小林信彦作品のページ No.6



50.決定版 日本の喜劇人

51.日本橋に生まれて−本音を申せばNo.17− 

52.決定版 世界の喜劇人 


【作家歴】、唐獅子株式会社、唐獅子源氏物語、イエスタデイ・ワンス・モア、ミート・ザ・ビートルズ、ドリームハウス、イーストサイド・ワルツ、ムーン・リヴァーの向こう側、コラムの冒険、和菓子屋の息子、現代(死語)ノート

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結婚恐怖、天才伝説横山やすし、コラムは誘う、人生は五十一から、おかしな男渥美清、読書中毒、最良の日最悪の日、昭和の東京平成の東京、テレビの黄金時代、コラムの逆襲

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名人、にっちもさっちも、ぼくが選んだ洋画・邦画ベスト200、花と爆弾、侵入者、本音を申せば、昭和のまぼろし、うらなり、映画が目にしみる、昭和が遠くなって

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日本橋バビロン、映画x東京とっておき雑学ノート、B型の品格、黒澤明という時代、森繁さんの長い影、気になる日本語、流される、非常事態の中の愉しみ、四重奏(カルテット)、映画の話が多くなって

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小林信彦 萩本欽一 ふたりの笑タイム、「あまちゃん」はなぜ面白かったか?、つなわたり、女優で観るか監督を追うか、古い洋画と新しい邦画と、わがクラシック・スターたち、生還、また本音を申せば、とりあえず本音を申せば

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50.

「決定版 日本の喜劇人 ★★☆   


決定版日本の喜劇人

2021年05月
新潮社

(3600円+税)



2021/06/23



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「日本の喜劇人」「日本の喜劇人2」(「植木等と藤山寛美−喜劇人とその時代−」に「伊東四朗」の項を加えた新潮文庫版「喜劇人に花束を」を改題)を一冊にまとめ、それぞれ加筆・修正を施すとともに、「著者インタビュー」を収録した一冊。

「日本の喜劇人」と「植木等と藤山寛美」、「おかしな男−渥美清は既読ですが、読んだのはもう30年も前のことですから、改めて読んでも存分に面白い。なにせ、私の方もその間に知識が増えていますから。

改めて一気に読むと、これぞ日本の喜劇人たちの系譜!と言って間違いない力作、という思いを強くします。
何と言っても小林さん自身の目で、それら喜劇人たちを直に見て来た、ということが貴重。
学究論文ではないのですから、当然ながら小林さんの好み、考え方が前提にありますが、だからこそリアル感、説得力がある、というものです。

緑波、エンタツ・アチャコ、エノケンとなると流石に見た覚えはありませんが、子どもの頃TVで「スチャラカ社員」「てなもんや三度笠」、クレージーの「おとなの漫画」などは、見たことがあります。
ただし、子どものことですから観察眼など無きに等しく、親が観ていたので自分も見た、という程度のことです。それでも本書でその背景をいろいろ語ってもらうと、あぁそうだったのか、という思いがこみ上げてきます。

その後、本書で取り上げられた喜劇人たちについては、多少なりとも観ていますし、懐かしいものがあります。
ただこうして読むと、東京と大阪では<喜劇>との距離感がかなり違うものだったと感じますし、そうした喜劇人たちを主役に据えた映画が撮られていたことについては、信じられないような気がします。まぁ、当時は<二本立て>でしたからね。

本書終盤、藤山寛美、伊東四朗を語った辺りは印象的です。
とくに藤山寛美、これだけ屈折していたとは衝撃的です。

喜劇人一人一人の紹介・批評に留まらず、喜劇人の系譜を語った一冊。戦後日本が辿って来た喜劇人の歴史絵巻を見る観があります。関心の有無次第と思いますが、お薦めです。


【日本の喜劇人】
はじめに/1.古川緑波(丸の内喜劇の黄金時代)/2.榎本健一(THE ONE AND ONLY)/3.森繁久彌の影(伴淳三郎 三木のり平 山茶花究 有島一郎 堺駿二 増田喜頓)/4.占領軍の影(トニー谷 フランキー堺)/5.道化の原点(脱線トリオ クレイジー・キャッツ)/6.醒めた道化師の世界(日活活劇の周辺)/7.クレイジー王朝の治世/8.上昇志向と下降志向(渥美清 小沢昭一)/9.大阪の影(「てなもんや三度笠」を中心に)/10.ふたたび道化の原点へ(てんぷくトリオ コント55号 由利徹)/11.藤山寛美(伝統の継承と開拓と)/12.日本の喜劇人・再説/最終章.高度成長のあと
【日本の喜劇人2】
はじめに/1.植木等(1.ジャズ喫茶 1958-60/2.歌で始まる 1961/3.映画への進出 1962-63/4.スーパーマンの憂鬱 1964-65/5.頂点 1965-67/6.王朝の崩壊 1968-72/7.サウンドの評価と復活 1973-91)/2.藤山寛美(1.東京オリンピックの年 1964/2.成功への綱渡り 1965-71/3.「阿呆まつり」のころ 1971-72/4.正当と疎外感 1972/5.黄金時代 1973-74/6.花のマクベス 1972/7.終幕 1989-90)/3.伊東四朗(1.<トリオ>からの出発 1962-66/2自立と遅咲き 1967-73/3.最後の喜劇人 1973〜)/
【あとがき・インタビュー】
「決定版 日本の喜劇人」あとがき/小林信彦インタビュー:ぼくは幸運だった

            

51.

「日本橋に生まれて−本音を申せば− ★★  


日本橋に生まれて

2022年01月
文芸春秋

(2200円+税)



2022/02/21



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「週刊文春」にて23年にわたり連載されてきたコラム「本音を申せば」、ついに完結とのこと。

脳梗塞を患ったということもありますし、小林さんも高齢になったということでいずれはと思っていましたが、その時が来るとやはり寂しさを感じます。
内容が古い話の繰り返しであっても、そこは語らいという楽しさがありますから、本シリーズは毎年楽しみにしていました。
長年にわたりご苦労さまでした。同時に、ずっと楽しませていていただいて有難うございましたと、お礼の言葉を小林さんに送ります。

「T.奔流の中での出会い」は、小林さんの所縁深い人たちの思い出を語った17篇。(連載は2018.11.1号〜19.06.20号)
その中、一番面白かったのは
「横溝正史さんの場合」。実は私、横溝正史作品は未読。作品から受ける印象と、作家自身の実像がかなり乖離していたからでしょうか。
なお、17篇の相手、亡くなった方が大勢なのですが、その中で唯一若手なのが、
柄本佑さん。これは特筆すべきことでしょう。

「U.最後に、本音を申せば」は、2021年のクロニクル。
 
(連載は2021.1.14号〜 7.8号)
内容について言えば、これまで何度も聞かされてきたことが多いのですが、その中で印象に強いのは、
植木等さん。やはり面白く興味尽きない人物です。現役で印象強いのは、これもやはりとなりますが、伊東四朗さん。

なお、平野甲賀さんのフォントを題字に使用し、本文挿絵は実弟である小林泰彦さんとのこと。

万感の思いをもって読了しました。


1.奔流の中での出会い/2.最後に、本音を申せば

          

52.

「決定版 世界の喜劇人 ★★☆   


決定版世界の喜劇人

2024年04月
新潮社

(3600円+税)



2024/05/11



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<T.世界の喜劇人>は「世界の喜劇人」(1983年新潮文庫)、<U.「世界の喜劇人」その後>は、様々なコラム、エッセイをまとめたもの、とのこと。

これまでも小林さんのエッセイ本はずっと読み続けてきていますから、記憶している部分も多くありますが、改めて「決定版」としてまとめられたものを読むのは感無量です。
“サイレント”から“トーキー”への移行期から、アメリカ映画を中心とした名だたるコメディアンたち、特にスラップスティック・コメディ映画を中心軸に、年代の変化を追いながら語った一冊。これはもう、コメディ映画の貴重な歴史書と言って過言ではありません。何しろ、ドラキュラ映画まで語られるのですから。以て冥すべし。

それにしても、よくまぁこれだけのコメディ作品を実際に観ているものだと感嘆します(映画館だけでなくビデオ等々も多いようですが)。
戦後、米国からコメディ映画が一気に日本に入ってきたという時代背景もあるでしょうし、映画が好きで、身近な場所に映画館があった、ということも大きいのでしょう。
私の年代と環境では、TVロードショーが主体でしたが、当時は底抜けコンビ(ディーン・マーチンとジェリー・ルイス)のものが多く放映されていて、その結果として結構観ていました。
そのジェリー・ルイスについて、「白痴的」という小林さんの指摘には、同意する処です。

小林さんが最も評価するコメディアンは、やはり
マルクス兄弟なのだろうな、と感じます。
また、コメディアンなるもの、自分が笑ってしまってはダメ、無表情で観客を笑わしてこそ芸と言える、と思う処です。

※なお、フランスのラブ・コメディ作品として
「お嬢さんお手やわらかに」が紹介されていたのは、懐かしくもあり嬉しい。
ミレーヌ・ドモンジョ、パスカル・プチ、ジャクリーヌ・ササールという当時の若い人気女優がアラン・ドロンと絡む、ドタバタコメディ、私も好きな作品です。

※小林さん曰く、コメディ映画には、スラップスティック(身体を使った)・コメディと、シチュエーション・コメディの二通りがある、とのこと。


T世界の喜劇人
はじめに/【第一部 世界の喜劇人】
【第二部 喜劇映画の衰退】
序章.遥かなる喝采/1.スラップスティック・コメディ/2.スラップスティック・コメディを混ぜたパロディ/3.異端者チャーリー/4.その後のスラップスティック/終章.喜劇映画を作ろう!/補章
【第三部 喜劇映画の復活】
序章/1.古典的喜劇の再生産の試み/2.古典的喜劇・プラス・ワン/テレビ感覚派のスラップステック/4.恐怖と予感の喜劇/5.ヨーロッパの現状/6.黒い哄笑の世界
【第四部 幼年期の終り】
1.幼年期の終り/2.フリドニア讃歌
U「世界の喜劇人」その後
【<ロマンティック・コメディ>の出発】
【ルビッチ・タッチのお勉強】
ビリー・ワイルダーの演出は<一流>だろうか?/エルンスト・ルビッチとビリー・ワイルダー/序説/
【ウディ・アレンを観続けて】
映画館のある風景−「アニー・ホール」/ウディ・アレンの日本映画/「ハンナとその姉妹」の高等戦術/スクリューボール・コメディの佳作「ブロードウェイと銃弾」/心が浮き浮きする「世界中がアイ・ラヴ・ユー」/老年と死−「人生万歳!」/ウディ・アレン雑談/
【その後の「世界の喜劇人」たち】
グラウチョ・マルクス−最後の道化師の退場/「進めオリンピック」のおかしな世界/レオ・マッケリイの傑作「新婚道中記」/「大逆転」雑感/メル・ブルックスの逆襲/「マン・オブ・ザ・ムーン」のジム・キャリーは必見ものです/アメリカ人が選ぶ<アメリカ喜劇ベスト100>/芸達者、スティーヴ・マーティンのこと/ボブ・ホープの死の日本人>
「決定版 世界の喜劇人」あとがき
附・小林信彦インタビュー:<変な日本人>の観てきたもの

   

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