
ΔE=hΔf
ハイゼンベルグの不確定性原理に基づくと、ΔEΔt=h/2π。
したがって、時間的不確定さΔtは
Δt=h/2π/ΔE=1/2π/Δf
乱暴ではありますが、目安として、コヒーレント時間をΔtと知ることができます。
いま、フリーランニングのHeNeレーザではΔf=500MHzですので、
Δt(HeNeフリーランニング)=0.3ns
と概算できます。
周波数安定化HeNeレーザの場合、Δf=3MHzですので
Δt(HeNe周波数安定化レーザ)=50ns
と知ることができます。
コヒーレント長ぎりぎりで使うことは問題がありそうで、実践的な経験より、安全係数を考慮すると
Δt(HeNeフリーランニング)=0.03ns
Δt(HeNe周波数安定化レーザ)=5ns
これを長さに換算すると
ΔL(HeNeフリーランニング)=9mm
Δt(HeNe周波数安定化レーザ)=1.5m
となります。
お問い合わせ、ご質問は下記までお願いします。
株式会社フォトンプローブ 代表取締役 理学博士 平野雅夫
TEL 048−538−3993 (本社)
電子メール photonprobe@asahinet.jp
注;2020年5月本社を移転しました。
旧本社の電話番号は廃止しました。