試料の温度制御も問題か?
試料の温度特性を測る場合には、温度制御に注意を払いますが、それ以外の場合は注意を払わないケースが多いようです。
試料の温度変動が測定値に影響を与えることは自明の理です。温度特性を測定しない場合も、温度制御されることをお勧めします。特に長時間測定する際は重要事項になります。
”サブnmを測るには更に何が必要か”の項目で、示したように、ほんのわずかな温度変動が大きな影響を与えます。基本的に、nm計測するならば、0.01度以内の制御を目指してください。
その理由を説明します。
その1.線膨張係数
試料の大きさが1cmの長さ(高さ)を有するとします。温度変動ΔTにより、ΔL=α*L*ΔT、の伸縮が発生します。ここで、αは線膨張係数です。アルミニウムの場合α=2.31×10^−5(20℃において)。ΔL=1nm,L=1cm、とすると、ΔT=0.0043度となります。この温度制御は、かなり厳しい。そこで、試料の長さを短くするか、試料を代えるか、のいずれかが要求されることになります。
その2.空気の屈折率変動
レーザ光が空間を飛んでいる際に温度が変動すると、空気の屈折率が変わります。その一覧を示します。
温度[℃] | 空気の屈折率 |
---|---|
15 | 1.00027649 |
17 | 1.00027458 |
19 | 1.00027271 |
21 | 1.00028084 |
23 | 1.00026901 |
25 | 1.00026721 |
27 | 1.00026542 |
実験室環境温度では、0.01度温度が変動すると、屈折率は、Δn=4×10^−8、変動します。この値は大きいのでしょうか小さいのでしょうか。
それはプローブと、試料との間隔Lをかければ明らかになります。片道5cm(往復で10cm)だとすると、この温度変動で、ΔL=0.1*Δn=4×10^−9[m]=4[nm]となります。
0.01度の温度変動は大変大きいことがわかります。空気の、この程度の温度揺らぎを抑えることは大変難しいことです。
上記で温度変動は大きな要因になることを示しました。
ただし、気をつけていただきたいのは、温度は短時間では変わりません、速くても1秒程度の周期でしょう。
従って、測定が1秒以内に終わるようならば、さほど温度変動を気にしなくても良い。このことは、その程度の測定時間内でのデータの変動はないという意味です。
しかしながら、繰り返し測定すれば、測定するたびに異なりますので、そのデータ分布をどのように解釈するかが課題となり、温度分布を考慮せざるを得なくなります。
”では高精度計測するためには、温度制御どうすればよいのか?”、が次の問題となります。
その1.温度変動をきわめて高く制御する。
シンプルな解ですが、設備費用に糸目を付けなければ、最も良い方法です。
その2.真空機器の中に測定系を納める。
これも良い方法です。しかし、これも設備費用がかかります。
その3.相対計測を行う。
弊社が勧める方法です。同じ空間を測定光と参照光が飛んでいるならば、両者は同じ影響を受けるはずです。そこで、最後に差し引きすれば、この影響は消えてします。単純ですが、設備費用もかかりません。
測り方を変えることは大きな要因だと思います。
<測定環境は?>、<長時間測定は可能か?>、<サブnmを測るには更に何が必要か>の項も参照ください。
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