“人生の特等席” ★★☆
Trouble with The Curve
(2012年アメリカ映画)

監督:ロバート・ロレンツ
製作:クリント・イーストウッド、R・ロレンツ、ミシェル・ワイズラー
脚本:
ランディ・ブラウン
出演:クリント・イーストウッド、エイミー・アダムス、ジャスティン・ティンバーレイク、ジョン・グッドマン、ロバート・パトリック

 

久々のクリント・イーストウッド主演作品。ただし「グラン・トリノ」とは異なり、監督は自身ではなく別の人。
メジャーリーグの老スカウトマンとその娘が、スカウトマンとしての最後の旅を共にし、どこか疎遠なところがあった親子関係を互いに深めていく、というストーリィ。

まず冒頭、目利きの新人スカウト係として長年にわたり高い評価を得てきたものの、今やすっかり年老いたガス・ロベル。そのガスが目覚めたところから始まるのですが、その老いさらばえた姿はそのままクリント・イーストウッド自身の姿でもあるのですから、若い頃のイーストウッドを知っているファンとしては相当にショック。しかしそれで本ストーリィにぐいっと引き込まれてしまうのですから、ストーリィの出だしとしては上手い。
そのガス、視力にも支障が生じるようになっていて危なっかしくて仕方ないのですが、そこは一徹者。例年どおり新人スカウトの旅に出かけます。そんなガスを心配して同僚であり友人のピートが、ガスの一人娘ミッキーに連絡をとってきます。
そのミッキーは、33歳独身の女性弁護士。粉骨砕身の働きで漸く事務所のパートナーになれるかどうかという勝負処に立っています。その鍵となる重要事件を目前に控えながら、父親のことを放っても置けず無理やり休暇を取り、ガスのスカウト旅に押し掛け同行します。

そのミッキー自身も、母親を6歳で亡くした幼い頃父に連れられてスカウト旅を一緒にした所為か野球に滅法詳しく、やはり親子だなと思わせられます。しかしそのミッキー、実は父親から捨てられたという思いを少女の頃からずっと抱えていたという事実が終盤明らかにされます。さてそこにはどんな事情があったのか、そして2人の親娘関係はどういう方向に進むのか。

年取ってそこは少し影の薄くなったクリント・イーストウッドに、ミッキー役のエイミー・アダムスががっぷり四つに組んで、観応えのある親娘ドラマが展開します。そのエイミー・アダムスの演じるミッキーがとても魅力的で、彼女の好演が光ります。
また、その目の先には高校生たちの野球試合があり、メジャーリーグ新人発掘の裏側でパソコンを駆使して有望選手を見極めようとする若手野心家と、ガスやピートのように直接目でみて確かめなくてはという旧来スカウト陣との対立が描かれるのですから、その辺りも興味津々。

ガスとミッキー父娘が共にするスカウト旅。2人の気持ちが寄り添ったり離れたりを繰り返しながらも、徐々に溶け合っていく様子が何とも言い難く良い。その背後には常に親子の愛情が存在していることを感じ取らせている点が温かで、心憎い仕様です。
いくら何でも都合よく進み過ぎ、と終盤感じますが、この親子ドラマの気持ち良さに比べれば、どうということもないと思う次第。
観終わった時にはワクワクした気持ちになっていて、それもまた嬉しいこと。

ミッキー役のエイミー・アダムス、これまで「魔法にかけられて」「ナイト・ミュージアム2」で観ていますが、それ程強い印象は受けていなかったのですが、本作品の演技はとても良かった。今度注目してみたくなりました。

2012.11.24

       


  

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