“放浪記” ★★★
(1962年日本映画)

監督:成瀬巳喜男
原作:林芙美子
脚本:田中澄江、井出敏郎
出演:高峰秀子、
田中絹代、宝田明、加東大介、小林桂樹、草笛光子、仲谷昇、伊藤雄之助、多々良純、加藤武、文野明子、中北千枝子、飯田蝶子、賀原夏子、菅井きん、名古屋章
上映時間:123分

      

稲妻」「浮雲」に続く成瀬巳喜男・高峰秀子コンビによる林芙美子作品の映画化。

とにかく目を奪われるのは、他の作品とは全く違う高峰秀子の姿がそこにあることです。いやもっと正確に記すなら、「放浪記」の主人公そのものの“林芙美子”という人物がそこにいる、ということ。
歯切れよく溌剌とした高峰さんではなく、目の表情とかむしろ愚鈍にも見えるような林芙美子像。「わたしの渡世日記」によると主人公像に合せるため猫背等の工夫をしていたらしい。

「放浪記」で描かれた林芙美子の半生は、極貧の暮らし、何度も男に裏切られることの累積と言ってよいもの。
そうした半生を生き抜いた林芙美子という主人公を演じた高峰秀子さんの演技は真に素晴らしいとしか言いようがないものです。
しかし本作品、興業的には失敗だったという。大衆が抱く女流作家=林芙美子のイメージを損なうものであったためらしい。
それでも「浮雲」とは異なるところで、本作品もまた成瀬巳喜男、高峰秀子の名作といって間違いないありません。

※高峰秀子作品をずっと観てきましたが、この年代になると私自身が子供の頃からリアルタイムで観ていた役者さんたちがやたら大勢出演してきているのが面白く感じられます。

2012.03.11

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