船底

 この砕氷船、名前は「おーろら」という。
 美しい名前とは裏腹に、厚さ1mまでの氷だったら、力強く割って進むことが出来る。

 さぞかし頑丈に作られているんだろうなぁと思い、船員さんに聞いてみる。
 「あの…。氷を割って進むってことは、傷ついたり、へこんだりすることもあるんですかね…?」

 …場違いな質問をしてしまったようだ。失笑をかっている。
 「ええとね。そういうのでへこんだりしないように、分厚く作ってあるの。詳しくは売店に行ってみて。」


 体よくやっかい払いされてしまった。
 おーろら号の中には、売店と称したコーヒーショップがある。一応テレフォンカードや、クリオネの人形なんかも売っているが、それらを買っている人は見かけなかった。

 その、コーヒーショップの片隅に、追いやられるようにカレー・ルー程の大きさの物が置かれていた。
 それが、おーろら号の船底の鉄板だった。

 分かりやすいように、普通の船のそれと並べて展示されている。
 普通の船の船底は、厚さ12mm。砕氷船は倍の24mmの鉄板で出来ている。剛性は何と2.7倍。

 恐れ入りました。これじゃぁ凹みませんね。

 売店のお兄さんが「触ってもいいですよ」と、持たせてくれた。
 気楽な気持ちで、片手を差し出すと、…お、重いっ!とても片手では持てず、ふんぬっと両手で何とか支える。
 普通の船の鉄板でさえ、カレー・ルーほどの大きさで3kgの鉄アレイ…や、もう少し重いくらい。厚さが倍ということは、単純に考えても重さが倍あるということ。すごかった。


 …ちなみにこの砕氷船、夏場は知床観光船と名をかえ、観光船として使用されている。
 ところが!砕氷船って、すごく波に弱いらしく、夏場の方がよく欠航するそうだ。
 やれやれ。

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