光学部品の面精度の要求値は?


光学部品は、その角度や面の粗さについてメーカーの仕様値が記載されています。
これらの仕様値に対してどの程度の性能が必要なのか説明します。
測定系において、光ビーム位置が全く動かなければ、これらの精度は気にする必要がありません。しかしながら、試料を変えたり、試料が移動する状況下での測定の場合には注意が必要になります。
光ビームは有限の大きさを持ち、通常ガウシアン強度分布を有しています。これらが光検出器に入った場合、特定のビーム領域だけ選別をかけた場合を除き、ガウシアン分布の重みつき積分で結果が得られます。したがって、光学部品の表面の光ビーム径より小さな周期を持つうねりは、積分の中でその影響がキャンセルされますので、問題になることはありません。問題になるのはビーム径に比べ、大きな周期を有するうねりです。この意味で、光学部品の面精度は、細かな粗さ凹凸ではなく、1mm程度以上の周期を持つうねりがどの程度であるかを気にしてください。
光学部品を製作する際において、光学部品の研磨工程とARなどの蒸着工程が、このうねりを決定付けます。研磨ではこのうねりを完全に除去できません。更には蒸着では光学部品の端付近は中央部に比べ均一さが失われます。したがって、うねりは必ず発生するものです。
その度合いを、次のように見積もることができます。下図の様に−Z方向に光が照射される場合で、途中に光学部品の表面がz=f(x、y)と表される状況を対象にします。(x、y、A)地点から−z方向にのみ伝播する完全なコリメート光が(x、y、0)地点に到達したとき、光路長はL(x、y)として
    L(x,y)=A+(N−1)*f(x、y)
と表されます。ここで、Nは光学部品の屈折率を表します。重み付け積分の結果、検出される光路長Lは


と表されます。ここで、αはビーム径を表します。たとえば径が1mmの場合α=1(mmを単位として表現)です。
表面の粗さを表現する簡単な例として、たとえば次の式を想定します。x=0、y=0での表面粗さの高さはゼロですが、x、yの値で少し変化し、x=y=R/4でQの高さを持ちます。
    f(x,y)=Qsin(2πx/R)*sin(2πy/R)。
この計算によれば、ビーム径より小さな周期のうねりは影響が発生しないものの、長周期うねりは問題が残ることが知れます。

詳細は省略しますが、求めたい精度の数倍の高さを持ち、ビーム径と同程度のうねりのある表面状態では、問題があると認識すべきです。

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