小林信彦作品のページ No.5



41.小林信彦 萩本欽一 ふたりの笑タイム

42.「あまちゃん」はなぜ面白かったか?−本音を申せばNo.10−
  (文庫改題:アイドル女優に乾杯!)

43.つなわたり

44.女優で観るか、監督を追うか−本音を申せばNo.11−

45.古い洋画と新しい邦画と−本音を申せばNo.12−(文庫改題:映画狂乱日記)

46.わがクラシック・スターたち−本音を申せばNo.13−

47.生還−本音を申せばNo.14−

48.また、本音を申せば−本音を申せばNo.15−

49.とりあえず、本音を申せば−本音を申せばNo.16−

50.決定版 日本の喜劇人

51.日本橋に生まれて−本音を申せばNo.17−


【作家歴】、唐獅子株式会社、唐獅子源氏物語、イエスタデイ・ワンス・モア、ミート・ザ・ビートルズ、ドリームハウス、イーストサイド・ワルツ、ムーン・リヴァーの向こう側、コラムの冒険、和菓子屋の息子、現代(死語)ノート

→ 小林信彦作品のページ bP


結婚恐怖、天才伝説横山やすし、コラムは誘う、人生は五十一から、おかしな男渥美清、読書中毒、最良の日最悪の日、昭和の東京平成の東京、テレビの黄金時代、コラムの逆襲

→ 小林信彦作品のページ bQ


名人、にっちもさっちも、ぼくが選んだ洋画・邦画ベスト200、花と爆弾、侵入者、本音を申せば、昭和のまぼろし、うらなり、映画が目にしみる、昭和が遠くなって

→ 小林信彦作品のページ bR


日本橋バビロン、映画x東京とっておき雑学ノート、B型の品格、黒澤明という時代、森繁さんの長い影、気になる日本語、流される、非常事態の中の愉しみ、四重奏(カルテット)、映画の話が多くなって

→ 小林信彦作品のページ bS

                       


               

41.

小林信彦 萩本欽一 ふたりの笑タイム−名喜劇人たちの横顔・素顔・舞台裏−★★


小林信彦萩本欽一ふたりの笑タイム

2014年01月
集英社刊
(1500円+税)



2014/02/19



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“お笑い”について詳しく知る小林さんからいろいろ話を聞きたい、という萩本さんの言葉から始まる対談エッセイ。

小林さんについてはこれまでも様々な形で喜劇人、ヴァラエティ、エンタテインメントについて語ってきていますから、重複する部分も勿論ありますが、改めて萩本さんから訊かれて答えるという形のものを読むのは楽しい。
何しろ昭和という時代を代表するコメディアンの一人である萩本さんが聞き手ですから、同じコメディアンとしての思い、感想、エピソードが入りこんでいますから、2人のやりとりに実感が籠っています。

TV創成期のヴァラエティ番組(ゲバゲバ90分等)から始まり、大人気を誇ったコント55号の舞台裏を経て、クレイジー・キャッツ、植木等、谷啓、フランキー堺という私も子供の頃にTVで観ていた芸達者なコメディアンたちから、もはや伝説と言うべき喜劇人たち=エノケン、ロッパ、ターキー(水之江瀧子)、伴淳三郎、益田喜頓、渥美清、森繁久彌、由利徹、三木のり平、八波むと志等々まで。お2人の話をいつまでも話を聞いていたい気分になります。
中でも私が楽しかったのは、
谷啓さんの人柄とそのエピソード、そして萩本さんと三木のり平さんとのコントさながらのやりとり。

最近はTVを観ていると私の知らない“お笑い芸人”とやらがうじゃうじゃ登場してきますが、本書に取り上げられたような、舞台で鍛えられた本物の喜劇人はもう伝説の中にしか存在しないのかも、という気がしてきます。
失礼ながら小林信彦さんももう高齢、お元気なうちにどんどん昔のあれこれを聞き出して欲しい、と思うばかりです。


はじめに−萩本欽一/1.テレビ創成期のヴァラエティ番組/2.コント55号の時代/3.笑いをジャズのリズムに乗せて/4.「喜劇王」エノケンのいた浅草/5.高度成長期の浅草コメディアン/6.渥美清の大きな足跡/7.森繁久彌と新宿育ちのコメディアン/8.劇場で笑う愉しみ/終わりに−小林信彦

       

42.

「「あまちゃん」はなぜ面白かったか?−本音を申せば− ★☆
 (文庫改題:アイドル女優に乾杯!)


「あまちゃん」はなぜ面白かったか?画像

2014年05月
文芸春秋刊
(1750円+税)



2014/07/01



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「週刊文春」連載コラムの単行本化。
2013年01月17日号〜2014年01月02・09日号に掲載されたコラムを収録した第16集。

毎回本シリーズを読んでいるので、少しずつ変化していることを感じます。
現在について語ることが減り、昔について語ることがますます増えているという傾向を感じます。中でも、映画について。
現在について語ることが減っている理由には、言及したくないという心理もあるようです。原発問題とか、原発そっちのけでオリンピック招致運動に熱中している世相とか。

TV・映画の話題では、まず綾瀬はるか主演のNHK大河「八重の桜」。私は全く観ていないので何とも言えませんが、綾瀬はるかの扱いがマズイという点で、小林さんはご不満だったようです。
一方、NHK朝ドラ
「あまちゃん」については本書表題にもなっているとおり、かなりの好評。こちらもわ私は観ていないのですが、一般的に好評だったのは宮藤官九郎さんの脚本によるところが大きかったのでは、と思っています。テンポ、ノリという点で従来の朝ドラを凌駕していたのでは、と。

映画ではギャッビーキャリー・マリガンに捉われず、ジェニファー・ローレンスを絶賛。これは私も大いに共感する評価であって、私はウィンターズ・ボーン」「世界にひとつのプレイブックとSFアクションしか観ていませんが、そこは小林さんらしく他の作品もさっさと観たとのことです。
日本映画では、
さよなら渓谷真木よう子を絶賛。
J・ローレンス2作と並んで「さよなら渓谷」も絶品です!

    

43.

「つなわたり」 ★☆


つなわたり

2015年03月
文芸春秋刊
(1400円+税)



2015/03/31



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もう新作小説は書かないのではないだろうかと思っていたところで以外にも刊行されたのが本書。
現代受けしないストーリィだろうと思うのですが、そこが小林信彦作品らしいところ。小林ファンだからこそ読むに値する作品ではないかと思います。

時代は現代ではなく、日本映画が斜陽期に入った頃。主人公は40代の作家で独身、いやそれどころか・・・。
そんな主人公はストーリィの中盤で、かつて結婚を意識していた元恋人の由夏に再会します。
そこからまた2人の関係が復活するのですが、これが中々思うように進まない。
最近のストーリィでは、「付き合う」=セックスというのがほぼ当然のようになっていますが、本書の男女2人にとってはそれが越えなくてはならない大きな壁として立ち塞がっているようです。
でも、かつて映画会社が華やかだった時代、マリリン・モンローがセックス・シンボルとして世界中の人気を集めた時代が現実にあったのと同様に、そうした男女あるいは恋愛関係も現実にあったのだ、と突きつけられたように感じます。

映画界の衰退を背景に、中年男女の恋愛を切なくコミカルに、ノスタルジーを篭めて描いた長編小説。好み次第だろうなぁ。

   

44.

「女優で観るか、監督を追うか−本音を申せば− ★☆


女優で観るか、監督を追うか

2015年05月
文芸春秋刊
(1750円+税)

2018年01月
文春文庫化


2015/06/03


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「週刊文春」連載コラムの単行本化。
2014年01月16日号〜2015年01月01・08日号に掲載されたコラムを収録したクロニクル的エッセイ第17集。

古い話、懐古的な話が明らかに多くなっていますが、それが映画に関してとなれば、個人的にはむしろ歓迎です。自分の知らない話を聞くのは楽しいものです。
本書では、アカデミー賞が開始された頃の状況、2014年米国
「GODZILLA」を契機にしたゴジラやラドン映画等のこと。
最近の映画についても話題は豊富です。私が見ようと思って未だ観ていないままの作品では
「アメリカン・ハッスル」「ペーパーボーイ/真夏の引力」、観た映画ではジャージー・ボーイズ」「グレース・オブ・モナコ」「アメリカン・スナイパーというところ。
綾瀬はるか、堀北真希、ジェニファー・ローレンス、クリント・イーストウッド監督という顔ぶれは、もはや本エッセイの常連と言って間違いありません。
古い映画についても話題が絶えないのは、DVD化されて現在も鑑賞することが可能になったことが大きいでしょうね。おかげで私にしても、RKO時代の
フレッド・アステア作品をいろいろ観ることが出来ましたし。

亡くなった方についてのコメントも今やいつものこと。
本書の内容について小林さん曰く、
「大瀧詠一の死で明けて、明暗のイーストウッド作品で終わりました」とのこと。

  

45.

「古い洋画と新しい邦画と−本音を申せば− ★☆
 (文庫改題:映画狂乱日記)


古い洋画と新しい邦画と

2016年05月
文芸春秋刊
(1750円+税)

2019年01月
文春文庫化


2016/06/07


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毎年恒例の、「週刊文春」連載コラムの単行本化。
2015年01月15日号〜2016年01月07日号に掲載されたコラムを収録したクロニクル的エッセイ第18集。

昔の話と現代についての話、如何せん前者の比率が高くなったなぁと感じます。
その点、本書題名どおりなのですが、話に出る洋画作品はさらに古くなり、私の知らない作品が多かったですねー。
それでも面白く感じるところは当然あって、
フレッド・アステアのシド・チャリース共演の傑作ミュージカル絹の靴下、ミュージカル化前の原作品があって「ニノチカ」という題名とか。1939年作品でグレタ・ガルボとメルヴィン・ダグラスが主演という。こういう話題は、今聞いても楽しいですね。
邦画については、
若尾文子、三船敏郎、原節子といった女優・俳優辺りについてかなり語られています。
最近の邦画作品では、
綾瀬はるかが主演しているので当然というべきか、海街Diaryについて語られています。

現代社会については余り語られていないのですが、その部分について印象に残ったのは、安倍首相がケチョンケチョンに貶されていること。これについては私も共感するところ大なのですが、そこまでは言えないなぁと思うぐらい、かなり強い調子で批判されています。

   

46.

「わがクラシック・スターたち−本音を申せば− ★☆


わがクラシック・スターたち

2017年05月
文芸春秋刊

(1800円+税)



2017/06/29



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毎年恒例の、「週刊文春」連載コラムの単行本化。
2016年01月14日号〜2016年12月29日号に掲載されたコラムを収録したクロニクル的エッセイ第19集。
昔の映画から最近の映画まで、こんなに自由自在に語られるのを読めるのは、私にとっても毎年の大きな楽しみです。

今回は、洋画の話題が多かったですね。どんな名前、どんな作品名が登場したのか、印象に強く残ったのは次のとおり。

・まずは
ジェイムズ・ギャグニーケイリー・グラント
・クラシック映画の中からは、
坂東妻三郎主演による「無法松の一生」(1943年大映)と、ヘンリー・フォンダ主演の「荒野の決闘」。後者はクレメンタインの歌が素敵でしたね。
P・ハイスミス原作の「キャロル」
・クリント・イーストウッド監督、レオナルド・ディカプリオ主演
J・エドガー
・TV番組では
「相棒」「科捜研の女」がブレなし、と。
・まさかこの女優名を聞くとはと思わず興奮したのは、
杉本美樹「0課の女 赤い手錠(ワッパ)」(1974年東映)
ニコール・キッドマン綾瀬はるか、いつもどおり絶賛。
 元AKB48の
前田敦子も好評のようです。
ジェニファー・ローレンスも好評、ハンガー・ゲーム4
ビル・マーレイが登場したのは、新作「ゴースト・バスターズ」の影響かも。
川端康成・三島由紀夫往復書簡
渥美清「男はつらいよ」のTVドラマ編。
・クリント・イーストウッド監督は、
ハドソン川の奇跡
またNHK-BSで過去作品の放映があったとかで
「ダーティ・ハリー1〜5」。私は「1〜3」しか観てないなぁ。その他、人生の特等席
・注目すべき映画として
ゴーン・ガール
ドリュー・バリモアとくれば2番目のキスなのだとか。
・日テレのディレクターだった故・
井原高忠氏のことも。

      

47.

「生 還 ★★


生還

2019年03月
文芸春秋

(2000円+税)

2022年02月
文春文庫



2019/04/12



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2年前、84歳の小林さんは自宅で針治療の途中具合が悪くなり、救急車で搬送、脳梗塞と診断されます。
1週間の治療を経て、リハビリ専門のH病院へ転院。しかし、そこからが悪戦苦闘。夢か幻覚かといった夢にうなされ、麻痺した左手足は動かず、トイレに行くのもままならず、リハビリに専念する病院での日々。
半年後ようやく退院して自宅に戻りますが、3週間後に転倒して大腿骨を骨折し、J病院に入院して手術、その後はH病院に再入院。12月にやっと再退院したときは85歳。
しかし、さらにトラブルが・・・・。

いやあ、脳梗塞といえば何かとニュースになる出来事。
充分備えて用心しなければと、小林さんの苦闘ぶりを読んでいて真剣に考えてしまいます。突如という危険だけでなく、その後のリハビリ、療養の大変さが衝撃的です。

よもや小林さんの身にこんなことが起きていようとは、思いも寄りませんでした。
ただ、最初は頭脳の動きも心配でしたが、時間を追うにつれ徐々に回復してきたなという印象の一方で、肉体的には繰返しの事故と、中々そろって上手くはいかないようです。

一口に闘病記といってもそこは小林さんですから、しがみつくように映画やコメディアンの話は出てきますし、そのうえ自分自身を対象物にした分析&観察的闘病記という印象です。
ファンとして、小林さんの快復を祈るばかりです。


第一部 最初のリハビリ
1.天井しか見えない夜/2.<閣下>と呼ばれる男/3.有料の新聞ですが/4.だんどり老人/5.祖父と父のこと/6.<アキラメ>を噛みしめて/7.五十二キロまでやせる/8.バッチリ天使/9.<すべて転倒と見なす>か?/10.火災警報
第二部 壊れる私
11.かわき/12.小林という平凡な姓/13.下町の家/14.オシッコをする/15.不幸な出逢い/16.鼻の美しさ/17.壊れる私/18.軍隊の匂いのする病院/19.<コ・ボレーヌ>のこと/20.出来の悪いコント風
第三部 リハビリ島綺譚
21.とりあえず、感じが良い/22.病院のクリスマス/23.一日のスケジュール/24.午後のリハビリ/25.長嶋さんのリハビリ/26.三船敏郎の思い出/27.さよならは三月三日/28.ゴールデン・ウィークのいわれ/29.左足の教え/30.左大腿骨の問題

        

48.

「また、本音を申せば ★☆


また、本音を申せば

2020年04月
文芸春秋

(2000円+税)



2020/07/05



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生還後の「週刊文春」連載コラムの単行本化。
2017年01月5・12日号〜2019年12月26日号に掲載されたコラムを収録したクロニクル的エッセイ第21集。今回は3年分。

脳梗塞の後遺症で左手足は不自由ながら、脳と右手は使えるということで、コラムは継続されているようです。
そうした状況ですから、目新しい情報は限定されるものの、何故読み続けるのかと問われれば、それは楽しいから。
古今映画の名作、ミュージカル名作の語りに、遠慮ない世情風刺を楽しめるエッセイといえば、もう他に見当たりませんので。

冒頭、
マリリン・モンロー「帰らざる河」ドリュー・バリモアの話から始まるのが嬉しい。すっと入っていけます。
「帰らざる河」、M・M作品の中でも傑作と言えるでしょう。題名やさわりを聞くだけでも楽しい。

成瀬巳喜男監督の没50周年ということで、WOWOW にて代表作5作が放映されたとのこと。中でも浮雲は日本映画史上ベストワンを争う傑作との評ですが、これは全く同感です。
「歌行燈」は観ていないので何とも言えませんが、めし」「放浪記」「乱れる、そして「流れる」はどれも名品です。

綾瀬はるかさん、今回も登場。コメディアンヌとしての才能が素晴らしいとの評で、挙げられていたドラマは「義母と娘のブルース」。これは私も途中から観ていたので、得心できます。

フレッド・アステアが登場するのも恒例。名作ミュージカルといえばアステアの名前が出てくるのは当然ですから。
ジンジャー・ロジャースとコンビの RKO作品、そしてバンド・ワゴン。なお、アステア引退表明後の出演作品として「渚にて」「タワーリング・インフェルノ」等が挙げられていますが、私としてはTVドラマ「スパイのライセンス」にて、ロバート・ワグナー演じるアレックス・マンディの父親=アリステア・マンディ役も忘れ難いところです。

日活ロマン・ポルノの話題も、日本映画史を辿るうえで少々。
ただ、小林さんが好きだったという
芹明香さんという女優のことはまるで知りませんでした。

安倍首相については相変わらずの酷評。トランプに尻尾を振り、外交がまるで分かっていないと。自民党政治悪化の象徴の由。
なお、新しい処で、長嶋一茂評が面白かったです。


T.ラジオと私と−2017年/U.弱者の生き方について−2018年/V.映画の本が大好き!−2019年

       

49.

「とりあえず、本音を申せば ★☆


とりあえず、本音を申せば

2021年03月
文芸春秋

(2200円+税)



2021/04/24



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クロニクル的エッセイ第22集。

今回気になったのは、定価が刊行毎に上がっていること。その理由はといえば、発行部数が少しずつ減っている所為でしょうか。
率直に言うとそれも仕方ないことと思います。
何しろ、内容の半分はクラシック映画やMGMミュージカルの話題が占めていますので、それらを観たことがない人にとっては何のことやら分からん、つまらない、ということになるでしょうから。
私の場合は元々映画は好きで、TVのロードショーでいろいろ観たり、ミュージカル映画はDVDレンタルで観たりしていますから、程々について行けますけれど、私より下の年代ですと観たことがない、という人が多いでしょうから。

ただ、私としては繰り返しになってもそれらの話題は充分楽しいですし、小林さん独特の視点からみた世相、という処も十分興味あります。

新しい処では、
ジュディ 虹の彼方に」、「ワンス・アポン・ア・タイム・ハリウッド」、「スキャンダル」(シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン)、「引っ越し大名!」(星野源、高畑充希)といった映画作品の話は楽しい。
俳優の中で新しく取り上げられたのは、
柄本祐さん、納得です。
小説では
宮部みゆき「きたきた捕物帖。これは深川繋がりのようです。

「もっとも困った人」として安倍前首相、カタカナを持ち出した時は要注意と、小池都知事への批判は相変わらず。
また、トランプ前米国大統領への批判本も取り上げられていますが、トランプ本人については呆れるばかり、のようです。

チャップリンや三船敏郎さんの名前が繰り返し登場するのは毎度のことですが、
「めまい」に登場するキム・ノヴァクは美しい、絹の靴下の前作である「ニノチカ」(ビリー・ワイルダー脚本、グレタ・ガルボ主演)「踊る不夜城」におけるタップ女王エリノア・パウエルのダンス・シーンについての語りは楽しい限り。
なお、キム・ノヴァクの主演作で私が観ているのは「めまい」「媚薬」「ピクニック」辺りですが、私としてはニューヨークの現代場所を演じた「媚薬」のキム・ノヴァクが一番好きですね。

また、時節柄、新型コロナ感染の問題も避けて通れません。

          

50.

「決定版 日本の喜劇人 ★★☆   


決定版日本の喜劇人

2021年05月
新潮社

(3600円+税)



2021/06/23



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「日本の喜劇人」「日本の喜劇人2」(「植木等と藤山寛美−喜劇人とその時代−」に「伊東四朗」の項を加えた新潮文庫版「喜劇人に花束を」を改題)を一冊にまとめ、それぞれ加筆・修正を施すとともに、「著者インタビュー」を収録した一冊。

「日本の喜劇人」と「植木等と藤山寛美」、「おかしな男−渥美清は既読ですが、読んだのはもう30年も前のことですから、改めて読んでも存分に面白い。なにせ、私の方もその間に知識が増えていますから。

改めて一気に読むと、これぞ日本の喜劇人たちの系譜!と言って間違いない力作、という思いを強くします。
何と言っても小林さん自身の目で、それら喜劇人たちを直に見て来た、ということが貴重。
学究論文ではないのですから、当然ながら小林さんの好み、考え方が前提にありますが、だからこそリアル感、説得力がある、というものです。

緑波、エンタツ・アチャコ、エノケンとなると流石に見た覚えはありませんが、子どもの頃TVで「スチャラカ社員」「てなもんや三度笠」、クレージーの「おとなの漫画」などは、見たことがあります。
ただし、子どものことですから観察眼など無きに等しく、親が観ていたので自分も見た、という程度のことです。それでも本書でその背景をいろいろ語ってもらうと、あぁそうだったのか、という思いがこみ上げてきます。

その後、本書で取り上げられた喜劇人たちについては、多少なりとも観ていますし、懐かしいものがあります。
ただこうして読むと、東京と大阪では<喜劇>との距離感がかなり違うものだったと感じますし、そうした喜劇人たちを主役に据えた映画が撮られていたことについては、信じられないような気がします。まぁ、当時は<二本立て>でしたからね。

本書終盤、藤山寛美、伊東四朗を語った辺りは印象的です。
とくに藤山寛美、これだけ屈折していたとは衝撃的です。

喜劇人一人一人の紹介・批評に留まらず、喜劇人の系譜を語った一冊。戦後日本が辿って来た喜劇人の歴史絵巻を見る観があります。関心の有無次第と思いますが、お薦めです。


【日本の喜劇人】
はじめに/1.古川緑波(丸の内喜劇の黄金時代)/2.榎本健一(THE ONE AND ONLY)/3.森繁久彌の影(伴淳三郎 三木のり平 山茶花究 有島一郎 堺駿二 増田喜頓)/4.占領軍の影(トニー谷 フランキー堺)/5.道化の原点(脱線トリオ クレイジー・キャッツ)/6.醒めた道化師の世界(日活活劇の周辺)/7.クレイジー王朝の治世/8.上昇志向と下降志向(渥美清 小沢昭一)/9.大阪の影(「てなもんや三度笠」を中心に)/10.ふたたび道化の原点へ(てんぷくトリオ コント55号 由利徹)/11.藤山寛美(伝統の継承と開拓と)/12.日本の喜劇人・再説/最終章.高度成長のあと
【日本の喜劇人2】
はじめに/1.植木等(1.ジャズ喫茶 1958-60/2.歌で始まる 1961/3.映画への進出 1962-63/4.スーパーマンの憂鬱 1964-65/5.頂点 1965-67/6.王朝の崩壊 1968-72/7.サウンドの評価と復活 1973-91)/2.藤山寛美(1.東京オリンピックの年 1964/2.成功への綱渡り 1965-71/3.「阿呆まつり」のころ 1971-72/4.正当と疎外感 1972/5.黄金時代 1973-74/6.花のマクベス 1972/7.終幕 1989-90)/3.伊東四朗(1.<トリオ>からの出発 1962-66/2自立と遅咲き 1967-73/3.最後の喜劇人 1973〜)/
【あとがき・インタビュー】
「決定版 日本の喜劇人」あとがき/小林信彦インタビュー:ぼくは幸運だった

            

51.

「日本橋に生まれて−本音を申せば− ★★  


日本橋に生まれて

2022年01月
文芸春秋

(2200円+税)



2022/02/21



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「週刊文春」にて23年にわたり連載されてきたコラム「本音を申せば」、ついに完結とのこと。

脳梗塞を患ったということもありますし、小林さんも高齢になったということでいずれはと思っていましたが、その時が来るとやはり寂しさを感じます。
内容が古い話の繰り返しであっても、そこは語らいという楽しさがありますから、本シリーズは毎年楽しみにしていました。
長年にわたりご苦労さまでした。同時に、ずっと楽しませていていただいて有難うございましたと、お礼の言葉を小林さんに送ります。

「T.奔流の中での出会い」は、小林さんの所縁深い人たちの思い出を語った17篇。(連載は2018.11.1号〜19.06.20号)
その中、一番面白かったのは
「横溝正史さんの場合」。実は私、横溝正史作品は未読。作品から受ける印象と、作家自身の実像がかなり乖離していたからでしょうか。
なお、17篇の相手、亡くなった方が大勢なのですが、その中で唯一若手なのが、
柄本佑さん。これは特筆すべきことでしょう。

「U.最後に、本音を申せば」は、2021年のクロニクル。
 
(連載は2021.1.14号〜 7.8号)
内容について言えば、これまで何度も聞かされてきたことが多いのですが、その中で印象に強いのは、
植木等さん。やはり面白く興味尽きない人物です。現役で印象強いのは、これもやはりとなりますが、伊東四朗さん。

なお、平野甲賀さんのフォントを題字に使用し、本文挿絵は実弟である小林泰彦さんとのこと。

万感の思いをもって読了しました。


1.奔流の中での出会い/2.最後に、本音を申せば

    

 読書りすと(小林信彦作品)

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