後記 2002-02-02 


 

 いつの頃からか徒然歩きのままに立ち寄った墓地の何とはない碑をながめ、その墓の主の人生や、家族の事にただぼんやりと空想を巡らせていましたが、「文学者掃苔録」を編むようになってからというものは、文学に全霊を打ち込んだ作家達の強烈な生き様にふれ、自らの人生、家族、それに繋がる人々に思いを寄せる時間が多くなったような気がします。
 今回掲載した「吉行淳之介」の墓は、岡山からローカル線で1時間ほど山間に入った金川という小さな駅はずれの山裾にありました。田んぼのあぜ道をのぼった郷家の墓地は白塀にかこまれたかなり広い塋域で、中央に祖父澤太郎の「先祖代々之墓」、その後ろにならんだ数基の小さな墓のひとつは淳之介の父、ダダイスト・エイスケの碑。戒名は「文章院滅証宗和信士」。淳之介の名はかろうじて傍らの墓誌にとどめられていました。「清光院好文日淳信士」俗名淳之介。大作家の○○院殿○○大居士、あるいは文学博士○○○○などという大仰な文字が刻んである碑に比べて、作家の歩んできた人生に繋がった人々の思いというものが好ましく感じられ、時折谷筋から揺れあがってくる微風に絡まれたさわさわという葉擦れの音を耳にしていると、汗ばんだ体の中をほっとした気分が流れていきました。

 この編集後記を書いていたら吉行淳之介氏の悪友?であり、ともに「第三の新人」の一角を占めていた近藤啓太郎氏の訃報を朝刊で知りました。ご冥福をお祈りいたします。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

編集後記


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