晩御飯が終わると彼は早速やってきました。親指を立てて、↑え↑えの仕草をします。「もう池やん行くの」首を縦に振り笑っています。「池やんエレベーターで来て、私は階段で上がるから」そお言うと、彼はエレベーターの方に車椅子を操りながら急いでいきました。
私のほうが早く着きました。屋上には、鉄パイプで出来たバスケットボールのゴールが一騎隅の方に於いてあります。それにつかまって足の膝を少しずつ曲げるリハをしていました。(スクワットには程遠い)池やんがやって来ました。そして私のまねをやろうとしています。
「池やんそれは少し無理と違うかなと思うな!池やんは言語の方からやった方がいいのと違うかな?」池やんは口を指差してo(*≧□≦)o
ダメ~!!駄目のしぐさをします。私も言語の回復は厳しいと聞いていましたが、何とかならへんかな!と思っていました。「池やん子供の時の歌覚えているか?」と言うと指ですこしと言うので、そしたら、赤とんぼ、歌おうか?と言うと首を縦に振りました。
私は鉄パイプにつかまって♪夕焼け小焼けえの赤とんぼ〜〜〜歌うと彼は金網につかまりながら、声は出ないが頭で調子を取っています。「池やんこえぜんぜんでへんの」彼は自分の口の中を指差して、手を左右に振ります。「そしたら頭の中でうた歌いながら、「あ〜でも」「う〜でも」出す稽古しようよ!」と言うと頭で調子は取っているのですが、ぜんぜん声が出ていません。
「池やん少しでもいいから声だすけいこせなあかんよ!」池やんはうん”うん”とうなずいています。8時半になり「池やんもう消灯の時間やから降りようか」といってこんどは、2人してエレベーターで降りる事にしました。其の中で池やん手振りで、明日もきていいか?と言うので、疲れて無かったら毎日でもいいよ。そしたら池やん何ともいえない嬉しそうな(*^-^*)をしました。「池やんそんなに楽しかったの」何回も首を立てに振りニコニコしていました。
この前から頼んでおいた(嫁のお父さんに)45度に傾斜を付けた足踏み台を息子が持って来てくれました。
それを廊下に持って出て、手摺につかまりながら台の上に乗り膝を少し曲げてみました。やはり足首は、90度より前には曲がりません。でも気長にやるしかないです。同室の人たちも珍しそうに見ています。「それはいいもの作りましたな!」後で良いから俺にも貸してくれとさえ言う人もいました。「よかったら使ってください」この病院では自分で工夫してやらなければあまり運動療法はさせてくれません。脊髄梗塞の患者が少ないこともあります。
グループのリハと言う時間があります。これは最低です。6人でむかえ合って台に座り、風船バレーをします。私は、中学高校とバレーボールの選手でした。下半身は動きませんが上半身と両手は動くのです。こんなことしていて良いのかな?時間がもったいない!もっと下半身を鍛えるリハがしたい。階段を登ったり降りたり、無理だからやらせないより、無理をやらせていただいた方が患者として有難いのですが?この辺が病院の立場、患者の立場、患者は無理をしてでも回復したい!病院は無理をさせて怪我でもさせては大変!私が勝手に傾斜台など持ち出してハードな事をすると岡田さん無理なことはo(*≧□≦)o
ダメ〜!!ですと必ず言われます。
岡田さん今日はこの生徒さんに採尿してもらいますのでよろしくお願いします。「初めてなのでよろしくお願いします」ピンクの看護服です。「ハイどうぞやってください」ベットに横になり自分でジャジのズボンを下ろしました。生徒さんは大変緊張している様子です。「遠慮せんとやって下さいね」手袋をしてピンセットでカテーテルを挟んだその手が震えています。先輩の看護婦さんが横で見ていますので大変です。左手でおちんちを摘み、右手のピンセットで挟んだカテーテルがなかなか尿道に入りません。
「もう少し上の方を挟まないと抜けてしまうでしょ」「はい」そーなんです、生徒さん尿道に入れようとあせるから、5ミリぐらいのところを挟んでいるから挟み換えるときに抜けてしまうのです。「「したから2センチぐらいのところを挟みなさい」「はい、、痛かったら御免なさいね」私は人様より、カテーテルが挿入しにくいのです。「痛くないので頑張って思い切ってやってください」「はい、すみません」何とか挿入できました。「全部採尿できたら、今度は膀胱ない洗滌をしましょう」「この洗滌液全部入れていいですか?」「はい、全部入れてください」かなりの時間を費やしてようやく終わりました。
このころになると、自分のリハが思ったように、はかどらないので、イライラして来ました。夜お布団に入ると、こんな事していていいのかな?大阪いや東洋一と聞いてきたのに?これで本当に歩いて帰れるのか?なかなか寝付かれない夜が続いています。でも早く寝て明日又頑張ろう!と思うのですが、このごろ毎晩消灯が過ぎても深夜ラジオを聞く同室者が二人います。もちろん、イヤホーンで聞いているのですが、静かな病院の夜には大変よく聞こえます。
早く寝たいな!と思えば思うほど聞こえてきます。深夜12時ごろになると看護婦さんが、見回りに来ます。コツコツコツ私たちの病室に近づいてきます。ラジオの音が止まります。皆の寝相など確かめて、病室から出て行きます。コツコツコツ〜〜足音はだんだん遠くなると、ラジオの音が聞こえてきます。このお二人は、お昼でもあまり自主トレはやっていません。あきらめてしまったのだろうか?家族は一日でも長く病院にいてくださいと言った感じです。
今日、私とむかえ合わせのベットに、新しい患者さんが入りました。脳梗塞のようです。病気のせいなのか?なんか落ち着きがありません。消灯時間が過ぎて、しばらくすると必ずベットの上で紙袋に何かを出し入れが始まります。環境が変わったせいだろうと思いますが、毎日です。私のほうも思うようにリハが進まないイライラと、消灯時間が過ぎても、ラジオを聴く同室者、このような環境についに我慢が出来なくなりました。夜中の12時ごろ屋上に上がりリハをはじめました。ただ悲しくて涙がとめどなく出ます。こんなはずじゃなかった!今後自分はどうするべきなのか?岡田さん、やっぱりここなのね!どうしたの?眠れないの?看護婦さんが探しに来てくれました。
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