陶芸始めちゃいました

vol.9  伊賀の旅

2泊3日。メンバー4名/犬猫庵、ゆう文、コンさん、マコト。
目的1/伊賀で古伊賀を見学、伊賀焼作陶体験。
おまけ1/伊賀の城下町で和菓子を食す。

【出発前に】 伊賀は忍者の里、うえの市は俳聖芭蕉翁が生まれた育った土地でもある。伊賀には黒沢映画「影武者」で使われた伊賀上野城、別名白鳳城がある。伊賀の城下町は戦火をまぬがれ、江戸名残の古い町並みが保存されているという。和菓子屋も多く、歴史好き、甘いもの好きにはたまらないところだ。そして伊賀焼。あのごつごつした地肌や焦げ、ビードロ釉や何やら素朴で力強い造形が魅力だが、作陶に挑みます。

---------------- 伊賀の旅 スケジュール -------------------

 1〜2日目 伊賀

1 10月18日、品川駅高輪口に夜10時集合。1030発の三重交通ノンストップ大型バス・伊賀号→うえの市駅・伊賀産業会館前、朝まだ早い0625着。伊賀号は3列シートで快適だったが、腰痛持ちの僕は、さすがに首と腰が痛くなりました。まわりの乗客のいびきがやや気になるが、まぁほどほどに眠れました。
芭蕉像

 うえの市駅はぼんやり朝もやに包まれシーンとして何やらミステリアスな静けさ。駅前ロータリーに面する観光案内所や商店のシャッターはまだ下りている。バス停のベンチで犬の散歩老人が休んでいた。そして白いもやの中に松尾芭蕉の銅像が高々とそびえ立っている。見上げれば青空で、今日はよい日和になりそうだ。伊賀は忍者の里、うえの市は俳聖芭蕉翁が生まれた育った土地でもある。

うえの市駅駅MAP

2 駅前の観光地図を見ると、至るところに忍者のイラスト。どうやら町の散策は芭蕉翁と伊賀者が案内してくれそうだ。ところで一同ややお疲れの様子、駅前でぐるりと見渡すと、営業しているのは「喫茶シャコンヌ」。ガラス扉を開けるとカウベルの音。ここでモーニングセットをたのみコーヒーで温まる。
忍者電車  さて、本日のおおざっぱな予定は、古陶館の見学、そして上野城と城下の古い町並みを散策。途中芭蕉の句碑と史跡を巡り、午後3時から焼き物の里、丸柱地区を訪れ、伊賀陶芸体験を楽しみます。そろそろ出発!で、店から出ると明け透けなうえの市駅のホームにピンク色の電車が入ってきた。ちょっとホームに入れていただき有名な「忍者列車」を撮影させてもらいました。


伊賀信楽古陶館

3 まずはうえの市駅からすぐ近い、古伊賀・古信楽の逸品を展示する「伊賀信楽古陶館」。一階では現代の伊賀焼き陶芸作家の作品を展示即売、二階では伊賀独特の耳付筒花入、伊賀埴田文水指をはじめ、古伊賀の名品が展示されている。 古陶館陳列1
 う〜む、素晴らしい! ところで銘を見ると半分は「信楽」となっているがこれはどういうこと? じつは伊賀と信楽(甲賀)は山をはさんで隣りどうし、使用する土もほぼ同じだという。むかしから「伊賀に耳あり、信楽に耳なし」といわれ、伝統的にはこの部分の形状が異なる。また伊賀焼は無釉が基本で、窯の中で自然発生したビードロという緑色の釉薬がかかったり、薪の灰がかかった黒っぽい自然釉が特徴。素朴で、ごつごつした無骨なイメージが伊賀っぽいのです。

ゆう文マコト大久保1
小山ゆう文犬猫

4 【歴史】 古伊賀と呼ばれるやきものは、桃山時代に筒井定次が伊賀領主となってから作られるようになった。その後、「織部好み」と呼ばれる芸術的な色彩を帯びた茶陶が作られるようになり、藤堂家三代目の高久の時代に伊賀陶土の乱掘を防ぐ制度が設けられた際に、多くの陶工が信楽に移り、伊賀は一時衰退。
 18世紀に入り藤堂家九代目の高嶷が作陶を奨励、これにより「再興伊賀」の時代を迎える。明治期以降、伊賀陶土の特性を生かした耐熱食器、雪平鍋、土瓶、土鍋などが庶民に支持を受けて全国に広まった。これらの生産が主流となり、陶磁器の産地としての基盤が固められました。

伊賀上野城

5 伊賀上野城は壮観で大変美しい。 天守閣から眺める景色も良いが、屋根瓦が優美なのである。 伊賀の里は山々に囲まれた小さな盆地であることがわかる。 おっと、わりと眼下の森にこれから訪れる芭蕉俳聖殿の丸い屋根が見えるではないか。
伊賀上野城  城内をぶら〜り散策するが、「影武者」のロケで使われたのは高さ30メートルもある城の高石垣。 う〜む、巨匠黒沢明が目を付けただけあってさすがの迫力だ!これだけでも見る価値がありそう。 小腹がすいたかゆう文とマコトが出店の鯛焼きをほおばるが、ここで記念撮影。城内にも芭蕉の句碑がありました。

城壁城内芭蕉石碑

  さまざまの 事おもひ出す 桜哉 (芭蕉)

伊賀忍者屋敷

6 伊賀と言えば忍者。 子供の頃からおなじみの忍者の頭領・服部半蔵は伊賀者なのだ。城に隣接する「伊賀流忍者博物館」に入る。 かわいい九の一が屋敷内を案内してくれる。 壁が回転したり、隠し扉があったりして天井裏やあちこちから忍者が出没、中庭に出ると白い爆薬や手裏剣が飛び交い、忍者の闘いがショー仕立てで楽しめる。 博物館には水の上を歩ける水蜘蛛や縄梯子など、伊賀者の七つ道具が展示されている。
忍者屋敷闘い
手裏剣水蜘蛛

  忍者屋敷から林に囲まれた公園を抜けると広場の中央に芭蕉俳聖殿があった。 扉の中に芭蕉翁の座像。習慣でつい手を合わせてしまったが、まっいいか。

芭蕉俳聖殿芭蕉翁の座像
上野公園東駐車場入口

7 城外に出ると上野市役所があり、芭蕉の句碑があった。
 

  やまざとは まんざい遅し 梅花 (芭蕉/上野公園東駐車場入口)

  升かふて 分別かはる 月見哉  (芭蕉/上野丸之内・上野市役所南)

 さて、次は芭蕉記念館です。ここで芭蕉の筆跡を見ます。

  山路来て何やらゆかしすみれ草    ほろほろと山吹ちるか滝の音

 手書きの句が展示されていました。 ここで松尾芭蕉の生涯や全体像を知ることができ、市内に数多くある句碑マップなどの情報も得られる。
逆光でしたが玄関脇にある芭蕉さんの立像と記念写真を撮らせていただきました。

芭蕉記念館像上野公園東駐車場碑

8 現代陶芸・伊賀焼きの店「土味」に立ち寄る。 ここは、陶芸家・谷本洋氏のお店で、ゆったりとしたスペースの中にうつわから花器、ぐい呑み、湯のみ、茶道具などを展示し即売している。ここでひと休み。 お茶をいただきじっくり作品を観賞します。谷本洋氏の焼き物は言われるところ「焼いて焼いて焼きまくる!」、まさに伊賀焼きの神髄! なんていわれているが、はたしてどうだろう。
谷本洋氏のお店
コンとマコト犬猫  コンさんはここで伊賀焼きの茶碗を一つ購入。片側の焼き色がよかったのと、茶溜まりにビードロがきれいだったから。さらに、おまけで箸置きを2つ頂きました。 品物を買った客をして「ありがとう!」と言わせるところが谷本流なのかも知れません。 コロリとフアンになりました。(単純!)

 谷本洋氏のお店で買った 伊賀焼きはこちら。 茶碗


芭蕉の生家

9 城外から163号線を歩いて行くと10分ほどで芭蕉の生家。 芭蕉が青年時代を過ごした家は格子構えの古い町家で、玄関から奥まで通り土間となっている。 出生月日は不詳で、幼名を金作、長じて宗房と名乗り、10代の後半、上野町で盛んだった俳諧に興味を持ったと言われる。 江戸へ出てからもふるさと伊賀上野へは旅の途中何度も帰郷している。 この家にも芭蕉さんの座像があった。
芭蕉の生家土間
 生家の裏には芭蕉翁が処女句集『貝おほひ』を執筆した「釣月軒」がある。 庭の句碑は「冬籠もりまたよりそはん此はしら」で、近くに芭蕉の木が植えられていた。 生家前の通りある句碑は「笈の小文」の旅で帰郷したとき詠んだ、

  古里や臍のをに泣としのくれ (芭蕉)
室内釣月軒

10 生家から歩いて町内に戻る。保存されたホンモノの古い町並みは見事だ! 上野天神宮あたりは和菓子屋が並ぶ。
上野天神宮瑚月堂

古美術や地酒の蔵元もある。中町では「瑚月堂」に立ち寄る。 まるで骨董屋かと思わせるレトロな店構えで名物の「丁稚(でっち)ようかん」が有名だ。口当たりがよくトロッと溶ける風合いだ。 「かたやき」という焼き菓子も購入。
丁稚ようかん丁稚ようかん2
 三之町筋にある「昭和ハウス」は懐かしい昭和の家電や雑貨を販売&リースする店。 懐かしい瓶ジュースなども飲める。 映画「ALWAYS 三丁目の夕日」でも三輪車「ミゼット」をはじめこの店のコレクションが使われた。僕もいっぱしのコカ・コーラの瓶コレクターなので、一応ご挨拶させて頂いた。 伊賀は銭湯の町でもある。有名な「電氣湯」を見つけたがのれんが仕舞われていたのは残念。

昭和ハウス
古い町並み電氣湯

伊賀焼・陶房「香山窯」

11 「左はしがらき 右はうえの」と丸柱にたつ道標は伊賀・甲賀の境を示す。 さて本日「作陶体験」でお世話になるのはその丸柱地区にあり、伊賀上野駅からタクシーで20分ほど。山間の水田を通り抜けたところにある。
香山窯森里長男  伊賀焼・陶房「香山窯」の森里長男さん。 まずは母屋の展示を拝見、使い込んだ登り窯と陶房を見学する。

登り窯登り窯内部
陶房左中庭で

伊賀焼の手びねり

 さて作陶開始、ですが、われわれの作陶はなんと軒下だと? ちょっとがっかり…。この窯には作陶専門の建家はないそうです。 伊賀の土はややや粗めで重さはほどほど、成形しやすい。 水はあまり使わないで、という。伊賀焼のイメージは出来上がっている。(高台を削ってもらうのはあまり気乗りしないので)高台の無い「耳付き花瓶」と「とって付き菓子器」を作った。犬猫は「巾着袋」、ゆう文は「とって付き片口とぐい呑み」、マコトは「マグカップ」を作った。所要は小2時間。
 伊賀焼きはちょこまか工作はしない。ざくっと作る。修正もしない。いつものようにていねいに作らないのが伊賀風?

ゆう文 title=犬猫
コンさんマコト

12 「 香山窯 」の陶芸体験は電話で予約。 費用は、手ロクロ作陶費(焼成費含)2時間=2,000円(消費税込)、菓子鉢や茶碗が2個作れる粘土の分量。親切ですから足りなくなったら少しぐらい追加してくれます。電動ロクロは60分、粘土1kgで3,500円。
われわれの体験作品は「プロパンガス窯」で還元焼成。 松灰をまぶし、ガラス質のビードロ釉を掛けることで伊賀焼らしくなっている。 ホンモノの伊賀焼はかの登り窯で一年に1回火を入れて作るとのこと。
  送られてきた伊賀作品はこちら。伊賀焼4作品



伊賀焼の里・丸柱地区の窯元散策

13 作陶体験が終わり、歴史ある伊賀焼の里・丸柱地区の窯元散策に出かけます。 丘を上ると創業は天保3年という伊賀を代表する老舗窯・長谷園。 ここの旧登り窯はなんと16連房という大物で、有形文化財に指定されている。
長谷園の登り窯長谷園の登り窯展示
長谷園の登り窯2長谷園の登り窯コンさん  現在長谷園の人気商品は「土鍋」。食材にじっくり熱を伝える伊賀の土鍋は 鍋料理だけでなく、毎日の料理でも食材の おいしさを引きだしてくれる調理道具です、と。 さて長谷園大正館だ。これは大正時代に建てられた洋館ふう事務所で、中には電話も金庫もそのままに大正ロマンの面影をたっぷりと残していた。
長谷園の大正ロマン長谷園の展示
ながたに母や土鍋  ここの休憩コーナーでは、ホット一息、伊賀焼のうつわでコーヒーが楽しめる。奥の土鍋の制作工房を見学させていただいた後はショップ見学。 見事な土鍋がたくさん陳列してありました。 長谷園の「ながたに母や」向かいのショップで記念撮影。

ながたに母やの向かい

14 今夜の宿は「サンピア伊賀」。 うえの市駅前のコミュニティーバス「しらさぎ」で10分、伊賀文化会館前下車。このホテルのウリは「天然温泉・芭蕉の湯」。 伊賀地区の唯一の天然温泉(アルカリ性単純温泉)で、ジャグジーや露天風呂もある。温泉だけの利用はタオル付き800円で人気がある。われわれは1泊2食で10,000円、今時これは安い!
 ホテルの玄関にダイハツのオート三輪「ミゼット」が展示されていた。これは午前中に行った「昭和ハウス」から貸し出されているもので、昭和二桁のわれわれには大変懐かしいシロモノ。 犬猫庵などは感激のご様子だったが、これがなんとまだ走れるとのこと。
ながたに母やの向かい

 うむ、わしらもミゼットのようにまだまだ元気で走り続けたいね〜〜、と、
 お後がよろしいようで……

 明日は信楽に向かいます。




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