Original Ogre Battle Tarot
 
IX
THE HERMIT
 
  IX THE HERMIT 〔隠者〕
 
  ◆妖術士アルビレオ
 
  ■作成者名   平田さん
  ■作成者サイト f,e,a,w
 
  ■作者コメント
     アルビレオ→ラドラム→死者の宮殿→竜言語魔法→メテオストライク→
     宇宙・・・というイメージで、わたしなりに精一杯描きました。
     何度も転生を繰り返す男はいつか真理の光を掴むことが
     出来るのでしょうか・・・。

愚者〕 〔魔術師〕 〔女教皇〕 〔女帝〕 〔皇帝〕 〔法王〕 〔恋人たち〕 〔戦車
〕 〔隠者〕 〔運命の輪〕 〔正義〕 〔吊し人〕 〔死神〕 〔節制〕 〔悪魔
〕 〔〕 〔〕 〔太陽〕 〔審判〕 〔世界〕 〔魔法の杖〕 〔〕 〔〕 〔五芒星
 
正位置と逆位置 〔ウェイト版より The Rider Waite Talot Deck〕
このアルカナのテーマは真理の探求です。
正位置では独り内省する中で、真理の光が見つかることを暗示し、逆位置では真理の光が見つからない状態が続くことを意味しています。
 
 
●正位置のキーワード
  内省、慎重、思慮、用心、探求、孤独、知恵、隠れ家、隠棲
 
 
●逆位置のキーワード
  気難しさ、劣等感を持つ、偽りの真実、愚かな知恵、現実逃避、因習、落ち込み、愚痴、秘密を持つ、内気
 

タロットの解説 〔ウェイト版より The Rider Waite Tarot Deck〕
一人の老人がランプを手に持ち、足元を見つめています。
彼は修道士がよく着るような服を着て、手には杖を持っています。
隠者は、正義の女神の声を聞いて驚愕し、自らの生きざまを振り返った人間を意味しています。
彼は「私のこれまでの行き方は何だったのか、今のままで良いのだろうか」と内省を始めた人間の象徴なのです。
彼が手に持つランプは、真理の光を象徴します。それはまた、真の自己、闇に包まれた明性を意味します。
この探索の道は、自分の経験の反省から始まり、やがて哲学的な認識に至ります。しかし、それで探索は終わらないのです。本当の探索は、ここから始まるのです。
人は本当に自分の内面に立ち戻る時には、独りにならざるを得ないものなのです。こういう時には、自分の外で行われていることをシャットアウトすることが、どうしても必要になります。
自分の道は自分で探す他はなく、自分で選んだ道だけが本当に納得のいく道なのです。
アルカナでは、探求が孤独であることを修道士の服を着た隠者で象徴しています。
そして彼がたどる道が、内面への道であることを青みがかった灰色の空で象徴しているのです。
杖は哲学的な思索を象徴します。自分にとっての幸福の意味や今、自分がしていることの意義を一つづつ確かめながら進んで行くからです。
では、どうやって確かめるのでしょうか?
彼はランプに象徴される真理の光、つまり神の言葉に照合しながら確認するのです。
神の言葉とは、女教皇が受けた啓示と法王による、その解釈です。
彼は外向的で活動的な生活から一時的に身を引いて、自らの中を見つめようとしています。それは広大な闇の世界への下降です。
隠者は自分がこの一連の旅を始めたことに気付いた人間の姿なのです。
この姿は、若き日のスピターマ・ザラシュストラの姿でもあるのです。
隠者は、このような内面的体験を重ねて、本当の知恵を身につけた人物です。
ですから、心の底に深く秘めた悩みや誰にも理解してもらえないようなことについて、真の理解者となり、自分の経験に基づいて導いてくれるのです。
 
光と闇の神話 〔古代ペルシア神話より〕
あくる日、若者は暗い山道を歩いていた。
彼は最近、色々なことに気付くことが多くなり、以前よりそれらを深く考えるようになったと感じていた。
おそらく、天使と出会ったせいだろう。
もはや人生は、昔ほど単純ではなかった。自分のしていることに理由や、意義を問い直すことが多くなっていた。
「独りになりたい時が多くなったな」と心の中でつぶやいた。
 
友達や仕事仲間との遊びも昔ほどには、楽しみを与えてはくれなくなっていた。
村の酒場でジプシー娘の歌を聞く回数も昔に比べれば、ずっと減っていた。
普通の日でも、ふとしたきっかけで、何か夕闇が迫ってきているような気がするのだった。
 
独り、山道を歩いていると、冷気が身にしみた。
寒さは冷気のせいだけではないようだった。
闇が一層、深まったように思えた時、遠くに一つの明かりが見えた。
その光を見ていると、何か今までの悩みが消えて、心の中に迫ってきた闇が少し後ろに退いたような気がした。
 
若者がその光の方へ進んで行くと、そこには一人の隠者がいた。
隠者は、自分は司教フォルチュナトゥスと言い、この山の向こうにある港から、船に乗ろうとしているところだと言った。
 
隠者は言った。
「闇に覆われて闇の酒に酔いしれている者達は、このランプの光を見ることは出来ない。しかし、このランプの光を遠くから見つけることが出来る者でも、ここへやって来ようとするものは少ない。光あるうちに光を見出したあなたに、幸いあれ。」
陳腐なあいさつだと若者は思った。
 
しかし、そうは言わずに「ありがとうございます。」となかば反射的に若者は答えていた。若者は隠者の言葉よりも、ランプの灯の方にすっかり気を取られていたのだった。
 
若者は言った。
「あなたが持っているランプは、不思議な光を放っています。何か私の心に感じます。」
すると隠者は「このランプの光は、真理の光なのだ。」と彼に告げた。
 
ランプの灯の中に、次々と色々な人物が映し出された。学校の先生がしゃべっていたが、それは建て前にしか聞こえなかった。
どこかの大商人が成功談を自慢気に談笑していたが、精神性が欠如しているように思われた。
政治家が暮らしの中の幸せについて演説していたが、偽善的な印象がぬぐえなかった。道化師が幸福そうに笑っていたが、人形が笑っているように見えた。
どれもこれも真理からは、ほど遠いように思われた。
「僕にはどれも真理には思えません。こんなものなら見世物小屋の芝居と何にも変わらないじゃないですか。」
 
隠者は苦笑して言った。
「それでは、こういうのはいかがかな。」
隠者がそう言うとランプの光の中に別の映像が現れた。
それは、子供のころ聞いた童話であった。
子守唄が聞こえ、何か懐かしい気分になった。
「やめて下さい。それが何の役に立つというのです。現実とのギャップが益々はっきりしてきて、苦々しい思いがつのるだけです。」
 
「苦々しく感じるということは、そこに真理があるということではなかろうか?」と隠者が彼の目をのぞき込みながら言った。
隠者は路傍の石に腰掛けていた。
「そうかもしれませんが、逃げ水のようにつかみどころのないものでは困ります。僕が欲しいのは、この手でつかめる真理です。おとぎ話じゃ生きていけません。」
「それなら、自分で行って、つかみ取るとよい。」
「炎の中に見える扉は、真理への扉だ。やがて、お前は一つの遺骸を見つけるだろう。その時、真理が明らかになるだろう。私はコスモクラトールからの啓示を受けた者、輝く使徒の一人だ。」
そう言って彼は若者に十字架を手渡した。

 
 
 
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