陶芸始めちゃいました

vol.2  益子の旅

1泊2日。メンバー4名/犬猫庵、ゆう文、abちゃん、コンさん
目的1/益子焼を見学、作陶体験。
目的2/ニキ・ド・サンファル展を見る。
おまけ/秘湯北温泉の古旅館。

【出発前に】関東で焼き物といえば益子と笠間。近場にあるのに行った記憶がなかった。近代陶芸の祖といわれる濱田庄司邸を訪ね、電動ロクロ体験が楽しみです。

---------------- スケジュール -------------------

1 犬猫庵がプジョーでわが家までお迎えに来てくれた。犬猫庵は元画廊主で芸術にはちとうるさい。犬猫をこよなく愛するので自ら名付けたバンドルネーム。途中新宿駅南口でゆう文を拾った。ゆう文は池袋のドン。といってもどんくさいのドンではなく親子三代にわたり果物屋で地元にドンと居座っている。池袋ウエストゲートパークといえば知ってる人もいるだろう。

2 常磐道で東京から2時間ほどで栃木県・益子町へ。余談だが鉄道なら、秋葉原からつくばエクスプレスで守谷→(関東鉄道)→下館→(真岡鉄道)→益子と行きます。下館からはSLに乗りたいという鉄ちゃんがわんさか。

益子の狸

 益子では益子焼窯元共販センターで abちゃんと待ち合わせ。巨大な狸が目印なのですぐわかる。abちゃんはツールドフランスばりの自転車とチェロを弾くのが好きな風来坊、元は英語の先生だ。


1日目 益子焼

お店の売り場

3 さて約束の時間に abちゃんが来ていないので町を散策するが、ゆう文は腹が減ったらしく勝手にそば屋に入ってしまった。さすがに益子、陶器の店の数が半端じゃない。そのせいかまあどこの店も同じように見えます。1店3分。ハハハ、とても陶磁器好きには見えないご一行様です。益子焼が庶民の日用品であるがゆえか、いい物が多すぎて深く印象に残らないのかも。


4 紺色のBMW520iで現れた abちゃんと合流。まずは陶芸家で人間国宝だった濱田庄司邸を訪ねる。彼の旧宅は町の中心部にほど近い「陶芸メッセ益子」内に移築保存されている。広い庭園の中央に堂々と構えた母屋は茅葺き、中は土間部分はほとんどが板の間で中央に囲炉裏があり、南側には馬屋側に手回しロクロが座敷側に蹴ロクロが設置してある。この蹴ロクロの前でパチリ。母屋の傍らには大きな登り窯があった。

浜田庄司邸濱田作品 登りガマ 浜田庄司邸にて登り窯

5 【歴史】益子焼は江戸時代末期、笠間で修行した大塚啓三郎が窯を築いたことに始まる。よい陶土を産出し、東京に近いことから、水がめ、火鉢、土瓶など日用品の産地として発展する。1924年、濱田庄司がこの地に移住し、「用の美」に着目した柳宗悦らと民芸運動を推め、地元に大きな影響を与え、益子焼はしだいに「芸術品」としても脚光を浴びる。

現在、窯元は約380、陶器店は50。その作風は多種多様で、春のゴールデンウイークと秋の11月3日前後には巨大な狸周辺で大陶器市が開かれる。


初めてでも楽しめる電動ロクロ

6 益子で「電動ロクロ」を体験するのが今旅の目的その1。「初めての方にも気軽にお楽しみいただけるようスタッフが丁寧にご指導をさせていただきます」というHPの殺し文句を“信じて”選んだのは「「益子焼窯元よこやま」。ここの陶土は益子の土6に信楽の土4の割合で混ぜている。益子の土100%だと強度が弱いそうだ。ほどよく滑らかで軽い感じのする扱いやすい粘土だ。


7 まずロクロを前にして座る。益子では伝統的に「あぐら」をかく姿勢でロクロを使うのだそう。そういえば写真で見た濱田先生もあぐらだった。中心部に粘土が2、30センチほどの高さで据えられている。右手のレバーで回転スピードを調節する。「真ん中に指を立てて穴をあけて行きます」とスタッフがやると、みるみる間に穴があき、茶碗のかたちになってしまう。

犬猫庵コンさん

8 うーむ、要領は分かった!と見よう見まねでやってみるとおやおや不思議、たちまち出来てしまうのだ。「僕って天才?」と悦にいっていると「では取りましょう」といって糸で高台部下をカット、「後ほど高台を削ってお送りします」と。再び粘土のてっぺんを手で押さえ込んだらつるつると高く持ち上げ、「ハイどうぞ」で次なる作品に取りかかる。2時間ほどで5つばかり拵えたが、当店は従量制なので良さそうなのを3つ選んで残りはオシャカに。

満足な出来映えのそのわけは

9 犬猫庵もゆう文も abちゃんも満足な出来映え!犬猫庵は猫の餌皿、ゆう文は5寸皿を、abちゃんは小鉢と湯のみ、コンさんは4寸皿と茶碗2点をこしらえた。釉薬、絵付けはいろいろ選べる。ここの土は焼き上がりが黒っぽくなるというので、自分は白い「刷毛目」をお願いしました。


10 後で知るのだが、ロクロで大事なのは、まず土をこねる「菊練り」、そして土をロクロの真ん中に据える「中心とり」、土を押さえて暴れないようにする「土殺し」などの準備に熟練を要し、「粘土の中心」がとれていれば誰でもほどほどに形を作れるのだそうです。何のことはない、われわれはテーブルに出された料理をおいしく食べただけということ。しかしこれらを客に気づかせず「段取りよく」易しい「陶芸体験」を提供する「よこやま」のスタッフ教育に感謝いたします。

よこやま玄関

 ちなみにのHPによるとこの後、軽い乾燥→高台や腰の削り作業→絵付け→室内乾燥→本乾燥→釉薬かけ→窯づめ→1250度で30時間焼成→2日間自然冷却→窯出し→高台など手入れ→お客様に配送、というスケジュールだとか。大変だ。

陶芸体験「よこやま」 の「ろくろ体験コ-ス」は、体験時間100分、所要2時間で2,205円(税込)プラス別途「焼き上げ料金」が加算。湯のみ735円、4寸皿735円、マグカップ1,260円と大きさに比例し1人約5000円ちょい。焼き上がりまでは45日ほどかかる。

出来上がった作品はこちら。益子の作品



北温泉はホンモノの秘湯だ

11 日没ぎりぎりの黄昏近くに今宵の宿、北温泉に到着。旅館は那須岳のふもとにある一軒宿だ。駐車場から旅館は見えず、薄暗い茂みの山道を5分ほどおりて行くと開けた山裾にその古温泉は建っており、まさに秘境の面持ち。説明チラシにあるように、江戸、明治、昭和時代の建物が渾然一体化しているレトロな3階建ての旅館なのだ。

北温泉全景

12 玄関を入るとまるで歴史民族資料館のよう。薄暗いなか奥のソファで宿泊客が新聞を読んでいるが、帳場(右端) に人影はなく呼んでも係の人が来ない。勝手に上がり込んで(私服の)女将らしい人を捕まえるとその人がオカミだった。

北温泉帳場

チェックインをすませ部屋のことを聞く。建物を何度も増築したせいで階段や廊下が迷路のように行き交っており、しかも廊下の厚い板はがたがた動く!きしむ階段を上がって入ったのは突き当たりの「江戸時代」の部屋だった。入り口や天井が妙に低く、往時の日本人の身長はこれくらいだったのかななどと考えていたら雨が降ってきた。大丈夫かいな?


13 早速ひと風呂浴びようと、階段を下りると違う場所に出た。何がどこにあるのか皆目わからない構造だ。廊下に出て、藍染めののれんをくぐると脱衣場があった。窓がひろく外から丸見え。洗面台はあるが古びた明治風の蛇口から水がぽたぽた漏れ落ちていた。天狗の湯に行く間に仕切られたいくつかの小風呂(内風呂)があり、ドアがなかったり開いていて、若い女性がうしろ向きだが体を洗っているのが丸見えだっちゃ。


天狗の湯

14 天狗の湯は歴史あると言うより年季の入った古湯で、上から真っ赤な天狗様がにらんでおられる。ふれこみでは混浴だ。泉質は単純泉で、風呂の手前から透明のお湯が溢れてかけ流し状態。腰にタオルで裸のまま隣の部屋に行くとそこは打たせ湯で、ここも湯量豊富で滝のようだった。湯上がりに外へ出てみると小雨の中に大きな露天プールが見えたが入らなかった。夕食をすませ部屋の戻ると布団が敷いてあり、雨音が気になったがたちまち眠ってしまった。



2日目。

BBQ

15 翌日は雨も上がって清々しい朝。大広間での朝食は旨くご飯を三杯もお替わりしてしまった。この北温泉だが、若い人にはちょっとお勧めできないかも。車でひとっ走り行けば那須ロープウエイは快晴の見晴らし。昼は千本松牧場でジンギスカンの食べ放題。飲食業もやっているゆう文は早速名物のソフトクリームの試食調査、なんて言ってるがただ食いしん坊なだけ。


ニキ美術館で紅葉を満喫する

16 さて、今日の目玉は、那須高原にある「ニキ美術館」。ニキ・ド・サンファル(1930ー2002)は、フランス生まれの女性アーティストで、A・ガウディの薫陶を受け、いままでにないまったく新しい鮮やかな色彩の彫刻を作り出した。箱根彫刻の森美術館の屋外にも展示されている巨大なハリボテを見たことがある人も多いでしょう(写真は購入した絵はがき)。その作品が一堂に見れる美術館です。


ニキの絵はがき

17 ここは建家がユニークで、まず入り口は武家屋敷さながらの迫力ある長屋門。広い庭園は自然のサンクチュアリーのようで、小川のせせらぎを訊きながら木漏れ日の中を歩いて行くと、四面ガラス張りの美術館にたどり着く。四季折々の景色を楽しませてくれ、われわれが訪れたのはあたり一面鮮やかな紅葉の季節でした。ニキの彫刻で心穏やかになり、満たされた思いで那須高原と益子に別れを告げた。




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