“ジュディ 虹の彼方に” ★★★ Judy (2019年アメリカ映画)
監督:ルパート・グールド 原作戯曲:ピーター・クィルター 脚本:トム・エッジ 出演:レネー(レニー)・ゼルウィガー、ジェシー・バックリー、フィン・ウィットロック、ルーファス・シーウェル、マイケル・ガンボン
ジュディ・ガーランドと言えば、MGMミュージカル絶頂期の一翼を担った女優、フレッド・アステアやジーン・ケリーにならぶミュージカルの大スターと言って過言ではありません。 その一方、「オズの魔法使い」出演の頃からMGMに命じられて服用し始めた覚醒剤の影響で、薬物中毒や精神的な不調を繰り返し、自殺未遂も起こしていたことはよく知られた事実だと思います。 本作はそのジュディ・ガーランドが、睡眠薬の過剰摂取により47歳で死去する、半年ほど前に行ったロンドン公演中の姿を描いた作品。 正直なところ、本作品については観たいという気持ちと同時に、観たくない、という気持ちもありました。 「イースター・パレード」や「サマー・ストック」、未完成となったジュディ版の「アニーよ銃をとれ」等々、彼女は本当に上手い。 決して美人ではないけれど愛嬌があって明るく、コミカルな演技もできる、天性のミュージカルスターだったと言えます。 そうした印象が強いだけに、知っていることとはいえ、晩年の彼女の姿を観たくない、という思いも強かったという訳です。 主演はレネー(レニー)・ゼルウィガー。キャストのリストを見るまで、レネー・ゼルウィガーとは全く気づきませんでした。 本来ブロンドですし、ふくよかな印象のある女優。それが黒髪でやつれた中年女性という姿を見せる訳ですから、役柄のためにきっとかなり痩せたのでしょう。 借金に追われ懸命に日銭を稼ぐしかない日々、連れ歩く2人の子供を愛し守りたいという気持ち、観客の前に我が身を晒す不安と恐れ、たった一人でいることの寂しさ、本作で描かれるジュディは実に様々な想いを抱え、もがき苦しんでいるようです。 そんなジュディを演じるレネー・ゼルウィガーの演技が圧巻。 元々演技力の高い女優ですが、この作品での演技はまさに最高のものでしょう。アカデミー賞主演女優賞を受賞したのも当然のことと思います。 ※フレッド・アステアやジーン・ケリーがその人生を全うしたのに対し、同じミュージカル全盛期のスターでありながら何故ジュディ・ガーランドは失意の人生を送ることになったのか。そこに娘スターであったからこその過酷な運命があったからではないか、と思うのです。
2020.03.11
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